オープニング

魔法少女アキハバラを往く

 壱番世界、小さな島国の大都会TOKIO、その一角。
 古くは電気街として栄え、現代においてはまたサブカルチャーのメッカとしても名を馳せ、電器屋、アニメショップ、メイドカフェ、カレー屋等が並ぶ狭い道をさらに埋めるようにマニア、ヲタク、インド人、メイド、コスプレイヤー、インド人、大学教授、メカニック、インド人、おのぼりさん、物見遊山、インド人、ただの通りすがり、好事家、インド人、名状しがたき何か、インド人、或いはインド人が、若しくはインド人が跋扈する『アキハバラ』。
 そんな、文化と工学と芸術(の様な何か)が渦巻く何かそういったアレの坩堝ににふわりスカートひらめかせ今舞い降りる二人の少女(多分)がいた。
 その名も

「魔法少女ぷりちー☆ねも!」
「せくしー☆くもま!」

 キュートなコスチュームに身を包み、決めポーズもびしっと決めて
 混沌の聖地アキハバラを舞台に空前絶後の大暴走!
 ぷりちーでせくしー、おまけにきゅーとな二人から目が離せない!?

 混沌が更なる混沌を生むのかそれとも……!?
 マジカルウィッチコメディこうご期待!

 ※尚この物語はフィクションです。実在の人物・団体・インド人とは一切関係ありません。

=========
!注意!
企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。

この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。


<参加予定者>
ネモ伯爵(cuft5882)
蜘蛛の魔女(cpvd2879)

=========

品目企画シナリオ 管理番号1766
クリエイター桂野九生(wshe3828)
クリエイターコメントはじめまして、もしくはお久しぶりです。桂野九生です。
僭越ながらこの度の企画シナリオを担当させて頂く事となりました。
以下簡単な補足です

・アキハバラにあるものは大概あるのではと思います。
・アキハバラにいる人たちも大概いると思います。

すみません補足にも何にもなっちゃいませんでした。
ともかく、アキハバラで楽しく可愛く大暴れしていただければと思います。
でもあまり大暴れしすぎるとお巡りさんとかに追いかけられちゃうかもですね。

それでは良い旅を。

参加者
ネモ伯爵(cuft5882)ツーリスト 男 5歳 吸血鬼
蜘蛛の魔女(cpvd2879)ツーリスト 女 11歳 魔女

ノベル

 第一話☆二人は魔法少女!

「ここがその夢と魔法の街『アキハバラ』か!」
 表紙に猫耳美少女が描かれたガイドブックから顔を上げてネモ伯爵は黄金の目を瞬かせ軽やかなボーイソプラノで如何にも爺臭い台詞を響かせた。
「かわゆい女子が沢山で実に目の保養じゃのう!」
「同じくらい顔の濃いおっさんもいっぱいだけどね」
 きらきらの笑顔で眺め回すネモ伯爵の横でやるせない顔で項垂れる美少女は蜘蛛の魔女、ガンメタルカラーの衣装はふわふわとキュート、首もとのリボンチョーカーがそこに華やかなセクシーを添え、背に生える8本の蜘蛛脚も当人の意気消沈に釣られてやや元気がないせいかかえって余計に『よく出来た偽物』といった風体で馴染んでいる。
「トホホ……誇り高き魔女である私が何故こんな所でこんな格好でこんな事を」
「なんじゃ、中々似合っとるぞ? そう恥ずかしがるでない蜘蛛の魔女、いや『せくしー☆くもま』か?」
「はずかしがっとらんわ!!」
くわっと爪を掲げて構えるその姿に顔の濃いおっさんことインド人に囃し立てられ結局それ以上何も出来ずに爪をしまいこみ再び項垂れ
「あの日あの時あの場所でこいつにあんなあれをそれされなければ……」
呟いてみるもこの世は弱肉強食弱みを握られたら最後、握った相手は目の前でニヨニヨしている。もうこうなったら致し方ない。
「ええいっ、地獄からの使者、せくしー☆くもま! 悪い奴は頭からばりばり喰らってあ・げ・る!!」
とうとう自棄を起こした蜘蛛の魔女がびしっとポーズを決める。その横で満足そうな顔のネモ伯爵がドレスシャツのフリルゆらり、ふわひらマントをはためかせて同じようにポーズびしっ。
「超越せし者、ぷりちー☆ねも! 子供と思って舐めるでないぞ☆」
 こうして今ここに二人の魔法少女(多分)が爆誕したのであった。


 第二話☆どきわくショッピング!

 色とりどりのポスターで飾られた狭き門を潜ればそこは夢の城。
所狭しと並ぶ総天然色の背表紙表紙、そこここに貼られ下げられたポスターの類には一様にカラフルな髪色目色をした平面の美少女達が微笑み、はにかみ、頬を染めて睨み付け、その隙間にはリュックに挿したポスターで武装した鼻息も荒いもののふ達。
 そこから少し隔てたエリアに霞むポスターには涼しげな目、ほっそりとした肢体の平面の美青年美少年達がかっこいいポーズとかっこいい顔をキめ、姦しいのはある種の芳香を放つ婦女子。
 ここはアキハバラの一つの側面たるサブカルチャー、漫画やアニメの諸々を取り扱う専門店、基本中の基本だろうと二人は意気揚々乗り込んだのであるが。
「……なんか、すごい怪しい雰囲気なんだけど……」
 それでなくとも注目される容姿である上に、この様な巣窟に乗り込めば当然の如くもののふ達の視線の集中砲火を浴びた蜘蛛の魔女はいよいよ消沈しきっている。
 ネモ伯爵の方はわくわくてかてかとしてあっちの背表紙を引っ張ってみたりこっちの表紙を開いてみたりとやりたい放題、見た目は非常に可愛らしい美少年であるネモ伯爵はもののふ達のみならず芳しい香り漂うエリアにまで注目を浴びるもお構いなしにこの夢の城を大冒険。
 そして彼はその奥に秘境、奈落の底、アレの吹溜り、つまり所謂
「あちらには同人誌コーナーがあるようじゃの!」
そういうことである。
 蜘蛛の魔女が止めようとしてしかしこの知的好奇心の権化が止まるものか、果たしてガイドブック仕込みの『同人誌とは何か』談義を延々聞かされながら結局そのサブカルチャーの坩堝の最たる一角に同伴する二人の目に飛び込むのは。
 先程とは比べ物にならない、いや先程も何がどうとは言わないが凄かった、それ以上のものがここには並んでいるのである。
「このキャラクターはさっきあっちで見たぞ、とするとこれが二次創作という奴じゃな。
こっちは女子同士で仲良くしとるのかのう、眼福眼福」
 実にどこからどう見ても360度ご満悦のネモ伯爵が君に決めたとばかりに手にした一冊はその中でもまた群を抜いて高肌色率。というか最早
「隠れてるの三箇所だけじゃないそれ」
そういうことである。
 構わずうきうきらんらんとレジへ突き進んだネモ伯爵をしかし最大の苦難が待ち受けていた。
「申し訳ございません、こちら十八歳未満の方にはお売り出来ないんです」
「な、なんじゃとー!! わしは子供ではないぞ!! 齢千歳を超えておるのだぞ!!」
 本来彼は確かに千歳を超える大吸血鬼ではあるし態度もそれに見合って威風堂々誇り高くあるが、見た目はどこからどう見ても年端も行かぬ男児、この界隈の言葉でいうならショタ、かかる事情を何一つ知らない店員のこの対応は至極真っ当で、それでも主張を繰り返し一歩も引かぬこのクソガキにレ店員も精根尽き果て、お前の連れだろどうにかしろと言いたげな視線を向けられた蜘蛛の魔女は黙れ小僧とばかりに睨み返して尚も暴れるネモ伯爵を引っ掴み悪魔城を後にしたのであった。


 第三話☆メイド喫茶潜入!?

「つっかれた……」
 ピンク色のクロスに飾られたテーブルに突っ伏して蜘蛛の魔女が呻く。その頭上には、猫を模した付け耳のメイド達に大はしゃぎするネモ伯爵の声が嵐の如く飛んでいる。
「おお、あのメイドさん中々かわゆいぞ、あっちのメイドさんはぼんきゅっぼんでせくしぃじゃ!」
 ここはアキハバラの名物の一つ、フリルの付いたエプロンに頭飾りの欧風女給、所謂メイドスタイルのウェイトレスが可愛らしい笑顔と甲斐甲斐しい接客でもののふに一時の夢を与える夢の国メイド喫茶。そのうちでも特に可愛らしいメイド揃い、しかも今ちょうどニャンニャンねこみみまつりちゅう(はぁと)という訳でここは一つ馳せ参じねばとガイドブック片手に意気揚々と潜入せしめたのが今である。
「お待たせしましたにゃん、にゃんにゃんいちごぬこぱふぇとにゃんにゃんしょこらぬこぱふぇですにゃん」
 ガイドに違わず実に可愛らしい猫耳のメイドが大きなパッフェーを携えてやってくる、それらがテーブルに配膳されたその時こそは蜘蛛の魔女も顔を上げ、どんよりした顔を幾分明るくさせる外は無かった。
 大きなグラスにはコーンフレークやソース、ゼリーが美しく層を描き、その上には形良くたっぷりと絞られた生クリーム、フルーツ、チョコ菓子が飾られど真ん中に鎮座する丸いアイスクリームには可愛らしい猫の顔、ウエハースの耳まで付いている。
「すごい、かわいい。それにすごくおいしい」
「さながらこのプレッツェルが尻尾というわけじゃな、かわゆいのう」
 横から上から下から眺め回し尻尾のプレッツェルをさくさく、アイスとクリームを一口、
「うまい!」
 これ以上無い程の幸せな笑顔でその一口を味わいつくすとすっかり気を良くしたネモ伯爵はもう一匙パッフェーを掬って慈愛に満ちた顔で
「特別サービスじゃ! あ~んしてやるから口を開けい!」
とその匙を差し出す姿はまるで可愛らしい似合いのカップルだ。
 だが素直にあ~んと口を開けた蜘蛛の魔女の口に入ったのはその慈愛の一匙等ではなく、魔女自身が頼んだパッフェー等では無く、そのパッフェーといえばいつの間にか綺麗に平らげられて横に寄せられ、では彼女の目の前にあって今まさに平らげられんとするもう一つは追加注文ですか? いいえ
「あー! ワシのパフェ!」
 はたと気付いて手に持った匙をとかく自分の口に収納、しかし彼の注文したはずのパッフェーはあれよという間に平らげられ今は底のソースまで余す所無く味わおうと匙でカツンカツン突付かれてカタカタと震えているのだ。これではさしもの齢千歳の大吸血鬼といえど黙ってはおれない。
「うう……鬼! ケダモノ!」
「魔女なんだけど」
「何でも良いわ! わしの分のパフェまで横取りするか貴様!」
「リメンバー紫芋パイ」
 説明しよう! 紫芋パイの思い出とは、二人がかつて取り合いへし合いした結果ひょんなきっかけでお互い取り逃し地団駄を踏んだ事件なのだ! 全く食べ物の恨みはナントカとは良く言ったものである。
「よろしい、ならば尋常に勝負じゃ!
とはいえかわゆいメイドさん達にご迷惑はかけられぬからな」
 びっと親指で外を示すネモ伯爵にこくりと頷く蜘蛛の魔女。
 こうして前代未聞の超魔法少女バトルは幕を開けようとしていたのだった。メイドさんの
「また来てくださいにゃん」
の声とともに。


 第四話☆負けられない! 超魔法少女バトル!

「魔法少女ぷりちー☆ねも! しもべたちよ、あの生意気な魔女めをあんなかんじやこんなかんじに弄んでやるのじゃー!」
 道行くオタク、マニア、教授、コスプレイヤー、婦女子、近くの店員、物見遊山、外国人、インド人等が何事かと見守る中でネモ伯爵はポーズもキュートにしゃらんらスティックを掲げると大量の蝙蝠を呼び出す。ギャラリーから、何かの撮影かとざわざわする声上がるともすっかりなりきったぷりちー☆ねもには関係ないのであるが。
「勢いで出てきちゃったけどすっごい見られてるし……」
 せくしー☆くもまの方はというとかわいいやら蜘蛛足キメエやらのざわめきに次々と鳴り響くシャッター音、インスタントカメラのパチリのみならず一眼レフのプロっぽい音やら携帯電話のシャリーンとかピロリンといった音まで絶え間なしに響き、何よりも何か期待する目線がびしばし刺さる中でいまいちやり切れないで蝙蝠をひたすら千切っては投げしているが当然埒が明かない。
 そうこうしているうちにあっちやこっちや引っ張られて衣装が緩みはじめて状況はさらにやり難く、かといってこのまま降参してしまうのは彼女の誇り高き魔女のプライドが許さない、となれば。
「魔法少女せくしー☆くもま! 毒が抜けるまで私と踊り続けるわよ!」
 台詞の勢いとは裏腹にスカート抓んでちょんと一礼、背中の蜘蛛足でとんと地を打ち鳴らせばイッツショウタイム!
 この美しく妖艶な舞にはざわめくギャラリーも目を釘付けにされ、蜘蛛脚が刻む強く軽やかなドラム、くるくると回転しながら次第に早まるステップに魅了されあるものは呆けてへたり込み、手にしていたカメラの類を取り落として見入り、リズムに酔いしれ恍惚の表情を浮かべ、或いはともにステップを踏み始め、あたりは独特の雰囲気に包まれる。
 生来ダンスを得意とする蜘蛛の魔女、そのダンスには元来魅了効果が付随する上に、蝙蝠があんなことやこんなことをするせいで衣装はあんなとこやこんなとこがイレギュラーに捲れ、それを払わんとする手は逆に蝙蝠を手玉に取り共に舞うが如く、まさに蝙蝠たちと舞う「毒蜘蛛の舞」タランテッラだ。
 とはいえその魅了を凌駕するもののふもいた。辺りが軒並み呆けて手薄になったのをいい事に掻い潜って滑り込んできたのは手に手に立派なカメラを携えたカメラ小僧、或いはカメコと呼ばれる彼らは『ベストショット』を手中に収めんとすべくしゃがみこみ這いつくばりこっちに目線だの足上げてだののたまうものだからいくらダンスで幾分気が良くなって来た蜘蛛の魔女といえどもたまらない。そのうちのしゃがみこむ一人に近づくと華麗なステップで――しこたま蹴り上げた。
「何勝手に撮影してるのよ見世物じゃないのよ!」
うめき声を上げて倒れこむカメコを今度は華麗なステップでしこたま踏みつける。
「何変な目で見てるの? あんたも踏まれたいの!?」
 横で這いつくばるカメコの視線に気付いてとんとそちらへステップ、その背中でぐりぐりと早いステップを踏む。そうして次々と不埒な輩を蹴り上げ踏みつけるも、足元から聞こえるのは見えただのありがとうございますだの歓喜の声続々。
「私みたいな女の子に足蹴にされて喜んでるなんてとんだ変態ね!」
 本人は罵ったつもりではあるがこれでは最高のご褒美でしかない。さらにボルテージの上がる変態の皆さん、さらに踏みつける魔法少女、それを愉快と眺めていたネモ伯爵がこっそり蝙蝠増量、ついでにあわよくば何かせんとするギャラリーをしゃらんらステッキでつまるところのフルボッコ、ただでさえカオスなこの界隈はさらにカオスの渦にとうとう――魔法少女がキレた。
「やってられっかーーーーーー!!!!!」


 第五話☆おまわりさんにご用心!

 最大に広げた蜘蛛脚で蝙蝠を一掃、そこに佇むのは目に涙をためてふるふる震えるせくしー☆くもまこと蜘蛛の魔女、彼女は手をニヤニヤするネモ伯爵へと向ける。
「あんたが……あんたがこんな……あんたのせいでえええええええ!!!!!」
 雄叫びとともに放たれる無数の蜘蛛の糸、同時に飛び出した蜘蛛の魔女がネモ伯爵を捕らえた。
「うわっなんじゃ、蜘蛛の魔女よ落ち着け落ち着かぬか」
「これが落ち着いてられるかってんのようわあああ!!」
 それでなくとも気恥ずかしいきゅるるんな衣装は先程の蝙蝠で見るも無残にはだけ、ギャラリーには好奇の目で見られ、インド人にはやんやとはやし立てられ、変態どもにはくもまさまと崇められ、彼女のプライドは最早ずたずたのぼろぼろ、それを突き破って噴出する憤りの行く先といえば諸悪の根源たるネモ伯爵であるのは至極当然、ゴングも高らかに鳴るというものである。
 蜘蛛の糸に絡めとられたネモ伯爵に飛び掛かり圧し掛かった蜘蛛の魔女はその可愛らしい姿に反して長く鋭い爪で相手の急所を掻っ捌いてやらんと、そこいら中に糸を撒き散らしながら手を闇雲に振り回しそれをネモ伯爵が体を器用に捻って避けたり余った蝙蝠を盾にしたりと応戦。
 怒涛のぷりちーせくしーバトルに、何かのショーだと思っていたギャラリーはさらにアゲ気味で盛り上がる、が、彼女らの形相や飛び交う蝙蝠絡まる糸にどうやらそれどころではないと野次馬でも気付くもの、どよめきはいつかざわめき、ひそひそと確認しあう声となり、カメコ達も異常を察したか引き気味に、反して二人のデッドヒートはいよいよ白熱、止まるはずも止める術も誰にも無くとなれば頼るは平和と良い子の強い味方、その足音も力強く
「おまわりさんこっちです!」
呼ばれてモーセの如く人垣を掻き分けて依然取っ組み合いを続ける二人の前に立ちはだかるは警察官数人。
 さしもの魔法少女も流石にこれには敵わない。そもそもただでさえキレた蜘蛛の魔女の相手をするだけで手一杯なのにこいつらの相手などやってられるか!
 ネモ伯爵は圧し掛かる少女をどっこいしょと押し退けて蜘蛛糸を無理やり引き千切ると再び大量の蝙蝠を呼び出した。
「蜘蛛の魔女よ、逃げるぞ!」
 まだ怒り収まらぬといった風な蜘蛛の魔女の手を引き蝙蝠製空飛ぶじゅうたんに飛び乗り人垣を超え逃走を図るがしかし相手は不埒な輩を取り締まるエキスパート、インド人を右になどしているうちにすっかり取り囲まれた二人は敢え無く御用、お説教を喰らう羽目となったのであった。


 最終話☆やっぱり二人は魔法少女

 暮れかかる太陽が辺りをオレンジに染め、帰宅する人、或いはこれから戦場へと向かう者、戦い終えたもののふ、インド人、その他諸々の闊歩する橙のアスファルト、その一角に座り込む二つの小さな影。
「もー、どうしてこんなことに……」
 体育座りの膝に顔を埋め呟く蜘蛛の魔女、隣にはああ疲れたとばかりに体を伸ばすネモ伯爵が
「まあどうにかなったしよいではないか」
とケラケラ笑っている。
「催眠術でゴリ押す事のどこがどうにかなってるってのよ」
「わし達はこう見えても立派なオトナであり今回のことはちょっとしたお遊びであり何も問題ないという事をアピールしただけであろう」
 ふふん、と鼻を鳴らし胸を張るネモ伯爵にふうと一つ魔女の溜息。
「ま、窮地を脱した事だけは褒めてあげる」
「ふはは、素直にありがとうと言えばいいじゃろうに」
「元は誰のせいだと思ってるのよ!」
 くわっと爪を構える蜘蛛の魔女をネモ伯爵がまあまあと宥め。
「それにしてもおぬしの魔法少女っぷり、中々粋じゃったぞ。おぬし見た目はかわゆいからのう、そのかわゆいコスチュームもぴったりじゃな」
「褒めてごまかそうたってそうはいかないんだから」
「うそじゃないぞ。かわゆい魔法少女とデートできてワシは中々楽しかったぞ! パフェを横取りされたのは悔しいがの」
 すっくと立ち上がり、一つ伸びをして、ネモ伯爵はひょい、と手を蜘蛛の魔女に差し出す。
「でも、わしら中々良いコンビになれそうじゃな、そう思わんか?」
 夕日に照らされて愉快そうに笑うネモ伯爵のその手を、果たして蜘蛛の魔女は取ったのか否か?
 答えは、二人の思い出の中に。


魔法少女アキハバラを往く! 完

クリエイターコメントこんにちは、はじめまして。
そしてお待たせしました。

今回はデートということで、で、デートだと!?と二度見しつつ少々はっちゃけ気味に書いてみてしまいました。
……少々どころじゃなくはっちゃけ過ぎた気もしますが。
しかし素敵なネタにプレイング、正直楽しすぎて書いても書いてもまだ足りぬあと千文字位持ってきてー!の心持で書かせていただきました。

色々と語りたい事はあれど余談ばかり長々と続いてもアレなので。
かわゆい二人のカオスなデート、楽しんでいただければ幸いです。
それでは、またご縁がありましたら。
公開日時2012-04-17(火) 21:20

 

このライターへメールを送る

 

ページトップへ

螺旋特急ロストレイル

ユーザーログイン

これまでのあらすじ

初めての方はこちらから

ゲームマニュアル