イラスト/御子柴晶(ixem2224)
インヤンガイの空気はいつもどこか淀み、冷たい。 星川征秀は眼鏡のレンズ越しに目を眇めて、大通りの陽気さからはほど遠い寂れた路地の果てを睨みつけていた。 先ほどの暴霊との一戦で、息は弾み、内側から熱が生まれ、暑いくらいだ。けれど心は震えるほど冷え切っていた。 そっと後ろを振り返るとどんな闇の色だって触れることのできない淡いピンク色の髪に水に沈んだような憂鬱げな月色の瞳をした舞原絵奈が俯いていた。自分のつま先をじっと見つめてなにかに耐えている顔をしている。 いま、声をかけたらひび割れて、砕けるかもしれないと征秀は暴霊と戦っていたときには感じなかった不安と恐怖に身を竦ませる。 また、俺は ――「征秀さん、お願いがあるんです……インヤンガイに付き合ってくれませんか? こんなこと、他の人には頼めなくて」 絵奈が思いつめた顔で頼んできたのは一カ月前。 征秀は絵奈がインヤンガイの街を一つ破壊してしまったことを知っている。彼女がそのためにひどく苦しみ、必死にあがいていること。 こっそりと調べて、一人でインヤンガイの崩壊した街も実際に見てきた。 だから理由や目的など聞かずに応じた。 ――私がサポートしますから、前線をお願いできませんか? ターミナルでタック戦を経験した絵奈は自分のなかにある魔力を使用してのサポート術を取得していた。 おかげで征秀の戦いはとてもラクになった。身体能力をアップしてもらい、結界で守られ、傷つけば癒されて。 一カ月の間で絵奈の的確にサポートには随分助けられた。 そのたびに征秀は死んでしまった最愛の女性のことを思い出す。前線で戦うあの人は強かった、けれどそれは一緒に戦う相手との呼吸を合わせることを心得、ときとしてサポート役もやってくれたからだ。 俺が若かったときは、どうだったかな。きっと、ここまでできなかった。 ただ絵奈は一度も自分から戦おうとはしなかった。ギアすらその手に持とうとはしなかった。 暴霊を倒して、自分なりの方法でインヤンガイの役に立ったはずなのに、絵奈の顔は一向に晴れることはないのはそれが自分の力ではないからだ。 自分で武器を持ち、戦うことのできない歯がゆさ。 後方支援の大切さは絵奈とてわかっているだろうが、頭での理解と心の理解は違う。 若いということはそういうことだ。 がむしゃらで、前に進む。傷ついてもまた歩き出せる。 絵奈は大切なものを目の前で奪われた。けれど心には理想を抱いて、未来を信じている。 守りたいから強くなりたいのか、失いたくないから強くなりたいのか 何か、言うべきなのだろうか。けれどなにを? どうすればいい? 差し出した腕を絵奈に伸ばせなくて迷っている己に征秀は気がついた。メイムでの夢がちらつく。血の中で泣く少女。あの未来を変えたいと思いながら恐怖に足がすくんでうごけなかった。俺は 言葉がなくて、言葉が足りなくて間違えた。 未来が見えるはずなのに、自分の未来だけはわからない。「私、これから戦士としてやっていけるのかな……」 ぽつりと絵奈は言葉を漏らす。それはこんなにも近くにいる征秀に向けられたものではない。ただ一人の悲鳴。心のなかにあるいっぱいいっぱいの気持ちが零れた透明な言葉の涙。それを見てたまらない気持ちになった。 俺は進まなくちゃいけない。絵奈も。「絵奈」「……あ、はい。すいません。もう帰るんですよね?」「いや、少し、話をしないか」「話、ですか?」 征秀は頷いた。「ロストレイルがくるまで、時間はあるから、な」 耳に遠い大通りの陽気な声が聞こえてくる。 昏い空から零れ落ちる星光を受けて、征秀は絵奈を見つめる。絵奈は征秀を見つめ返す。 一カ月。 短いようで長い時間をともにいたはずなのに、こんなにも距離は近くにあったはずなのに、はじめて、向き合うことができた。=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>舞原 絵奈(csss4616)星川 征秀(cfpv1452)=========
息を吐くと、白く濁った。 星川征秀は舞原絵奈の木の葉色の瞳を見つめて、すぐに逸らした。何か見てはいけないものを見てしまったような、やましさを感じさせるその動きに絵奈は拳を握りしめる。 知ってた。 絵奈は心の中で呟く。 私、知ってた。征秀さんが私に言いたいことがあることを。この一カ月、一緒にいて感じていた。ときどき向けてくる視線や声で、ずっと。 このときを、もしかしたら自分はずっと待っていたのかもしれない。 「絵奈、腹は減ってないか」 「はい」 ずるい。 征秀はこの期に及んでまだはぐらかして、逃げる道を探している。それを絵奈は目を逸らさないことで咎めた。 私も逃げない。 だから、貴方も。 震えるほどに怖くて、奥歯がかみ合わない。それを必死にねじ伏せて、絵奈は奮い立つ。 自分がしてしまったこと、―-街を破壊した。それから逃げたくない。逃げないと誓って、いろんな人に助けてもらった。だからここから踏み出さなくちゃいけない。 私は、 無言の責めは征秀の心の一番深く、柔らかなところを突き刺した。逃げてはいけない、ここで逃げては何も変わらない。 心の中にさまざまと浮かぶ顔がある。はじめて愛した女性、自分のことを受け入れてくれた優しい人、ターミナルで出会った友人たち 「歩こう」 そう呟いて征秀は歩きはじめる。 大通りから背を向けて暗い路地をただひたすらに。 「この街は暴霊対策で迷路みたいになっているんだ。いくつもの建物を組み合わせて、住んでいるやつでも迷うそうだ」 「そうなんですか」 「……俺はずっとこんなところにいたんだ」 進む、進む、仄暗い迷路のなかを。 黒く、淀んだ空気に怯えて体を震わせ。 「ずっと、迷い続けてきた、失敗をして、それから逃げて。けど、逃げたらますます迷い込んでいた、入り口のない場所に」 背に絵奈の気配を感じながら征秀は決意したように冷たい空気を肺いっぱいに吸い込む。目の前はただ淡い光を放つ建物が並ぶ。 「ずっと言えなかったことがある」 「私に、ですか」 「ああ。俺が臆病だったせいで向き合って来られなかったことを、全部、話したい……といっても、薄々気づいているかもしれないが、俺は元の世界で、依頼に失敗して君のお父さんを死なせてしまった」 自分でも驚くほどにあっさりと言葉は出てきた。 ずっと、留まっていた鉛をようやく吐き出せた気分だ。こんなにも重いものを自分は今まで背負っていたのかと痛烈に感じるほど、一瞬とはいえ心も体も軽くなった気がした。 「ショックで記憶を失った君を君のお姉さんに押し付け、責任も取らずに逃げた。君のお姉さんを助けられたはずなのに何もできなかった。今の君の境遇は全部俺のせいだ。今更謝って済むことではないが……」 「やっぱり」 冷やかな、水が滴るような声だった。それがやけに大きく征秀の鼓膜を打った。ぶるりっと寒さではない震えが走った。 責められる、憎まれる、怯えられる――このあとのことを考えて暗い道を歩きながら見上げた空は遠すぎて、手を伸ばしたところで届きそうにない。けど、 自分が手に入れていたのは偽りの星だったのだろうか? 覚醒したとき自暴自棄だった。むしろ、この運命を軽く呪った。依頼なんて適当にすればいい、一刻もはやく帰らなくちゃいけない そこで復讐を果たすんだ。そればかり考えていた。たとえ誰も救われなくても、それが自分のするべきことだ。破滅だってかまわない。自分がしてきた償いをするべきなのだと。 けど、 絵奈と出会えて、親しくなれて。 ターミナルで知り合えた大勢の人々のこと――自分のしたことを察しながら友人でいてくれるウィル、ロメオの連中、インヤンガイで助けたイヴ、助けてくれたエマ ダチと呼べる相手も出来た ここで自分は得すぎた。 後悔が静かな湖に小石を投げた波紋のように薄らと広がる。 俺は、馬鹿だ。 何もできないのに、逃げてばかりなのに、星を欲しがって、手を伸ばして。 征秀の進む前に壁が現れる。行き止まり。これ以上は進めない。 知っていた。ずっと、待っていた。このときを、私は。 「こっちらいきましょう」 絵奈が声をかける。征秀の目の前にある壁から少し戻ったところに人一人が通れるくらいの小道を発見した。 征秀は迷っているのに絵奈は進み始めた。そのあとを今度は征秀がついていく。 二つの足音がしじまに響く。 「貴方が、過去を隠しているのは感じてました。だから私は……正直に言うと、一時期あなたのことが信用できなかった」 「絵奈」 征秀が足を止めようとしたのを感じて絵奈は鋭い声を飛ばした。 「とまらないで、ください、お願いですから、進んでください」 「……わかった。このまま聞くよ」 「はい……でも、色々と話して、一緒に戦ってきて、この一か月過ごしてきて思った。言わなかったのは、私を傷つけないよう気遣ってくれたからなんじゃないかって、だから今はあなたのその優しさを信じたい、そう思うんです」 「優しさじゃない、俺は自分が可愛かったんだ」 「それでも、それでも私は優しさだと思った。それじゃだめですか? 誰だって、誰だって、自分が可愛い、守りたいものです! 私だって、そう、私はインヤンガイの街を破壊した。あのとき私は自分の魔力を解放して、戦うことに酔っていたんです。その結果が招くことなんて考えなかった」 自分の言葉が刃となって自分の心を突いて、切って、見えない血を流す。 苦しい つらい けれど逃げたくない。 私も苦しい、けど、じゃあ、征秀さんはどう? ずっと、ずっと後悔して生きてきたの? 一度失敗して、その解決方法が見つからなくて。 正直、征秀の告白に戸惑っているし、今更の言葉に怒りだってある、けれど心の底で感じたのはたまらない痛みだった。 どうして 今更そんなことをいうんですか! どうして。 許されたいなんて虫が良すぎる! どうして 謝られたら許すしかないじゃないですか! けど、わかる。 暗い道を歩きながら、絵奈は自分もそうなんだと思う。 自分も迷ってる。 どうしていいのかわからなくて。 誰かを守りたいという理想のためにずっとがんばってきた。それで失って、けど得たくて、覚醒したとき悲しくて辛くて落ち込んでいたが、いろんな人に出会えた。友達がいっぱいできた、依頼を一緒にこなすことで信頼したり、支えたり、支えられたりを経験した。 征秀は失敗したとき、きっと一人だった。 逃げたのは彼の罪だ。 けれどそのあとたった一人で苦しんでいたの? 自分はターミナルの友人たちがいて、受け入れてもらい、新しい道を探すのを一緒に考えてくれた。 一人じゃなかった。 「ひとりは、」 「絵奈」 「一人は、寂しいです」 きっと私も、一人だったらきっと逃げていた。立ち向かえなかった。 「……絵奈は強いよ」 「強くないです。ううん、卑怯でした」 絵奈は口元に小さな笑みを浮かべる。 「私、以前依頼でフライジングに行った時……たぶん故郷の風景を見ました。どこか懐かしい感じのする、血に染まった屋敷で、父が死んだ時の光景が……私、てっきりそれを自分がやったんだと思って自暴自棄になってました。その時あなたに相談すればよかった……私も臆病だったんです。私も同じだけ」 ほら、私も一緒。 「だから、いまは少しだけほっとしてます」 自分か大切な人を殺していなかったということは小さな救いだ。 けれど、真実は優しくない。 隠されていたから知るべきだと思うけれども、知ったときやはり傷つくのは誰でもない自分だ。 「絵奈は強いと俺は思う」 「私は、征秀さんが強いと思います。逃げなかった。私から逃げないでいてくれた」 「逃げたさ。一度は」 「けど、そのあと、ちゃんと戻ってきてくれた。引き返してくれた!」 吐き出すように絵奈は言葉を紡ぐ。 「けど俺は」 「いま、ちゃんと私と向き合ってくれてる」 征秀は苦しんでいるのがわかる。だから絵奈は言葉をぶつける。 「本当は隠したままでいれたのに、そうしなかった。それは、どうしてですか」 「……もう、間違いたくなかったんだ」 静かな声で征秀は懺悔する。 「だから、ここにいる」 絵奈は足を止めた。いくらすすんでも、先の見えない迷路。意地が悪いことに進めば進むだけ暗闇は増して、果てがないように思える。けれどどこか遠くで人の声がして、生きている料理の匂いがする。 迷ってるのは私? それとも征秀さん? 「俺は、絵奈と故郷に帰ることを望んでいた。一人でも、帰ろうと思っていた。あそこには君のお父さんやお姉さんを殺した連中がいる、復讐が、敵討ちが出来る」 まだ心の底には憎悪がある。 自分の大切にしたものを無残に奪った連中に対する怒り、なぜ絵奈が狙われたのかという謎も解決していない。 主張しながらも征秀の脳裏に浮かぶのはターミナルの知り合いたちの顔だった。 故郷では周りとは浅い付き合いだったから、ダチなんて呼べる奴はいなかった。 俺はあいつとの未来を手放したくないと思ってしまった 拳を握りしめて、目の前の絵奈を見つめる。 「もし君が帰りたいと言うなら、俺も……一緒に行く」 ようやく絵奈は振り返った。ただやみくもに先だけを見て入り口を欲しても意味がないと悟った、虚ろのような瞳がじっと見つめる。 「一緒に帰る?」 「ああ」 絵奈は困ったように笑う。 「そんな顔でですか」 「な! 俺は本当に」 「帰りたくないって顔に書いてますよ」 「……絵奈」 短い、声は多弁だった。 「征秀さんには、こっちに大切な人がいるんでしょう? 友達とか、恋人とか」 ターミナルで生きてきたからわかる。 「それに私も、帰るつもりはありません。まだ自分のしたことへの償いが終わってない……それを放棄するわけにはいかない。もしかしたら一生終わらないのかもしれませんが……」 「それは、君のお父さんや、お姉さんを殺した犯人を見つけなくてもいい理由になるのか」 眼鏡をゆっくりと外して征秀は鋭いまなざしを向ける。 「君を慈しみ、愛した相手の仇をとらなくてもいいと」 「いいえ! 正直、辛いです。私は父の記憶はありません。けど、きっと素敵な人だったんだと思います。お姉ちゃんは私のことをここまで育ててくれた、私が今生きているのは仲間たちのおかげだから……私は過去を見続けたくない、囚われて、憎しみのために動くことをきっと姉はよしとしません」 ――絵奈 ――自分に出来ることをしろ そうだ。その言葉にいろんな意味があった。 「いま、私のするべきことは、きっと償いなんです。自分が奪ってしまったものを……私みたいに泣いている人を増やさないために」 「絵奈」 「今はまだ難しいけど……いずれまた、自分の力で戦えるようになりたいんです。インヤンガイで、暴霊退治を専門の職業にしてる人もいるかもしれない。私は、できれば将来そういう仕事をしたいんです。世界は違うけど、人々の笑顔のために魔物を倒してたお姉ちゃん達のように……それなら、私は生かしてくれた父や、姉や、仲間たちの残してくれた気持ちを返せると思うんです」 今はまだ償いかもしれない。けれどもっと強くなって――なにかを守り、慈しんで、育てることができるようになれば――そのときこそ、絵奈の償いは終わり、許し、今度は与えてもらったものを返していける。 償いも罰も所詮は自分自身への言い訳でしかない。 不幸でいたくない。 苦しみのなかにいたくない。 幸せになりたい それは生き物が持つ当たり前の本能だ。それを自分に許したい。今はまだ許せないから、戦いたい。 強い意志を孕んだ瞳で絵奈は征秀を見つめる。 「もう、自分を許してあげてください。征秀さん」 「許す? 俺が、俺は」 「もう十分、私はもらいました。助けられて、教えられて、強さも、優しさも、私は本当にいっぱいもらいました」 「……っ、だって、俺は逃げたんだ。助けられなかったんだ! なにも!」 必死な悲鳴が鼓膜を打つ。救われたくて、けれども救われなくてあがいている魂が眼の前にある。 「だから謝らないで、征秀さん、私は……もうとっくに救われてる。助けてもらえてる。だからっ……謝らないでいいんです」 「俺はまだ俺が許せない。そうだ、憎い、あいつらが憎い、絵奈の父親を殺したやつが、あの人を殺したあいつらが! けどここにいて得て、そんな自分が許せない、そんなものに縛られて」 「そんなものじゃない! それは、大切なものです! その人たちがいたから今、私と向き合えているんでしょ? おねがいです、大切なものを捨てないでください。私はそんなことしてもらっても嬉しくない、だって、私は征秀さんにも幸せになってほしいから、笑っていてほしいから……私には、征秀さんの人生の責任はとれません。そんな重たいものを私に背負わせないでください」 「俺は、そんなつもりは……いや、そうだな。そうして絵奈に求めていたのは俺だな」 ぶつかりあえば苦しくて、痛いのは当たり前だ。 魂は一番弱いところで、傷つきやすい。 けれどそれをぶつけなくてはわからない。 「お願い、幸せになってください」 「……絵奈」 「犠牲になんてならないでください。私が、そんなことさせません。絶対に! 先も言いました、私はそんなの嬉しくない。私は征秀さんにも幸せになってほしいから」 「絵奈」 「私は、みんなを笑顔にしたいから、戦士になるって決めたから」 透明な涙の粒を零して必死に見つめる絵奈は出会ったころの幼い少女ではなかった。いろんなことを経験して大きくなっていた。 征秀は腕を伸ばした。 迷宮の入り口なんてどこにもない。 けれど今、確かに目の前に絵奈いる。 しっかりと腕のなかに抱きしめるとぬくもりが震えていた。 「ごめん、ありがとう、絵奈」 「……私こそ、ありがとうございます。ずっと、支えてくれて、思ってくれて……私、がんばります。何度失敗しても、がんばります。仲間がいるから、だから……征秀さんもそうです。仲間として、私のこと、見ててくれますか? まだ未熟な私のこと、お願い、してもいいですか?」 「ああ、もちろんだ。絵奈の力になりたいという気持ちは変わらない。今まで義務感で君に付き合ってきたわけじゃないし、君だって俺にとって大事な人だ。絵奈にやりたいことがあるなら俺は全力でそれを手伝う、俺が生きている限りいつまでも、な……それは俺の選んだことだ。俺の選んだ道だ。絵奈」 許したかった。 許されたかった。 迷い続けて、ずっと探していた入り口がここなのだと思った。 絵奈の入り口は征秀で、征秀の出口は絵奈だった 身が凍えるほどの静寂のなか。 確かに二人は互いの道を得た。
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