「というわけでぇ、竜星に居る東京ポチ夫さんに会いに行きましょぉ☆」「いえそれ端折り過ぎですから川原さん」 川原撫子のセリフに吉備サクラが突っ込む。 脱線しがちな2人のセリフを要約すると、大体こういうことらしい。・雑種同盟のボーズが生きていて、竜星の東京ポチ夫に会いに行ったようだ。・アルスラで戦争が起きれば、入植している犬猫たちは自分たちを守るため、神遺兵器(核爆弾)テラー・ウラム等の兵器を使う可能性がある。・犬達の田中皇大神宮は戦争に参加しない可能性は高いが、猫が信仰を捨てた犬の神になればいい。同盟はそれで成り立っている(意訳)と嘗てボーズが言っていた以上、巻き込まれて戦争に参加する可能性は十分ある。・猫が再帰属出来て犬が再帰属できない理由についても推論しかないのでポチ夫の意見を聞いてみたい。・とにかくボーズを追いかけてポチ夫に会うぞ、だってファン(?)なんだもん。・好きなことを赤裸々に追及するのが人生だ!さあみんなで人生の追求に行こう←? 箇条書きにすれば5分かからない話を脱線に次ぐ脱線で40分近く聞かされた3人の反応はそれぞれだった。「すごいのですー、2人には羊の神の使徒の称号を授けるのです、みんな眠くてうやむやになりかけです」 眠りの神に属すると噂のあるシーアールシー・ゼロはぱちぱちと手を叩き、「やっと終わったか……女は無駄話が多い」 と狼王ロボ・シートンはそっぽを向き、「まぁまぁ、女の子は話が長いものだって。いいじゃん、そんなに急いでないんだし」 0世界一番の女タラシ兼リア充のニコ・ライニオは女の子たちにウインクした。今日も彼女をおいてのガールハントだ。「それはさておき、ゼロは竜星のその後が気になるのです。地雷を踏まないよう気を付けるのです」「犬どもは……いや『飼い犬』か。ともかくとして、『野生』だった頃を取り戻させるのに、時間はかからないと思うんだがな。犬に野性を取り戻させればいい。リーダーとなって牽引する王が必要だ。群れを率いていた俺も行ってやる」「乗りかかった船って言うじゃん。僕も犬猫たちのことは気になっていたんだよねー」ゼロ、ロボ、ニコの積極的な討論に撫子も頷いた。「そうですよねぇ、地雷は盛大に踏み抜くもの、興味はとことん追及するものですぅ☆一緒にポチ夫さんの所へ行ってみんなの目的を追求しましょぉ、おー☆」 元気よく腕を振り上げる撫子をみてサクラがそっと目を逸らした。「何故でしょう、キング・ムツ五世の金言に従って川原さんがポチ夫さんに王座決定戦を仕掛ける幻覚が見えました……」 やる気と勇気と無謀と慢心と勢いと……とにかくそんなものを道連れに、5人は一路竜星に居るはずの東京ポチ夫を目指し旅だったのだった……。 † ロストレイルがフォンブラウン市の遺跡に滑り込む。 そして、一行を犬の神官達と学者猫シュリニヴァーサが迎えた。 竜星はヴォロスに来てからというものの都市間をつなぐリニアも飛ばなくなっていた。リニアは真空の空を前提としているからだ。各都市はそれぞれ独自の生産設備を有するとはいえ、物流の滞りは住民の生活に影響を及ぼし始めている。自動車による陸上輸送には限界があり、飛行機はまだ数が少ない。 その対策として今は急ピッチで列車(それもレールを使った原始的な列車のために)網が整備され始めていた。 ロストレイルのプラットホームのあるフォンブラウン市と犬たちの総本山田中市をつなぐ路線も開通したばかりだ。 駅は、フォンブラウン市の脇にできた湖を臨む形になっている。湖の周辺にはぽつぽつと家が建ち始めている。ここは雑種同盟の拠点化が進んでいると言う話しだ。 そして、線路はかつてのグリーンベルトと並走していた。「もう、ロストレイルもこの線路を走ればいいんじゃない?」 田中市へと向かう列車が入線し、図書館のロストナンバー達は乗り換えの準備をしていた。田中市では犬たちを指導している東京ポチ夫が待っている。 そらはあいかわらず灰色に曇っており、同じく灰色の大地と区別がつかない。と、アルスラでも目撃された可変アヴァターラが湖の反対側に降り立った。特設の滑走路による空港が作られたようだ。「あれは? ボーズの?」「ええ、雑種同盟は熱心に竜刻を集めているようです。雑種たちは竜星から離れてヴォロスの大地に降りるつもりのようですね。同盟の情報のおかげで、私の研究……犬たちの神の起源についての探求……もだいぶ進みましたのでありがたいことです」 シュリニヴァーサが答える。「では、私の案内はここまでです。猫が田中市に立ち入るのを犬たちは快く思わないでしょうから。それでは」=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>川原 撫子(cuee7619)吉備 サクラ(cnxm1610)シーアールシー ゼロ(czzf6499)ロボ・シートン(cysa5363)ニコ・ライニオ(cxzh6304)
雲の中の竜星。 太陽の光は水の粒子によって拡散され、淡くベールのように広がっている。 十分に明るいが農業を行うには足りない。幻想的で不毛な風景だ。 「水の惑星ってもっといいものだと思っていたよ」 竜星では長距離列車網が新しく敷設されつつあった。 ここフォンブラウン市の地上に設けられた駅は、拡張可能なように無数のプラットホームが並んでいる。しかし、線路はまだその一部にしか使用されていない。 また、線路の一本はそのまま市の地下の遺跡へと続いていた。ロストレイルの利便を考えてである。 レール幅はロストレイルと同じものが敷設されており、台車交換無しでそのまま乗り入れることができる。壱番世界ローマ帝国の馬車から受け継がれた伝統ある幅だ。ただし、重力が小さい分だけ最小曲線半径は大きくなっている。 竜星の住民のほとんどは難民パスを発行されたロストナンバーだ。そのためにロストレイルに乗って0世界、そしてその他の世界に行く者もいる。 ヴォロス地上へと向かうための空港も一つはここにある。竜星の住民でヴォロスに帰属できた者は少なく、そのほとんどはヴォロスの大地に率先して下った者達だ。 竜星に残った犬猫に真理数はない。 湖を臨む駅。 そして、なによりも湖面全体を使った軌道都市玄武の発着場。 図書館から派遣されたロストナンバーたちと入れ替わりに、犬猫たちがロストレイルに乗り込み、世界群へと旅立っていった。 一行はロストレイルから貴賓車に乗りかえて出発を待った。 撫子、ニコ、ゼロ、サクラ、ロボの四人と一匹。 猫の形をした猫はいくらでもいるが、犬の形をした犬はこの星にはいない。そのためにロボ・シートンはちょっとした注目を浴びていた。 ここまで案内してきた、学者猫のシュリニヴァーサも同行している。 列車の窓越し、湖の向こうの空港に人影が見えた。小さくみえども、近寄れば人より遙かに大きなアヴァターラである。 ぼんやりと眺めていると、撫子が席を立った。 「みんな、ごめんなさいぃ☆ 煩悩に従って盛大に地雷踏み抜きに行ってきますぅ☆」 みなが止める間もなく、シュリニヴァーサの首を掴み外へと飛び出した。 「地雷って……それはヤバイって。僕も行くよ」 ニコが追いかけると、撫子が学者猫を食べてしまいそうな勢いで詰問していた。 「シュリニヴァーサちゃんは車持ちって聞いてますぅ☆ 湖畔向こうの雑種同盟本拠地まで最高速でお願いしますぅ☆ どうしてもボーズさんと話したいんですぅ☆」 「湖の反対側の空港なら、列車でいけますよ。B12ホームです」 吊されたままのあっけにとられたシュリニヴァーサが指摘する。 見れば、空港行きのホームには「新世界へ」とか「巡礼ならこちら」「新しい神の発見」「竜刻を拝もう」などと雑多な看板が立てられていた。 こうして、犬日本帝国の帝都田中市に向かうのはゼロ、サクラ、ロボの二人と一匹に減ってしまった。 「……何となくこういうオチになるかなって思ってました。良いです、先に行きましょう。……川原さんとポチ夫さんが犬族王者決定戦するより百万倍マシです」 予定が変更になったことで儀仗達が慌ただしくしている。 そして、列車は出発した。 長い旅になる。 一行は手持ちぶさたになったので寝ることにした。ロストレイル車内と変わらない。 † 列車がグリーンベルトに沿って帝都田中を目指している頃、撫子とニコはヴォロスの上空を飛行していた。 雑種同盟のアヴァターラは雲を抜け、南下している。その後ろをもう一機の軍用機が追従していおり、それには撫子とニコが乗っていた。 二機は高高度を飛行している。風防の向こうには蒼穹が広がり太陽がまぶしい。機体はボーズの擬神ネルソンがAIを介して操縦しているので撫子もニコも手持ち無沙汰だ。気密は完璧だが空間は狭いのでどうしても同乗者の息づかいが気になる。 撫子は、最初に操縦桿を乱暴に倒して失速しそうになったのでおとなしくしている。 空調は肌寒い位なのに、風防をコンコンと叩いてみると、熱かった。 「なんか、巻き込んでしまったみたいでごめなさいです☆」 「かわいい女性を一人で危ないところに行かせるわけには行かないよ。それにしても、よくすんなりOKもらえたね」 空港に降り立ったアヴァターラは補給を手短に済ませるとすぐに再出発するとのことだった。二人は空港においてあった飛行機に乗せられ、飛び立った。 その機体は、戦闘機と呼ぶにはずんぐり大きく、コックピットは複座であった。猫もあわせれば二人と二匹くらい乗れる同盟仕様である。二人がもう少し軍事に詳しければ、デュアルロールファイターの一種だとあたりをつけられただろう。ヴォロスでは不要と思われる対空攻撃性能は、もちろん犬猫同士の戦闘を念頭に置いたものだ。 『我々がどれだけヴォロスに順応しているか。それをあなた方には見ていただきたい』 軍用機のインコムから、アヴァターラのパイロットの声が流れる。 『あなたは、我々が竜星の民の意思を代表しているかと問われたが、微妙に違う。竜星の民の多くは進むべき道を見失っている。であるからには、私が導けるのはすでに道を見知っている者達だけだ』 これは撫子個人に対する返答だ。彼女は補給するアヴァターラの足下から連れて行けと怒鳴りあげたのだ。 犬猫たちは急速に、ヴォロスに適した兵科を軍備している。 「ホーズさん、難しいこと言ってはぐらかそうとしていませんか?」 「うん、僕もちょっと気になるんだよね。道を知っているってそれ雑種同盟だけのこと?」 『雑種同盟がそこまで狭量と思われては困る。しかし、だからといって全ての民を導けると己を過信できるほど傲慢でも無い』 「それで、竜刻石を掘ってどうするの」 『竜刻石は世界図書館と世界樹旅団の双方が着目していた物体だ。エネルギー元としては申し分ないだろう。ディラックの空では熱力学第一法則が成り立つ世界ばかりではないことを知った。我々はそれに期待している』 竜刻石は燃料を失った核融合炉に取って代わるエネルギー源として期待されている。犬猫たちはまだ、水を燃料にできる重水素核融合を実現できていない。 「巨大竜刻からなら慧竜と接触できるかも……旅団が秘匿するのはシュラク西方の大森林の内部に、後アルスラ王城地下にも……」 ニコは問う。 「エネルギー源を探すこと自体は必要だろうし悪いことではないんだろうけど、竜刻……」 ニコはふと状況の不自然さが気になった。 「どこまで竜刻について研究できてるの? あれ、ところで竜刻石を掘るとして、アヴァターラで掘るの?」 「みんなで鉱山の様子を視察に行くだけじゃないんですかぁ☆」 「と言うか、この飛行機は空港がないところに着陸できんの?」 返答の代わりにAIから警告音が発せられると空になった増槽が切り離された。 『アルスラとシュラク、どちらかと問われれば、シュラクだ』 そして、アヴァターラ……とそれに電子リンクされたデュアルロールファイターは急降下した。Gが急速に失われ内蔵が浮き上がる。 『竜の巣まであとわずかだ。これより戦闘態勢に移行する』 † 列車はグリーンベルトの脇を走る。 グリーンベルトは荒野を貫く直線状の森林だ。 ベルトの不自然な緑は魔法によるもので、フォンブラウン市で戦死した魔法少女の墓標が起点だ。一時期は世界樹との関係が取りざたされ警戒がもたれていたが、今では無害なことがわかっている。 資産を持たず、地下都市から焼け出された犬猫達はベルトがもたらす恵みに寄り添うように生きている。 景色は変わらない。 猫のシュリニヴァーサは撫子から解放されたあともしばらく不機嫌でずっと毛繕いを続けている。 彼はすぴーすぴー寝ているゼロの陰に隠れていた。 サクラはそんなシュリニヴァーサをもふれないものかと隙を窺っているが、チャンスは訪れずやきもきしていた。そして、だからといってロボ・シートンに抱きついたりしない程度の自制心は彼女には残されている。 儀仗達は列車の隅で彫像のように立っていた。 「この中でリーダーを務められるのは俺だけか。意思決定と責任が不在の集団はもろい」 反対側の車窓から見えるのはどこまでも続く灰色の荒野だ。水はあっても陽光が差さない上に土壌も貧しく不毛だ。ツンドラの方がまだ生命豊かだろう。 ただ、時折、テントのような粗末な家屋が見られ、開拓の意思が見られた。 「あのー。この星が竜星と名づけられたのはなぜなのでしょうか」 ロボが耳を立てると、白い少女がまどろみから覚めつつあった。 「ゼロならこの星をわんにゃん星と命名したのですー」 シュリニヴァーサがつぶされまいとゼロの脇から飛び出て、サクラにつかまった。ぎゅーっとほおずりされる。 猫は観念した。 「アーネストも言っていたな。俺も気になる」 「ん、やめ、他の世界では、このヴォロスの大地も、壱番世界も、ん、人々が住んでいる天体自体には明確な、んん、やめてください、名前が無いそうですね。よく考えたらそれが……ん、普通のようですね」 シュリニヴァーサがしゃべりやすいように、サクラはくすぐったりする手を止めた。 「我々が竜星の名を伝承しつづけたたのは、あの朱い月を見上げすぎたからかもしれません。考古学的に判明しているのは竜星と言う名前をつけたのは、犬と猫に知性を与えた神……と言うことになっている人間です」 「わんちゃんたちがつけた名前では無いのですか。命名者は竜星が今のようになることを知ってでもいたのです?」 「犬の神官たちはその理由についてはなにも言いませんが、私は、叢雲のような……世界を渡る乗り物としての役割を竜星に期待したのでは無いのかと仮説しています」 シュリニヴァーサはそっと列車の隅でかしこまっている儀仗達を見上げ、声を潜めた。 「犬たちは……神が与えたミッションに失敗した。私はそう考えています」 「ええー!?」 サクラが思わず声を上げ、儀仗達が色めくが、狼が威厳のある頭をおこしたらおさまった。 サクラはめんごめんごと手をあわせてささやく。 「その罪悪感が、犬たちを縛りつけている……とあなたは言いたいの?」 「はい、叢雲の中で私はそう結論づけました」 ディラックの空は広大で、遠いどこかでは、今でも滅びつつある世界はあるだろう。 † 雲は少なく、緑の森林が広がっているのがみえる。 「またしても温泉に行けないのは辛いけど、竜星とか犬猫に何かあったら温泉どころでもないし。肉球まんじゅうのおじいさんは元気してるかな……」 ニコは撫子に話しかけた。自身は飛べるだけあって急降下も楽しむ余裕はある。 「あれ、かしら☆」 その森から突き出た急峻な山があった。シュラクの地元民には、竜の巣と呼ばれている。 太古の昔からここには竜刻石が眠っていることが知られており、一部の部族は信仰の対象としていた。 しかし、竜刻石が作り出す結界から強力な呪いにより、この世のものならざる怪物が溢れ、人はおろか、エルフすら近寄ることすらできない地でいた。 ただ、竜の恩寵を受けたシロカミドリだけが、天敵から逃れて巣を作っている。 嫌な予感がした。 「ヴォロスには慧竜の遺志に従う守護騎士たちが居ます。彼らの仕事は世界を蝕む者の排除。彼らがヴォロスに入植した犬猫を侵略者認定したんです! 海龍騎は仲間が倒しに向かいましたけど、これから何度も同じ事が起こるかもしれない。私達は慧竜に私達が異端じゃないって認めさせないといけないんです」 『だから私は立ち上がることにした。ヴォロスで新たに開発した闘いというものを見せよう』 山頂は紫がかった霧に覆われて、状況が判断しにくい。 ――竜刻反応確認。 コンソールが告げる。モニターには、山頂形状がCGで構成されて竜刻を現しているとおぼしき光点が示された。 「おいおい!?」 ニコが抗議の声をあげるも、ピーーっと言う電子音と共に、デュアルロールファイターから二本の対地ミサイルが発射された。 一瞬の滞空の後にロケットモーターの尾を引いて山頂の霧に吸い込まれ、着弾の閃光が霧をまたたかせた。 そして、霧が爆発した。 雲霧結界は侵入する意識体に反応し効果範囲を拡大、機体は飲み込まれた。視界が回復すると周囲は地獄風景であった。 魔力を帯びたうねりが飛行機を取り囲み、妙にべたついた液体がキャノピーに張り付いていた。エンジンもその液体を吸い込んだのだろう、不吉な振動が伝わってきた。 機体がどこまで保つのか不安になる。 そして、薄ぼんやりとしたはるか向こうにはすり鉢状になった地面が見え、なにか巨大なものがうごめいていた。 「撫子ちゃん大丈夫?」 前席の彼女の表情は、ニコにはうかがえない。うめくような声も風切り音に遮られ、はっきりしない。 ニコはぎりぎりと頭の中を響く痛みを感じた。ニコにこれだけの影響を与えるのならば。 この結界は人を冒す。撫子は……。 力の奔流は、怒れる竜を幻視させる。 『コックピット周辺に竜刻を配置してある』 コンソールにウィンドウが開くと、くるくるまわる光点が複雑な紋様を描き出した。スピーカーがこんこんと呪文を吐き出す。 ――フレア《精神餌》放出 閃光が奔る。 ニコが思わず振り返ると、幻の竜達が空間を駆ける花火に食らいつこうとしていた。 頭を締め付けていた重圧が軽くなる。インコムからボーズの声が流れ続ける。 『アルスラでランガヤーナキは武器を売り、我々は竜刻を操つる技術を購入した』 竜刻の守護者は目を覚ます。 眼下では、のっそりと樹木が持ち上がると、人型を形成したものがせり上がってきた。間違いない。結界越しにも禍々しい波動を感じる。今まで何度も苦戦してきた竜刻の巨人だ。雑種同盟に対処できる敵とは思えない。 これもまた竜刻を守護する脅威である。 前座で撫子が苦しげにコンソールを叩いた。 「ボーズは公子で雑種同盟首領で卑怯者じゃなかったから……あの時戦死したのがボーズで、貴方は影武者だろうと思いますぅ。でも貴方は民意を体現するって聞いたからっ! 私は竜星のみんなを助けたい、私が出来る事なら何でも協力するから! だから、こんな危ないことをしないでも」 『ボーズは公子ではなかった。公子はタルヴィン。川原撫子……あなたの知っているボーズはただの雑種にすぎない』 ――竜刻転換炉オールグリーン アヴァターラは視界を横切り、竜刻巨人に同調するように人型に変形した。 大気圏用の翼が折りたたまれ、機首は切り離されて背後に格納される。そして、胴部から一対の腕が飛び出てきた。 やや華奢な両脚がヴォロスの大地をつかむと、飛んできた勢いのまま、竜刻巨人に向かって走り出した。 背にある尾翼が変形したハンガーに、右腕が伸びる。 「実体剣だとっ!?」 刃渡り10mを越す刀身。 竜刻巨人が世界異物に対して咆哮する。 原子分解 「ボーズさん!」 まともに浴びればロストレイルも消失されかねない超越。 アヴァターラは光の奔流に包まれた。 だが、奔流は、激流が岩を避けるようにアヴァターラを中心に二手に分かれた。 竜刻巨人の咆哮を凌ぎぎった刃には、竜刻石が埋め込まれていた。その一つが輝きを失っている。 アヴァターラが有線の弾頭を八方にばらまくと、それぞれが杭のように大地に刺さった。 ――カースデフレクター《呪怨偏向器》レベル5起動 防御結界だ。 ヴォロスではさほど不思議ではないが、機械が発するにはあまりに不自然。 『絶式、凜月の刀!』 戦術プログラムが、犬族の秘伝を現代に甦らせた。 アヴァターラが曲払いの刀を振るうと、竜刻の結界が薄れ、キャノピーを汚していた――樹液が吹き飛ばされ、脳内に巣くっていた圧迫感が晴れていった。 武術を使うのは竜星の民では人の形をした犬、それも神官職の一部だけである。犬は戦時には戦車を使うからだ。そして、人型兵器を使う猫は神々の遺したものには興味が無かった。 ――人造竜刻巨人試作機・チャンドラー・ビハーリー・コンバットオープン 「撫子ちゃん、脱出するよ」 ニコはAIに離脱を指示した。 そして、機体が竜刻の結界を抜けると、ニコは背もたれについているイジェクションハンドルを引いた。 緊急脱出装置。 キャノピーが開き、ニコの座っていた座席が射出される。 「撫子ちゃんは竜星に帰って! 僕は、放っておけない。このまま戦って勝っても負けても良くないことが起きる」 空中に飛び出したニコは、シートベルトを外し、結界へとダイブ。そして、落下しながら偉大な竜の姿に戻った。 竜刻巨人とアヴァターラのぶつかり合いに割り込むにはそれが必要だった。 悠々とした翼を広げる。赤い鱗が陽光を反射して輝いた。緑の森とのコントラスト。 と、長い首にぼすっと軽い衝撃がした。 「ついて来ちゃいました☆」 † 湯煙。 誰が言い出したか、儀仗が余計な気を回したのか、田中大神宮の地下に身を清めるための泉=風呂で、大神官ポチ夫との会談が行われることになった。 天然の洞窟の形を遺しつつ、石畳が玉砂利のなかを浮いて、泉という湯船への道をつくっていた。 神聖な空間である。 「私は入ってよろしいのでしょうか」 シュリニヴァーサが遠慮しようとするも、彼を抱いたサクラは手を離さなかった。 ところが、驚くべきことに、泉の脇には湯煙をうける蒸籠があって、まんじゅうが蒸されていた。 「おひさしぶりなのですー」 ゼロの挨拶を受けて蒸籠の隙間から老猫が顔をのぞかせた。 「長旅ご苦労様です。腹ごしらえでもどうぞ。……これは、ですね。犬と猫の融和を図る象徴の一つとして、ここまで猫が立ち入ることを許すようにしたのです。これもみなさまのおかげです」 みなの怪訝な顔をうけてポチ夫が説明した。 ポチ夫は浴衣を羽織っていた。なんでもそれがこの場での伝統的な服装らしい。 ゼロは、服を脱ぐと、下からは白いワンピース型の水着が出てきた。短いフリルスカートが付いている。準備が良い。 サクラはかまわず儀仗が掲げた籠にぽぽいと服を投げ込むと、バスタオルを体に巻いた。なんか怪しげな笑みを浮かべたまま、シュリニヴァーサを離さない。 ロボ・シートンは当然、そのままだ。前足をちょんちょんと水面につけて湯加減を確かめている。 湯船につかりながら談話が始まった。 エネルギー不足、ヴォロス住民との干渉、再帰属、竜星住民の不協和。問題は山積している。 シュリニヴァーサは、重ねたタオルの上で丸くなっている。結局、サクラからなでられるのは我慢することにしたようだ。 サクラは手を休めると真顔になって意見した。 「ヴォロスの慧竜に繋がる守護機能が、貴方達の機械を異世界からの侵略だと認識したんです。守護騎士の1体は仲間が倒しに行きましたけど、新しい守護騎士がまた現れるかもしれないです」 ロボが後ろ足で耳をかくと、水しぶきがたった。 「まだまだお前らはヴォロスの一員とは見なされていないようだな。ヴォロスに降りたほうが再帰属のためには良さそうではあるが」 「私はもっと時間をかけてこの世界になじむようにしたいのですが、猫はこちらの思惑を受け入れてはくれないのです」 「だったらせめて当分アルスラ方面に行かない方が良いと思います」 「はい、我々が研究するのに必要な竜刻石はアルケミシュからすでに提供を受けています。ですので、あなた方で雑種同盟を止めることができたら可能かもしれません」 「同盟だけで良いのか? 猫はお前の言うことは聞かないだろうし。血統ある犬たちも全員がお前の言うことを素直に聞くわけでもないだろう」 ポチ夫はうつむいた。 大神宮の権威は低下するばかりだ。自ら犬たちの神々はもはや存在しないと言ってしまった以上、雑種同盟のコーギーたちはもちろんのこと、従来の支配体制に不満を持っていた者達から離反していっている。 「犬どもも、王の器が必要のようだな。新しい神を探すなどという前に自分たちの中から王を見いださねば」 狼は威風堂々としている。 事実、ヴォロスの土着の信仰に頼ろうとする勢力が出つつある。彼らは慧竜の地アルケミシュを中心に台頭しつつあった。 「はい、あなたがたと懇意にされています岐阜さつきもそう言い残してヴォロスの地に降りました」 信者をはぎ取られた神官はみじめにしょぼくれるしかない。 だが、彼は今更宗旨替えするには年をとりすぎていた。 「……ポチ夫さん、抱っこして撫でても良いですか」 典型的な柴であるポチ夫の身長はサクラよりも低い。 サクラに背中から抱きしめられると、犬はとつとつと呟いきだした。 「私たちは慧竜を信仰するのが一番だと思うのです。アルケミシュともヴォロスとも繋がりが強くなりますし、慧竜ならみなの賛同を得られると思うのです。ですが……」 きまじめな犬はうつむいた。 「ですが……私には、私には出来ません!!」 そして、うおおーん。うおおーん。と感極まったかのように泣きだした。聖域に猫を招き入れるようになってもこれまでの千年の信仰は重い。 「俺は、犬には神に代わって王が必要なのではないかと思う。ここはかつての竜星のように神頼みでもしないとやっていけないような世界では無い」 ロボが哀れみ含んだ口調で、静かに語り出した。狼の声は低く重くそれでいて熱い。 「かつて、イヌは俺と同じ野生だった。今でも、イヌが野生戻ることはある。野に下れば、必要なのはリーダー、王だ」 犬たちがかくも受け身だからこそ、過酷な世界で千年の労苦に耐えることができたが、今は激動の時代である。 「ポチ夫さんが一人で背負うことはないのです」 「ポチ夫、お前で無くてもいい」 ロボは一緒に入浴している儀仗たちをみやった。 「お前達の中からでもいい、カリスマ、誇り、纏め上げる力、そういうのを磨いていくのだ」 年若い儀仗たちはロボの激励にうなずいた。 「そもそも、纏めるものがいれば、団結力も上がるしな」 † 紫に染まる結界の中では、二体の巨人が戦いを続けていた。 竜刻の騎士からは万能の力が帯を形成してほとばしり、アヴァターラはそれをかいくぐる。 巨体からは想像できない高速機動だ。 ニコは首にしがみついてる撫子に害が及ばないよう、距離を取っていた。 アヴァターラから熱蒸気を放出し、白を纏う。 竜刻の騎士が、杖をふるうと、アヴァターラの背後の大地と森に亀裂が入った。 竜刻巨人は白いもやに向かって追撃を加える。 『絶式、朧!』 いつの間にか回り込んでいたアヴァターラが、見当違いの方向を向いている竜刻巨人に斬りかかる。 幾重にもセラミックコーティングされた刃が灰色の軌跡を描く、アヴァターラのスラスターは水の粒子の尾を引いて、力が散った。 「魔力を帯びた霞!? 撫子ちゃん、僕、止めに入るから降りてくれない?」 ニコが介入するタイミングを伺っていると、撫子が呻いた。 「あれっ、見て!」 深々と亀裂の入った竜刻巨人の鎧の奥には、竜刻の心臓と、それを守るようにうごめく樹の根が見えた。 「樹の巨人……ここは、シュラク……まさか、だとしたら!」 † ロボ・シートンはわぉんと儀仗達にお湯を掛け合って遊んでいた。小さくなったゼロは、ぬいぐるみかボール、木の枝に見立てて投げるのにちょうどよい。 野生教習という言い分だ。 聖域は泳ぐのに十分なだけの広さがあり、完全な無礼講になってしまっていた。 シュリニヴァーサは水がかからないようにそっと離れている。 ぽぽいっと投げられたゼロが、ポチ夫達の所に飛んできて、ばしゃんとしぶきが跳ね上がった。 ゼロは、目をきらきらさせてポチ夫の目の前に浮かび上がった。水面から顔だけが浮いている。 「投げられた勢いで思いついたのです」 サクラはポチ夫ごしに白い少女を見下ろした。 「0世界で発電して、ここまでラピッドホールでつなげて送電するのです」 0世界からの持ち出しが禁止されているのは生物とナレッジキューブだけである。エネルギーそのものの移動は禁止されていない。 「0世界の樹海に光電池パネルを敷き詰めるのです。ゼロが巨大化すればいくらでも大きいのが作れるのです」 「ラビットホールって勝手に開けられますの?」 サクラは疑問に思う。 可能ならものすごい話しだが、図書館が容易に許可するとも思えない。 「0世界でヘリウム3をナレッジキューブから作って運んでくるのです」 「ヴォロスの宇宙空間に光電池発電衛星を打ち上げてもいいのです」 「竜星ではない……ヴォロスに元からある月まで移動できれば、ヘリウム3手に入るかも知れませんけど、どうですか?」 二人は次々と案を述べる。しかし、ボチ夫が首を横に振った。 「我々の技術ではヴォロスの宇宙にも、さらには月までいくこともできませんでした。我々のいかなる観測でも月までの距離を割り出すことができなかったのです。この世界の月は太陽と同等の階位にあるようでして、ある種の魔術を用いないと到達できない次元に存在するのではないのかと思います。そして、この世界で宇宙と言う概念に相当するものは……ディラックの空そのものと考えられます」 となれば、月におけるヘリウム3の源たる太陽風もこの世界に存在するかは怪しい。 「ヴォロスの錬金術か何かでヘリウム3作れるか試してみませんか」 「それが一番実現性が高そうですね」 ポチ夫は神妙な顔になった。 「実のところ、アルケミシュに降りた神学者達から提議されていまして、そもそも核技術はヴォロスの自然の摂理に反しており、我々は発電所がこの世界にゆがみをもたらしているのでは無いのかと危惧しています」 それが、神宮も同盟も、ヴォロス土着のエネルギー源=竜刻に着目している理由である。 それを聞いて、サクラはふと疑問に思った。 「あれれ、ひょっとして犬族で再帰属できた方は居なかったりするのですか? 猫は家につくって言うからすんなり再帰属出来たのかと思って。そこで犬族はどうなのでしょう? 良ければポチ夫さんの推論を伺いたいです」 「はい、犬で帰属できた者は知られていません」 そして、耳とヒゲを伏せ、たいそう深刻なそぶりをみせた。 「あなた方はご存じかもしれませんが、我々犬族の知恵は……成人するときに授かる人工的なものなのです」 人工と言う言葉にはどういうわけか不吉さがつきまとう。 「神は、犬に神を模した肉体、猫に神を模した精神を与えました」 犬は成人の儀式において、成長の終えた脳にチップを埋め込むことによって、一人前になる。 これによって『神の声』が聞こえるようになって、犬同士は真空の中で互いに呼び掛け合い、更にはデータベースに記憶を補助させることができるようになる。これなくしては犬族は壱番世界の犬がそうであるように3歳児程度の知能しか持てない。 「半導体工場がないと我々は次世代を作ることができないのです」 そして、ぼそぼそと、もっともロストナンバーである限りは子供は産まれないのですが……と続けた。 「全員ロストナンバーのままだと、その種族はもう増えないで減っていくばかりです。自分の再帰属方法さえ分からないけど、私の我儘ですけど……ポチ夫さん達が居なくなるのは嫌です。ですので、戦争とか関わって欲しくないです」 いたたまれない空気が流れた。 もし、世界に魂と霊と意識とモノがあったとして、犬族はその全てを持って生まれるわけではない。彼らを知的生命体としているのは科学の力だ。 そして、科学の力なしに犬族にそれを与えるにはそれこそ本物の魔法の力が必要である。それはこのヴォロスでは竜刻と呼ばれている。 † 撫子が無事とび降りたのを確認して、ニコは竜刻巨人に向かって突進した。 ヴォロスから見れば、アヴァターラの方がより異質と判断されているのだろうか、木の虚が偶然作り上げたような顔ははボーズの方に向いている。 ニコは、前足を振り上げ竜刻巨人に組み付いた。ドラゴンの鋭い爪が、樹の鎧に食い込む。 重量物がぶつかりあい大地が悲鳴を上げる。 ようやく、ニコを敵と見なした竜刻巨人が、禍々しい双眸を向けてきた。 ニコは、致命的な攻撃に備えるべく身構えた。 そこにアヴァターラが斬り込んできた。 刃の竜刻が太刀筋を霧に描き出す。 1トンを軽く超える大太刀は、竜刻巨人の肩にあたり、そのまま心臓にある竜刻まで進んだ。 鈍い耳障りな響き。 巨人の腕が、溢れ洩れる力に耐えきれず爆発するように吹き飛び、衝撃で、レッドドラゴンはたたら踏んだ。 竜刻機関をオーバーロードさせたアヴァターラは、関節か蒸気を吐き出した。 と、その時、沈黙したかに見えた竜刻巨人が、残された左腕を持ち上げ、アヴァターラに掌を向けた。 「危ない!!」 息腑に気を集中しレッドドラゴンの真価を解放する。 顎門を大きく開け、炎がくぐる。 ドラゴンブレス。 灼熱の噴流を浴びた竜刻巨人は鎧に、逃れようのない炎をまとわりつかせ炎上する。 そして、かの断末魔はアヴァターラの脇をむなしく通り過ぎ、竜刻巨人は人型を維持できなくなって倒れた。 倒れ伏した竜刻巨人はたちまち炎上した。もうもうと煙が立ちこめる。やがて心臓の竜刻を残して消し炭となるだろう。 ニコの牙の隙間からはまだ小さな炎がちろちろ漏れている。 『助けてくれて感謝する、と、ここは素直に礼を言うべき局面なのだな。残念ながらスバス・ボーズになる道は険しいようだ』 危機一髪を逃れたアヴァターラもひざまずくように駐機の姿勢を取った。 双発エンジンの片方は消失し、対戦車誘導弾も撃ち尽くしていた。もはや自力で竜星に帰還することはできない。 そして、雑種同盟の技術の精華であった刀は中程で折れていた。刃の竜刻石は死んでいる。 撫子は、まだ熱のこもる戦場に戻ってきた。 「バカなこと言っていないで降りてきてください! お仕置きですからね☆」 返事は無い。 業を煮やした撫子は、アヴァターラをよじ登り、まだ熱い鉄板に手が焼けるのも気にせず、ハッチをこじ開けた。 そこには一体の猫……の形をしたなにものかがあった。 『そうだ。私はラース・ボーズ、スバス・ボーズの遺志を継ぐ者』 コックピットのスピーカーから声が流れる。 猫の毛皮に見えたのは、ぬいぐるみのものだった。関節自由度が足りないのか動きにはしなやかさに欠ける。そして、そのビー玉のような目の奥には、CCDの長方形が覗いていた。 竜星の技術は、AIに魂を与えるレベルにない。 ここにあるボーズはなに者かが操作するただのマシーンにすぎなかった。 迎えの輸送ヘリの音が聞こえてきた。竜刻巨人の張っていた結界はもはや存在しない。 † 「ポチ夫さん。あなたたちを知性化した種族がどこかの世界にいるかもしれないのです」 「はい……」 一行は、風呂を出て休憩だ。 ポチ夫は茶色の液体の入った瓶を手に持っている。 ゼロが竜星にもたらしたコーヒー牛乳がこんなところにも入り込んでいた。 「私たちは竜星の開拓に失敗したのに彼らに逢いに行ってよろしいのでしょうか」 「成長した仔と再会するのは、素晴らしいことだ」 ロボは扇風機の前を占領して、儀仗達にブラッシングさせている。 サクラもシュリニヴァーサの毛に櫛を入れようと格闘している。 「ほらほら、シュリニヴァーサさんも遠慮しないで、くひひっ」 「スレッジライナーが13号になるのです」 犬猫たちが独自の世界間移動手段を得ることができれば。彼らは彼らの探索に出ることもできる。 0世界に竜星出身者は少なくない。無理な話ではないようにも思えた。 ロストレイルの車窓にうつる無数の世界が思い出される。 猫たちはヴォロスに順応しつつあった。 雑種同盟は、身内に与えられるだけの竜刻をかき集めようとしている。これも竜星との決別だ。 竜星の犬族は、再びディラックの空にこぎ出でることを検討し始めた。彼らは彼らの真の神々と再開を夢見ている。 流星がヴォロスの蒼穹を流れた。 巡礼の旅路でシュラクの森林に入り込んだ岐阜さつきは第四の道を見いだそうとしていた。
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