エク・シュヴァイスは司書にインヤンガイの長期滞在を申込んだ。期限はお試しということで一週間。 博物館にいるリーダー、仲間たちにそれぞれ挨拶をしていった。 仲間の悪魔がやけにしつこくあれこれと声をかけてきたが、それは耳を貸さなかった。理沙子の首絞め事件のあともこりずに彼は協力を申し出たがそれらについてははっきりと断った。 エクは一人でロストレイルに乗り込んだ。 エクはその足で向かったのはアデル家の屋敷だ。 インヤンガイでは珍しい洋風の屋敷を訪れるとメイドたちが出迎え、アポなしであることを詫びながら主人であるハワード・アデルに会いたいと頼んだ。 主人のハワードは夕方まで帰宅しないというので待つことになった。手土産にシュークリームを買ってきたのを差しだし、理沙子とキサに会いに向かった。 理沙子は応接間にエクを通し、紅茶と土産のシュークリームを振舞った。「その、アイツが悪かったな」 もごもごとエクは理沙子の首に巻かれた包帯を見て詫びを口にした。「え?」「俺の仲間のことだ」「あれは私がわざとやったことだから」 エクは咎めるような視線を向けた。テリガンから彼女の本性を聞いてないエクにとって理沙子はやはり「守るべきか弱い相手」なのだ。 エクはそのあとここに来た目的をかいつまんで話すと理沙子は鷹揚に頷いた。「本格的にここで暮らすための準備をするのね」「ああ」 本当はロストレイルを降りてから不安が黒いもやとなって胸のなかいっぱいに広がっていった。 自分は獣人だ。人の世で生きることは苦労する。それは、元の世界で外見が違うゆえの差別がいかにひどいものかは知っている。 怖くないわけではない。 けれど、ここで生きていくと決めた以上は、その傷も痛みも踏み越えていくと決めたのだ。 心配なのは理沙子が自分のせいで傷つかないかということだ。 帰属するのにはアデル家に頼ることになる。そうなればアデル家は世間からなんと言われるだろうか、化物を飼いだしたとでも噂されるのか? 仲間の一人から変身の術は学んだがそれも長時間は不可能であるし、ずっと隠してはいられない。そのちょっとした隙からアデル家を、ひいては理沙子を傷つける結果を招かないかが怖いのだ。 それにハワードには、あんなもので認められたのかもわからない。「覚悟はあるが、不安もあるんだ。あなたが俺のせいで傷つかないか、それが怖い」 悩んだがエクはシンプルな言葉に今の気持ちをすべて託すことにした。「ばかね、私の傷は私のものよ」「馬鹿でもなんでも、俺は男で理沙子は女じゃないか。守りたいと思って何が悪い」 エクが顔をあげて理沙子を睨む。理沙子はくすくすと笑っていた。「大丈夫、失敗してもいいのよ、迷惑かけても、そういうのも引き受けるって決めたから。ふふ、そもそも世間が怖かったらマフィアと結婚してないわよ」「……理沙子」「それで、変身術は学んだのよね」「ああ、多少は出来るようにしてきたが……理沙子の部下にとかげという導士がいるのだろう? そいつから学びたい」「いいんじゃないのかしら? 基礎がもう出来ているなら、とかげに今度はいかに長く出来るかのコツをインヤンガイの術から学ぶといいと思うわ。エクは飲み込みが早いみたいだし」 夕暮れとなってようやくハワードは帰宅したのを理沙子と一緒にエクは出迎えた。ハワードはエクがいてもさして驚きはしなかった。ただ冷やかな一瞥を向けて、食事にしようと口にした。 おかげで、完全に出鼻をくじかれたエクは夕飯の席についてそわそわと尻尾を動かして、話を切り出すタイミングを探していた。その助け舟を出したのは理沙子だった。「エクが仕事をほしいって、あと、とかげから導士としての技を学びたいそうよ」 ハワードが目を細めたのにエクはずっと頭のなかで考えていたことをようやく口にした。「ハワード、その前に、私はあなたに今までの非礼を詫びたい。理沙子の病室に侵入したこと、暴力を振ったこと。……ただあなたが理沙子に薬を盛ったことについては許せないと思っているが」 ハワード自身を嫌いか、好きかと言われれば、どちらでもない。いや、マフィアとして地位を築き、多くの者を守っているという点ではすごいだと純粋に感心もする。ただ人として不器用で、他者を傷つけてしまう人物であるのだ。 その牙が理沙子に向いたのにエクにとって理沙子は大切な人で、害を与える行為をするハワードと対立したに過ぎない。そこには何かを守りたいという純粋な気持ちで、ハワード個人に対して憎悪などがあるわけではない。 それにエクもまた今までの自分の出過ぎた行動を反省もしていた。「お前がお前の正しいままに動いたとしたら構わないだろう。本題に入るが、お前は私の傘下にはいってもかまわないのか?」「迷惑でなければ、この滞在期間中はあなたの命令に従うつもりだ」 エクは緊張に拳を握りしめた。何も聞かずに断られなかっただけ進歩だ。 ハワードはテーブルに肘をついて考えるように険しい顔になった。「私は君を一個の可能性のある者として扱う。君が試すというならば、この世界を知ることも大切だろう。私の支配する街で暮らしてみろ。そこで私も仕事を斡旋するが一般の者からの依頼も受けてみてはどうかな?」 「街で」「そうだ。インヤンガイの街での暮らしがどういうものなのか、それを知るにはいい機会だろう。あと仕事だが、力技はあまり得意ではないな。手先が器用で足が速い。ならば運び屋というものはどうだろう? その足と手先の器用さを動かしてものや情報、なんでも運ぶ」「運び屋か」 エクは口のなかで転がした。探偵をしていてはイマイチだったが、盗賊のときは自分の技術を活かせていたのは真実だ。 自分の速い足と器用さを活かした運び屋――扱うものは情報、物、なんでも。これならあまり表に立たなくてもいいだろうし、時間も自営業ならば自分で決められて自由に理沙子やキサに会いに行く事が出来る。「むろん、これは私の君に対して知る適正から出した提案の一つだ。インヤンガイにはいろんな仕事がある、何か別に仕事がないかと調べてみるのもいいだろう」「構わないのか?」「これはここでの生活に適用するための準備であり、試すための期間なのだろう? ならば、いくらだってチャレンジすればいいのではないのかね? 私はいくつかの会社もしているので、そこに勤め人をしてみるか? まあ勤め人ならほとんどは昼間に出ていろんな人間を相手にすることになるだろうが」 意地悪くハワードが笑うとエクはうっと口ごもった。「まぁ、はじめのうちは失敗することが仕事のようなものだ。とかげ」 ハワードの背後に控えていた三十代くらいのきっちりとした服装の男が前に出てきた。「みっちりと仕込んでやれ」「わかりました。エクさま、とかげと申します。導士として師弟を結び、今後のためにみっちり仕込みますので」「よ、よろしく、お願いする」 みっちり仕込む、というところにエクは顔を強張らせて返事をした。=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>エク・シュヴァイス(cfve6718)=========
とかげに案内された先にある建物はエク・シュヴァイスの内心抱える不安をそのまま具現化したように古いものだった。ハワード・アデルの好意から譲られたものだから贅沢はいえないが、もし台風がきたら壊れるんじゃないかと懸念を抱くような古さだ。 荷物を持ったまま建物を見上げていると、とかげがくすっと笑った。 「さぁ、なかにどうぞ」 エクは荷物を持つ手に力をいれて歩き出した。 不安はある。けれどそれを理由に動かないままではいられない。 自分はインヤンガイに再帰属を望んだのだ。そのために戦い、認められ、ここまできた。悪魔がしつこいくらいに自分に誘惑してきたが、それだって振り払ってきた。 あいつには絶対に頼らない。 自分の足で立つのだと決めたエクはとかげとなかをざっと改めたあと、ベッドのある寝室に荷物を置いた。とかげは事務所のソファで寝泊まりするというのに申し訳ない気もしたが、ここは将来的にエクが一人で住む家となる場所だからと余計な気は使わなくていいと言われた。 「そういえば奥にもう一つ部屋があるが……書斎みたいなものが」 「あれは術部屋です。術の訓練をするためのもので寝泊まりには使ってはいけません。術部屋はその主の持つ知識が詰まった大切な財産、大切にしてください」 「そうか。わかった。その、とかげ、いや、師と呼んだほうがいいな。これからよろしく頼む」 エクはとかげに弟子入りもしているので姿勢を正した。とかげは笑みを深くした。 「よろしくお願いします。それで、この一週間をどうするつもりですか」 「俺なりに考えたんだが、昼間は術をみっちりと学びたい、それで夜には出来れば仕事の宣伝をしていきたい、ずっとハワードにも頼れないからな」 「良い考えだと思います」 「それで術が少しでもまとまったら昼間でも外に出てこの世界に慣れていこうと思う」 さっそくエクはとかげと術部屋に入った。一見、書斎のような机と椅子、本棚……スペースもある空間だが窓がないため圧迫感があった。 「ここにはいくつかの術の基礎的な知識の本を置いています」 「インヤンガイのか」 「そうです」 「俺は一応、人に化けることはできる」 博物館の仲間に教えてもらった人に化ける術を使ってエクは人の姿になる。 スーツ姿の二十歳前後の優しげな青年にエクは化けた。顔はなかなかに整ってハンサムだが、その瞳が金色はどうしても変えられず、人間からはほど遠い。 それに 「エクさま、言いずらいのですが尻尾が」 「うっ」 エクの黒い尻尾がひらりと揺れる。 「……ど、どうだろうか、かなり短期間のことで完全ではないが」 「そうですね、なかなか、うまく化けていると思いますよ」 「そうか。猫又の術なんだが、インヤンガイには合わないか?」 「私は、その猫又の術というものを厳密に知らないので、少し術に触れさせていただきます。それにエクさま、大切なのはインヤンガイに合う、合わないよりもあなたの負担が少なく済む、済まないかだと思います」 「そうか」 「変化とは本来の姿を変えるもの、自分自身の確かなものがなければ下手に使用しては負担となるものです。それに私の知識として変化の術は本来あるものに化ける、つまりは眼の錯覚を利用した幻覚のようなものです」 「幻覚か」 「ええ、昔は、細胞レベルで変化する術もあったそうですが、それは仙人の技です」 「仙人?」 「術者でも人の世界を捨て、神界に生きる者を仙人といいます。私はまだまだその域には達していませんし、実際に仙人まで到達した人の話は聞いたことはありません」 「そうなのか」 「はい、どうぞ」 分厚い本が三冊差し出されたエクはぎょっとした。 「まずは知識からつけましょうか」 「し、しかし」 「知識がないまま術は使えませんよ、焦るのはわかりますが、基礎をしっかりしなくては危険です」 「……わかった」 出鼻をくじかれた気分だが、反論はしない。言われたことはきっちりとこなす。そう決めたここにきたのだ。 分厚い本とにらめっこして、とかげの座学に耳を傾ける。本だけでは難しすぎて投げ出しそうだが幸いにも大切なポイントを絞って教えてくれた。 みっとりと座学を教えられ、夕方の時間帯には精神統一を一時間したのち、くたくたなエクにとかげは粥と茶を出してくれた。消化に良いそれらで腹を満たして泥のように眠った。 二日間はそうして座学がメインだった。 二日目の夜にインヤンガイの術による変身を試してみることになった。 「朝晩の精神統一で十分に霊力は高めました。あとは猫又の術を私なりに解釈し、エクさまの霊力に合うようにアレンジしてみました。ただこの猫又の術とは元はエクさまの世界にあったものでもないのですね? そのため、知識が多少インヤンガイに偏っていますが……ここで使う技は体内にある霊力を使用し、元の性質のまま見た目だけを変化させる、幻覚と同じ質だと思います」 「幻覚になるのか?」 「おおざっぱにいえばそうです。ただこれは自分の内側から作り変えるというものです、さぁ、やってみましょうか。エクさまは多少、気の短いところがありますから、そこを少し気をつけましょう」 「う、うん」 「眼を閉じて、自分のなかの霊力を掴んで、そして考えてください」 ノラもエクのために心を砕き、自分の持つ技について教えてくれた。もともとエクは見てそれを盗む技を持っていた。 だがこれは違う、見よう見まねで盗むのは違い、本物を自分のものにしようとしているのだ。 黒いスーツにきっちりと根本まで結ばれた赤いネクタイ、艶やかな黒髪になかなかに整った顔立ちをしている青年は夜だというがサングラスをかけて酒場にやってきた。少しばかりぎこちない歩き方を横にいる男がさりげなくサポートする。 「ビールを」 「どうぞ」 カウンターでビールを受け取り、一口飲むと眉が持ち上がる。彼はちょっと躊躇ったあとビール代よりをやや多めに支払をした。 「仕事をしている」 「ほぉ、なんの」 「運び屋だ。なんでも運ぶ。ただし、犯罪になるようなものはお断りだ。とくに子どもを浚ったりするのは」 「流れ者がなかなか威勢のいい。気に入った、名前は」 「……エクだ」 「エク、あんたは何者だい」 その問いにエクは息を飲んだ。 変身を解いたエクは疲れ果ててベッドに横になった。変身はなかなかにうまいととかげは褒めてくれたし、自分もそう思う。しかし、姿を変えたところで自分は何者になれたのだろうか。 思えば、俺はそれを考えたことがあっただろうか? 人の技を盗んでばかりの自分。 エクという一人の者がどれだけの本物を持っている? わからない。 俺は何者だ? 何が出来る? 何かがひっかかり、掴めそうなのにそれはするりと逃げていく。 三日からは座学と実際の変身の術を中心の訓練を開始した。これが本格的なスタートといってもいい。 「変身とは己が何者かであるということがわからなければ、大変危険なのです。なぜなら変身してそれになりきってしまうともともとの己の心を忘れ、飲まれてしまうからです」 「わかっている」 「ではエクさま、あなたは何者ですか」 またエクは言葉を失くした。 俺は何者だ? 女は口にした。汚い獣人め! 人は言った。盗賊め。探偵は口にした。探偵見習だな。リーダーは口にした。仲間だね。 ……じゃあ、俺はなんなんだ。 名前はある。エク。だがそれは名前でしかない。俺というものじゃない。 エクは無性に理沙子に会いたくなった。この不安でたまらない気持ちを聞いてほしい、理解してほしい。 だめだ。ここで踏ん張らなくて。 焦りが心に広がっていく。 人の姿になるたびに、この姿だったら母は自分を受け入れたのか、帰属ももっとラクだったのだろうかと考えがちらつく。 鏡に映った人の姿の自分が嘲笑う。 お前、何者だ。 そうだ、獣人なんていらないだろう。 なぁ 違う、俺は――! 「エクさま!」 目の前にとかげがいて心配そうに見つめているのにエクは眼を瞬かせて、我に返った。 「あ!」 今日は昼、変身してインヤンガイの街を見て回る、という課題をこなしていた。 何度か訪れたことはあるが、日常を見て回るのだけとはなかなかに新鮮だった。依頼ではいつも凄惨なものが多いが改めて見ると人々の活気の良さ、珍しい食べ物、品といろんなものが溢れていた。 「そうだ、屋台で鏡を手にとって」 エクは咄嗟に自分を見た。術がとけている。 「ご安心ください。周りからは見えないようにしています。しかし、術にのっとられましたね」 「……乗っ取られる?」 「そうです。術とは自分の内側と対峙するものです。エクさま、あなたは何者ですか」 エクは口を閉ざす。 「その答えが、掴めればよろしいですね」 エクはゆっくりと眼を閉じた。 術の使用は心を消耗していく。けれどやめるわけにはいかなかった。昼間はインヤンガイらしいチャイナ服を見立ててもらったり、日常用品を買ってインヤンガイの人々のなかにある噂を集めていった。 夜はハワード経由で任された仕事を果たした。情報を運ぶ場合はもともとの世界にあった紙――目的を果たせば消えてしまうという代物を作り、活用した。 確実に土台を作れているがエクの心のなかにある焦燥は深まっていく。 六日目、エクは昼間に暴霊の噂を聞き、その退治に向かった。報酬はないが自分の腕試しとしてはちょうどいい相手と思ったのだ。 暗い建物のなか、笑い声がした。 お前、何者だ? 人の世で生きるために己を変える。それに抵抗がなかったわけではない、恐怖や不安がずっと心を埋めている。 それでもこの世界を選んだ。 どうして? 油断すると自問自答が心をいっぱいにする。 あの笑顔に出会えたから 彼女に会えたから 手を伸ばしてくれたから 俺を求めてくれたから 嬉しかった ただ嬉しかった、そばにいたかった。なにを残せるかなんてわからない。変えてしまうことが恐ろしい、怖い、たまらなく。けれど 俺は、嬉しかったんだ、ただ、ただ、俺の、俺でもなにかになれると思ったから、だから、ここにいたい、ここに帰りたい、……理沙子 俺を、きちんと俺にしてくれた。だから俺はここで≪俺≫になるんだ。 エクはようやく理解して、迷わず暴霊を蹴って消滅させた。 最終日の夜にエクはハワードと理沙子に七日分の成果をとかげとともに報告した。 「ご苦労、下がってかまわない」 ハワードからはそっけない言葉だった。 エクが屋敷から出ようとすると服を掴まれた。 「エク」 「理沙子」 「ちょっとゆっくりしましょうか」 庭に案内されてエクは理沙子を見る。もう自分の足で歩けている彼女は笑った。 「がんばったね」 「……まだまだだ、俺はようやく、自分というものが掴めた気がした。俺はいろんな人のマネをして、俺自身のものがなくて、だから俺は俺になるためにここにいきたいんだってわかったんだ」 「うん。テリガンは利用しないの?」 「あいつは死んでも頼らん」 「あはは、ばかねぇ。頼るのと利用することは違うわ。人脈だって立派なものよ、運だって」 エクは渋い顔をすると理沙子がくすくすと笑って、両手を伸ばしてエクの頬を包み込む。 「頭でっかちがエクね」 「そう、だろうか」 「そうよ」 「理沙子」 「なぁに」 「ありがとう。俺は、ちゃんとここに帰る。そして貴女に胸を張って、これが俺だと言える俺になって、キサを守っていけるように強くなる、俺自身の手で、失敗もする、不安もある、けれど俺は諦めない」 「うん。立派でなくてもいいの、強くなくても、あなたはあなたであればいいのよ、エク」 理沙子が笑う。この笑顔はエクが自分の勝ち得たものだ。この居場所も。 自分が何者か、まだわからない。それを手にするんだ。 事務所に戻ったエクは、息を飲んだ。建物の窓に映る自分の頭上に真理数が確かに浮かんでいた。
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