「旅に出たい」 閉店後の片付けの手を止め、シオンはふ〜っとため息をつく。「それなりに出てるじゃない? ヴォロスへ薬草収集のぼっち旅とか壱番世界へ食材仕入れのぼっち旅とか。あ、てんちょー、ダージリンおかわり〜」 まだ店内にぐずぐず居残っていた無名の司書が、ラファエルに紅茶のお代わりを要求し、どん、と、水道水を大ジョッキで出されながら言う。「そーゆー仕事がらみのやつじゃなくてさー、気心の知れた友だちとふつーの観光旅行に行きたいんだよ。去年、ロキと金沢行ったときみたいな。あーあ、また誘ってくんないかな」「あのねシオンくん」 司書はゆるゆると首を横に振り、シオンの両肩をぽんぽん叩く。「ロキさんはね、彼女持ちなのよ。わかってる?」「わかってるけど?」「だったら、彼女優先になるの当たり前じゃない。そうそうシオンくんを構ってられないでしょ」「でもさー。最近、あんまりロキと会う機会もないんだよ。彼女連れて店に来てくれてもいいのにさぁ。そういや金沢旅行のあと、招待状送ったんだよな〜」 そんなシオンのぼやきは、どうやら天に通じたようで――「もう閉店かな?」「これはロキさま。いらっしゃいませ。お気になさらず、どうぞお席に」「いや、いいんだ。予約しに来ただけだから。3月17日の午後、2名席、取れるかな?」 ラファエルは頷いて、予約簿に書き入れる。「マルチェロ・キルシュさまとサシャ・エルガシャさまにて、アフタヌーン・ティーのご予約、たしかに承りました」「実は、彼女の誕生日なんだ」「それはおめでとうございます。では、お席にはお好みの花をご用意し、スイーツは特別なものをセッティングさせていただきます」「よー、ロキぃ。お見限りだったじゃ〜ん」「ゴメン。いろいろあったんだよ」 * * * あだ名があだ名であるだけに、ロキはルーン文字に詳しい。 0世界大祭では、お手製のクッキーにルーン文字を掘ったものを混入し、おみくじ代わりにしてみたそうだ。 そのとき、ちょうどサシャが来てくれたので、切り出した。「年末年始辺りに、クリスタル・パレスに行かないか?」 サシャは喜んで快諾した。クリスタル・パレスには、人狼公来訪の際にちょっと立ち寄っただけで、ゆっくり訪れたことがないのだと言って。「一安心……、だった。ここまでは。でも、その……恋愛運占って欲しいって言われたんだ」「うわ。自分の彼女にかよ」「で、結果が[Thurisaz]のルーン。これ、たいてい凶兆なんだよな……。基本的に『進んだら大怪我』の意味合いだから」 ――デートの日取り変えたほうがいいのかなあ。ワタシはいつでもいいけど……。ロキ様には言ってなかったけど、3月17日ってワタシの誕生日なんです。「おいおいおい、それって」「要するに『年末年始と即座に決めるな』ってことだな……」 それが、約束が1年越しになった経緯だと、ロキは言う。 なお、このやり取りは、ロキと仲の良い元旅団の子供たちにもばっちり目撃され、冷やかされたのだそうな。 * * 「話は聞かせてもらったわ!」 無名の司書が、がっつりとロキの腕を掴む。「さあロキさん。当日までにサシャたんが惚れ直すような新しい服を仕立ててもらいましょう。リリイさんのもとへ、善は急げよ!」(そういえば、去年のクリスマスに某司書さんから特大クッション貰ったんだが、あれってグース三兄弟の羽毛入りなんだってな)(そうそう。あのクッション、ロキんとこ行ったんだ?)(モフトピア慰安旅行のおみやげのバクアニモフ枕と併用して、快適に過ごさせてもらってる。たまにうちのセクタンと取り合いになるけど)(そりゃよかった)(彼らにもお礼を言いたいんだが、予定は大丈夫かな?)(おっけー。グース三兄弟と小町に、シフトに入ってもらうよう言っとく) ずるずると引っ張られるにまかせているフェミニストなロキと小声でやりとりをしつつ、シオンは手を振って見送った。「サシャさまにご満足いただけるようなセッティングをしたいものだが。お好みの花と、お好みのスイーツの情報を、どうにかして入手しなければ」 ラファエルは顧客満足度の向上に余念がない。=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>マルチェロ・キルシュ(cvxy2123)サシャ・エルガシャ(chsz4170)=========
⊰⊹⊰⊹⊰⊹English Rose 入口扉に下げられた鳥型プレートには、ふたりの名前が飾り文字で記され、つるばらのリースで囲まれている。それが、このカフェが貸し切りであることのあらわれだった。 「……あの、ロキ様」 サシャ・エルガシャは、ためらいがちに恋人を見上げる。誕生日には、ここでアフタヌーン・ティーをと言われ、とても嬉しくて、とても楽しみにしていて――、だから少し、どきどきする。 そんな彼女に頷き返して、マルチェロ・キルシュは、ゆっくりと扉を開けた。彼のほうもまた秘めた意図があって、ここに誘うことになったのだ。彼女の誕生日を祝うことの他に、もうひとつ。 「ようこそ、クリスタル・パレスへ。おふたりのお越しをお待ちしておりました」 うやうやしく出迎えたスタッフは、店長のラファエルをはじめ、ギャルソンのシオンとグスタフとその弟ふたり、そして、ギャルソンヌの小町という面々である。 真っ先にシオンが進みでて、サシャに向かって一礼した。 「サシャさま。お席までご案内いたします。……それくらいの役得、いいよな、ロキ?」 「ああ、頼む」 「いやぁ、それにしても」 シオンはしみじみと友人を見る。 「おれがいうのも何だけど、今日のおまえ、かっこいいなぁ!」 ロキは、フレンチグレイのヘリンボーンテーラードジャケットを身につけていた。ゆるやかに巻いたガーゼストールは、ミッドナイトブルーを基調としたグラデーションになっている。 髪はひとつにまとめているので、すっきりと細身のシルエットが際立つばかりだ。 ……と。 「はーいはいはい、関係者以外立ち入り禁止のアフタヌーンティーでございますが、ターミナルの皆様のため、リリイさん渾身のロキさんファッション詳細をお届けしたいと思います。大人の男性の落ち着きさえ感じさせるタイトなヘリンボーンはクラシカルかつモダンで、スタイリッシュな雰囲気です。ロキさんの気品とクールさと、なのに遊び心を忘れない親しみやすさをご堪能ください」 鉢植えの陰に隠れてしゃがみ込み、無名の司書は何やらICレコーダーに吹込んでいた。 「そして引き締まったウエストラインはマシマシで、もとい、スタイリッシュな佇まいを表現しております」 最初は囁き声だったのに、興が乗るにつれ、だんだんとエスカレートしていく。 「そんでもって、うなじ〜! うなじ〜〜! ロキさんのうなじがちらっと見えてどうしましょう首筋のラインがもうね、もうね!」 「シオン」 「かしこまりました」 ラファエルに小声で指示されるなり、シオンは司書をがしっと羽交い締めにした。 「わ? なーにーすーるーのーーー」 ずるずると裏口へ引きずっていき、ぽいっと外へ。 「あれ? 今、無名の司書さんの声がしなかった?」 「大変失礼いたしました。見習いの九官鳥店員がシフトを間違えて紛れ込んだようです。退出させましたのでご安心を」 * * シオンに椅子を引かれ、サシャはおずおずと腰をおろした。 そして気づく。ほのかな薔薇の香りが、店内に漂っていることに。 「わ……!」 両手を口もとに当て、サシャはフロアを見回す。溢れんばかりの色彩が、薔薇のすがたで咲いている。 このカフェが、植物園と見まがうほどに、さまざまな観葉植物で満たされているのは知っていた。しかし、今日はまるで。 ――まるで、イングリッシュローズだけを集めた、薔薇園のようではないか。 透明感のあるブロンズオレンジの薔薇は『レディ・エマ・ハミルトン』。鮮やかな杏いろの『スイート・ジュリエット』。ベルベットのような濃紅の『ウィリアム・シェイクスピア』。重量感のある深紅は『オセロ』。やわらかな黄色の『イングリッシュ・ガーデン』。 その華やかさとはうらはらに、薔薇は決して香りの強い花ではない。甘くやさしい果実のような癒しを届けてくれている。 「……噂どおりの、素敵なお店」 「サシャさまがイングリッシュローズをお好みだと、聞き及びましたので」 「ワタシのために?」 「品種は、僭越ながら私が選定いたしました。お気に召していただければよろしいのですが」 頭を下げるラファエルに思わず頭を下げ返してから、サシャは、ひときわ愛らしい淡いビンクいろの薔薇に目を留める。 「……この薔薇、ワタシ、見覚えがあるような?」 「ミス・アリスです」 「ミス・アリス……」 「はい。ヴィクトリア朝時代、美しいローズガーデンを作り上げた『ミス・アリス・ド・ロスチャイルド』に由来する品種名とのことです。サシャさまはもしかしたら、その庭をご覧になってらっしゃるかも知れませんね」 ⊰⊹⊰⊹⊰⊹Mille-feuille glacé ロキと向かい合い、サシャはあらためて目を見張る。 「今日のロキ様、とっても素敵。……本当に王子様みたい」 「リリイさんの見立てだよ」 「リリイ様の……。ワタシも、もっとお洒落してくればよかったかな」 「サシャはそのままで綺麗だし可愛いじゃんかぁ〜!」 「おふたりの会話に口出ししないように」 「へい」 ラファエルに注意され、シオンは肩をすくめる。 「あ、シオン様。いつもロキ様がお世話になってます」 「いえいえ、こちらこそ。いつも彼女さんには事後承諾でロキをお借りしてしまって」 サシャは笑いながら、ロキとシオンを交互に見た。 「どうやって友情を育んだのか、詳しく聞かせてください」 「そういえば何がきっかけだったかな?」 「どうだろ? 女の子同士だったら、『お友達になりましょうね』みたいなこともあるんだろうけど。野郎じゃあなぁ」 改めて問われるとおぼろげだよな、と、男子たちは顔を見合わせる。 「何となく、かな? 図書館ホールとか、ロストレイルの中とかで顔合わせたりして。なんだか話合うなって思って」 「旅の話とか、いろいろしたっけ。あとさ、こいつ、ゲーム詳しいじゃん?」 「シオンは勘がいいっていうか、反応早いから、対戦ゲームとかすると面白いんだよ」 無邪気な表情になるロキに、サシャも微笑む。 「金沢旅行、とても楽しそうでした」 「他にもおれ、こっそり計画だけは立ててたんだよな。鎌倉散策とか、神戸の異人館巡りとかさぁ。でもロキのやつ、冷たくてさぁ」 「そりゃ、また機会があればとは、思ってるよ」 「彼女さんも一緒にダブルデートすればいいじゃないですか」 紅茶をサーブしながら、小町が言う。 「だってアテがない……って、なに小町、おれの彼女役やってくれんの?」 シオンが目を輝かせる。小町はふーっとため息をついた。 「私にも夢や希望や好みがあるんで、そういうボランティア役は無名の司書さんにでも……、ああ、ロストメモリーは異世界行きに制限がありますから、壱番世界旅行だったら白雪ちゃんかハツネちゃんあたりにお願いしてください」 「ダブルデート、楽しそう。シオン様、どなたかにお願いして、どうですか?」 「ボランティア前提かよ! それをいうなら美人の友達を誰か紹介してくれよ!」 ひとしきり笑い合ってから、ロキはテーブルの上に二枚の写真を置く。 「そうだ、小町とグスタフたちにも、お礼を言いたくて」 これを、と、小町が手渡された写真には、いつぞやの無名の司書の誕生会のとき、すれ違いで渡すことになった、モフトピア慰安旅行のおみやげのバクアニモフ枕と、ロボセクタンがそれに頭を乗せ、気持ちよさげに寝転がっている図が激写されていた。 グース三兄弟を代表し、グスタフが受け取った写真のほうは、ロボタンが、グース三兄弟の羽毛入り特大クッションにルパンダイ……、もとい、勢い良く飛び付いている瞬間をとらえている。 「ロキさん……」 「ロキさん……」 小町とグスタフは、感激のあまり、目を潤ませる。 「こんなに喜んでもらえるんなら、私、今度、これ以外の255色も用意してお渡しします!」 「わたしどもの羽毛でよろしければ、洗いざらい引っこ抜いてクッションに詰めても悔いはありません!」 「従業員にまでお気遣いいただき、私からも御礼申し上げます」 一礼後、ラファエルはサシャに向き直る。 「サシャさま。本日はお誕生日、おめでとうございます。こちらはとてもささやかですが、当店からのプレゼントとしておおさめください」 パールピンクのリボンを掛け、ミス・アリスのつぼみを一輪さした本を、サシャは受け取った。 「モンゴメリの『青い城』――」 「私は未読なのですけれども、無名の司書さんは、同作者の『赤毛のアン』よりも大人向けで、好きだと仰ってました。カナダの風景描写のみごとさはもちろん、ヒロインの変貌ぶりが大変痛快な、とても面白いラブストーリーとのことです」 「司書さんおすすめの恋愛小説なんですね。うれしいです」 「……サシャ。誕生日、おめでとう」 ロキは、アンティークビーズがあしらわれた横長の小箱を渡す。 「きれい……」 開ける前から箱をほめたサシャは、蓋を取ってからもう一度、きれい、と、つぶやく。 3月の誕生石、アクアマリンのペンダントが、蒼いひかりを放っていた。ペアシェイプカット――片方が丸みを帯びた、澄んだ水滴のような形状のカッティングである。 「女の子には、目一杯おしゃれしてほしいからね」 * * 頃合いを見計らい、三段重ねのティースタンドがふたりの前に置かれる。 春野菜を使用したフィンガーサンド、目にも美しい花のようなキッシュ、焼きたてのプレーンスコーン。艶やかな旬のフルーツをふんだんにあしらったプチケーキ。 「サシャさまにだけ、特別にこちらをサービスいたします」 改まった物腰で、シオンが運んで来たのは、フォンダンがけのなされたミルフィーユ・グラッセが乗った純白の皿だ。 苺のミルフィーユのうえを覆い、皿一面をキャンバスとして、繊細な翼と「Happy Birthday」の文字がチョコレートで描かれている。 「これ、シオン様が?」 「技術の限りを尽しました」 「ミルフィーユ、好きなんです。……あとで、レシピ教えてもらっていいですか?」 「もちろん。サシャさまなら、すぐにマスターできますよ」 ⊰⊹⊰⊹⊰⊹Engagement ring 紅茶とスコーンは、なぜか、とてもなつかしい、味がした。 あの老紳士が手際良く淹れてくれた紅茶。食べ方を教えてくれた、飾り気のないプレーンスコーン。手に触れた瞬間のさっくりした感触と、二つ割りにしたときの、ふわりと軽い手応え。たっぷりのクロテッドクリームを乗せれば、うっとりするような口どけが、喉元をやさしく通り過ぎていく。 ――美味しいかい? これは2000年以上前から英国でつくられてきた、伝統的なクリームなのだよ。 サシャを養子にと望んでくれた「旦那様」。自分たちは、かけがえのない家族になれるかも、知れなかった。 けれど、皮肉にも、<真理>に覚醒してしまった事実が、サシャをあの屋敷からあの時代から、引き離した。 「……サシャ……?」 うつむいたサシャに、ロキは気遣わしげに声をかける。 しかし、すぐに顔を上げ―― 「あのね、ロキ様。折り入ってお話があるの」 ひたと、恋人の目を見る。 「ワタシ、0世界に帰属してリリイ様のお店で働きたい。まだ許可はとれてないし、雇ってもらえるかどうかもわからない。……たぶん、難しいと思う。それで、もし、無理だったとしても」 それでも――たとえ独学になっても、仕立屋を目指したい。 ずっと、リリイ様に憧れていた。 あんな風に、恋する女の子を幸せにする服が作れたらなあって、思っていたの。 「そうか」 「ロキ様はどうするの? ……壱番世界に帰属する?」 サシャのまなざしは決意に満ちている。それでも微かに、肩は震えていた。 「0世界に帰属したいっていうのはワタシの我侭なの。英国に帰っても旦那様はもういないし、ワタシを知ってるひとは皆死んでしまった。だから……、ワタシはここで出会ったひとたちを、ここで築いた人間関係を礎にして、第二の人生を歩みたい」 「サシャ、聞いてくれ」 居住まいをただし、ロキもまた、サシャを見つめる。 「俺の家は、数百年の歴史を持っていて――」 今まで伝えていなかった生い立ちを、過去の出来事を、ひとつひとつ、彼は話す。 イタリア全土にその名を轟かす貿易商、キルシュ家が彼の生家であったこと、男児が生まれることが極端に少なかった名家の、百年ぶりの後継ぎであることへの、期待という名の重圧のすさまじさ。敬愛する祖父が亡くなったかなしみ、そして、残された手紙を握りしめて家を出た十五歳のあの日。 「イタリアは好きだけど、戻れない。実家の関係者に捕まって連れ戻される可能性があるし」 以前、ヴェネツィアに行けたのは、ロバート卿が貸し切ってくれたからだしね、と、言い添える。 「先生としての仕事を、このまま続けようと思い始めている。子供たちが外の世界に興味を持ってくれるのが嬉しいし」 そして、ひと呼吸おく。 「そもそも家に戻るつもりはないんだ。サシャがいない旅路なんて、もう考えられないんだ、俺には……」 「ロキ様」 サシャの前に置かれた、もうひとつの小箱。 青い天鵞絨張りのケースのなかで、きらめいていたのは。 ダイヤモンドのサイドに、小粒のアクアマリンをあしらったトリロジーの――、 指輪だった。 ⊰⊹⊰⊹⊰⊹New stage of life サシャの双眸が、涙で光る。 「ごめんなさい」 その言葉に、後方で見守っていたスタッフたちは息を呑む。 (え、うそ、なにこの展開!) (シオンさん、しーーっ!) (慌てるな、まだわからない) 「ずっと悩んで、話しそびれて、断られるのが怖くって……。できるならロキ様と幸せになりたい、ロキ様のお嫁さんになりたい。でも、ロキ様が違う道を歩むなら……って」 「サシャ」 「ワタシ、ここでロキ様を待ちたい。旅から帰ってきた旦那様に、笑顔でおかえりなさいを言うのが夢だったの」 「サシャ、それじゃ」 「ロキ様のお嫁さんに、帰る家になりたい」 ――だから、アナタのお嫁さんにしてください。 ――ああ。そばにいさせてくれ。ずっと。 * * 「よかった……。安心して腰抜けた」 ぺたんと床に座り込むシオンを、ラファエルが叱咤する。 「呑気に脱力している場合か。婚約記念のスイーツの準備をしなければ」 ダイヤモンドは「不屈の石」。 アクアマリンは「勇気の石」。 そして、「結婚の幸福」を護る石。 ――Fin.
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