”ねぇ、キアラン。 素敵なお店があるのよ、一緒にお茶しない? お店の前で待ち合わせよ!” ティリクティアからのエアメールに気がついたキアラン・A・ウィシャートは、娘のように思っている彼女からの誘いに思わず柔らかい表情を浮かべた。返事は勿論OKだ。素早く返事をして、文章に添えられていた地図を見る。「んん? うーん?」 ノートをあっちに傾けて、こっちに傾けて。何とか読み取ろうとするキアラン。「地図……地図かぁ?」 首を傾げながら呟いて、一瞬後にはまあいいやと思い直して。 店の名前はわかっているのだから、誰から聞けばわかるだろう、うんうん。「キアラン! 遅いわよっ!」「ティ、ティア……」 キアランが目的の店、Cafe ミスチヴァスの前に辿り着いた頃には、ティリクティアは待ちくたびれていて。 遠くから彼の姿をみとめて腰に腕を当てて、ぷんぷんと不機嫌そうにしていた。「遅れたのは悪かった、謝る、このとおりだっ! だがなぁ……」 そっとキアランが視線を移したのは、ティリクティアの背後に立つ建物。 そう、見るからに甘ったるいような、メルヘンチックというべきその建物は……ちょっと、うん。「……この店、俺みたいなおじさんにはちょっと敷居が高くねぇか?」「何言ってるの! ここ前にも来た事があるのだけれど、とっても素敵な店なのよ」 おずおずと告げたキアランの腕を取り、ティリクティアはずんずんと引っ張っていく。もちろん、入り口のビスケットのような扉へ向かっているのだ。「私と一緒なんだから、大丈夫よ! ほらほら、早く!」「しょうがねぇなぁ……」 カラカララン……ピロピロロン……。 覚悟を決めたはずだったが、扉が開くと同時に流れてきたメルヘンな音と、視界に飛び込んできたかわいい店舗装飾を見たら、やっぱりなんだか少し肩身が狭くなった気がした。 *-*-*「それで、あの、今日は、キアランと話したいなと思って」 銀色に光って見えるガラスのコップを両手で持って、ティリクティアはドキドキしながら口を開いた。掌に伝わるコップの冷たさが、ドキドキする心を沈めてくれる気がする。「改まってどうした?」 雪の結晶の形の座面が落ち着かないのか、座り直しつつキアランはティリクティアを見つめる。ティリクティアは雪の結晶の散りばめられた白いテーブルの上でコップを挟んだ手をもじもじさせつつ口を開いた。「世界樹への調査も始まっているし、やっぱり私達の旅の終わりは近づいていると思うの」 ゆっくり息を吐き出すように告げるティリクティア。その声は真剣で、そして顔を上げた彼女の瞳も真剣な色を帯びていた。「ねぇ、キアランは今後についてどう考えているの? 私は故郷へと戻ろうと決めているけれど。そう言う事、ちゃんと聞きたくて」 心の中で何度も練習したセリフを言い終えて、ほっと息をついたティリクティア。「お待たせいたしましたー」 タイミングを測ったかのように、ウエイトレスが運んできたのはスイーツの数々。テーブルをうめつくすほどのお皿の数に、キアランは相変わらずだなぁと笑ってみせた。 運ばれてきた飲み物にもスイーツにも手を付けずにティリクティアはキアランの返事を待っていた。だからなんとなく、はぐらかすわけにはいかないような気がする。 いつも真剣に対峙していないというわけではないけれど、今日は特に真剣に言葉を選び、答えを述べなくてはならないような気がして。「そうだなぁ」 銀色をしたコップの水を一気に飲み干した。=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>ティリクティア(curp9866)キアラン・A・ウィシャート(cese6575)=========
店の外装も内装も甘いが、食事と話を邪魔しない程度のヴォリュームで流されている店内音楽も可愛らしく甘めのものだ。キアラン・A・ウィシャートとティリクティアの間に落ちた沈黙に寄り添うように流れている。他の客の喋り声とカトラリーと食器の触れ合う音が二人の耳に流れこんだ。 テーブルの上には見た目も楽しい甘味がところ狭しと並んでいる。しかしティリクティアはそれに手を付けようとはせず、じっと真っ直ぐな瞳をキアランに向けている。その瞳を受けていると、下手なごまかしは通じないと思わされた。 「正直に、言ってもいいか?」 「も、もちろんよっ」 漸く絞り出されたキアランの言葉に、ティリクティアは思わず身構えた。どんな言葉が紡がれるのだろう、どんな言葉でも、聞きたいと願った以上しっかりと聞くつもりだ。 「俺はな、未だにどうするか決めかねてる。帰れるなら元の世界に帰るし、帰れない理由ができたら帰らない」 「……」 「どこか別の世界に行かなきゃならなくなったら行く」 それがキアランの性質。何でも屋という職業の性質上、提示されたものを受けてしまうのだ。流れに身を任せてしまうタイプなのである。 「でも、……そこにキアランの本心はあるの?」 少しためらったようだった。けれどもティリクティアはその問いを絞り出した。それが本当にキアランを思っているからこそ出る言葉だとわかったから、キアラン自身は不快感よりも嬉しさとこそばゆさを感じて、表情が自然、緩んでいくのを感じた。 「そうだなぁ……」 本音を言えば、元の世界に戻って依頼で探し途中だった少女を探さなくてはならないという気はある。 キアランの故郷の世界には夜がない。その世界に夜を作り秩序を取り戻さなければいけない。けれども――大人の都合で少女一人を犠牲にしていいものか。 (……) 考えるように移した視線を戻して、ティリクティアを映す。 覚醒してティリクティアに会ってからだった。そう考えるようになったのは。 (ティアに会って、俺も成長したのかもなぁ) そう考えると不思議な気分だ。親は子を育てながら、子に育てられるともいう。血は繋がっていないが『愛娘』によってキアランも育てられたのかもしれない。 「ないわけじゃないぞぉ」 ティリクティアから見たら、その場の状況に対応して方針を変えるキアランは、流されているようにみえるのかもしれない。けれどもキアランはただ『流されている』のではない。もしかしたら以前は、提示されたものを受けてからその後のことを考える……そんな流され方をしていたかもしれない。けれどもそれは必ずしも『ただ流されている』わけではないのだ。 「ティア、聞いてくれるか? 俺はな」 太腿に両手を置いて姿勢を正すと、向かいに座るティリクティアもつられたように背筋を伸ばした。お互い、なんで改まっているんだろうという気持ちもあったが、こんな席を設けている時点で今更か。 「今までどおりその時その時に来た選択肢を選ぶのも悪く無いかもしれないって思ってるんだ」 「でも……」 「ただし」 口を開こうとしたティリクティアの言葉を遮り、キアランは続ける。ティリクティアはおとなしく口を閉じた。 「選択肢を選ぶのは俺の意志だからな。後悔しないように全力で選ぶんだ。だからな、大丈夫だぞぉ?」 「……そう?」 「ああ。心配してくれて、ありがとうなぁ」 今はテーブルを挟んでいるから少し難しいが、手の届く距離にいたら頭を撫でていただろう。キアランの考えにほっと息をついたティリクティアだったが、続けられた言葉にかぁっと頬が熱くなって。 「べっ、別に心配したわけじゃ……」 照れくささも相まって、ついつい思いとは反対のことを口にしてしまう。けれどもキアランはそんなティリクティアの言葉を不快に思った様子はない。むしろ、いつもの彼女らしくて笑みが溢れる。 「心配してくれたんじゃないのかぁ? お父さんは寂しいぞぉ」 「……もうっ!」 本心も混じっていたのだが、からかったことがバレてしまった。ティリクティアはぷうっと頬をふくらませてそっぽを向いてしまう。 「そんなことしてると、可愛い顔が台無しだぞ?」 「誰のせいだと思ってるの!」 和やかに空気が流れだした。時は過ぎていく。 けれどもこうしていられる時間がきっと残り少ないことは、ふたりとも知っている。 多くのツーリスト達の故郷発見につながるかもしれない、流転機関という手がかりも見つかったのだから。 *-*-* 「ティアは、どうするつもりなんだ?」 お父さんに聞かせてくれるか? ――優しい声にティリクティアは頷く。元より、自分の決意も話すつもりでいた。 目の前のテーブルに並べられたスイーツ達がティリクティアを誘惑する。普段ならば、その誘惑に抗うことなどしないのだけど。 今日は、特別だから。 もう少し待っていて、心の中でスイーツたちに声をかける。その瞳には、誘惑に負けぬ確固たる強さが揺らめいていた。 ティリクティアが飲み物にも食べ物にも手を付けないからだろうか、キアランも最初に水を飲んだ以外はコーヒーにすら手を付けていない。 (もう、冷めてしまったんじゃないかしら) ティリクティアの頼んだ『茨の城』という名のドリンク――メロンソーダの上に、バニラの小さなソフトクリームが乗っている――は、ソフトクリームが溶け始めてだらんと頭を垂れ、グラスのかいた汗が紙製のコースターを足の形に濡らしていた。キアランのコーヒーも香りとともにカップから逃げ出していた湯気が消えて久しい。 「さっきも言った通り、私は故郷に帰るわ」 それはずっとずっと以前から決意していたことだ。 ティリクティアは巫女姫だ。故郷で託された願いがある。だから、あの場所で生きて、そして死ななければならない。 (そう、私が決めているから) 誰かに決められたのではなく、ティリクティアがそう決めているのだ。 ティリクティアを巫女姫にしたのは、人の手の及ばない何がしかの力かもしれない。けれども巫女姫で在り続けることを決めたのは、ティリクティア自身。ティリクティア自身の意志が、世界という籠から解き放たれた後も、自身を籠へ戻そうとしている。否、戻ってみせると、自分は巫女姫であるのだからと、より強く意識させた。 「……私は、故郷へと帰るわ」 それは別離の意志。道を違える決意。 キアランは彼女の意志を、言葉を否定しない。じっと、静かに彼女の言葉に耳を傾けている。 「でもね」 「!」 ティリクティアの表情が、一瞬歪んだ。けれども次の瞬間、それが嘘だったかのように彼女は笑顔を浮かべていて。だがその一瞬の表情を見てしまったからだろうか、その笑顔に寂しさと悲しさが滲んで見える。 「ここで出会った人たちと別れるのは、やっぱり寂しいわ。ここに来れたことで、初めて私は私らしく生きられた気がするの」 本来交差するはずのない人たちとの運命が交差し、道が重なりあった。その夢のような時間は、ティリクティアを『巫女姫』という殻から連れだしてくれて。 「友だちもたくさん出来たわ」 殻の中で眠っていた、まだ10歳の少女であるティリクティア。ここの人たちは、巫女姫としてのティリクティアではなく、一人の少女であるティリクティアを必要としてくれた。それは、キアランも同じ。 「とてもとても楽しい日々だった……勿論、辛いことがなかったとは言わないけれど」 脳裏に映し出されるのは、覚醒してからの日々。 自由に好きなところに出かけて、自由に笑って、自由に泣いて……ティリクティアは自分自身を、自分らしさというものを初めて認識することが出来た。 「ここに来れて、皆と出会えて……とても幸福だったわ」 「ティア」 全てを纏めてしまい、過去形で話す彼女。その決意がとても固いのは、言葉の端々から伝わってきた。けれども。 「ティアは我慢をしすぎるから、したいことは我慢せずすれば良い。お父さんはいつでもお前の味方だ」 「キアラン……」 「俺にぐらい、しっかり我儘言って良いんだぞぉ?」 心配そうに自分の瞳を覗くキアランの顔が曇って見えて、ティリクティアはポケットから出したレース付きのハンカチで目元を拭った。優しい綿素材が、水滴を吸い込んでいく。 「無理、してるんじゃないのか?」 ふるふる、首を振ると揺れる彼女の金の髪。窓から差し込む光が反射して、キラキラとキアランの視界を逃げていく。 もし、彼女が何かを守るために自分を犠牲にしようとしているのだったら、彼女が元の世界に戻るのはキアランとしては好ましくない。このまま、手元において、彼女が彼女らしくいられる環境を守ってやりたい。 けれども。 「ここで過ごした日々は、甘く、柔らかく、優しくて。私が今まで感じたことのない色々なものを感じさせてくれたわ。そして、私が知らなかったものを教えてくれたわ」 ハンカチを離した彼女の瞳は穏やかで、揺らぎが見えない。 「時折厳しく、辛い思いをさせられこともあったけれど、それ全部が、今の私を形作っていると思うの」 だからね、キアラン――父親を説得するような、子どもを諭すような、落ち着いて、芯の通った彼女の声。 「この決断は、覚醒して色々なことを経験し、色々なことを積み重ねた『今の私』のものなのよ。結論自体は昔と同じかもしれない。けれども、結論をだした『私』は違うわ」 ただ『巫女姫』という殻に戻るのではない。『今のティリクティア』が『巫女姫』という服を羽織り、一体化することで『巫女姫であるティリクティア』が出来上がるのだ。もう、自分を知らない自分ではないのだ。 (きっと、キアランならわかってくれる……!) ティリクティアの中にある確信。それはきっと、信頼と父への愛。 「……そうか」 呟いて、目を閉じるキアラン。彼女の決意が固いことはよくわかった。ならば、はじめてできた可愛い娘にキアランがしてやれることは、ひとつだけだ。ゆっくりまぶたを開き、彼女を見つめ、優しく。 「無理はするなよ? それだけはお父さんと約束してくれよ?」 彼女の意思を尊重して、彼女の背中を押してあげること、それがキアランにできることだ。 「約束するわ、ありがとう」 ティリクティアがホッとしたように笑顔をほころばせるから、キアランの胸を締め付けていた何かが緩んでいく。 「キアラン、私は貴方に会えて幸せだったわ。貴方が甘やかしてくれて、照れくさかったけれどとても嬉しかった」 ついついキアランの前では意地を張って心にもないことを言ってしまうこともあったけれど、きっとそれはすべて見透かされていただろうから。キアランを信頼していたからこそ、離れていかないとわかっていたからこそ、そうして甘えることが出来たのだと思う。 「例えどれだけ離れても、例えもう二度と会うことはなくても」 ふるりと瞳の奥が震える。まだだめ、と強く力を入れれば入れるほど、それは溢れ出ようとする。 「それでも私は貴方を父親だと、想っているわ。これからも、ずっと、ずっと」 本当のお別れの時まで、別れの涙はとっておきたいから、お願い、涙腺に祈る。せめて、全て告げ終わるまで、私の視界からお父さんを奪わないで。 「どれだけ月日が流れようとも、キアラン」 それでもじわじわと視界を狭くしていく涙。もう、いつものように、照れから誤魔化している時間はない。 「……私は、貴方を忘れない」 彼の瞳をしっかり掴んで言えた、ほっと安堵の息をついた拍子に頬を露がころころと転がって。スカートにシミを作った露の作った道を、つう……と後を追う雫達。 「ティア」 ガタリ、椅子の立てる音がティリクティアの耳を撫でていく。ふ、と視界に影がかかったと思ったら、しっかりとした大きな指が目尻に触れたので反射的に目を閉じる。 「俺も同じだ。俺も、ティアのことを忘れない」 暖かい指の腹が、そっと涙を拭きとって。 「……ほら、いつまでも泣いてっと、料理の味がわからないぞぉ?」 瞳を開けば、立ち上がってテーブル越しに伸ばされた手が、そっと戻っていくところだった。その先にいるキアランは、いつものように優しい表情で。ティリクティアと目が合うと、ニカッと笑ってくれた。 「そうね。じゃあ、食べましょうか」 ティリクティアも、その笑顔にふさわしい笑顔を返す。どんな笑顔が似合うかは、ティリクティア自身がよくわかっていた。 *-*-* 「すいませーん!」 ティリクティアが手を上げて呼ぶと、ウエイトレスはすぐにやって来た。 「ホットコーヒーのおかわりと、甘さ控えめのスイーツと、あと、メニューのここからここまで」 「まだ食うんだなぁ」 「当たり前よ!」 すでに最初に頼んだスイーツたちはティリクティアが完食している。キアランはひとくちおすそわけを貰っては、ブラックのコーヒーを口に含んでいた。それをティリクティアは見逃さなかった。 「今、甘さ控えめのスイーツを頼んだから、それはキアランのね」 「ん?」 「さっき食べたの全部、キアランには甘すぎたんでしょ? コーヒーで口直ししてるの、わかってるんだから」 それでもティリクティアはおすそ分けの「あーん」に付き合ってくれるのが嬉しくて、ついつい差し出してしまった。甘いモノはある程度は食べられると言っていたけれど、少し無理させてしまったかなと反省する。ひとりで目一杯たべるのもいいけれど、でもやっぱり同席者がいるのならば美味しいものは分かち合いたい。 「おまたせしました~。こちら、セクタンの盛り合わせになります。甘さ控えめですー」 「お」 「すごぉい」 ウエイトレスが持ってきた皿の上には、小さなココット型がいくつも乗っていて、それぞれセクタンの色をしたムースが入っていた。その上にセクタンの輪郭が描かれている。 聞くところによれば、極力着色料を使わないで作っており、フルーツの他に野菜を使ったベジスイーツも混ざっているとか。 「ねえキアラン、私にもひとくちちょうだい!」 「ひとくちだけでいいのかぁ?」 「だってそれはキアランのために頼んだのだもの。気に入ったら私の分もオーダーするわ。だから、ね?」 お願い、ときらきらの瞳で言われたら、娘を溺愛しているお父さんは勝てないのです。 「ほら」 どんぐりフォームのほうれん草を使ったムースをスプーンで掬って、向かいに座る娘へと差し出す。てっきりスプーンのまま受け渡すのかと思ったら、腰を浮かせた彼女はスプーンにぱくりと食いついて。 「ん……、おいしいわ。ほうれん草だなんて言われないとわからないもの!」 一瞬目を丸くしたキアランも、嬉しそうなティリクティアを見ていると目尻が下がる。 「こっちも食べてみるか? ジェリーフィッシュフォームは、じゃがいものムースだったか」 「それもひとくちちょうだい?」 小さく口を開けたティリクティアは、エサを待っている雛鳥のようだ。大口を開けないのは、レディとしての意識からか。 「ほれ」 優しくその口に、キアランはスプーンを運ぶ。 こんな風に過ごせるのもきっとあと少しだから。 でもだからこそ、一緒に入られる時間を大切にしていきたい。 悔いの残らないように、過ごそう。 *-*-* 「ねえキアラン」 虹色のパフェをつつきながら、ティリクティアは父を呼ぶ。 「この後、時間ある?」 「ああ」 何杯目かのブラックコーヒーを飲み干して、キアランは娘を見た。 「よかったら、一緒にショッピングしない?」 柄の長いスプーンでパフェをつつきながら顔を上げたティリクティア。 キアランがかわいい娘の誘いを断るはずなど、なかった。 【了】
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