クリエイター霜月玲守(wsba2220)
管理番号1210-19879 オファー日2012-12-01(土) 16:57

オファーPC ネイパルム(craz6180)ツーリスト 男 47歳 竜の狙撃手
ゲストPC1 古城 蒔也(crhn3859) ツーリスト 男 28歳 壊し屋

<ノベル>

 ネイパルムは、視線を古城 蒔也に送る。
 依頼は、インヤンガイに落とされたロストナンバーの保護だ。運悪く、その街を仕切るヤクザのシマに転移してしまった上、彼女が何も喋らない為にスパイ容疑をかけられ、事務所の奥に幽閉されてしまったのだ。
 ただでさえ混乱の生じている転移後だ。ロストナンバーの少女の気持ちを考えると、一刻も早く、かつ着実に助けてやりたくてたまらない。
「こちらの目的は、ロストナンバーの保護だ。余計な事はするんじゃないぞ」
「余計なことだろ? 分かってるって」
 念を押すようなネイパルムの言葉に、にかっと笑いながら蒔也は返す。
 そうか、とほっとしたように息を吐くネイパルムに、蒔也は真顔になる。
「全部壊すのは、余計じゃないよな?」
「……待て」
「だってさ、ここってヤクザの事務所だろ? 別に遠慮なんて要らないと思うんだよな」
「遠慮の問題じゃない。というか、お前は遠慮をした方がいい」
「ばーん、と行ったほうが、簡単じゃね?」
 蒔也は、ばーん、と言いながら手をひらひらと振る。
「だから、そういう問題じゃないだろ。ターゲットを確保するだけで済むのだから、ばーんとする必要は無いはずだ」
「いやいや、確保だけじゃ済まないと思うぜ?」
「なら、少なくとも自陣被害を抑えるようにすべきじゃないか?」
「例えば?」
「獲物を、一体一体仕留めるとかな」
 ネイパルムの言葉に、蒔也は眉間に皺を寄せる。
「俺、それ、不得意分野」
「お前の得意分野に頼っていたら、被害が止まらん」
「超不得意」
「だから、そういう事じゃなくてな」
 ネイパルムが溜息混じりに口を開こうとすると、蒔也は「よし」と言って笑顔になる。
「細かいこと気にせず、サクッと突っ込んでサクッと全部ぶっ壊しちまおーぜ!」
「あ、おい!」
 ネイパルムの制止も聞かず、蒔也は「よし」と頷き、懐に手を入れて飛び出す。
 両の手に握られたのは、二丁のサブマシンガン。
「待て、馬鹿!」
 ネイパルムの言葉は、トトトトトト、という軽快なリズムによって埋もれてしまった。
 蒔也の前からは、悲鳴と怒号が聞こえる。
「あの馬鹿、囮に使ってやろうか!」
 舌打ちと共に、ネイパルムは吐き捨てるように言う。だが、トトトトトトという音の合間から聞こえる「重火器もってこい」だの「相手は一人だ」だのという声に、銃を握り締める。

――ターン!

 蒔也を狙っていたヤクザが、重い音と共に倒れる。ネイパルムの銃口から、ゆらゆらと白煙が昇る。
「ツンツン頭! てめえ、いい加減にしろよ!」
「いいじゃねーか、赤いおっさん。こういうドンパチも楽しいぜ?」
「楽しめるか!」
 トトトトト、タンタンタン!
 会話するように、銃口が火を噴く。
「馬鹿にしやがって!」
 ヤクザ達が、応戦してくる。最初は不意打ちだったものの、徐々に向こうもペースを掴んできたようだ。
「よし、一気にぶっ放すか!」
「馬鹿か、ツンツン頭! 事務所の奥に、ロストナンバーがいるんだぞ!」
「一気に終わるぜ?」
「いろんな意味で終わるだろうが!」
 蒔也とネイパルムは叫ぶように言いあい、同時に地を蹴る。すると、その直後に二人の居た場所がバズーカによって吹き飛ばされてしまった。
「ヒュウ、景気がいいな」
「そんなん言ってる場合か!」
 ネイパルムは柱の影に隠れつつ、辺りを窺う。
 右に二人、左に三人。
 バズーカを構える人数だ。
「あんなのを連発されたら、敵わないからな」
「一気にいっとく?」
「一気に行くな! 右二人、頼むぞ!」
「あいよっと!」
「俺は左をやる!」
「へますんなよ、おっさん!」
 二人同時に、柱の外に出る。
 蒔也はにやりと笑い、トトトト、と軽やかに右の二人を狙い打つ。
 ネイパルムは小さく「ふん」と鼻で笑い、タンタンタン、とリズム良く左の三人を打ってゆく。
「うわああああ!」
 ガラガラガラ、と五人分の悲鳴と共に、バズーカが地に落ちる。
「くそ、一旦体勢を立て直すぞ!」
「何処のモンだ、あいつら!」
 ヤクザたちは、口々に叫びながら撤退していく。ネイパルムが「ふう」と息を吐き出すと、蒔也は「な?」と言って笑う。
「なんとかなっただろ?」
「なったんじゃない、したんだよ!」
「同じだって」
「違うだろうが!」
 ネイパルムは突っ込み、ふと胃の辺りに違和感があるのに気付く。だが、一瞬だけで消えうせたので、気のせいだろうと己に言い聞かす。
「すぐに体勢を整えてくるだろうから、もっと慎重にだな」
「だからさ、一気に行こうぜ、一気に」
「それをやめろって言ってるんだ!」
「何で?」
「だーかーらー!」
 苛々しながらネイパルムが言おうとすると、蒔也はぽんぽんとネイパルムの肩を叩き、ぐっと親指を突き立てる。
「行けば分かるよな?」
「ツンツン頭ぁ!」
 一言ガツンと言ってやろうと意気込むが、既に目の前から蒔也の姿は無い。
「何してるんだよ、赤いおっさん。さっさと行こうぜ」
 ヤクザたちが下がっていったドアの方へと走る蒔也の姿を見つけ、ネイパルムは大きな溜息と共に走り出すのだった。


 ヤクザの事務所奥。突然の襲撃に、幹部クラスの者達が集っていた。
 何処の手のものかも分からない。
 それに加えて、相当の腕を持っている。
 警察かと思いきや、そういう風には見えない。
 そうして、一気に捕えている少女を見る。
「お前の仲間か?」
 組長が問うが、少女には分からない。言葉を話しているのだということはわかるが、何を言っているかまでは分からない。
 ただ、自分には分からない言葉を、ドスの利いた声で投げつけてくるだけなのだ。
 びくり、と身体を震わせる。
「答えられねぇってか」
「こっちが言ってることが、分からないのでは?」
「なら、異国語でもなんでも喋ればいいのに、何も喋らねぇじゃないか」
 少女は、一言も言葉を発しなかった。
 運が悪いことに、少女が元いた世界は、違う民族に対して厳しい処罰を与える場所だった。よって、違う言葉が聞こえた時点で、少女は己の身の危険を恐れ、口を閉じてしまったのだ。
「口を閉ざすって事は、スパイの可能性が高い」
「となると……お仲間の登場って事か」
 幹部達は意見を一致させる。少女をじろりと睨み上げると、再び少女は恐怖で震える。
「決まりだな」
「こちらのどんな情報を握っているかも分からないからな。このままお仲間に返すわけには行かない」
「加えて、お仲間達には痛い目にあわされているときている」
 幹部達は口々に言う。そうして、組長は少女を見て、にい、と笑う。
「意味、分かるよな?」
 無論、少女に分かるわけも無かった。


 ネイパルムと蒔也は、廊下を突き進む。
「いやに静かだな」
 いやな予感を抱きつつ、ネイパルムは言う。
 先程まで、ドンパチをやっていたにもかかわらず、廊下を素通りさせているのが妙に気持ち悪い。
 体勢を整える、と言っていたのに。
「別にいいじゃん、すっきりしてて」
「そういう問題じゃないよな?」
「あー確かに。もっとがっつり暴れて、すっきりいきたいよな」
「それも違うな」
「難しいクイズだな」
「クイズではないな」
 そうこうしていると、目の前に今までよりも重厚なドアが現れる。ネイパルムは銃を握り締めつつ、ふう、と息を吐き出す。
「慎重にいくぞ。様子がおかしい」
「そのおかしさでさえ、吹き飛ばせばなくなるよな?」
 真顔で言う蒔也に、ネイパルムは眉間を掴む。
「ちょっと考えてから、もう一度意見を言ってくれるか?」
 蒔也は少しだけ黙り、再び真顔で口を開く。
「吹き飛ばせばなくなると思う」
「よし、分かった。まずは中の様子を伺うぞ」
 溜息混じりに言うネイパルムに、蒔也は「了解」と答える。

――ばんっ!

 勢い良く、蒔也はドアを蹴り開ける。
「誰だ!」
「もう来たのか!」
 チャッ、という銃を構える音が響く。思わず、ネイパルムは「おいいいい!」と叫ぶ。
「俺の言うこと、聞いていたのか?」
「聞いてた! 中の様子は、開けてみなけりゃ分からないって」
「馬鹿野郎!」
「ここまできやがったか、お前ら」
 二人の言い合いの間に、組長が口を挟む。
 ネイパルムは肩をすくめつつ、室内を見渡す。
 中にいるのは、組長と幹部があわせて10人。更に奥に、小さなドアがある。
「俺達は、仲間を保護しにきただけだ。敵意は無い」
「あれだけぶっ放しておいて、そりゃねぇだろうが!」
「それは、お前らが先に手を出してきたからだ」
 いきがる幹部に、ネイパルムは言い返す。
「先に出したの、俺のような気がするけど」
「ツンツン頭、お前ちょっと黙ってろ」
 ぼそっと呟く蒔也に、ネイパルムは突っ込む。
「仲間ってのは、あのお嬢ちゃんかい? 何も喋らねぇあたり、良く訓練されてるな」
「喋らないんじゃない。喋れないんだ」
 ネイパルムの言葉に、ヤクザたちはざわめく。
「喋れない、だと?」
「更に言えば、言葉も分からない。それくらい、分からなかったのか?」
 ネイパルムの言葉に、ヤクザたちはぐっと押し黙る。
「なら、何でうちのシマにいた? 何かしらの情報を奪いに来たとしか思えないだろうが」
「不慮の事故って奴だ。本人にはどうしようも出来なかったはずだ」
 ヤクザたちはひそひそと話し出す。そうして、組長が口を開く。
「それを、信じろ、と?」
「あーもう、面倒くせぇな」
 うーん、と蒔也は伸びをしながら言う。「やっちゃおうぜ、おっさん」
「何をする気だ?」
「色々面倒くさいから、ぶっ壊そーぜ!」
 さらりと笑顔で言う蒔也に、ネイパルムは「アホか」と突っ込む。
「とにかく、彼女に会わせて貰おうか」
 組長は溜息混じりに頷き、ヤクザの一人に指示してドアを開ける。すると、中から少女が一人、飛び出してくる。
「災難だったな、もう大丈夫だ」
 ネイパルムの言葉が分かり、少女はほっと息を吐き出して笑う。分かる言葉ということは、処罰は与えられぬという事だから。
「怪我は無いか?」
「は、はい。有難うございます」
 少女は頷いて、頭を下げる。ネイパルムは頷き、組長に向き直る。
「この通りだ。この子の言葉、分からないだろう?」
「わざとじゃないのか?」
 尚も言う組長に、蒔也は欠伸をし、こっくりと頷く。
「もう、やっちゃおうぜ?」
「必要の無いことは、しない方が良い」
「面倒くさいじゃん、こいつら」
 はあ、とネイパルムは大きな息を吐き出す。
「壊すことが全てじゃない。こちらに被害が出ないようにするのが、一番だ」
 ネイパルムはそう言い、少女を連れて出ようとする。が、出口のところをヤクザたちに阻まれる。
「ただで帰れると思ってるのか、おい!」
「散々こっちに手を出しておいて、無事に帰れると思うなよ、コラァ!」
 蒔也は無言で頷き、トトトトト、とサブマシンガンをぶっ放す。
「おい、ツンツン頭!」
「ここまで言われたら、こうするしかないだろ? 絶対、最初から帰す気なかっただろうし」
「そうかもしれないが、ちょっとは考えてから動け」
 ギリギリギリ。ネイパルムの腹が、ぐぐぐぐっと痛む。
「死ねや、オラァ!」
 ヤクザの一人が、刀を振り上げて蒔也に襲い掛かってくる。それを蒔也はひらりと避けるが、また別のヤクザが今度は銃で応戦してくる。
「言わんこっちゃ無い!」
 ネイパルムは唸るように言い、少女に下がるように指示してから銃を握り締める。
 部屋の外から、ヤクザの部下達が何事かとやって来る。少女を守りながらでは、分が悪い。
「派手にやりすぎるな!」
「大丈夫だって。全部ぶっ壊せばいいだけじゃんだからさ」
 蒔也は言い、今度は廊下に向けてサブマシンガンを放つ。
「……調子に乗りやがって」
 ゆらり、と組長が動く。蒔也は、次から次に現れる廊下のヤクザたちを倒すのに夢中で、後ろがおろそかになっている。
「おい、ツンツン頭!」
 ネイパルムは応戦の手を一旦止め、どん、と蒔也の身体を突き飛ばす。
「何だよ、おっさ……」

――ぽた。

「だから、派手にやりすぎるな、と言ったんだ」
 ネイパルムは言い、血が滴る肩をそのままに、組長を殴り飛ばす。
「おっさん、俺」
「良いから、さっさと構えろ! 廊下からの進入を許すな! こちらは、俺がなんとかする!」
 ネイパルムは叫び、事務所内にいるヤクザ幹部たちに襲い掛かる。銃は既に使っていない。肉弾戦の方が、狭い事務所内では有利だ。
 トトトトト、と蒔也のサブマシンガンが廊下からの襲撃を抑え、ネイパルムの拳がヤクザ幹部たちを気絶させてゆく。
 二十分後、すっかりと辺りは静かになってしまった。
「……終わったか」
 はあ、とネイパルムは息を吐き出す。
「大丈夫かよ、それ」
 肩の傷を見ながら言う蒔也に、ネイパルムは「ああ」と頷く。
「かすり傷だ」
「無理すんなよ」
「していない。……待たせたな」
 少女に言い、ネイパルムは手を差し出す。少女は「はい」と頷き、その手を取ろうとする。その時だった。
 腹の激痛が、ネイパルムに襲い掛かる。その場に立っていることすらできず、思わずネイパルムはその場に蹲る。
「赤いおっさん!」
「……くそ、とにかく、ロストレイルに」
 腹を押さえるネイパルムを支えながら、蒔也と少女はロストレイルへと乗り込む。痛みでネイパルムは頭の中が真っ白になった。
 壊滅させてしまったヤクザ事務所のことなど、すっかり忘れて。


 後日、医務室。
 ネイパルムに襲い掛かった腹痛は胃潰瘍と診断され、即入院となってしまった。
「ストレス、か」
 原因を告げられ、ネイパルムは苦笑する。
「昔は胃潰瘍なんざならんかったが……俺も年か」
 溜息混じりに一人ごちると、ばんっ、と勢い良くドアが開く。
 現れたのは、ツンツン頭。
「よ、おっさん」
「帰れ」
「そう言うなって。えっと、やっぱり入院といえば、林檎だよな。ウサギにするか?」
 からかうような口調で言う蒔也に、ネイパルムは腹を押さえる。
 また、胃が痛むような気がした。

<ウサギ林檎を見つめつつ・了>

クリエイターコメント この度は、プラノベを発注してくださり、有難うございます。いかがでしたでしょうか。
 少しでも気に入ってくださると、嬉しいです。
 それでは、またお会いできるその時まで。
公開日時2012-12-28(金) 23:20

 

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