図書館ホールの隅に、そのチラシはそっと貼られていた。+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+ ターミナルの皆様へ このたび、ヤン・ウルさまのお声掛けにより、 当店において、料理教室を開催する運びとなりました。 講師は店長以下、各店員が適宜つとめさせていただきます。 第一回目は、「秋の味覚」がテーマです。 旬の食材を生かし、彩りと食感をご堪能いただければと思います。 どうぞお誘いあわせのうえ、ご参加をお待ちしております。 クリスタル・パレス スタッフ一同+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-+:-+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+:-:+「たのもー!」 その手にチラシを握りしめ、最後の魔女は、ズゴゴゴゴーーー! と現れた。「まおうとしての ちい と めいよ をすてて あえて ぱーてぃーに おもむくか……」 ターミナルのクリスマス2011(過去ログ)参照の素晴らしいノリの良さに、思わずシオンは引きずられた。「出やがったなラスボス」「あら。お客様になんて言いようかしら。永久凍土の中で眠りにつきたいの?」「すみませんごめんなさい。全面的におれが悪かったです。あなたこそはおれにとって最後の魔女にして最後の女神。下僕とお呼びくださいとりあえずほうじ茶をどうぞ。いちお、今日は料理教室なんで平和的によしなに」「くっくっくっ……面白い。終焉を招く私の料理、とくと味わうが良い」「お邪魔しますー」 最後の魔女の後ろから、お下げ髪の女子高生がひょこっと顔をのぞかせる。吉備サクラだった。「これはサクラさま。先日は、素晴らしい服をありがとうございました」「おれに逢いに来てくれたんだなそうだなそうなんだな!?」 頭を下げるラファエルと勢い込むシオンだったが、サクラはそっと店内を見回す。「ええっと、ジークさんもいらっしゃいますよね?」「……いや、今日はシフト外だったけど、サクラがそういうなら呼ぶよ呼びますよ呼べばいいんだろチクショー」 シオンは涙目で携帯を取り出し、ジークフリートに連絡を取る。「こんにちは、シオンさん」 ピンク色のロングヘアが、ふわりと揺らいだ。 人なつこい笑顔を見せて現れた舞原絵奈に、シオンの頬がゆるむ。「おおおおーーーー! 絵奈じゃーーーーん!! おれのこと覚えててくれたんだな!!!」「はい、名刺をいただいたので。それより」 しかし絵奈たんのお目当ては別にあったようで、挨拶をすませるとあっさりきっぱりシオンから離れ、きょろきょろする。「ヤンさんは……、まだなんですね……。もふもふ……、いえ、何でも……」 恥ずかしそうにもじもじする絵奈たんにシオンがハートブレイクする間もなく。「……私も参加していいかしら。べっ、別に自信がないわけじゃないけど! 料理の腕上げたいし! もうちょっとレパートリー増やしたいしね!」 すんげぇツンデレな台詞とともに、ヘルウェンディ・ブルックリンの登場である。「おっ、ヘルぅ! よく来てくれたな。相変わらず美少女だなー」「こんにちはシオン。……あ、ラファエル。この前はありがとう」 しかしヘルたんは、すいぃぃぃぃーとシオンのそばを抜け、ラファエルに話しかける。「どういたしまして、というべきかどうか」「あのあと、結局ふたりして、ストラディヴァリウス・グラッパをひと瓶空けちゃったみたいね」「お父様にはくれぐれも、肝臓を大切にとお伝えください」「しじみ汁でも飲ませとけ。娘渾身の手料理なんざ贅沢だ」 本日の趣旨から離れまくりのぼやきを、ついシオンは口にしたが。「チラシを見たぞい。楽しそうな企画じゃな」 ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノが扉を開けるなり、すっ飛んでいく。「ジュリエッターぁああああ! この間はハローズに行けなくてごめんな! おれを見限らないでくれ頼むいつかリベンジさせてくれぇぇぇぇ」「はて?」 ジュリエッタは、きょとんと首を傾げる。「そんなことがあったかのう?」「お気になさらず。シオンは時々、妄想が暴走することがあるようで」 にこやかに言うラファエルに、ジュリエッタは納得して頷く。「うむ、何かと忙しそうじゃからのう。ところで店長殿、ミシェルは元気でやっておるかえ?」「おかげさまで、だいぶ、人前に出しても恥ずかしくないようになってきました。よろしければ、アシスタントとして呼び出させていただきますよ」「いいよなー。おれ以外のみんなは、もててさぁ〜〜」 しばし壁に手を当ててがっくりボーズをしていたシオンは、「にゃっ?! もうみんな来てたのにゃー!」「こんにちは、ラファエルさん。開催ありがとうございます」 連れだってやってきたヤン・ウルと相沢優を見るなり、だだだっと駆け寄り、ふたりにがっしと抱きついた。「どうしたのかにゃ!?」「何かあったのか?」「……いや、ちょっと癒されたくなって」=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>ヤン・ウル(cefc6330)相沢 優(ctcn6216)ヘルウェンディ・ブルックリン(cxsh5984)ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノ(cppx6659)舞原 絵奈(csss4616)最後の魔女(crpm1753)吉備 サクラ(cnxm1610)=========
Recipe1◆誰がために カフェのレイアウトは、通常営業のときとはがらりと趣きを変え、料理教室に適した設営がなされている。 大理石のテーブルに用意されているのは、おもに壱番世界から仕入れてきた旬の食材だ。 秋味(鮭)、秋太刀魚(サンマ)、太刀魚、しらす、あわび、伊勢海老、銀杏、えのき、しめじ、柿、栗、りんご、葡萄、梨、さつまいも、里芋、すだち、柚子などなど。 「一口に秋の味覚っていっても、沢山あって迷っちゃうわね」 持参の、各種セクタンプリント入りエプロンをつけたヘルウェンディは、やや途方に暮れて、あふれかえる食材の山を見る。 「どうせなら、すっごいの作って見返してやりたいし。……それに、ジャンクフードとお酒ばっかじゃ、体に悪いし栄養偏るでしょ」
このライターへメールを送る