花粉症や何らかのアレルギーでなくとも、細かな粒子が鼻に入ればくしゃみが飛び出すものである。 それは胡椒のように調味料であったり黄砂のように飛来するものだったりと様々だが、ここ、ヴォロスのとある谷に広がる森には凶悪な粒子が我が物顔で大量に漂っていた。 今年大量に発生した巨大な花が原因らしいが、真偽は定かではない。なぜなら誰も近寄りたがらないからである。 その森の奥に、竜刻がひとつあった。 ……もし竜刻に鼻があったならば、数え切れないほどのくしゃみをしていたことだろう。●「無機物が羨ましいな」 書き出した資料に再度目を通しながら、世界司書のツギメ・シュタインはぽつりと呟いた。 それに返事がなかったことに首を傾げ、ああ、と付け加える。「なぜ羨ましくなるのか分からないか? ……これから行ってもらう森に着けば、否が応でも思うことになるはずだ」 片眉を下げ困ったような顔で笑い、ツギメは目的と目的地のことを説明する。 そこは昨年までは美しい森だった。動物も数多く住んでおり、避暑目的で訪れる旅人も居たらしい。 元から細かな花粉を風に乗せ受粉するという生態の巨花は確認されていた。だがそれはほんの少量で、森を突っ切る際にひとつ見れば運が良いという程度だったという。 今年はその巨花が頑張ってしまった。 元から群生する性質だったかの如く群れに群れ、花粉を飛ばし、その花粉でまるで霧のように森を覆ってしまったのだ。「記録によると数十年前にも似たことがあったようだな。今回の方が大規模らしいが」 むしろ新記録である。「この花粉はマスクでは防げないほど細かい。電気機器の隙間から侵入し故障させるほどだ。森に入れば確実に――くしゃみが出る」 沢山、とツギメは少し顔をそむけて言う。一体予言に何を見たのだろうか。 場合によってはツンとした痛みすら伴うくしゃみを連発してでも森に入らなければならないのは、ひとえにこの森に竜刻があるからだ。「竜刻は森の奥、崖を掘って作られた祠の中にある。近くの村に住んでいる住民が祀っていたようだな。すでに存在は忘れられているようだが……この竜刻が近々暴走し、その村すら飲み込む可能性が高い。回収し封印のタグを貼ってはきてくれないか」 つまり、くしゃみをしながら森の中へ入れということである。 ちなみに広さからして三十分から一時間の滞在は必要だ。「……先日、くしゃみで肋骨を折った者の話を聞いた。皆も気をつけるように」 恐ろしげなことを呟くように言い、ツギメは六人の犠――ロストナンバーに、チケットを発行した。
● 「花粉……か」 これから行く先のことを考え、谷へと下りる道を進んでいた豹藤 空牙がぽつりと言った。 花粉は花が子孫を残すために飛ばすもの、つまりは自然現象だ。 自然現象を侮ってはいけないと知ってはいるものの、 空牙にはどうしても今回の依頼が難しいものに感じられなかった。単純に森に入って竜刻を取ってこれば良いのだから。 「ふむ。世界司書殿が色々と言っておられたが、気になるでござる」 黒い艶やかな尻尾をくねらせ、彼は花粉に支配された森のことを思った。 厳として存在するそこは、まさに――地獄。 比較的花粉の薄い入り口付近では猿が群れで生活しているのが遠目に見えたが、そのどれもが鼻水をだらーんと垂らしていた。行く先もないためここに留まっているのだろうが、悲惨なものである。 「う、うわぁ。やっぱり普通の動物も暮らしてるんだ」 ニッティ・アーレンハインが口元を押さえて言う。 予想はしていたがショッキングな光景だ。他には一体どんな動物が鼻水だらーん状態になっているのだろうか。 各々自分なりの花粉対策をし、ゆっくりとその森へ近づいてゆく。 「我こそは月下の寵児夜の眷属、吸血鬼ネモ伯爵であーる!」 ふよふよと漂ってくる花粉をマントで払い除け、少年の姿をしたネモ伯爵がそう高らかに宣言する。 「そんなわしが花粉如きに屈するなど笑止千万、目にもの見せてくれる!」 「あっ、そんな何も付けずに近づいたら……」 「ええい! だから屈するはずが、な、いと……っくしゅ!」 止めようとしたサンジュが「あーあ」という顔をして、自分も袖で口と鼻を覆った。 「な、なんじゃこの花粉は、目と鼻が痛痒い、滂沱の涙が止まらぬ!」 「これ、霧かと思ったケド全部花粉なんでしょ? そりゃあくしゃみの一つや二つ出るよ~……」 言うニッティも鼻がむずりとするのを感じ、急いで魔道具「風の外套」を羽織り、目にゴーグルをしっかりと装着する。 しかし、 「……くしゅん!」 やはり出た。 風を発生させ花粉を飛ばそうとするも、次から次へと漂ってきてきりがない。しかも飛ばした花粉がどこに行くかというと、近くに居る仲間に向かってだ。多用は出来ない。 「あーもー無理無理! コレ花粉症じゃなくっても喘息起こすレヴェルでしょー!? 喘息どころかくしゃみのし過ぎで疲労骨折!? そっちもやだー!」 「あんまり喋ると余計に花粉を吸っちゃうよ~?」 「でもでも騒がずにはいられない! ……あれ、リーリスは平気なの?」 目元の涙を拭いながらニッティが首を傾げる。 「……クシュン! やだぁ、今頃効いてきたみたい……」 訊かれた瞬間、リーリス・キャロンは可愛らしくくしゃみをし、鼻の頭を擦った。 彼女ら冥族は元から飲食や睡眠、呼吸すら不要としている。そんな中人間のふりをする技術を磨いているリーリスは勉強に余念がない。 今回も「くしゃみ」という動作の精度を上げるために参加していた。そんな理由でここへ来る者は今まで居なかっただろう。 「とりあえず進まなきゃ、だよね」 「広大な森でござる。だがしかし、拙者の敷地も、そうでござった」 ずい、と空牙が前に出る。 広い所で動き回るのには慣れている。物を探すのだってそうだ。それに今回は崖や祠という目印があるではないか。 念のために黒い布をマスクにして鼻を覆っているが、ここまで警戒することではないように思う。 「とりあえず、このエリアで、危険な存在がいないか、確かめてくるで……っぐぁうっ!!」 くしゃみは事前に察知出来るものと出来ないものがある。 唐突に我が口から発せられたものに空牙は目を白黒させた。 「……どうなってるでござる??」 「ここはわたしに任せて」 まるでダメージボイスのようなくしゃみを繰り返す空牙の頭をひと撫でし、森に向かって立ったのは夕篠 真千流だった。 「何か策でもあるの?」 リーリスの問いに頷く真千流。その目は自信に満ち溢れている。 そうして彼女はおもむろに、どこにでもあるような紙袋を被った。目の部分に小さな小さな穴が開いている。 ざっ、と一歩。 ざっ、と二歩目。 そして足音を重ね、ずんずんと真千流は進んでゆき――森の中に、消えていった。 「……」 「……マスクとかしてた?」 「いや」 見る限り何も、そう、手ですら口を覆っていなかったように見える。ただ紙袋を被っただけだ。下がガラ空きの。 「……行こっか。ここに居ても、ちょっとずつ花粉から攻撃を受けるだけだよ。……っくしょん!」 そんなサンジュの言葉、もといくしゃみを合図に、一行は森の中へと足を踏み入れたのだった。 物を探すなら匂いから。 その考えが染み付いているのか、あろうことか空牙はこの花粉の中を黒豹の姿のまま匂いを嗅ぎながら進んでいた。 まあ、 「ぐぉうっ!……ぐぁおぅっ!!」 「あ、あの、大丈夫?」 「くしゅんっ……くそうっ、どうなってるでござる!」 入り口の時点であの有様だったのだ、中に入ればくしゃみの嵐は避けられない。 目を潤ませる空牙を心配するニッティも鼻を押さえたままだ。 目はゴーグルのおかげで守られているが、それで鼻のむずむずを防止出来る訳ではないため、どうしても定期的にくしゃみをしてしまう。 しかもその時大きく息を吸ってしまい、さらにむずむずする――といった悪循環だ。 「うわー、やっぱり防ぎきれてないー!」 「ふふん、甘い! 甘いな!」 ずしーん、ずしーん 地響きのような足音と共に、ネモ伯爵の声が少し上の方から聞こえた。 「あー! なんかずるい!」 ネモ伯爵は召喚したゴーレムに肩車されていた。しかもその顔には見慣れないものが付いている。 「それって……」 リーリスが目を細める。完璧に、完全に、この場では神器のように見える、ガスマスクだった。 「目の付け所がよいなリーリス! ふふ、かっこよいじゃろう。こないだ壱番世界の蚤市で手に入れたコレクションの一つが早々に役に立つとはの」 「……似合ってない」 「なにぃ!?」 リーリスの会心の一撃。 ガスマスクとは大抵大人用だ。ネモ伯爵にはちょっぴり大きいようである。 「ふ、ふん! 些細なことはよいわ。お前達にはこれをくれてやろう、鼻をつまめばちょっとはらくになるぞい」 「な、なにこれ、普通の洗濯ばさみじゃ――はくちゅっ!」 サンジュがくしゃみに言葉を遮られる。何とも憎々しい自然現象だ。 洗濯ばさみを投げて寄越し、ネモ伯爵は不敵に笑ってずしーんずしーんと進み始める。 「ほれ、早くせんと骨が折れてしまうやもしれぬぞ?」 「うぐ……」 「さあゴーレム! 邪魔するものは全て蹴散らせ、ちぎっては投げちぎっては投げイケイケGOじゃ!」 「ちょっ! それはダメだって、待っ……へくちっ、くっちゅん!」 ……最後まで言える時は来るのだろうか。 体を守る反射的な反応を生まれた時から持っていないというのは、それを学ぼうとする際に大きな壁となった。 鼻腔などの上気道に刺激を受けた場合、それは多くがくしゃみとなる。 対して気管などの下気道に刺激を受けた場合は咳である。 それを使い分けるのが難しい。咳をすべき場面でくしゃみをしそうになるのだが、同じ呼吸という動作を伴うため、普通でもそういうことは起こり得る。そのため周りの反応から違いを感じ取りにくく、「多くの場合はこの反応をする」というものを見極めにくいのだ。 ……が、少なくとも今回に関しては明らかにくしゃみが優勢なようだ。 (やっぱり回数を重ねると疲れてくるから、生気も無くなるのね……あとは呼吸音の乱れと体温の上昇。衝撃の強いものは確かに骨に打撃を与えてるかも) リーリスは仲間の反応をつぶさに観察し、時間経過と共にくしゃみの動作の性能を増してゆく。 「くしゃん……クシュン。ねぇ、まだぁ……ックシュン。リーリスこのままじゃ、鼻水死しちゃうかもぉ……グシュ」 鼻をかむリーリスにニッティが肩を竦めてみせる。 「っくしゅ! うぅ。竜刻って魔力反応あったっけ? あるならボクの「サーチマジック」で探せるんだけど……」 「竜刻って、竜の魔力が宿ってるんでしょ? それなら出来ッくしゅ! ……ううう、花粉になんか、負けるもんか……!」 袖で涙を拭うサンジュにニッティが頷く。ずっと彼の肩でぐったりとしていた“従者”カインも同じように頷いた。 「ティー、はやくはやく! かふんいっぱいでむずむず……くしゅんっ!」 「カインのためにも負けてられないね……っはっくしゅ! く、くしゃみなんかに。よし、早速試してみるよ!」 と、ニッティがサーチマジックを発動させようとした瞬間、別のものが見つかった。 見つかった、というか見えてきた。 「……」 見慣れた白いパーカーにスカート。 「……」 近所から歩いて来たのかと錯覚するサンダル。 「……あー……うん、予想は出来てたよね」 地面に広がった黒い髪。 そこには先ほど自信満々で先陣を切っていった真千流が倒れていた。 ――数分前のこと。 花粉を吸うからくしゃみが出るのだ。つまり吸うような行為、呼吸をせずに走り抜ければ問題はない、と真千流は考えていた。 単純明快だが名案だと自画自賛する。さすがにずっと息を止めているのは無理なので息継ぎは必要だが、それも一瞬のことだ。きっと大丈夫。 しかし……走ればその分酸素は消費される。 予想していたより早く苦しくなり、心の準備もままならぬ内に一回目の息継ぎ。 なるべく地面に近い場所でしたが、その瞬間に感じたむずむずは真千流の瞬間最高むずむずを記録した。 結果、くしゃみが出た。 そこからは雪崩の如し。一度やったが最後、後はくしゃみの連発連発また連発! しかもほぼ身ひとつで来てしまった。紙袋など役に立たないと身を以て知ってしまった。少し悔しくなって手足をばたつかせるが、余計に花粉が舞って大変なことに。 息も絶え絶えにぐったりとしていたところ、気がつくと目の前に仲間の顔があった。 「う……」 何か言いかけて、小さくくしゅんくしゅんっ。 ネモ伯爵がガスマスクの裏に笑顔を浮かべて近づき、小さな手のひらに乗せたものを差し出した。 青い、洗濯ばさみだった。 ● 空牙のつむじ風の術が花粉をぐるぐると巻く。 一時的にほんの少し清浄な空気がどこからともなく流れ込むが、花粉の物量に押されすぐに元の状態に戻ってしまった。 「ぐううぅ~、こうなったらこっちも威力強化でござる!」 すぅ、と息を吸い込む。 そしてむせながらくしゃみを連発する。 それでも負けずに空牙は更に強力な忍法を展開した。 「かーーみーーかーーぜーーのーー、じゅつーーーーーーーーー!!」 進行方向に向かって突風が吹く。 これまでのランダムな方向へ向かう風ではなく、一定の方向へのみ吹くという性質が功を奏したのか、花粉がさっきよりも減った気がした。 「今の内に……はくしゅっ!」 「もう戻ってきてる!?」 「っ……。誰か水を持っていない?」 洗濯ばさみは意外と痛かったので、今はポケットに入っている。 そのためハンカチくらいしか持っていない真千流は、そのハンカチを濡らして少しでも花粉を防ごうと考えた。 少なくとも息を止めながら疾走、という作戦よりは現実味があったものの――手を上げる仲間が居ない。 「豊かな森だから、湖くらいはぁ、ありそう……だけど……ックシュ!」 リーリスが鼻をすする。その鼻ももう真っ赤だ。 実はその鞄には水入り水筒がココア入りの水筒と共に収まっていたが、極限状態で人はどうするのか……それが気になり、ちゃっかり黙っていた。 リーリスはその鞄を持ち直し、目を潤ませる。 「む、無理ぃ~クシャン。も、もぉこんな状況で歩けないよぉ~クシュン」 そう言いながら近くに居たサンジュの手を取り吸精を試みるが、掴もうとしたその手はぶるぶると震えていた。 ごごご、と音がしてきそうなオーラを纏い、サンジュは辛そうに口を開く。 「……これの原因の花、潰しちゃだめかなぁ?」 「ツギメサマに怒られるかもよ?」 サーチマジックを発動させつつニッティが答える。 物騒な提案だが、同意したくなるのはなぜだろうか。ちらちらと視界に映る巨花が今なお花粉を振り撒いているからだろうか。 ぷっつん 「へ?」 「今の音――」 ふらふらしながら真千流が刀に手をかける。 「花粉を……花粉を切るわ……」 「ええ!? 待って待ってマチルー!!」 「だめー!」 ニッティとカインが全力で止めに入ったものの、その後真千流の殺気は花粉をも退ける勢いだったという。 ……くしゃみはしっかりと出たが。 数分後、サンジュは会話不能となっていた。 サーチマジックで方向は分かったものの、細かなことを調べるなら人の目も入れておきたいということでトラベルギアを使い、視力を強化したのだ。 だがその代わり、感覚が研ぎ澄まされ鼻と喉の異物感に倍苦しむこととなった。 もしかしたら空牙は初めからこんな感じだったのだろうか。しかしそんなことを考える余裕すら今のサンジュにはない。 竜刻! 竜刻さえ見つかれば! ここからもおさらば出来る!! そうすればきっと、この鼻の辛さも治まっ…… 「――ふぇぇっくちぃい!」 ……ってくれる、はずだ。 自分だけ妙なくしゃみばかり出る。そのことへの自己嫌悪が消えるかどうかの確証は、まだないが。 「!」 数分したところで岩壁が見えてきた。方向は合っている。 「つまり……ここか!!」 一番初めに反応したのはネモ伯爵だった。素早くマントを被ると蝙蝠に変身し、一直線に飛んでゆく。 祠はすぐに見つかった。扉には美しい装飾が施され、それが異彩を放っていたからだ。 「ふふふ、ワシが一着じゃ!」 「い、一着?」 慌てて追いついたニッティが何のことだと首を傾げる。 「一位の者には褒章が出るのじゃろう、お菓子とかお菓子とか甘~~いココアとか……」 「え、えっ? もしかして説明をちゃんと聞いてなかったんじゃ……」 「何、出んとな?」 「うん」 「ほんのちょっとも?」 「うん」 「ではただ働きか?」 少なくともネモ伯爵の望むものが直接出てくる可能性は低い。 「そんな殺生な!」 ――そんな反応が面白くて、しばらく持参したココアの存在を隠していたリーリスだった。 この後盛大なくしゃみによりマントに鼻水がつき、巨花が氷漬けにされそうになったのをニッティがまた必死に止めたのも良い思い出である。 ● 「花粉なんて……花なんてきらいだぁ……! もう二度とkぷっちぃ!」 サンジュはぼろぼろと涙を零しながら、来た道を戻っていた。 既に森は抜けているが、一度刺激された鼻はなかなか治まってくれない。普通の風にすら花粉が混ざっている気がして、体が勝手に反応してしまう。 ぐすっぐすっとリーリスも鼻をすすりながら、しかし確かな手ごたえを感じていた。 皆日常から切り離された極端な反応だったが、その方が学習しやすい。これでくしゃみという行動の精度も上がっただろう。 「くそう、花が未だにムズムズするでござる」 空牙は前足でその黒い鼻をさする。 「平気? 凄かったね、あの花粉は……」 空牙にティッシュペーパーを差し出し、ニッティがそう呟く。 しかし振り返るつもりはない。このまま思い出にしてしまおう。 「……」 その隣で真千流は完全に無言だった。 元からそう口数の多いほうではなかったが、気力を全て使い果たしてしまった今は一言すら発することが出来ないらしい。そんな彼女の鞄にはタグの貼られた竜刻が収まっている。 「くう、早く帰って洗濯せねば!」 ネモ伯爵はマントの汚れに唸ったが、よく見れば手足から頭の上に至るまで花粉が付いていた。叩いても叩いた衝撃で出来る静電気で寄ってくるのだ。 「そういや、レポート……」 空牙が最後にふと気付く。 今回は散々な竜刻回収作業となったが、仕事は仕事。つまりレポートが作成され誰でも見れるようになる。 「……むむむ」 レポートを読む尊敬する勇者や知人の顔が脳裏に浮かび、空牙は皆の記憶改竄を決意したのだった。 その改竄が何人に成功したかは――参加者のみぞ知る。
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