イラスト/エムゴレニズム(iczn4126)

クリエイター藤たくみ(wcrn6728)
管理番号1682-22329 オファー日2013-04-30(火) 17:36

オファーPC シーアールシー ゼロ(czzf6499)ツーリスト 女 8歳 まどろむこと
ゲストPC1 ガラ(cwrv1579) ロストメモリー 女 27歳 世界司書

<ノベル>

 其の日、と或る司書室の扉が敲かれ、あまつさえ然程待たされもせず開かれた事は、(趣深い事象か否かは別として)紛う方無き椿事だった。
 何故ならば、其処は、
「はいはーいですよう?」
 他ならぬガラの部屋だからだ。
 先ず、司書室棟に出入りする旅人は少なく無いが、此の道化者を訪ねると云う発想に到る輩は限られている。更には其の生粋の奇特者或いは気の毒な物好きが縦しんば足を運んだとしても、部屋主と来たら折につけ留守勝ちで、滅多に往き合えぬのである。
 然るに此度の来訪者は余程の強運持ちか、将又彼の雀斑女の行動原理を把握しているか、兎も角そう云った類の資質を具えた存在とみて、相違無かろう。
「アレ?」
 だが、肝心の客の姿が視得ず、ガラは扉の枠に身を乗り出した姿勢の侭、己の帽子の天辺を敲いた。すぽんだかぱふんだか何か其の様な珍奇な音が鳴って、図らずも目深となった帽子と外界の境目で、小さな白い人影がちらつく。
「えっと」
「居た!」
「えっとね」
 盆踊りの如き大袈裟な仕草で驚く不審者に対し、来訪者は動じなかった。
 善く視掛ける様な、偶にしか視ない様な。併し確かに識って居る。名前は――、
「――ゼロ」
 シーアールシーゼロ。まどろみの少女。
 何時も何時の間にか其処に居る不思議な娘は、銀色の大きな瞳を一度だけ逸らしてから、改めてガラに向け、風呂敷包みを差し出す。
「どうも、なのですー」
 俯き加減の挨拶は抑揚が無くて、聲の主は普段よりもずっと小さく視得た。


「適当に坐ってて下さいよう」
「はいなのですー」
 ゼロは奨められる侭椅子に腰掛け、借りて来た猫の様に大人しくして居た。
 室内は呆れる程殺風景だった。
 堆積した本の山と散らばった書類で一杯の執務机の外は、急須と湯飲みと茶筒が盆ごと乗った簡素なテーブルと椅子がニ脚在るのみで、後は大した広さも無いのに伽藍とした何処か其の辺に、愛用の旅行鞄が無造作に置かれているのみだ。
 やがてガラは――何を如何遣ったのか判らないが――茶支度を終えて、ゼロが持ち込んだ謎の串物を挟んで互いの前に茶を置いた。
 其の間を見計う様に。

「メイムで観たものは悪夢だったのです」

 ゼロは、ぽつんと云った。
 湯気の漂う玉露の面に視線を合わせ乍ら、けれど何も視て居ない眼で。
 決して大きくは無いのに何故だかはっきりと伝わる聲に色は無く、真向いの席でちびちびと茶を啜る唯一の聴衆に聞かせると云うよりは、独白に近い調子で。

 それは、凄絶で、残酷で、焦燥感に満ち満ちていて恐ろしい。
 でも狂おしい程蟲惑的で、美しく儚い、雄大で、遠大な。


 哀しい、物語。


 ※ ※ ※


「ゼロはどんなに大きくなっても、誰も、何も傷つけないのです」
 ゼロをゼロたらしめる、摩訶不思議な特性。
 誰も何も否定せず、破壊せず、殺傷しない。例外は世界群に存在しない。
「ですが、」
 彼の地に於いて、是が真逆に作用すると云う驚くべき神託が下った。

 即ち、一切の滅却である。

 気が付いた時点では、異変の正体が解らなくて。只只只管、ゼロを取り捲く周囲の環境の、元が何で在ったのかさえ判別出来ぬ有様で。やっと状況を呑み込んで、理を解明した其の時に、視界の隅、緩く広げた腕の遥けき彼方。
 ぱっ――と、くれなゐの花が一輪。
「その人はゼロの指先で潰れ、赤い肉片になったのです」
 ゼロは巨大化していた。
 人を、生きとし生くるもの凡てを、家を、街を、国を、其の叡智の悉くを、森を、山を、大地を、捲き込み果て無く募らせ広がって。潰して壊し、砕けば焼いて、殺して咲かせ、其の度散せて又咲かせ。又散せ。
 飽き足らず、際限無く、自動的で、高速な、無慈悲を与え賜うた。

 秘密荘厳。

「ゼロは動揺して、元に戻ろうとしたのです。でも――」
 まどろみの少女は胸に手を当て、顔を上げて今日初めて真正面からガラを視た。
 雀斑女は逆に、両手で湯飲みを口に着けた侭身を屈める様にして、俯き乍らゼロを覗き込んでいた。何処と無く気圧されて耳を下げた猫を想わせる。
「――でも大きくなる一方だったのです」
 少女も、又俯く。
 夢の中、正しく夢中に手を尽くした。だが、平素に倣い吾身を縮めんとする程、叶わぬのならせめて生者の在る場を避けんと動く程、凡ては裏目に出るばかり。
 収縮を念ずれば尚膨張した。何かを避ければ其の後ろで別の何かが壊れ、労れば傷付け、慮れば殺し。なのに。それなのに。
 死に逝く人人は、最後の時を告げる者――即ちゼロに魅了されていた。
 恍惚と恐怖の綯交ぜになった無数の生者達は、喜色を帯びた断末魔さえ上げる暇も与えられず、瞬く間に生涯を終えた。或いは存在の定義を自ら放棄した。
 傍目には「次次」等と連続性を認める事すら不可能な速度で、遂には大陸が、海が、空が、惑星が、滅び逝く。恰も、元々無かったとでも云うが如く。

 極無自性。

 空一面が狂った様な白に染まる。
 髪も肌も瞳も衣も清んだ白く真白い女の子。それが空に成ったんだ。
 如何なる高い群青も眩しい黄昏も星の瞬く暗藍も決して敵わない、綺麗で可憐で優艶な、恐怖の白。何て美しいんだろう。嬉しくて怖くて。何時迄も眺めていたくて、でも逃げ出したくて。辛くて堪らなくて、胸が張り裂けそう。焼、け、

 一道無為。

 駄目なのです。厭なのです。
 どうして巨大化を抑制できないのです?
 ゼロは安寧を望むのです。凡ての安寧を望むのです。
 ゼロに近付いては駄目なのです。ゼロを視てはいけないのです。
 ゼロの事を気にしては――、

 覚心不生。

「そのうち、誰もが」
 皆ゼロを視た――只それだけで魅了され、焼き尽くされて跡形も無く消滅した。
 何時迄も何処迄もゼロは巨大化を続け、銀河を蒸発させて宇宙の果てをほんの瞬きで突き破り易々と其の外へ到ると共に繰り返し滅亡を齎した。
「本っ当に何もかも?」
「なのです」
 幼子が不心得に自ら気付き省みて落ち込んで居る、傍目にはそう映るであろう語部がとぼとぼと聴かせる話は、子供が苛む荒唐無稽な悪夢の類に過ぎぬとも受取れ、併し凡そ容姿に似つかわしく無い論理性に基く克明な描写が為された。
 故、団子らしき食物を咀嚼し乍ら万別に貌を変化させて居たガラが次の串に手を伸ばさなかったのは名状し難い味の所為では無く、決して物分りの善い方で無い彼女にさえ、ゼロが観た情景と其の辛さが確り伝わった為だった。
 夢現の別は意味を為さぬ。ゼロは真実それを「みた」のだ。
 ガラは、弦月の如き伏目勝ちな銀瞳を同じ様なめつきで観、次の言葉を待った。

 他縁大乗。

 月が無くなっても世界は白く照らされていて。
 だから何の問題も無かった。もっと遥かな星星も砕かれて居るのだとしたら、私が居る此処も砕かれて仕舞うのだとしたら、止して欲しくも在るが、其の様子をもっと観ていたい。斯様な日に立ち会った自分の不幸を呪い、幸、運を祝、

 抜業因種。

 十の異界の百の次元の有象十種に隣り合う三つの世相、以て三千個の世界を無数に内包した無数の三千世界が、ゼロの僅かな一念のみで、或いはたった一度の視線だけで、或いはゼロの存在を認めた数多世界群が、宇宙が、銀河が、星系が、惑星が、国が、街が、人が、獣が、鳥が、蟲が、竜が、魚が、物が、塵芥、果ては不可視の大氣素粒子――皆が自ら燃え上がり、直ちに尽きて永久に消失した。

「ゼロは巨大化抑制に全力を向けていたのです。でも、」
 涅槃寂静の奥の奥を目指し、深淵の底に幾ら向えども。
 無量大数の彼方、果ては不可説不可説転を過ぎて尚、少女は留まる処を識らぬ。

 どうやっても……縮まないのですー……。
 皆壊れてしまうのです、皆死んでしまうのです。
 あの人も嬉しそうに脅え乍ら焼けて居なくなるのです。
 ゼロは大きくなるだけで暴虐の限りを尽くしているのです。
 なのに皆、皆おかしいのです。変なのです。どうして悦ぶのです?

 唯蘊無我。

「でも、」

 何だアレは<なうまく>「……綺麗ね」御迎えが来なすった『あの人も』「ヒイイイイ!」(終末の)しろおい<さんまんだ>「お母さん何処!? おかっ――」もっと傍へ(カワイイ)「あはっはははっはははは」『あの人も』<ぼだなん>何故こんな事(酷い!)「逸くころしてえ!」熱っもっと、もっとお

 ――こんな――こんな――世界が――這入って――、

 うぎっ「うへへへ」(嗚呼ァ噫阿唖)<あびらうんけん>逃げて「許さ、」

 シーアルシーゼロは如何なる環境下に於いても何ら不自由無く他者との対話が可能だ。然らば此処に到る迄、死に逝く者達の様子が一分の例外無く、ひとつ、ひとつ、遍く悉く、眼前に際するのと等しい明了さを以て把握する事が出来た。
 今や凡てはゼロ其の物。
 あのゼロが、向うのゼロが、ずっと遠い世界のゼロが、ゼロに成る。
 救われる。死ぬ。居なくなって一つになる。
 其の全智と喚ぶに足る特性は、彼我の安寧を是とする彼女にとって酷に過ぎる。
 否定、破壊、殺傷の一切を外に与えぬ存在は、其の凡てを存在のみで与えた。
 或いは一切皆苦の世界群を憂いた白魔が齎した、しじまと云う名の安寧か。

 何れ――、

「無数の世界での一人一人の破滅の様子を見て、」

 嬰童無畏。愚童持齎。

「え?」(嘘、でしょ) 畜生「善かった」ああ――「うええええん」『皆が』おお……神よ(擁き締めて)「御導きを!」救い給え(これでやっと)「し」

 異生、

「それが途切れたのです」

 無数の三千が赤く紅く瞬いても僅かな肌理一点すらも染められぬ程巨大なゼロは刹那の狭間に無限倍とも云うべき巨大化を続け。世界群の一切を其の外の何かを更に其の外の何かを捲き込んで。物を心を光を闇を、生はおろか死すらも、永久に無限に巡って戻り、描いて消しては得て喪い 滅びを滅して滅ぼし続け。

 羝――――。


 ※ ※ ※


「そしてゼロに呑み込まれ凡てが滅びたのです」
 聞き取れ乍らも消え入りそうな不思議な聲で、少女は打ち明け話を掬ぶ。
「そっか――」
 ガラは背筋を伸ばしがてら、背凭れに身を預けて天井を仰いだ。

 シーアールシーゼロは、以後も巨大化し続けた筈だ。
 只、其処は無限の巨大化が意味を為さぬ茫漠とした虚無のみが遺され――否、虚無故に文字通り何も無くなって仕舞ったとするべきだろう。ゼロ以外。
 そんな神託の夢は、如何やらゼロの心に漠然とした不安の陰を落とした。
 ゼロ式に謂うなら、ゼロの安寧を妨げたのだ。


「そう、ですねえ」
 脳裏に描いた模様の寂寥感を振り払う様に、ガラは前のめりに為った。椅子がぎっと鳴り、冷めた玉露の面が幽かに揺れた事に応じる様にゼロが面を上げたのを見て、「うん」と歳恰好に不釣合いな幼い笑顔を作る。
「話してくれて有難う。御礼にガラも一寸だけ話をします」
「ガラさんの? なのです?」
「そ。ガラの。あ、内緒にしといて下さいね」
 あんまり云っちゃ駄目な決まりだから――雀斑女は大袈裟な仕草で口元に人差し指を立てて、誰も盗聴等して居ないだろうに態態聲を潜めた。
 ゼロは大きな眸をぱちぱちさせてから、聞き分け善くこくんと頷いた。
「御口にチャックなのです」


 ※ ※ ※


 それは、現在のガラの記憶の始まり、即ち覚醒して間も無くの頃の事。

 何を如何罷り間違えた物か出身世界を放逐された(らしい)ガラは、実に幸先の好い事に早速土砂降りに見舞われ、然も其処には誰も居らず、周囲に木や建物等雨を凌げそうな何物も存在しない。無駄に開けた何も無い場所だった。
「しょうが無いから呆っとしてたんですけど、其の内寒くなって来て」
 仕舞いには自覚する程発熱し、朦朧と揺れて、やがて意識を失った(らしい)。

 何時の間にか、それは在った。
 朧げで胡乱、判然としない姿だったが、何故かガラは鎮座して居ると感じた。
「始めはひとつ……一個かなあ。だったんです」
 だが次の瞬間、それは十字を描いた五つだと認識した。否、更に四つ或いは八つの細かなそれが四十五度廻転して更なる十字を重ねて居る――曰く「米」の字に似てる――気もする。否、否、三掛ける三の九つ並んだ様にも想える――。
 何時からか、若しや最初からそうだったのか、矢張りガラには判らなかった。
 只、焦燥と恐怖を伴った不安感が、其の数だけ点った。
 数は、じわじわと、或いは一瞬で、広がる様に、
「増えたのです?」
「増えたのです。怖いのが」
 質問者の口調を真似て回答者は肯定する。「米」とやらの構成数は三十三に増し、三つ並んで、もっと並んで、最初に視た内の三番目、三掛ける三の大きな何かと成って、挙句その周囲隙間を膨大な数のそれが埋め尽くし、とうとう三十の輪を描き、又同じ物が同じ様に並んで掛けて埋め尽くし、何時迄も何処迄も埋め尽くし、なのにガラは、其の凡てを視界に納める事が出来て居た。
 焦燥恐怖不安も又、数に比例し続けた。
「流石にね、怖くて怖くておかしくなっちゃうかと想った」
 何しろ焦燥と恐怖と不安の三者と凡ての原因が無限とも思える速度と量を示し、増え続けたのだから。
 だが、無限では矢張り無くて、唐突で呆気無く、終りが訪れた。

「夢、だったのです?」
「うん」

 ガラが眼を醒ますと、其処は何らかの宗教施設――今にして想えば寺院――だった。傍らには剃髪した僧が居て、たった一本の蝋燭で侘しく照らされた室内には、ガラが寝かされた布団と、水を張った洗面器と漂う手拭しか無くて。
 果てし無い無限の夢幻から突然何も無い場所に変わった気がした。けれど焦燥と恐怖と不安の残滓は尚もガラの胸を冷し、眩暈を喚んで平常心を遠ざけた。
「何が何だかさっぱりで、兎に角必死で御坊さんに夢を伝えたんですよう」
 夢の内容を。
 とは云えガラの説明は、そもそも世界線と云う名の言語の壁に阻まれ――仮に同じ言葉を話すとて到底要領を得る物とは云い難かったが――伝達に難航した。
 それでも身振り手振りを加えて何度も繰り返して居る内に、僧は何か察したらしい。彼は神妙な面持ちで、無言の侭、壁の方を指差した。
 薄明りの中眼を凝らすと、其処には何やら花に鎮座した人らしき絵姿が無数に描かれ、けれども規則正しく並んで居る図だった。
 其の意味が全く判らずきょとんと僧の顔を視ると、彼は頷き、微笑んだ。

 そして――、


 ※ ※ ※


「何だか判んないんだけど、其の御蔭でガラは落ち着きました」
 真剣に聴き入って居たゼロは、「おお……」と感嘆の聲を漏らす。
 ガラは「そう、ですねえ」と相変わらず笑顔の侭話を続けた。
「でも、辛い事があったり具合が悪くて寝込んだりすると、今でもおんなじ夢を観るです。で、起きても矢っ張り怖いんだけど」
 そんな時はあの絵と――御坊さんの優しい顔を想い出す。
 すると落ち着くのだと、ガラは又笑う。
「だから――」
 世界司書の真意を量り兼ねてか、話を受けて自分なりの考えを纏めて居るのか――思案げな様な戸惑って居る様な顔で瞬くゼロの方へ、ガラは卓上に手をついて身を乗り出して、己の頭に載った黒くてもさもさの物体をひょいと持ち上げ、ふわふわと柔らかな銀色の髪の上に、ぽんと被せた。
「…………うんと?」
「――あげます」
 年末年始に委ねた襤褸と寸分違わぬ、けれど此方は真新しい、ガラの帽子。
「くれるのです?」
「あげるのです」
 併し、何が「だから」なのか、そういった説明は一切省かれて仕舞って居たが――と云うか想い到って居ないのかも識れないが――其の癖「代わりは在るから心配御無用ですよう」だとか当に無用な注釈は入れつつ――兎に角如何も、そう云う事であるらしかった。
 意外そうに眼を開く少女に、尚も雀斑女は自信ありげに語る。
「ゼロは、ゼロです。皆識ってますよう。ガラなんかよりずっと」
 ――だけど、ゼロはゼロを不安に想ってるみたい。
 ゼロはゼロの特性故、誰かが常にゼロをゼロだと想う事がきっと難しい。
 でも、此の帽子はゼロでは無い。だから「目印になります」とガラは云う。
 目印は節目。物事の始終を定め、引いては万物の有限を示す。
「……でも、こんなの気休めだから。だから、ガラにとって夢の終りが絵と御坊さんだったみたく、ゼロもいつか誰かからいい感じの夢の終りヲォォオイ?」
 ――すう。
「きいてないっ!」
 何時しかまどろみの少女は、まどろんでいた。帽子の暖気にあてられたか、話し疲れに依る物か――然も無くば窮極の安寧を悟り、其方へ自らを委ねたか。
 だが、それで善かったのかも識れない。
 ガラは再び腰を下ろし、おどけた仕草の手を卓上で組み、考えた。

 何時かゼロが心から誰かを求めた時、それに全力を向けた時、其の誰かを魅了するかも識れない。相手の心に自分を留める為に、ゼロは己に課された無限の制限に自ら不具合を齎すかも識れない。
 若し、そうなったら、其の時、ゼロは――。

「ありがと……なので、すー……」
 ガラがおっとゼロに視線を戻せば、矢張り少女は己の本分を全うして居た。
 すや、すや。
 穏やかなで安らかな、静かで、規則正しくて可愛らしい寝息をたてるゼロを慈しむ様に、ガラは眼を細めて。優しく、少しだけ哀しく、微笑んだ。
「……如何、致しまして」


 無垢なる心が、安寧で満たされますように。


クリエイターコメントお待たせいたしました。戦慄の悪夢をお届けします。

……えーと。
紹介文でマクロよりミクロ派と主張する藤に、まさかマキシマムを超越してインフィニティなオファーが来るとは思いませんでしたが……ひと回りして魅了されたのでお受けさせていただきました。

さておき、いかがでしたでしょうか。寝オチですみません。

夢そのものに対する分析や比較、結論は、なるべく控えたつもりです。
この後何を思われたか、どうされるかは、ひとえにゼロ様次第です。
帽子も邪魔なら置いて帰ったり、後で人知れず捨てちゃったって構いません。
すべては御心のままに。

ちなみに、ガラの夢は急遽創作したものではないのですよ。実は。
だからと言う事も無いのですが、ゼロ様の夢、楽しく書かせて頂きました。

ゼロ様にとってもお気に召すものとなっておりましたら幸いです。


この度のご依頼、まことにありがとうございました。
公開日時2013-08-08(木) 22:10

 

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