オープニング

 町のどこよりも一番初めに春が訪れる丘に、桜の大樹が腕(かいな)を広げている。あんなに小さく硬かった蕾も、今やこれ以上ない程に薄紅色の花と変じ、鮮やかな花吹雪を散らす。
 その木の根元、そこに女は座し、幹へ寄り添うように体を預けていた。
 伏せた長い睫毛の儚く切なく震える様が、彼女の不鮮明な存在に拍車を掛ける。
 春の弱々しい日差しにすら溶けてしまいそうな細い肩を僅かに揺らして、嗚咽の声が漏れた。
 いつだって女が想うのは、ただ一人。
 誰よりも愛しい男だけ。
 無論、彼も愛してくれているものだと思っていたし、現に逢引きの度、優しい声音で甘い夢を囁いてもくれた。
 けれど、夢は所詮真実にはなり得ない。
 尽くすだけ尽くして、そして襤褸布のように、いとも簡単に捨てられたのだ。「今度、結婚するんだ」などと簡単な言葉で、全ての好意を両断されたこの哀れな女は。
 天上を仰ぐ彼女の目から、幾粒もの滴が滑り落ちた。

 世界はこんなにも清らかな光で溢れているというのに、私の心には届かない。
 手を伸ばしてみようとも、掴み掛けた幸福の欠片は、いつだってもっとずっと遠く、追い付けない所へ行ってしまう。
 憎い、憎い。
 蒼穹の目映さが憎い。
 優美に咲き乱れる花々が憎い。
 何もかも……
 何もかもを奪ったあの男が憎い。
 幸せになどさせてやるものか。
 殺してやる、殺してやる。

 懐に忍ばせた物へ指先でそっと触れると、女は瞳に暗い炎を宿らせた。
 尽きることなき薄紅の嵐は、人知れず想いを乗せて街を渡り行く。


「……女心って複雑だな」
 後頭部を掻き毟りながら、世界司書キリヤ・キルシェが分かった風な口を叩く。
 彼から齎された依頼は、取り急ぎ、ヴォロスの南東に位置するレーヴリアという町へ赴き、暴走しそうな竜刻を回収して来て欲しいというもの。
「竜刻自体は、柄に煌びやかな装飾の施された短剣で、その刀身から淡い桃色の光を放っているから、一般的な剣との識別は容易いと思う」
 そこまで説明すると、勘の良い何名かが首を捻る。
「そう。その短剣こそが、竜刻を削って作られた代物。要は魔力を帯びた武器なんだ」
 唇に笑みを浮かべて見せるも、すぐに打ち消して
「ただ、問題はそれ程単純な話じゃないんだよな」
 嘆息する青年司書の言葉は、いつになく歯切れの悪いものとなっていた。

 現在、レーヴリアでは祭が催されている。
 冬の魔物を追い払い、春の女神を迎える神事で、丁度、町のシンボルでもある丘の上の桜が開花する頃に行われることから、『桜祭』と呼ばれているらしい。
 祭の最終日には町の住人らの扮した魔物と、それを退ける聖剣の舞姫達、それから神輿に乗った女神の仮装行列が町中を練り歩く。その様はなかなかに壮観で、近隣の町や村からも見物人が訪れる程なのだが、
「『導きの書』には、祭の混雑に乗じて、竜刻が殺人の道具に使われるという予言が記されているんだ」
 被害者となるのは、町の領主の息子ジェイクと、女神役の娘カナ。派手好きなジェイクが祭の最後に、カナとの婚約発表を行うらしい。
「けど、これがまた、とんでもないドラ息子でさ」
 親の権力と富を盾に、やりたい放題の我儘放題。昼間から酒に博打は勿論のこと、巷では女誑しで有名なのだとか。
「今まで彼との間に浮き名を流した女性の内の誰かが竜刻を所持する者、詰まり犯人であることまでは判明しているんだけど、個人を特定するに至るだけの情報がない」
 しかも言葉巧みなジェイクの毒牙に掛かった女性は数知れず。かといって、町中の娘を片っ端から尋問して歩くわけにもいくまい。
「それよりも、被害者らの護衛に回るとか、もっと確実な手段を講じるべきかも知れないな」
 まあ、そこら辺は回収方法含め皆に任せるから、と控え目に付け加えてから、『封印のタグ』を差し出す。見た目こそ荷札のような形状であるが、竜刻の魔力を安定させ、暴走を抑える効果のあるアイテムである。
「竜刻入手後、即刻これを貼って欲しい。殺人事件と相俟って、折角の祭が滅茶苦茶になっちまったら洒落にならないからな」
 ひとたび暴走を引き起こしてしまえば、レーヴリアは壊滅的な被害を被ることであろう。最早、一刻の猶予も許されないのである。
「それから、これは依頼とは直接関係ないんだけど……」
 キリヤは思案げに眉を顰め、一呼吸分の沈黙を置いてから、ロストナンバー達を見回した。
「カナの姉、ミナが妹を酷く心配しているらしい。出来れば、彼女のことも気に掛けてやって欲しいんだ」
 当然だ。大切な妹が悪評立つ男との婚儀をあれよという間に取り決めてしまったともなれば、姉としては心中穏やかではないはずである。
「はっきり言って、男の身から出た錆びなんだよな。でも、竜刻だけ回収してお仕舞い、なんて見て見ぬ振りは出来ないし」
 と、キリヤは申し訳なさそうに『導きの書』を指先で軽く叩く。
「厄介な仕事には違いないけど、頼むよ」
 そう締め括って、世界司書は頭を下げるのであった。


「素敵……」
 ほう、と一つ溜息を洩らすと、カナは姿見の前でくるりと回って見せる。年頃の乙女らしい仕草に、柔らかな薄紅のドレスの裾が優雅に舞った。桜祭の最終夜を飾る仮装行列には実に相応しい逸品と言えよう。不器用なカナに代わり、姉のミナが拵えたものだ。
 勤勉で聡明な姉と、ちょっぴりドジで愛嬌たっぷりの妹。
 天気の良い日でも、家の中で一日中読書をして過ごすミナとは違い、カナは一度町に繰り出してしまえば、夕刻になっても戻らないと度々周囲を心配させたものだった。
 双子なのに、同じのは容姿ばかり。どうしてこうも正反対に育ったのかと、皆が冗談交じりに笑う。
 けれど、カナにとって姉は誰よりも掛け替えなき存在。
 何を犠牲にしようとも、彼女だけは守らねば。そのような使命感染みたものは、いつの頃から抱くようになったのか。
「姉さん、本当に有り難う。大好きよ」
 振り返り、満面の笑みで姉に抱き付くカナの目尻に、涙が浮かぶ。
 四年前に両親が他界し、以降ずっと二人で頑張って来たのだ。その言葉に偽りはない。
 ミナもまた、小さな笑みで妹の想いに応えた。
「…………私もよ」

 殺してやる。殺してやる。
 私から全てを奪ったあの男と。
 私から彼を奪ったこの女を。
 殺してやる――

品目シナリオ 管理番号383
クリエイターあさみ六華(wtbv7387)
クリエイターコメント こんにちは。あさみ六華です。
 今回の舞台は、ヴォロス南東の町、レーヴリア。
 竜刻の暴走に加え、色恋沙汰の後始末という、心情重視の依頼となります。
 また、移り行く季節の雰囲気も、併せてお楽しみいただければと思います。

 補足として。
 世界司書の説明以外のOP箇所(女の独白部分など)はPC様方の知り得ぬ情報となります。その点を踏まえた上で、各々がどういった考えを抱き、アクションを起こすのか、登場人物達とどのように関わるのかをお書き下さい。
 行動に寄っては犯人と戦闘になる可能性もあります。相手の能力は所詮、一般人の域を出ませんので、少しでも腕に覚えのある方でしたら命の危機に晒されることは、まずないでしょう。

 尚、プレイング次第で結末は如何様にも変化致しますこと、予めご了承下さいませ。

 それでは、ご参加お待ちしております。

参加者
灰燕(crzf2141)ツーリスト 男 28歳 刀匠
片岡 渚(cwcz7925)コンダクター 女 26歳 迷える会社員
ロディ・オブライエン(czvh5923)ツーリスト 男 26歳 守護天使
一ノ瀬 夏也(cssy5275)コンダクター 女 25歳 フリーカメラマン

ノベル

◆丘
 その丘から望んだならば、レーヴリアという街の素性を容易に知ることが出来た。
 他国との交易の要となる北西へ伸びる街道、旬になれば多大な恩恵が齎されるのであろう豊かな緑で覆われた山々。
 住民の表情は健やかで、交わす声音は頗る明るい。町外より訪れる祭の見物人も合わさって、益々の賑わいを見せる街並みであった。
 しかし、とある一画だけが、未だ生命の目覚めぬ白の季節を彷彿とさせるように、時間が止まっている。
 桜を見上げる女の瞳には、退廃とも取れる火が静かに揺らめいていた。そのような雰囲気が凡そ、花を愛でる者には似つかわしくない。だから0世界で聞き及んでいたミナの大まかな容姿を思い起こすまでもなく、片岡 渚(かたおか・なぎさ)は一目で件の人物であると認識したのだった。
 不規則な花弁の舞を目で追いながら、
「桜は、冬の寒さを経験しないと開花出来ないと聞いたことがあります。この魅力は私達人間の知り得ぬ厳しさを越えたが故の賜なのでしょうね」
 ミナの隣に並ぶ。
 彼女は驚いたように目を瞬かせるも、見物客の一人と解釈したのだろう。渚の柔和な笑みも手伝って、戸惑いはやがて払拭されたようだった。
「……不思議でした。桜を目にする誰もが、当たり前みたいに幸せそうな笑顔を浮かべる。でも、私はこんなにも切なげに散る様を見ていると、胸が締め付けられてしまうんです」
 樹は自らの姿形を以て、生きることの苦楽を人々に周知させているのだろう、とミナは語る。
「きっと肝心なのは、美しいものを美しいと思えるか否か、なのでしょうね」
 風に靡く漆黒の髪を片手で押えて、渚は慰めるようにミナへ言い聞かせた。
 土から出でて、また還る花の一生、そこから滲む切なさ、孤独さは人が歩む道に通じるものがある。だとすれば、彼女は自分の人生をも桜に重ねているのだろうか。

 薄紅の花が大地へと落ちて行く様は宛ら、大樹がその身を削り、魂の欠片を散らしているようで、
「こりゃあ、見事じゃのォ」
 他人に関心を示さぬ灰燕(かいえん)も、自然美には心を揺さ振られたらしい。鋭利な光を湛える双眸を和らげ、仰ぐ。
 粋に着崩した着物を無駄のない体躯に纏い、ふうわりと引っ掛けた袖が美丈夫の艶やかな色気に拍車を掛けていた。手にした番傘は、異界の桜にすら良く似合う。
 惜しむべくは灰燕自身、惚れた腫れたの厄介事にはとんと無頓着で、この時も美味い酒でもあれば、花を肴にささやかな宴とでも相成ったであろうに、と軽く思考を飛ばしていた。
 それは兎も角、桜の木といえば、町のあちらこちらに植わっていたが、無数の花で梢を撓らせるこの大樹の立ち姿は格別。成程、神が降りるに相応しい存在感であった。
 ターミナルの己の屋敷にも咲いているため、灰燕にとって桜は取り分け馴染み深い。尤も、彼のために在るその桜は白銀の焔と紛う花色。だからこそ、薄紅の舞を気紛れに見てみたくなったのである。
 ふと、人々の気付かぬ僅かな空気を気取(けど)って、灰燕は端正な眉目に苦渋を滲ませる。
 片膝を折り、止まぬ花吹雪の一片を掬い上げて、握り締めた。
「……花が、泣いとるわ」
 馴れ合うだけの下らぬ人の情になぞ興味はないが、花本来の美しさを損なう要因があるとすれば、傍観を決め込むわけにもいくまい。
 再び立ち上がり、番傘を持ち直すと、灰燕は踵を返して丘を下る。
 手の中には、未だ桜の花弁が握られたまま。


◆思
 ジェイクが殺されるのは自業自得としか言い様がない。しかし、予言通り事が進めば、カナまでも殺されてしまう。それは余りにも不幸な結末といえよう。
 ロディ・オブライエンは仮装行列に参加する者達の控室として、広場に特設されたテント内にて、祭の実行委員会会長トニーとの交渉中であった。
 祭の最中、不審な輩が現れないとも限らぬだろう。ならば、警護として雇ってはくれまいか、と。
「報酬はいらぬ。祭を見物出来れば、それで良い」
 ほぼボランティアに近いロディの申し出に、トニーは肉付きの良過ぎる腹を無意識の内に撫でながら、
「まあ、あんたが望むなら、こちらとしては構わんがね」
 実際問題、スリや引っ手繰りの類は毎年何件か発生していると言う。腕に覚えのある有志で結成された自警団連中が交代で見回ってはいても、手は足りていないのが現状だ。
「だがな、こんなこと言うのも何だが……あんた、腕っ節は立つんだろうな?」
 顔を顰めて疑惑の目を向けるトニー。ロディの繊細な体はスリーピース・スーツを着込んでいても、十分に見て取れる。
 この反応は、ロディとて予期していたことだ。幾ら無報酬でも、どこの馬の骨とも知れぬ人物を警護に任命したとあっては、実行委員長の名誉に関わるのだろう。
 ロディは手近な籠に盛られた林檎を取ると、徐に頭上へと放る。
 それは、電光石火の早業であった。
 ブーツから抜き放ったナイフを優雅に振るえば、次に卓上の木皿を反対の手に添える。そのままロディに受け止められた林檎達は、可愛らしいウサギさん型に切り揃えられ、皿の上で鎮座していた。
 技の出来に言葉を失ったトニーは、ただ目を丸くするばかり。
 代わりに、見当外れな方向から拍手が起こった。
「素敵!」
 少女の如き純粋な賛辞を呈する女は、動く度に裾が舞う桜色のドレスを纏っていた。
「やあ、カナちゃん。今年の女神様は、また一段と綺麗だな」
「もう嫌ね、トニーおじさんったら」
 はにかんだような微笑をトニーに向けて見せると、ロディへはスカートを軽く摘まんで礼儀正しく会釈する。
「貴方のような素晴らしい方に警護として参加していただけるのなら、この上なく心強いわ」
 この女性こそがミナの双子の妹、カナである。
 彼女は屈託のない笑顔が似合う、気立ての良い女性であった。今も自身が命を狙われているとも知らず、朗らかな笑みを浮かべてロディへ右手を差し出している。
 決まりだな、と握手を交わせば、交渉は成立だ。トニーに視線を移すと、これはもう同意するしかないといった具合に、何度も頷くのであった。

「カナさん、ちょっと良いかしら?」
 遠慮がちな声の方へ目を向けると、ポラロイドカメラを首から下げた女性がにこやかに進み出る。
「私はカメラマンの一ノ瀬 夏也(いちのせ・かや)。桜祭は初めてなんだけど、女神役のあなたに同行して、是非とも写真を撮らせてもらいたいの」
 カメラマン? シャシン??
 聞き慣れない単語に戸惑うカナ。
 自然豊かなヴォロスは機械よりも、魔法などの不可思議の力に溢れる世界である。少なくとも、この地方にカメラは存在しない。
「あ、ちょっと待って!」
 慌ててカメラを構えると、軽快な音と共にシャッターを切る。カメラからゆっくりと吐き出された写真を差し出す夏也。幾許もせぬ内に、そこには顔を強張らせたカナの姿が浮かび上がった。
「まあ! まるで本物みたいな絵ね」
 写真を手に取って、まじまじと眺めてみたり、翳してみたりといった面白い位のカナの反応に、ここまで強い関心を示されると、何だかこちらまで気恥しくなってくる夏也である。
「ええと、そう。異国の絵画技法の一つなんだけど……お祭りの記念にこういった絵を作成したいの」
 まさか異界の品物であると正直に告げるわけにもいかないので、適当に誤魔化してから、行列の邪魔にならぬよう、周囲に気を配ることも言い添える。
「ええ、構わないわ。そうよね?」
 実行委員長が口を挟む隙を与えず、カナは半ば強制的に実行委員長へ同意を求める。今夜の主役にここまで押し切られては、トニーも首を縦に振るしかなかった。
 カナは、見掛け以上に肝の太い人物であるようだ。

◆祭
 レーヴリアに夜の帳が降りようとも、尚一層熱気は上昇しているようであった。
 そこ彼処に吊るされたランプに火が灯り、街を暖かな橙色で浮かび上がらせる。
 夜店に並べられた品物を冷やかす親子連れを尻目に、灰燕は小気味良い下駄の音を響かせながら、みたらし団子に舌鼓を打っていた。
 聞けばレーヴリアでは団子が名物で、特にこの時期、桜を見ながら出来立ての団子を頬張るのが通の食し方なのだとか。
 加えて、冴えた態度に似合わず、大の甘党の灰燕である。異界の地で和菓子にお目に掛かれるとは思ってもみなかっただけに、懐かしい砂糖醤油の香りが鼻腔を擽った際は、半信半疑になったものだ。
 包みの中の二本目に手を伸ばしていると、雷鳴が如き太鼓の音が人々の喧騒を穿った。強弱を付けた音が、大気を振動させる。太鼓と一口にいっても、その造形や音色は和太鼓に近いかもしれない。
 楽器といい、団子といい、レーヴリアはこの世界にしては比較的珍しい文化が織り交ざり、受け継がれているらしかった。

 大樹の周囲に焚かれた篝火が風に弄ばれる度、濃い影が奇妙に踊る様は、闇に潜む魔物の蠢きに似ている。
 桜へ憐憫の念を抱くミナが気になった渚は、日没後も行動を共にしていた。知り合って間もないが、彼女が時折見せる鬱屈とした眼差し。それが意味するものは何なのか。
 胸中に渦巻く疑問をぶつけられぬまま、渚は街に溢れる灯を茫と眺めていた。
「祭の最終夜には、仮装行列が行われます。広場から出発して、この丘まで登って来るんですよ」
 細い指で、一際光り輝いている箇所を差しながら、ミナはゆっくりと紡ぐ。渚が相槌を打つのを見遣ってから、行列の主役でもある今年の春の女神を演じるのは妹なのだと、少し誇らしげに話して聞かせた。
 渡る風に乗って、太鼓の音が聞こえて来る。人々の歓声が上がる中、
「……妹が、結婚するんです」
 何の脈絡もなく、ミナが呟いた。まるで他人事のような口振りに若干の違和感を覚えたものの、触れられた話は事件の核心に迫る内容だ。
「それはおめでとうございます」
 祝福の言葉を述べつつ、自然、渚の体に緊張が走る。
 けれど、意に反してミナはそれ以上語ろうとはしなかった。
 結婚といえば、人の一生を左右する事柄だ。微妙な問題であるだけに、家族でも親類でもない自分が、果たしてどこまで踏み込んで良いものか。
「何か心配事でも?」
 たっぷりと思考を巡らせて、言い表せた想いは少しだけ。しかし、ミナの背を押すには十分過ぎたようだ。歯切れ悪くも胸の内を明かしてくれた。
「相手の方は領主の息子で……それだけなら、とても良い縁談だとは思うのですが……」
 彼女から齎されたのは、相手の男、ジェイクが昼間から酒を煽っている女癖の悪い人物であること、結婚を思い直すよう妹を説得しても、耳を貸そうとしないこと――前以て0世界で得た情報と同一のものであった。
「何故、妹さんは結婚を承諾なさったのでしょう?」
 渚は、男がこれだけの欠点を補って尚、余りある程の魅力を備えているとは思えない。
 すると、ミナは苦しそうに残酷な真実を告げた。
「プロポーズしたのは、ジェイクではなく、カナの方だと聞いています」
 渚は耳を疑った。
 近付く楽の音も、歓呼の声も、二人には届かない。


◆咎
 打ち鳴らされる太鼓の音に合わせ、横笛やハープなどの音色が織り重なり、交わって行く。
 壱番世界出身の夏也から見れば、和太鼓に洋楽器の組み合わせはミスマッチな感が否めなかったのだが、いざ演奏が始まれば、その不思議な響きに聞き惚れずにはいられなかった。異国情緒もそこそこに力強く、それでいて透明感のある曲。演奏するのは行列の先頭に位置する魔物役の面々であった。
 夏也は女神の乗る神輿周辺を中心に、撮影し続けた。気になった場所や、人物――これらについては、同じく列に加わっているロディへと通信機で連絡し、対処してもらっている。
 しかし、最大の課題は未だクリア出来ていなかった。というのも、彼女、あわよくばジェイクの悪評へ繋がる失態丸出しの証拠写真を狙っていたのである。もし、彼の本性を知らずして、カナが結婚しようとしているのであれば、あまりにも気の毒だ。
 本音はミナにも協力してもらい、妹のフォローを頼みたい所だったが、こうして女神に張り付き、終始護衛を行っていることもあり、接触は出来ず仕舞いであった。
 夏也の思惑とは裏腹に、肝心のジェイクは神輿の上で未来の花嫁と仲良く並んで座し、観客へ愛想を振り撒いていた。元々は女神役の女性のみが乗ることを許される物に、強引に同乗している形である。
 どこまでも我儘な男なのだろう。多少は痛い目を見れば良いのに。
 夏也は心中、毒づいたものだ。

 ロディも夏也も、行列に加わることを許可される代わりに、祭用の衣装を身に着けること。一般見物客との区別化のためにも、これがトニーから示された絶対条件であった。
 質素な民族衣装を纏ったロディは、警護に目を光らせていた。
 ジェイクの被害に遭った女性達を尋問しても埒が明かないことを考えると、やはり現場を取り押さえるのが確実だった。
 それにしても、自分を捨てた男だけでなく、カナをも殺そうとするとは。犯人からすれば、自分からジェイクを奪った女と解釈しているのだろう。惚れた男だからという部分を差し引いても、二人を殺して報われるわけではあるまい。だから、犯人がどんなに惨めな念を抱いていたとしても、罪だけは犯させたくなかった。

 切なる想いを余所に、行列は大きな混乱もなく丘へと到着した。桜をぐるりと囲む魔物が歌い奏で、踊り狂う。
 聖剣の舞姫達に護られるようにして、女神が神輿より降り立った。魔物の旋律はぴたりと止んで、彼女らの通り道を開けるかの如く二手に割れる。騒がしかった観客も、今は口を噤み、カナへ視線を注ぐ。
 静寂の中、更に進み出た女神は、舞姫の一人から桜の枝を受け取る。一度、巨木へ拝礼すると、厳かな女神の舞が始まった。楽の音が再び響き、同時に舞姫らも聖剣を振り翳す。彼女らの刀身が触れ合う度、澄んだ金属音が耳朶を打った。
 刀匠、灰燕は舞姫達を興味深げに眺め、聖剣や、それぞれの表情を観察する。この中に竜刻を持った者が紛れ込んでいても可笑しくはないと考えていたのだが、所持する剣のどれもが桃色の光を発していない所を見ると、現段階では特に異変は察せられない。
 カナの踊りは拙さを僅かに残していたが、未完成ではなかった。視線の送り方から指先の動きに至るまで、相当の練習を重ねたに違いない。それを目で追いながら、灰燕は唇を小さく動かし、何事か呟いた。
 と、その時であった。桜吹雪に混ざって、白い焔が散ったのは。一瞬、方々が沸くも、これは演出の一部であろうと訝しがる者は皆無だ。
 ドレスの裾を優雅に翻し、煌めきの花と共に舞うカナの何と神々しいことか。姉であれば、感慨も一入であろう。
 渚が隣を見遣れば、
「……!?」
 先程まで並んで見物していたミナがいない。
 不覚だった。舞に気を取られている隙に逸れてしまったのである。
 刹那、視界の隅で一際目映い焔が天上を舐め上げた。続いて、鋭い悲鳴のような、誰かの怒声が飛ぶ。

 竜刻を感知した灰燕の従者、白待歌の白焔が花弁に混じって燃え上がる。それは熱こそ持たぬものの、力なき者らには脅威と捉えられたのだろう。人々の混乱に紛れ、影は腰を抜かして動けずにいるジェイクへと忍び寄る。
「動かないで」
 細く、けれど凄みの利いた声が彼の背から掛かる。振り向こうとすれば、すぐさま冷たい物が首筋に押し当てられた。咄嗟に物取りかと震え上がるジェイクは、どこまでも情けない男だった。
「罪を、悔い改めなさい」
 相手の唇が耳に触れてしまいそうな程の近距離で紡がれる言。それは男にとって聞き覚えのある女のものであった。
「た、助けてくれ! 金なら出す。望むだけくれてやる!」
「私が望むのは貴方の命のみ」
「君とのことは遊びだった。君だってそれは承知の上だったんだろ?」
 本当に救い様のない男。嘘でも、最期位は「愛していた」と一言遺してくれたなら、まだ可愛げがあったものを。
 頭上に振り上げた短剣は淡い軌跡を描いて、男の胸へと狙いを定める。
 だが、
「きゃっ!」
 女の手首に手刀が打ち下ろされた。剣は女の手を離れ、くるくると回転しながら人混みへ消えて行く。
 地べたに這い蹲っていたジェイクは、ロディに助け起こされると、今度は鼻息も荒く女を嘲った。
「形成逆転だな! 貴様のような貧乏人は、持ち合わせている運すらも貧しいと見える。おいお前、こいつを殺してしまえ! 今すぐに」
 護衛人を自分の召使いと勘違いしているのか。顎を刳って命令を下す得意顔のジェイクには……ロディの鉄槌が下った。
 派手に尻餅を付いて引っ繰り返るこの男に唆された女が星の数程いることが、ロディには受け入れ難い事実だった。以前付き合っていた女性を薄汚く罵る外道人の魂など、天使でも浄化出来まい。
「こがァな屑を憎んだ所で、あんたが救われるワケじゃァなかろ」
 冷静な物言いに、はっとした女が青い顔を上げる。視線の先には、今し方犯し掛けた咎を弾劾するでもなく、ただ穏やかな金色の瞳が見下ろしていた。
 溢れる想いは、涙と変じて女の頬を伝い落ちる。
「ぼ、僕は領主の息子だぞ! 死刑だ! 皆、死刑にしてやるからな!!」
 散々怒鳴り散らした揚句、未だ混乱の冷め遣らぬ民衆に揉まれ押し潰され、やがて男は見えなくなった。
 灰燕の胸に縋って泣きじゃくる女へ、騒ぎを聞き、駆け付けた夏也が怯えさせぬよう、そっと肩に手を添える。
「あなたは……ミナさん、ですね?」
 頷くミナは、一層小柄に見えた。


◆真
 祭の後の丘は、閑散としたものだった。
 見物客の数は既に疎らで、帰路へ着く者、宿に向かう者、飲み直そうと酒場へ急ぐ者と、三々五々散って行く。
 既知の混乱はあったものの、最後まで神事は執り行われ、カナは舞い切った。
 心なしか風の冷たさが増しただろうか。揺られる桜の枝先から、淡雪と紛う薄紅の結晶がさらさらと零れた。この分だと、数日後にはすっかり散ってしまうだろう。ならば、今夜逝く花の灯を惜しまずにはいられまいと、どこから調達して来たのか、灰燕は手酌で一杯と洒落込んでいた。
 渚はずっとミナの傍にいて、震える手を握っている。
 やがて、衣装を着替えたカナが現れた。ミナが丘で待っているからと、彼女の元へ言付けに行った夏也を伴い、不思議そうな面持ちで一同を見回す。
 しかし、ミナは妹から目を逸らし、俯いてしまう。
 見兼ねた渚が、助け舟を出した。
「男と女は別の生き物で、本質的に相容れないけれど、それでもジェイクさんと歩む覚悟があるから結婚するんですよね?」
 カナは幾度か目を瞬かせると少し笑って、何もかも承知の上で一緒になりたいのだと、呆気ない位簡単な返答を洩らした。
「本人が決めたことをとやかく言うつもりはないが、ミナがお前を心配しているのだということも、十分理解して欲しい」
 ロディの目に、厳しいものが走る。永劫の別離を知る彼だからこそ、口調は知らぬ間に強みを帯びていた。
「心配? 私は私の歩む道を決められる程度には成人しているわ」
 先刻、テントの中で見せた笑顔の人物とは思えぬ暗い微笑みが、ロディを捉える。
 緊張に益々頬を強張らせるミナへ、夏也が確りとした口調で諭す。
「ミナさん、何か心に留めるものがあるなら伝えるべきよ」
 本音に蓋をしてばかりいるよりも、例え喧嘩したって気持ちを表すことで、分かり合えることもある。それはとても勇気のいることだと知っているからこそ、ここで挫けて欲しくはなかった。
 鮮色の落ちた夜空を仰ぐミナの横顔は、悲しい程に無表情だった。隠された想いは、漸く溜息と紛う程度の緩やかさで洩らされる。
「私からジェイクを奪った貴女も、私を捨てたジェイクも、憎くて堪らなかったの」
 綺麗な言葉なんて選べなかった。確実に妹を傷付けると知りながら、ミナは真剣過ぎる面持ちで想いを吐露する。
 多分、不思議な光を放つあの刃物を手にした時から、愛情の欠片をも切り捨ててしまったのだろう。蟠りが殺意に転ずれば、人道を堕ちて行くのは造作ない。
 ミナの苦悩を思うと、渚は胸が痛んだ。だが、
「そうやって、言いたいことを言えば良いじゃない。いつも私に遠慮して我慢ばかり。本当に愚かな姉さん」
 愛らしく、残酷に、カナは笑んでいた。そんなことは端からお見通しだとでも言いたげな傲慢な様子に、夏也が眉を吊り上げる。
「そんな言い方って――」
 酷過ぎる!
 だが、続くものを遮るように、言葉は重ねられた。
「下手な芝居じゃのォ」
 酒が不味うなる、と苦く零すは灰燕。
「俺ぁあんたの方が、よっぽどホンマのこと言えてへんように見えるんじゃがな」
 呆れた調子で一瞥をくれると、盃を煽る。
 心地良い風のようにさらりと告げられたものは、彼なりの優しさなのだろう。だから、きっとこの人はとても『大人』なのだと彼女は難なく解せてしまう。
 深く長い溜息が終わった時、カナは口を開いた。
「本来ならば、姉はこんな田舎町とっくに捨てて、もっと大きな都市で医者の道を志していたはずなの」
 幼い頃、体の弱かったカナの面倒を共働きの両親の代わりに見てくれたのが、ミナだった。
「姉は昔から器用で、頭も良くてね。私や、病気で苦しむ人達を救うために医者になるんだって、目を輝かせながら語っていた」
 だが、家には医学を学ばせるだけの資金もなく、父は過労死、母も後を追うように病を患い、還らぬ人となった。
「私も姉も馬車馬の如く働いたわ。姉は生活のために、私は姉に夢を諦めて欲しくないがために」
 半分伏せた瞳は、去来する過去を見ているのだとロディは気取る。暮らしは決して楽ではなかったが、そこには間違いなく幸せがあったのだと。
「そんな時、姉の人生は一人の男に狂わされてしまった。あいつが、言葉巧みに近付いて、姉の心を掻き乱したのよ」
 生真面目な女は、殊更新鮮であったのだろう。殆どゲーム感覚で、強引に迫ったらしい。
「口先三寸の馬鹿な手に引っ掛かる方が間抜けだって笑う? でもね、姉は本気でジェイクを気に掛けてた。彼の悪評なんて、この町の人なら誰でも一度は耳にしたことがあるもの。自分こそは彼を更生させられるんじゃないかって、変な使命感に染まってしまったのね」
 尤も、そこがミナらしいのかもしれない。
「彼を殺すことも考えたけれど、それじゃあ、あれだけ尽くし続けた姉があんまりにも惨めだわ」
 ならば、破滅の道に転落するミナの目を覚まさせ、尚且つ夢を叶えてやるためにはどうすべきか。
「方法は至極簡単だった。ジェイクと私が結婚すれば良いって。彼の人柄は最悪だけど、父親は莫大な富を所持している。だったら、今度は私が彼を利用してやろうと思ったの」
 どうせ腐る程に有り余っている金だ。領主の息子の妻ともなれば、学資と女一人分の生活費をくすねる位は容易いはず。ジェイクというあの男、女を弄んでいるつもりが、いつの間にか弄ばれていたというわけだ。
「それでは、お前自身がミナに勘違いされてしまうのではないか」
 深き愛故の理不尽をそこまで被る必要はあっただろうか。湧き上がる疑問を払拭出来ぬロディへは、驚く程穏やかな視線がカナより投げられる。
「例え憎しみであろうと、何かしらの感情を抱き続ける限り、それは明日の糧となり得るわ。それに、姉が私に見切りを付けてくれたなら、何の心置きもなく街を出て行けるもの」
 想う心が引き起こした悲劇。何者も侵せないはずの絆はいつしか歪曲し、擦れ違うに至ってしまった。
「何もかも独りで背負った業は、さぞかし重かったでしょう?」
 先のカナへ抱いた嫌悪感を心の中で謝罪しつつ、彼女の瞳を覗き込むように首を傾ける夏也。姉の苦しみに比べれば、自分の抱えたものなど痛みにすらならないから、とカナは弱々しく微笑む。
 その時、ミナが嗚咽を伴ってくず折れた。
 愛し、憎んだものは全部幻であったと、漸く女は解せたのだ。心の底から渇望するものを自身が拒み、崩していたこと。不幸の連鎖を招いていたこと。
 だけど、妹の幸せを心から乞うていたのも本当だった。
「……ごめん。カナ、ごめんね」
 両手で顔を覆うミナの、あれこそが真の姿なのだ。
 カナは、これじゃどっちが姉で妹か分からないじゃない、なんて少し困ったように笑っていたが、やがてミナへ歩み寄ると、確り抱き締めた。

 女にとっては、惚れた男こそが世界の全てだったという話。
 けれど、もしかしたら世界はもう少し広いかも知れない。そう自分で気付けたのであれば、ミナはきっと大丈夫。
 渚は小さく安堵の息を吐いた。
「散ったり咲いたりの繰り返し、なんでしょうね」
 この桜とて、最初から何人からも讃えられる美しさを備えていたわけではない。長い年月を掛けて大地に根を張り、揺るがぬ存在となったのだろう。そんな風に思えばこそ、手にした盃の中に花弁が一枚、はらりと落ちるのすら、灰燕には愛おしく感じられる。
 望む夜空に下弦の月。名月といえば、それは秋の月を差すのだが、なかなかどうして、春の銀月こそ夜桜に相応しい。
 異界の花見もいいもんだと、彼は薄紅の酒を一気に飲み干した。


◆剣
 一同はロストレイルに揺られながら、各々に想いを馳せていた。
 結局、カナとジェイクの婚約は、白紙に戻すことになるだろう。
 あんな最低男、一生独身でいるがいいわ、と口を尖らせる夏也の横で、肩を竦めるはロディ。
「今回のことを真摯に受け止め、己の行為を顧みれば良いのだが……」
 天の御使いとして数多の民を守護してきたロディは、人間の二面性を嫌という程見て来たはずなのだが、夏也に言わせれば、改心など「無理」と即答したい所であった。
 恋の結末はどうであれ、神の与えたもうた高き壁を越えられたなら、姉妹の行く先に待つものは輝かしい光であるよう渚は願う。
「まあ、竜刻も回収出来たんだし、一先ずハッピーエンドってことで良いんじゃない?」
 夏也が晴れやかな表情で手にした写真には、並んで写る笑顔の姉妹。
 それらを眺める女性らを後にし、席を立つロディは、一人ボックス席へ座る灰燕の向かいへ移動する。
 ミナの手を離れ、行方不明と思われていた竜刻は、灰燕が抜け目なく入手していたのである。流石、刀剣至上主義の御仁と皆で褒めそやしたものだが、既に封印のタグを貼られた短剣は妖しげな光を静かに放ちながら、今は彼の手の中で微睡んでいるかのようだった。
「禍々しい剣じゃのォ」
 物騒な代物だと言いながらも、思う存分に品定めする灰燕は、子供のように嬉々としている。曰く、触れただけで所持者の負の力を増幅するような、タチの悪い呪詛を彷彿とさせる力を秘めているのではないか、とのことだった。
「ではこれは、竜刻を利用して、態と誰かを陥れるための物……?」
「出所までは分からんが、作り手の悪意に染まっておるには違いなさそうじゃな」
 魔力が人を殺めるのではない。人を殺すのは人なのだと、ロディは改めて認識する。
 灰燕の唇は、ぽつりと洩らした。
 こいつが血に塗れずに良かった、と。
 言葉を括る彼は、愛しい者を想うような眼差しで、短剣を見下ろしていた。

 旅人達により取り除かれた小さな棘。
 傷跡は未だ疼くけれど、春の優しさに抱かれたなら、いつか全てを癒してくれるだろう。
 あの丘には、今も幸せの風が吹いているはず。


Fin.

クリエイターコメント 大変お待たせいたしました。
 この度は当シナリオへのご参加、誠に有り難うございました。そして、お疲れ様でした。

 PL様のどなたもが犯人像には辿り着いていたようですが、その情報を知り得ぬPC様をどのように動かすか、苦労なさったのではないかと思います。
 しかしながら、4名様共にご自身の立ち位置を確り認識していらっしゃり、素晴らしいプレイングをお寄せいただきました。重ねて感謝致します。

 本当に申し訳ないことに、予定よりも遅れての納品となってしまいましたが、ノベルにつきましてはご満足いただける内容となっておりましたら幸いです。

 それでは、再びお会い出来ますことを願って。
公開日時2010-04-17(土) 11:40

 

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