オープニング

 空の青が押し寄せる。船腹を撫でる風に船体が揺れる。主柱の帆布が風を集めて大きく膨らむ。帆布に引っ掛かっていた砂の粒が軽い音を立てて甲板に降り注ぐ。
 主柱の天辺に設けられた見張り台の上、蒼狼の仮面に風受けながら、灰色の衣纏うた老婆は仮面の奥の蒼眼を陽にしょぼつかせる。視界埋める青空の眩しさに老いた眼を細める。
 帆布の影が落ちる甲板にちらりと視線を投げる。砂漠に船が墜ちていた頃は、広い甲板には船体修復用の天幕が幾つも張られていたが、今は、数え切れぬほどの投槍や弓矢や剣が集められている。百人余の狼の面被った戦士達が忙しげに走り回っている。
「此度こそ」
 老婆は嗄れた声で呟く。
 ヴォロスの空渡る古の時代の飛空船が目指すのは、古にこの地を治めた王の城。
 王国が滅んで後、小さな町や村が点在するだけとなった辺境の地、シエラフィ地方の央。
「此度こそ、『朱の蛇獣』を」
 王国を滅亡に至らしめたは『朱の蛇獣』と呼ばれる魔物。
 千年の昔に戦に破れ、この地より去った翼持つ一族が、王城の地下に潜ませた呪い。その呪いが年月を経て強大な魔物のかたち成し、王を、王に仕える千の兵を、城の人々を喰らった。
 盟約により天駆けて魔物との戦に向かおうとした船は、戦場である王城に辿り着くよりも先、砂漠の只中に沈んだ。船を空に押し上げる動力である巨大な竜刻は粉々に砕けた。船体は墜落から生き残った戦士や竜刻使い達を絶望に至らしめる程に大破した。
 船の墜落の原因は、『蛇獣の矢』とだけ伝えられている。
 『朱の蛇獣』は、王と千の兵士の血肉を喰らうことで、王の妻と十の巫女がその身を捧げることで、最後の王となった幼き王女をその城に封じ縛めることで、漸く眠りに沈んだ。
 その眠りが覚めようとしている、と知らされたのは先の新月の夜。
「王との約束を」
 果たせずに絶えた盟約を果たさんが為、未だ完全には修復叶わぬ船に百人余の戦士と竜刻使いを乗せ、空へと浮かべた。船の修復に尽くして数世代に渡り過ごした砂漠を越え、森と草原を幾つも渡り、――そうして、地平に目指す森を捉える。
 老婆の蒼の眼が森の央に聳える巨大な樹を映す。幼き王に力貸すと言う不思議の樹に包まれた、約束の地である王城。城を囲んで白い煙が幾つも棚引いているのは、おそらくは志を同じくする一族の者が多く集っている証左だろう。
 皺に埋れた頬に力が籠もる。
「何か見えるか長老!」
 主柱の下の舵を操る灰色狼の仮面の男が声を上げる。いい風だよ、と返そうとして、老婆は蒼の瞳を眇める。
 遠い王城を赤い靄が巻いている。
 老婆が警戒の声を上げるよりも速く、雲よりも厚く濃くなる。青空に朱の螺旋描いて柱のように収束する。
「――竜刻使い、障壁を、」
 血色の槍が王城の地下より放たれる。老婆の悲鳴と空渡り来る巨大な槍に、幾人かの竜刻使い達が竜刻の力使う所作をするも、間に合わぬ。
 血の槍は五百の血の大蛇で形作られていた。大蛇の群が一斉に顎を開く。悲鳴とも怒号ともつかぬ声が甲板中に響く。恐慌きたした戦士達が甲板に積まれた槍や剣を投げる。弓矢が放たれる。竜刻の障壁は間に合わぬと判断した竜刻使い達がそれぞれにその力を炎や氷に換えて放つ。
 統率つかぬ攻撃の全てを呑み込んで、血の蛇が船首に飾られた狼像を一呑みにする。千の牙に砕かれ、狼像が一瞬で粉々になる。
 血の蛇の群が弾ける。血の尾引いて宙を飛び、甲板に集う戦士達に喰らいつく。竜刻使い達に巻きつきその身を絞る。甲板を悲鳴が満たす。
 戦士達が腕食い千切られながら振るう剣に断たれ、竜刻使い達が骨砕かれながら放つ竜刻の力に燃され、何十匹かの蛇が甲板に崩れ落ち血溜まりとなるも、
「シエラ王――」
 最早敵わぬ。
 眼下の甲板の惨状を見下ろし、老婆は王の名を囁く。血の蛇が主柱を伝って登り、老婆の頭に喰らいつく。
 船腹の樹板が血の蛇に破られる。主柱の白い帆が血の色に染められながら破られる。蛇の牙に食い千切られ、十数本の副柱が次々に軋み音立てて倒れる。
 血の蛇に食われ、船は大地に沈む。


 王の居る宝物庫にまで続く、樹の根の暗闇に覆われた隧道を黒狼の仮面被った男が駆ける。
 片手に持った短槍が樹の根に取られる。男は転ぶ。袖ごと食い千切られたもう片方の腕から血が飛ぶ。狼の仮面が外れ、髭面の男の顔が露わになる。顔を激しく歪ませ、クロは低く呻く。
 背後を振り返る。城の外、突如として大地から溢れた千の血の蛇が一匹でも追っては来ていまいか、焦燥滲む蒼の眼で確かめる。
 血の蛇の姿は見えぬ。けれど、城の外で血の蛇と戦い続ける一族の皆の声が隧道の内にまで響いてきている。
(箱舟が見えたのに)
 彼方の空に長い時を待ちわびた飛空船が見えたその瞬間、地の底から獣の吼え声が響いた。千の血色の大蛇が王城の周囲の地面から湧いた。その半分が空へと昇り、群れて槍の形成し、飛空船を貫いた。
(皆、折角集ったと言うのに)
 残った半分が地を這い、城の周囲に集まった一族の戦士達に襲い掛かった。
(漸く約束を果たせると)
(漸く王をお救い出来ると)
 切れ切れに思う。暗闇に転がった短槍を手探りに掴み直し、黒狼の面は隧道に捨て置いたまま、クロは立ち上がる。再び駆ける。
 暗闇の道の途、崩れ落ちた白骨の塊を踏む。クロは更に必死に駆ける。
「シエラ王! シロ!」
 王と息子の名を悲鳴に近く怒鳴る。
 暗闇の先に蒼白い光が浮かぶ。王の居る宝物庫に辿り着き、クロは短槍を片手で構える。
 城の宝物庫を埋める数千数万に及ぶ樹の根が軋む。樹の根に縛められた石床が地下より突き上げられる。樹の根に掴まれ壁や天井に攫われた宝剣や槍や玉が震える。甲高い音をたてる。
 宝物庫の床から放たれ部屋を満たす蒼白い光を侵して、赤い靄の粒が床のあちこちに浮かび上がる。靄は見る間に戦装束纏った紅い骸骨の姿となる。
 幼き王が宝物庫の中央に置かれた黒い柩に腰掛けている。柩の周りには、若草色の外套が、匂い袋を首に掛けた白狼の縫いぐるみが、樹の笛が転がっている。
 ご無事で、と安堵しかけた心は、王の胴を貫く一振りの短槍を眼にした瞬間に砕ける。
 幼き王の背後に、一際豪奢な戦装束纏うた骸骨の戦士の姿。クロは乱れた息を詰める。先代の王の姿した朱の蛇獣の化身は、片手の短槍で跡継ぎの王女を刺し、もう片手で血に塗れた白狼の仮面の少年の襟首を掴んでいる。先王の骸の背には、血が噴出すような形した奇妙な翼。
 膝から崩れ落ちるクロの周囲に紅骸骨の戦士達が集まる。紅い骨の手に握られた槍が剣が鎚が、振り下ろされる。





 どこまでも青い空に、飛空船は未だ見えない。
『王が死ぬ。一族が死ぬ。皆、死ぬ』
 清冽な緑の香り含んだ風に黒髪を惑わせ、相沢優は空を仰ぐ。不吉な予言を告げた獣人の司書の言葉を思い出す。漆黒の眸に力が籠もる。
「よく来てくれた」
 肩を叩かれ、振り返る。短槍を肩に担ぎ、クロが黒狼の仮面を片手で押し上げ髭面で笑う。
 司書の予言を伝えるべきか否か。
「シエラは、……王は?」
「シロに昔話をせがまれていたな」 
 城の周囲には様々の色した狼の仮面被った人々が戦仕度に追われている。森や城包む巨木の陰では女達が忙しげに煮炊きの釜を囲んでいる。
「『朱の蛇獣』の対策は」
「此方から攻めることは出来ないらしくてな。今はとにかく準備しながら飛空船待ち、ってとこだ。とは言え、此処に着くまで一両日中、ってとこか」
 クロは言い、視線を優の腰の辺りへと向ける。優の傍に立つシーアールシー ゼロの存在に唐突に気付き、驚いて眼を丸める。
「こりゃまた小さいのを連れて来たなあ」
「足手まといにはならないのです」
 ゼロは銀色の大きな瞳でクロを見仰ぐ。透き通った銀の髪と白いスカートの裾が風に揺れる。
「王と同じくらいだなあ」
 クロは幼い少女の姿したゼロを暫く案じるように見下ろしていたが、不意に頷く。
「まあ、あんたらの仲間だしな」
 頼りにしてるぞ、と笑いかけられ、ゼロはふうわりと笑む。
 赤狼の仮面被った女がクロを呼んだ。
「何かあれば呼んでくれ」 
 そう言い残して、クロは優達の傍を離れる。
「飛空船はまだ見えないねぇ」
 獅子の腕を持ち上げて陽の光遮り、キース・サバインが空を見上げる。
「大丈夫だぁ、まだ間に合うよぉ」
 だから、と陽と同じ金の色した穏かな丸い眼を力強い笑みに細める。優はつられて笑う。そうして、眉間に酷く力が入っていたことに気付く。
「こんにちは!」
 鮮やかに赤い帽子と明るい赤の衣服、壱番世界で言うサンタ衣装を纏ったミルカ・アハティアラが人懐っこい様子で煮炊きの釜の方へと駆けて行く。
「何かお手伝いしたいです!」
 元気よく弾む声に、狼の仮面被った女達がはいよと威勢よく応じる。野菜の皮を剥く女達の一団に迎え入れられ、ミルカは紫水晶にも似た瞳を笑みに満たす。帽子の端から零れる銀の髪を大きく揺らし、よろしくお願いしますと頭を下げる。
 煮炊きの煙を散らして風が流れる。
 風の中に戦と血の気配を嗅ぎ取り、玖郎は猛禽の嘴模した顔の上半分を覆う面をもたげる。猛禽の肢で草の地を蹴り、赤褐色の二対の翼広げ、飛ぶ。王の城を包み込む巨大な樹の半ばにまで一気に昇る。
 城を囲うて、狼の仮面被った数百の人々。人込み嫌う天狗は鳥がするような仕種で首を傾げ、地を這う一族の末裔を見下ろす。
 狼の仮面被った人々は、天幕を広げ、煮炊きの煙を上げ、剣や槍の刃を磨ぎ、弓の弦を張り、賑やかに言葉を交わしている。
 その姿はまるで、戦仕度ではなく祭仕度のよう。
『災厄』
 以前聞いた砂駝鳥と呼ばれる鳥の声を耳にする。王城包む巨木の一端に彼らは繋がれている。退化した小さな灰色の翼をもがかせ、人には解せぬ言葉で啼いている。
『災厄が地より這い出る。地より空へと駆け上る』
 けたたましい鳥達の声に呼ばれ、ハルカ・ロータスは花のような紅の眼を向ける。無表情な瞬きに合わせ、左眼の傍に彫り込まれた刺青の蓮華の花弁が微かに揺らぐ。
『大地を焦土に、命は塵に。死の翼が、血の翼が空に舞う』
 騒ぎ立てる鳥の群を静めようとする狼の仮面の人々を見遣り、更に首を巡らせる。周囲で賑やかに忙しげに駆け回る人々を見詰める。
(戦うことが手伝いになるなら)
 この身に宿る、戦うための力が人々の役に立つのなら。
(それはとても、嬉しいことだ)
 短く刈った銀の髪の下、紅の眼が蒼穹を仰ぐ。眩しいほどに白い雲が風に流れ、森の空を渡っていく。
 空は未だ、静かだ。



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!注意!
企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。

この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。

<参加予定者>
相沢 優(ctcn6216)
キース・サバイン(cvav6757)
ハルカ・ロータス(cvmu4394)
ミルカ・アハティアラ(cefr6795)
シーアールシー ゼロ(czzf6499)
玖郎(cfmr9797)

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品目企画シナリオ 管理番号2797
クリエイター阿瀬 春(wxft9376)
クリエイターコメント 企画オファー、ありがとうございます。
 ……こ、今回も割りと突っ走り気味にお送りさせていただいております。この六名さまなら、と詰められるだけ詰めてみました。

 飛空船と王城での惨劇はほぼ同時に起こります。
 PCさま方の動かれ方に因りましては、死者の数が増えたり減ったり、『呪い』が城を離れたりします。

 まるっと解決な結末も、後味の悪い結末も、その中間な結末も、ご用意いたしまして、プレイング、お待ちしております。

参加者
キース・サバイン(cvav6757)ツーリスト 男 17歳 シエラフィの民
相沢 優(ctcn6216)コンダクター 男 17歳 大学生
シーアールシー ゼロ(czzf6499)ツーリスト 女 8歳 まどろむこと
ミルカ・アハティアラ(cefr6795)ツーリスト 女 12歳 サンタクロースの弟子
玖郎(cfmr9797)ツーリスト 男 30歳 天狗(あまきつね)
ハルカ・ロータス(cvmu4394)ツーリスト 男 26歳 強化兵士

ノベル

「お水ですか?」
 炊き出し用大鍋を抱え、ミルカは足を止める。手伝ううちに仲良くなった女達の誰かから借りたのか、雪色の狼の仮面を肩の後ろに負っている。
「沢山欲しいのです」
 銀色の眼を瞬かせ、ゼロは頷く。
「ええと、」
 待ってて下さい、とミルカは狼の仮面被る女達の輪の中に駆け戻る。打ち解けた様子で炊き出し作業の女達に鍋を返し、ゼロの傍に駆け戻る。
「玖郎さんが雨を降らせると言ってましたよ」
 戦う力を持たないミルカは、皆の連絡役になろうと決めていた。女達の手伝いをしながら、ロストナンバー達の間を駆け回り、戦いに際して皆がどう動くかの把握に努め、既に皆の大体の動きを頭に叩き込んでいる。
「キースさんと優さんはお城へ、ハルカさんと玖郎さんとわたしは船へ向かいます」
 ゼロはこくりと頷く。
「お願いがあるのです、ミルカさん」
 自分よりも小さな少女の『お願い』をミルカは真剣な顔で聞く。
「よう、ちっさいの」
 白いスカートの裾と片手に抱えた枕の縁を風に揺らして佇むゼロの傍に、クロが通りがかる。黒狼の仮面の下から聞こえる声に、笑みに紛れさせた焦燥を感じて、ゼロは小さく首を傾げた。
「優から予言を聞いてな」
 皆に集まって貰うのだと言うクロの、肩に担いだ槍の穂先が震える。
 ゼロはまどろむような表情で頷いた。
「ゼロは森の外で大きくなって、予言にあった血色の大蛇をひきつけるのです」
 枕を小脇に抱え、ゼロはクロとミルカを見仰ぐ。
「ゼロごと蛇を攻撃してくださいです。ゼロは皆に攻撃されても大丈夫なのです」
「おい、大きくなるってなどういう――」
「大丈夫なのですー」
 枕を抱え、ゼロは城を囲う森の木立へと姿を消す。
「あ、飛行船で来られる方のお名前、誰か一人でも分かりませんか?」
 赤い帽子を被った少女に朗らかに問われ、クロは当惑した声を上げつつ首是した。飛行船の長の名を告げ、その場を離れようとするクロの背をミルカは追う。
「お手伝いします!」
 ミルカは戦う力を持たない。けれど、
(わたしも自分にできることをがんばりたい)
 くるくると駆け回るミルカを見つけ、キースと優はサンタ衣装の少女を呼び止める。彼女は、名を知る者を基点としたテレポートが出来る。
「シエラのところに行きたいんだぁ」
「連れて行ってくれるかな?」
「はーい、今行きます!」
 跳ねるような足取りで元気よく駆けてくるミルカに、キースはまん丸の金眼を笑みの形に細める。
(俺は狩人だから、追う事には慣れていても)
 城を包んで高く聳える大樹を見仰ぐ。
(守る事には慣れていないんだよねぇ)
 クロを通じ、城の周囲に集うた一族に急速に広まる不吉な予言を心になぞる。
(城への被害は少なかったんだよねぇ)
 それは、王に力与えると言う樹が城を護ったが故か。
 大樹の一枝に繋がれたまま、悲鳴のように啼き続けていた灰色の巨鳥たちが、不意に声を途切れさせた。黒髪を風に惑わせ、優は砂駝鳥の群に頭を巡らせる。
「玖郎さん」
 二対の猛禽の翼持つ男が、砂駝鳥の獰猛そうな大きな嘴にどこか優しげな手つきで触れている。
「王にたずねたき旨がある」
 優達に告げながら、己の背丈よりも大きな鳥を束縛する手綱を緩める。鳥達にだけ分かる言葉で囁く。
「危始に瀕せば逃げろ」
 砂駝鳥のつぶらな瞳が瞬く。
「おまえたちが犠牲になる由はない」
 結局はひとの諍いだ、と天狗は思う。
 砂駝鳥の一羽が玖郎の肩に羽毛の頬を寄せる。鳥の声で訊く。
『其は繋がれしままか』
 玖郎は砂駝鳥の太い首を叩く。
(おれはおそらく、きたる災厄と近い)
 過日あの飛空船で砕けた竜刻に触れた際、過去を見せられた。
 他の仲間は己の過去を垣間見たようだが、玖郎が見たのは、己が種の起源。
(我らは、いくさにやぶれたひとの呪より生じたか)
 朧な過去の幻を、玖郎はそう判じた。
 けれど玖郎は、祖の成した呪に縛られては居らぬ。少なくとも、祖が核とした呪は意識化に沈んでいる。その現状から鑑みるに、
(祖はしくじったようだが)
 城の地下に沈みし呪は、永の時を経た末に己が恨みを晴らそうとしている。
 ――縄張りを奪われし悔恨
 ――種の存続を断たれし無念
 山神である天狗は、呪の核をそう読む。
(末代にまでおよぶ不倶戴天に共感はせぬが)
 理解は出来る。
「おれは、見定めたいのだろう」
 己に近しきものが宿願を開花させた、果ての姿を。
 砂駝鳥と人に呼ばれる飛ばぬ鳥は、玖郎から身を離す。嘴を閉ざし、空を仰ぐ。
 落ち着きを取り戻した砂駝鳥の群を離れ、玖郎はロストナンバーの仲間の元へ向かおうとして、足を止める。鉢金で覆われた眼で空を仰ぐ。鳥の仕種で首を傾げ、人の輪から少し離れた位置に佇むハルカへと視線を向ける。
「おまえの念か」
 不可視の膜のようなものが辺り一帯に薄く広く、張り巡らされていく。
 玖郎の視線と言葉を受け、ハルカは小さく頷く。
『異変があれば知らせる』
 周辺の全存在を知覚するESP感知網を広げながら、テレパスで玖郎に話しかける。仲間にもその旨告げる。
(アキほど巧くは出来ないけど)
 ほんの僅か、気弱な呟きを己の心にだけ零して、次には強い眼を空へと上らせる。
(出来うる限り生かす)
 己に誓う。ハルカはもう、知っている。
(皆、帰りを待つ誰かがいるのだから)
 ただ命令の通りに戦うだけだった過去の己ではない。
(俺は戦える。自分の意志で、やるべきことをやる)
 その為の力が、自分にはある。
 その力が誰かを救えることも、それがとても誇らしいことも、もう知っている。覚醒してから様々のことを経験して、知ることが出来た。己の力に対する自信を、守る者としての矜持を、得ることが出来た。
 城に集う一族の全ての事情や経緯を知っている訳ではないけれど、それでも、
(ここの人たちが死ねば誰かが悲しむ)
 それだけは痛いくらいに判る。
「じゃ、行きますー!」
 キースと優、玖郎の三人を集め、ミルカが元気に片手をあげる。
「ここをお願いします、ハルカさん」
 優の真剣な声と表情に応え、ハルカは微かに頬を緩める。この地に来てよりこの方、強張った表情をしている優に向け励ますように、笑む。



 陽の光とは違う蒼白い光の真中に立つ。
「うわ、何だ?!」
 白狼の仮面被った少年が警戒の声を上げる。腰掛けていた黒柩から飛び上がる。黒柩に立てかけた短槍を取り、樹の根が縦横に這う蒼白い光放つ石床に立つ。傍らに座っていた白髪の少女を背に庇って短槍を構え、
「優、キース」
 見知った二人の顔を確かめ、シロは槍の穂先を下ろした。
「それに、仲間の旅の人?」
「ミルカ・アハティアラです。こっちは玖郎さん」
 優しい宵の色した瞳を和らげ、ミルカは誰もを笑みにする明朗な笑みを浮かべる。
「旅人の不思議の術じゃの」
 肩で切り揃えた白髪を揺らし、シエラ王が黒柩から飛び降る。のんびりとした笑み浮かべるシエラの前、優は膝をつく。きょとんとするシエラの小さな手を取る。小さな手が、反射的に優の指を握る。
(生きている)
 酷く冷たい手ではあったけれど、それでも彼女がきちんと生きていることを実感し、優はようやく安堵する。深い息と共、強張っていた身体から力を抜く。
「何ぞ危急の用か」
 優の様子に、シエラの蒼い眼に力が籠もる。優の手を両手で掴んで揺する。
「安心せい、皆が居るぞ、私が力になるぞ」
「うん、がんばるよぉ」
 キースがシエラの傍に大きな身体をしゃがみこませる。
「大変なことが起きそうなんだぁ」
 誰も彼もを安心させるようなゆったりとした口調で、けれど暁の金色の瞳には真剣な色宿らせて、キースは『予言』を短く告げる。
 シロがごくりと喉を鳴らし、シエラが短く呻いて息を詰める。
「予言を現実にしたりはしない」
 優が強く言う。その為に仲間を募り、此処に来た。
「訊きたいことがあるんだぁ」
「知る限り答える」
 キースを仰ぎ、シエラは頷く。
「この樹」
 キースは足元の樹の根を示す。
「蛇獣が嫌ったりするのかい? 前に沢山咲いていた白焔花が見えないのは、呪いと関わりがあるからかなぁ?」
「翼持つ者の象徴たる白焔花から養分奪うて育つ樹での。花が多く育つを待ちて後、短期間に樹を育て蛇獣を封ぜる為に花の命を使うた。蛇獣を封じるに適する堅固な樹ではあるが、……そうじゃの、厭うてはおるかのう」
 キースは手を顎にやる。肉球のある大きな掌から、黒く頑丈な爪をほんの少し出して顎を引っ掻く。
「門番は骸骨だよねぇ。あれはシエラの力によるものなのかなー?」
「否。あれは、私を護ると言い張り、唯一人城に残りし我が従兄。己に永遠の呪術を掛けし、」
 シエラは悲しい息を吐き出す。
「……愚かな男」
 白い眉を寄せて吐き捨て、すぐに次の問いは何かと笑う。
 優がシエラの眼を覗き込む。
「蛇獣を倒す為には、……どうすればいい?」
「倒す事など考えておらなんだ故、分からぬ。千人の戦士が命散らしても、敵わなかった」
「前に封印した方法とは別の封印の手段とか、ないかなぁ?」
「封印の巫女の血引くは最早私一人なれば、そうさのう、私が蛇獣に喰われ祈れば封印は可能もしれぬ。それとて暫しの時間稼ぎにしかならぬ」
 シエラの答えに、難しい顔で口を閉ざすキースと優に代わり、玖郎が進み出る。
「いくさの経緯を」
 玖郎の持つ翼に、けれど王もシロも動じなかった。伝えられる翼持つ者の翼とは形が違う故か。
「元来、ここは翼人の所領であったのか」
 玖郎が生を受けた世界では、戦が頻発していた。山を棲家とする天狗は、人と人の戦に関わることは無かったが、同族同士で血を流し合うその様をつぶさに見ている。
 なればこそ、思う。敵領の中枢に落人が呪いを仕込むは至難。
「否、元々は翼持つ者も地を這う者もこの地にて共に生きて居った。戦の因とされるは、翼持つ者が地を這う者を害したが始めとされてはおる。が、私の知るは所詮勝者の歴史」
 戦の終焉時に翼人はその数を減らしてこの地を追われた、と王は苦々しげに続ける。
「されば、亡霊の仕業か」
 王の感情には構わず、天狗は重ねて問う。
「否、城の底に沈むは地を這う者と翼持つ者、ふたつ血を継ぎし子。戦時に地下牢に捕われ、終戦時にその姿を消し、……混乱に乗じ逃げ果せたかと思われていた、両一族の王の血を継ぎし者」
 王は掌を膝の上で拳に変える。
 呪と化すを己自身が望み地下に沈んだか、何者かに殺められ地下に隠し押し込められ、呪いと化したか。
 人の思う善悪に構わぬ玖郎は、小鳥の仕種で首を傾げる。
「翼人は滅んではおらぬのか」
 末裔がおれば呪いの仕組みも判じられよう、と告げる玖郎に、シロが小さく手を挙げる。
「おれ、知ってる。翼持つ者達は滅んでないよ。数は随分少なくなったけど、方々に散り散りになっちゃったけど、滅んでない」
 末裔の行方は知らないけれど、と項垂れる。
「おれ達も、数は減ったし散り散りだ」
 そうか、と頷き、玖郎は下がる。
「何かあればノートで知らせますね」
 城外に出て後、船に向かうミルカに、キースが船員達への伝言を頼む。
「念のためにねー」
「伝えます」
 ミルカの力に頼り、城を出ようとする間際、玖郎は城の内に翼人の残滓が残っていまいかと探った。巨大な化物の姿にまで育つほどの人の念ならば、何百年を経ようとその思いが残っているやも知れぬ。
 呪いの大元が沈む城の地下へと知覚の腕を伸ばし、玖郎が感じ取ったは、
 ――痛い辛いもう嫌だ助けて誰か憎い恨む呪う殺す怨む殺す必ず殺す
 延々と続く呪詛と膨大な憎悪。蛇獣と化した混血児のもの、蛇獣を倒すべく地下に潜り無惨な死を遂げた戦士達のもの、膨れ上がった怨恨にどうしようもなく包まれ、知覚の腕は呪いの根源に至ることは出来ぬ。
 大勢の呪詛をその身に流れ込ませて、けれど平然と立つ玖郎を伴い、ミルカはその能力で城の外へとテレポートする。
 地下に蛇獣を呑む宝物庫には、優とキース、シエラとシロが残った。 
「シエラ」
 キースは足元の床を覆う樹の根を見下ろす。
「蛇獣を倒せば、シエラは自由になれるのかい?」
「課せられた役目は果たしたことになるな」
 キースの問いに、シエラはこくりと首を傾けた。どこか達観したような様子に、優はシエラの手をもう一度きつく握る。
「役目を終えたら、シエラはどうなる?」
「分からぬ」
 優の強い眼差しに、シエラは静かに眼を伏せる。首を横に振る。
「シエラは、この部屋を出られないのかなぁ?」
「出れば、我が身は塵芥となろうて」
 初めてこの城を訪れた時に尋ね、そうして得たのと同じ答えを再度得て、キースは肩を落とす。これが最後と優が問う。
「最後の王の務めって、何?」
「城を崩壊させる。一族をこの地より解き放つ」
「……おれ達は縛られてるなんて思ってない」
 一族の一人であるシロが口を尖らせる。シエラは泣き出しそうな顔で笑う。
「シエラ」
 シエラの手を掴んだまま、優はシエラの蒼い眼を覗き込む。
(死なせたくない)
 その想いだけが強く強く、あった。
「最後の王の務めを終えたら、俺達と来ないか」
 ロストナンバーとなれば、或は。そう思った。覚醒すれば、この小さな友人は死を迎えずに済む。
「旅人か、良いのう」
 シエラは心底楽しげに笑う。そうして、笑顔のまま首を横に振る。
「そなたらのようになりたいと願いはすれど、私は王だ」
 旅人にはなれぬ、確固とした口調で返す。優の手を強く握り返し、もう一度笑う。
「ありがとう、優」
 門番のように短槍を手に黒柩の傍らに立つシロの横に、キースはどっしりと腰を下ろす。シエラから許可を得て、自身の大きな手に馴染むほどの樹を一本貰い受ける。
「シエラ、後でこれに呪術文字を書いてくれるかい?」
 効果があるかどうかは分からないけれどねぇ、と言いながら、慣れた手つきで持参した小刀を操り、樹を削る。来る時に備え、槍の形を作り始める。




 冷たい風が吹き寄せる。彼方の地平に巨大な暗雲が湧きあがる。恐ろしく黒い雲の腹の中を、雷が凶暴な蒼紫の光を放ち駆け巡る。
 空を行く船の主柱の下で舵輪を取る灰色狼の仮面の男は、豪雨の気配にほんの一瞬瞼を閉ざす。開く。その瞬きの間に、彼らは船首に現れた。
「な……?!」
 灰色狼の男は身を硬くする。敵か魔物か、甲板の戦士達が同様に警戒の体勢を取る。
 誰何の声を上げようとして、灰色狼の男は眉を寄せる。攻撃しようとする戦士の一人を制止する。
 現れたのは人の姿した三人。大人しげな顔立ちの銀髪の青年、華やかな赤い衣服纏うた少女、赤褐色の鷲の翼を持つ男。
「わたし達はあなた達の味方ですー!」
 懸命な声で叫ぶ少女は一族の証である狼の仮面を手にしている。
「敵ではあるまいて」
 主柱の天辺の見張り台から、老婆の嗄れた声が伝声管を通って降りて来る。
「翼持つ旅人に見覚えがないかい」
 老婆に言われ、灰色狼の仮面の男は先に船の修復に関わった風変わりな旅人達を思い出す。けれど記憶に残る旅人達の姿はどこかおぼろげだ。
「城がみえるとおなじくして、空わたる朱き蛇が襲来する」
 その数五百、翼持つ男は短い言葉で不吉な予言を告げる。
 戦士達がざわめく。竜刻使い達が不審の声を上げる。
「なるべく早いめに防御の壁を張ってください!」
 嘘の吐けなさそうな少女が必死の声で言う。
「船を護る。その為に此処に来た」
 銀の髪の青年が紅の眼に強い光宿らせ灰色狼の男を見る。
 飛空船の長である灰色狼の男は決断する。
「信じよう、旅の人」


 彼方の地平から船の上空までを黒雲が覆い尽くす。玖郎が呼んだ雷孕む暗雲を仰ぎ、灰色狼の仮面の船長は声を張る。
「障壁張れ!」
 甲板の中程、戦士達に守られる陣形組んだ竜刻使い達が応え、彼らがそれぞれに持つ竜刻がその力を引き出されて光を帯びる。透明な膜が音もなく船を包む。
 障壁が張られるのを待っていたかのように、黒い雲の空を稲妻が縦横に駆ける。轟音が空に響き、船を包む障壁を雨が叩く。雷が叩く。
「城が見え――」
 見張り台から降ってきた老婆の声が途切れる。
「何だありゃ」
 老婆の驚きを継いで、船長は頓狂な声を上げる。城を央とする森の外、白い人の形したものが居る。白銀の髪と白い服を雨でずぶ濡れにした、城よりも森の木々よりも巨大な、
「ゼロさん、……わたし達の仲間です!」
 船長の隣に立つミルカが、大丈夫ですと声を上げる。
「何か持ってんな」
「枕です」
「枕ァ?」
「枕です」
 身体と同じく巨大な枕を大事そうに抱え、巨大化したゼロが森の外に立つ。
「さっきミルカ嬢ちゃんが此方の竜刻持ってったのはあの大っきい子の所か」
 しかしデカいな、と船長は引きつり気味に笑う。
「この船の倍以上あるんじゃねえか」
「はい」
 ミルカは頷く。
「竜刻を持って船よりも大きくなっておけば、血の大蛇は脅威とみなしたゼロさんに向かうかもしれない、と」
 準備は整いましたね、とミルカは真直ぐに王城を見詰める。
 予言の通りに、王城を紅い霧が包む。雨に打たれ、血の霧は予言よりも遅い速度で、それでも空に紅い螺旋を描く。血の大槍が立ち上がる。
「来るぞォ!」
 船長が怒鳴り、
「いえ、まだです!」
 ミルカが否定する。血の大槍が王城から雷雲へ昇ろうとしたその瞬間、王城が真白の光を纏う。
「優さんが、城に居る仲間が敵の襲い掛かるタイミングをずらしてくれると」
 光にも似た防御壁に阻まれ、血の大槍が空に発つ己の勢いを己に返す。宙に紅が広がる。槍の形保てず、雨の中に血霧と崩れ――
「まだ来る」
 狼の仮面被った戦士達に混じり、船首部分に立つハルカが低く呟く。
 王城の纏う光が解けて消える。雨にその濃度を薄れさせながらも、血色の霧は鎌首もたげる大蛇の形となる。
 雷の這う空へと血の大蛇が飛ぶ。
「こっち来るぞオイ!」
 船長がうろたえた声を上げる。
 森の外に立つ巨大なゼロが水に膨らむように更に大きさを増す。森の樹よりも大きな手を伸ばし、血の大蛇の一端を掠め取る。
 ゼロの巨大化の能力は、ゼロが浴びた水の物理的性質も巨大化させている。ゼロに掌に掠められた大蛇がそこだけ抉り取られたようにゼロの手にくっつく。
 ゼロが大蛇を追うて巨大化しつつ腕を伸ばす。その白い指の先に、白金の炎が生まれる。
 ハルカが己が力で作り出した小さな太陽のような光に、ゼロの指先が突っ込む。木々を束ねたよりも巨大な指や掌に付着する、大蛇の形を構成していた何十もの血色の蛇が炎に触れる。蛇身の素である血が沸騰する。ゼロの纏う水が、空から降る雨が、白い湯気となる。血色の蛇と共に蒸発する。
 何者にも傷付けられることの無いゼロの手だけが、無傷でハルカの炎を擦り抜ける。
「敵の血によびよせられるか」
 主柱の先、見張り台よりも上の位置に赤褐色の翼を畳んで立つ玖郎が引き結んだ唇を開く。見張り台にしがみつく老婆をちらりと見遣り、翼を広げる。猛禽の肢で柱の先を蹴り、雷雲渦巻く空に飛び立つ。
 風を巻く玖郎の身を雷が叩く。蒼紫の光は玖郎の身を護り、敵を焼く鎧と化す。
 血の蛇群は玖郎の雨に、ハルカの炎に、蛇身を削られ大地に血の痕を落としながら、雷光の中に紅の尾をくねらせ船に迫る。
 竜刻使い達の作り出した障壁に血の大蛇が激突する。柔らかいものが踏み潰されるような音が響く。衝撃に船体が揺れる。
 船首の先、障壁に阻まれた蛇達の幾らかがその身を崩す。潰れ、血溜まりとなった蛇達が降雨に流され、障壁に沿うて流れ落ちる。
 竜刻使い達が快哉を叫ぶも、それは僅かの間。
 流れ落ちる血を押し退け、後続の蛇達が障壁に何百もの牙を立てる。
 血の奔流に押され、障壁ごと船が押し負ける。
「駄目だ、破られる!」
 竜刻使いの誰かが悲鳴を上げる。
「蛇の届かない位置に避難させる」
 ハルカが狂乱に陥りかける竜刻使い達の声の中に己の声を響かせる。
「一瞬で跳ばせる」
 空一面に雷鳴が轟く。蛇も船も、船に乗る人々も、全てを真白に染め上げて、一柱の雷が降る。
 雷は蛇の胴を叩く。血飛沫のように何十体の蛇が空に飛び散る。障壁にこびり付いた蛇の血が雷の衝撃波に吹き飛ぶ。
 地響きにも似た雷鳴の後、
「待ってくれ」
 船長がハルカに向け、叫ぶ。
「戦わせてくれ」
 ハルカは瞬間移動の為に甲板に付けようとしていた掌を持ち上げる。厳しい視線を船長に向ける。
「死ぬかもしれない」
 出来うる限り生かす為に、ハルカは船上に立っている。
 ハルカの視線を受け止め、船長は舵輪を握り直す。ハルカの側に立つ戦士達が各々の武器を構える。
「王のもとに、今度こそ行かなきゃならねえ」
 血色の大蛇は、蛇身を形作る何体もの蛇が抉られようと、炎に焼かれ雷に打たれようと、障壁に牙を立て続ける。
「そうか」
 ハルカは船長から大蛇に視線を移す。
(なら、)
 戦士達が鬨の声を上げる。
 障壁が破れ、血色の蛇が雪崩を打って甲板に押し寄せる。
(護るだけだ)
 ハルカは己が内の力を細身の身体から噴出させる。見えぬ力に潰され、大蛇の頭を形作っていた血色の蛇達が霧散する。
 障壁の破れた船を雨が打つ。血色の蛇が無数に甲板を這う。戦士達が蛇の牙に傷付きながら刃を振るう。竜刻使い達が腕を胴を蛇に締め上げられながらも竜刻の力を炎や氷に換える。
 雷と風をその翼に伴い、玖郎が空より降る。猛禽の爪持つ肢が蛇の頭を過たず掴み、甲板に押し付ける。肢に巻いた稲妻が爆ぜる。蛇の頭に爪が食い込む。頭を捻じ切られた蛇が胴をのた打ち回らせ、血の霧を吐き出す。雨に打たれ、薄紅い血溜まりとなる。
 乱戦となる。
「押し通る! 手伝え、ミルカ嬢ちゃん!」
 船長が舵輪にしがみつき、喚く。
「はい!」
 ミルカは船長と一緒に舵にしがみ付く。飛空船がその腹に抱く竜刻の力を受け、幾つもの帆柱に掲げられた帆が大きく膨らむ。
 舵と船長、ミルカを守る戦士達が蛇の群に囲まれる。腕に肢に食いつかれ、戦士達が悲鳴をあげる。ハルカが念動力の見えぬ手を伸ばし、戦士達を喰らう蛇を潰すも、守るべき人の命も奪うべき敵の動きも、どちらも多い。
 ミルカの周りの戦士達が倒れる。蛇達が血色の鱗を雨にぬめらせ、ミルカに近付く。船長が決死の覚悟で舵輪に縋りつく。
(皆、戦っている)
 これほど大きなものをテレポートさせた経験は今までにない。うまく出来る自信などない。うまく出来たとしても体力を使い果たしてしまうかもしれない。――けれど。
 戦士達の血で汚れる甲板に、ミルカは躊躇いなく両手を触れさせる。
(シエラさん、……ううん、)
 城の中に居るシエラのもとに『お届け』するには、この船は大きすぎる。普段なら距離の微調整は可能だけれど、今回ばかりは距離の調整も船の安全確保も難しい。
 ミルカは雨雲に覆われる空の向こうへと視線を投げる。そうして、格好の目印となる人を紫の眼に捉える。全身全霊の願いを籠めて、彼女の名を叫ぶ。
「ゼロさん……!」



 キースが槍の形に削りだした樹に、小さなナイフで呪術文字を彫りこんでいたシエラがぎくりと顔を強張らせる。何事か言おうと口を開きかけた時、床が震えた。
 地の底に蹲っていた巨大なものが大地を破り立ち上がろうとするかのように、床が衝き上げられる。黒柩から転がり落ちかけるシエラを傍に居た優が抱きとめる。
 再度床が震える。飛び出そうとするものを押さえ込んで、床に縦横に巡る樹の根が軋む。地の底に潜むものは、考えこむかのように動きを止める。
「外、凄い雨と雷だ」
 シロが樹の根に塞がれた窓を仰ぐ。不安な顔で短槍を握り締め、シエラ王の傍に寄り添う。
 キースがシエラから樹の槍を受け取る。
 シエラを片腕で抱き締めたまま、優がトラベルギアの剣を抜き放つ。
 樹の根の隙間を擦り抜け、血色の霧が床から噴き出す。視界が血の色に染まる。
「うぅわ!」
 シロが悲鳴を上げるも、凄まじいほどの霧の噴出は僅かの間。
「やっぱり先に船だ……!」
 呟くと同時、優は剣の切っ先を天井に掲げる。己の身から光の壁を生み出し、一瞬にして王城を光の壁の内へ包み込む。城を叩いていた雨音が止まり、
 ――次の刹那に、空へ昇ろうとした血の大蛇は光の壁に阻まれ、形を一度崩す。
 滝の激しさで、城包む樹を血の流れが打つ。
 優が長い息を吐き出す。床に膝をつきそうになって、踏み止まる。
(船は、頼みます)
 一度ならず助けてもらったことのあるハルカを、雷雨を呼ぶほどの力持つ玖郎を、思う。森の外に向かったゼロも、心強い力になってくれる。何かあればミルカがきっと連絡をくれる。
「優君!」
 キースに呼ばれ、反射的にシエラとシロを中心にした防御壁をトラベルギアの力で作り出す。
 錆色の火花と耳障りな音を散らして、防御壁に赤錆びた槍の穂先が弾かれる。転がる槍の柄に、床を這う樹の根の隙間から滲み出た血色の霧が触手のように巻きつく。血色の触手は床から這い上がる血色の霧を吸い上げ、瞬きの間に膨れ上がる。身震いして、血の色した骸骨の戦士の形となる。
 地の底から出ようと蛇獣が床を突き上げる。樹の根に阻まれ、地上に出ること叶わぬ本体に代わり、血色の霧が跳ね上がる。部屋を占める蒼白い光に朱が混ざる。霧は宙で雫となり、玉と膨らむ。床に落ちるまでに血色の骸骨の形となる。
 蛇獣に血肉も魂も喰われ取り込まれた古の戦士達が四人を取り囲む。
 シロが震える息を吐き出す。狼の仮面を被り直し、短槍を構える。樹の根の床に足を踏ん張り、骸骨達に捨て身の突進をしようと身を固くして、
「シエラは下がっててねー」
 ふわりとした口調で言い、しなやかな獣の動作で飛び出すキースの動きに緊張をさらわれた。眼を見張るシロの前で、キースは獅子の咆哮を上げる。
 地を蹴る肢の勢いにその巨体の重さを加え、キースは錆びた剣振り上げる血骨の戦士の胴を素手で薙ぐ。黒く鋭い爪が肉球の手の先から飛び出す。鉄の硬さの爪に肋を抉られ、戦士の身体が傾ぐ。それでも痛みを知らない戦士が振り下ろす剣を、
「タイム!」
 優のパスケースから飛び出した子狐型セクタンが撃ち出す炎の弾丸が弾き飛ばす。炎に巻かれた剣が音立てて床に落ちる。
 キースのトラベルギアの槍が戦士の頭骨を吹き飛ばす。そうしてようやく一体が人の形を崩す。
 地の底から現れた蛇獣の戦士達は赤く錆び付いた剣や槍を振りかざし、執拗にシエラとシロに迫ろうとする。
「シエラも、シロも」
 シエラを背に庇い、優は剣を構える。
「死なせたりしない」
 持ち主の意志を纏い、曇り無き刃が白光を放つ。シエラ目掛け突進する骨の戦士が、シロを挟み撃とうとする二体が、剣の力で複数生み出された小さな硝子のような防鏡壁に吹き飛ばされる。転がる戦士達をタイムが炎の弾丸で追撃する。キースが凄まじく重い拳で、槍の一振りで、戦士の骨を砕く。
 若草色のマントに覆われた背中を黒柩に押し付け、唇を真一文字に引き結び、シエラは優の背を仰ぐ。前線に立つキースを眼で追う。優の作り出す防鏡壁の助けを得てどうにか槍を繰り出すシロを見る。
 彼らは強い、とシエラは思う。蛇獣の作り出す戦士達に倒されることはきっとない、と祈るように信じる。けれど、地の底から霧として現れ、瞬きの内に人の形成す戦士達は倒せども倒せども現れる。
 彷徨う蒼い眼が、ふと怪訝そうに細まる。樹の根が走る床を確かめ、天井を確かめ、
「樹が」
 成長しておる、と首を傾げる。
 樹を操るシエラ王の意志ではない。外部から与えられた何か別の力によって、城を包み朱の蛇獣を封じ込めるべく巨大化させた樹が更に大きく育とうとしている。更に硬くなろうとしている。
「王、外に船が!」
 宝物庫の入り口に黒狼の仮面被ったクロが興奮と混乱入り混り気味に駆け込む。
「あとなんかでっかい女の子がでっかい竜刻を城に!」
「おお、それじゃ」
 樹の堅牢化の原因を知り、シエラは手を打ち合わせる。
 王の居室に溢れる血色の骸骨戦士達の姿に、クロは片手の短槍を構える。
「此処もか!」
 怒鳴りながら、床から湧き出る戦士の胴を槍で貫く。
 海鳴りにも似た音立てて、樹が生長して行く。膨らむ樹に耐えられず、天井を支える石柱が、壁が耳障りに軋む。
「こりゃあ耐えられんの」
 抱えていた白狼の仮面を被り、シエラが天井を仰いだ瞬間。
 爆ぜるように、樹が天井を押し破った。
 崩れ落ちる天井石は、部屋中に回る樹の根がそのほとんどを受け止め、抱きとめる。石を抱いたまま、樹は更に空を目指す。
 天井があった場所には、樹の梢が幾重にも重なる。梢の隙間を擦り抜け、怒涛の雨が降る。雷が降る。それでも、外光を受けて室内は格段に明るくなる。
 梢から次々と芽吹く淡緑に雨の雫が溜まる。雷光集めて蒼く輝き、雷に震える空気と共に室内に落ちる。
「シエラ」
 キースと優が顔色を変える。雨に打たれ、僅かに動きを鈍らせる戦士達を拳で剣で薙ぎ払う。
 呪術によって何百年に渡り時を留めて来た王は、この場を離れれば塵芥となり、死を迎えるという。
「雨を受けるは何百年ぶりかの」
 黒柩を背に、シエラは掌で雨を受ける。
「床が崩れねば我が身は崩れぬ」
 ふと、空が翳る。雨が遮られる。
「王さま、大丈夫なのです?」
 びしょ濡れの巨大な少女の顔が、網を張ったような樹の天井に覗く。銀色の長い睫毛が心配げに瞬きする。
 大事無い、と王が笑う。ゼロはふうわりと笑み、城を囲うて天を目指して伸びる樹よりも高い位置にある顔を持ち上げる。それほどに巨大であるにも関わらず、何者をも傷付けぬ不思議の身体の腕に大事に抱えられて、ミルカが懸命にテレポートさせた飛空船が見える。
「船を地面に下ろしたら、ゼロさんとそっちに行きますー!」
 高い位置にある船縁から身を乗り出し、ミルカが息を切らせて叫ぶ。ミルカの肩を背中を、船の戦士達が快哉叫んで叩いている。喜ぶ戦士や竜刻使い達にもみくちゃにされ、立っているのもやっとな状態で、けれどミルカは白い頬を上気させて笑う。
「魔物さんが逃れられないようにドームを被せておくのですー」
 船を小脇に抱え、ゼロは服の中から透明なボウルを引っ張り出す。
 巨大ゼロが城の脇に船を下ろしたのか、城包む大樹ごと地面が揺れる。船上の戦士達が吠える。城下の戦士達が応える。
「外はもう大丈夫だろう」
 クロが短く笑う。
 蛇獣の戦士と鍔迫り合いになりながら、優が視界の端に捉えたのは、上空から降る赤褐色の翼。梢の隙を縫うて、雷を纏った玖郎が降りる。猛禽の肢で血色の骸骨の頭を掴み、床に叩きつける。小さな破裂音立て、玖郎の纏う雷が蒼白い火花を爆ぜさせる。
「無事か」
 優の間近に聞こえた声は、ハルカのもの。
「はい!」
 優は応えると同時、自身の傍で防鏡壁を展開する。鍔迫っていた剣ごと弾かれ、吹き飛ばされた蛇獣の戦士が、瞬間移動で船から地に立ったハルカの念動力によって微塵に潰される。
 室内に群れる四十体近い血色の骸骨達を確かめ、ハルカは疲労の滲む短い息を吐き出す。緋色の眼に強い意志の光灯し、敵の群と対峙する。

 脈動するが如く、呪い撒き散らすが如く、床が震える。
「――シエラ!」
「その柩……!」
 敵の気配を感知して、キースとハルカが同時に叫ぶ。
 宝物庫の中央に位置する黒い柩の蓋が内側から弾け飛んだ。
 中に納められていたらしい銀色の硬貨が、瑞々しい色形残した様々な花が、王の宝物らしい縫いぐるみや木製の笛が宙に舞う。
 若草色のマントを揺らし、シエラが背後の柩を振り返る。傍らのシロが己の槍を投げ出してシエラの腕を掴む。己の身と引き換えに黒柩から離す。床に投げ出されかけるシエラの身が優に抱き止められ、
「シロ!」
 柩の底から噴き出した血色の大蛇の顎に胴から胸までを咥え込まれ、シロが掠れた悲鳴をあげる。血色の牙に刺され、シロの体が血に塗れる。
 大蛇の背から血が噴き出す。血は翼の形となる。大蛇の姿が縮み、翼持つ人骨の姿となる。シロの襟首を掴み、血色の王冠被った戦士が剥き出しの歯を打ち鳴らして嗤う。
「とうさま」
 シエラが哀しい悲鳴を叫ぶ。咄嗟に父王の元に駆けて行こうとする小さな王の身を、優が必死に抱きとめる。
「シロ!」
 シロの父親であるクロが、キースが、先王の姿した蛇獣の化身に突進しようとして、骸骨の戦士達に足止めを食らう。
 玖郎が床に蠢く骸骨の戦士達に向け、続けざまに幾条もの雷を放つ。雷光が室を真白に染め上げる。雷に焼かれた血色の戦士達が消し炭の色となり形を崩す。
 雷の閃光よりも速く、ハルカが先王の懐に己が身を瞬間転移させる。瞬きの間に移動した銀の髪の戦士に先王がたじろぎ、身を引くよりも先、ハルカがその力持つ手でシロの体に触れる。シロの身だけを先王の手から空中に転移させる。
 ハルカの念動力に支えられるシロを、
「ミルカ!」
「はーい!」
 ハルカのテレパスに呼ばれ、シロの傍らにテレポートで現れたミルカが抱きとめる。
「大きいゼロさんの傍に居ますので安心してください!」
 ミルカはシロを連れ、テレポートでその場を離れる。
 蛇獣は先王の姿から大蛇の姿となる。逃した獲物を追おうと鎌首をもたげて、気付いた。懐にはまだ、銀色の戦士が居る。
「逃さない」
 ハルカが囁く。翼持つ大蛇の腹に抱かれたまま、掌を血色の鱗に押し付ける。何もかもを無に帰す、己の最大の能力を使う。
 ハルカの手に触れられた蛇獣の身が、音も無く消失する。消失部分は、羽虫が飛び散るように大きく広がって行く。
 大蛇が怨みの声を上げる。
 優が白く輝く防鏡壁を身の周りに展開し、駆ける。床に転がる黒柩の蓋を蹴り、跳ぶ。のたうつ蛇の頭が優に向かうも、防鏡壁に弾かれる。蛇身がのけぞる。優は、大蛇の鱗を破り噴き出す血翼目掛け全身全力の一刀を放つ。白刃に切り裂かれた翼が血を噴く。
「シエラを守るんだぁ!」
 キースが片手に己が槍、もう片手に樹の槍を構え、疾走する。獅子の膂力で宙に舞い、身をくねらせる大蛇の背に己が槍を突き立てる。槍を支えに血の翼に取り付き、勢いつけた樹の槍で血の翼を半ばまで叩き斬る。
 蛇獣の血を浴びて、白焔花の養分で育つ樹の槍がキースの掌の中でざわりと動く。蛇の血を吸い上げるような樹の動きに、キースは金色の眼を丸くする。シエラに向け、声を張る。
「樹を育てて、シエラ」
 キースの言葉を受け、シエラが頷く。王に力を貸すという樹で出来た槍が生き物のように動く。血の大蛇から、地下の蛇獣から血を吸い上げ、切り出された樹の槍に新芽が芽吹く。水の流れるような音たてて真新しい樹皮が生まれ、その樹皮を割って新芽が顔を出し、小枝となる。幾つにも枝分かれし、大枝となる。青々とした葉を数百数千と繁らせる。
 朱の蛇獣を養分として、樹が育つ。
 体素である血を吸い上げられ、大蛇がのたうつ。その動きを押さえるべく、分解の力を使い続けていたハルカが不意に蛇の頭に体を弾かれた。樹の根の床に転がり、僅かの間昏倒していた己の身体を強靭な意志で引き摺り起こす。荒い息を洩らし、それでも再度大蛇に向かおうとする、疲労の色濃いハルカの腕を玖郎が掴む。
「涸れる」
 短く、朱の蛇獣の最期を告げる。
 蒼白い顔をもたげ、ハルカは天井覆う梢を押し上げ高く生長して行く樹を見る。周囲に蠢いていた蛇獣の戦士達の姿は跡形も無く消えている。地の底にあった巨大な呪いの塊の気配も、もう感じられない。
 部屋の央に育った大樹の幹を回り込んで、優とキースが現れる。安堵と疲労の混じった息を吐き、互いに笑み交わす。
「まだ、居る」
 ハルカが樹の根元に抱かれた黒柩を示す。見つかったとばかりに、柩の内から小さな赤い影が翼を羽ばたかせて飛び出す。手を伸ばすシエラ王を体当たりで突き倒し、掌ほどの大きさした翼持つ蛇が空高く舞い上がる。
 梢を抜けて舞い上がり、いつの間にか晴れようとする雲の彼方に飛び去ろうとして、透明な蓋のようなものにぶつかる。
「役に立ったのです」
 銀色の髪を風に揺らして、大きなゼロがふうわりと笑む。
 飛び上がっただけの距離を落ちて、朱の蛇獣の残滓である小さな蛇は、床に潰れる。崩れた形を整えようとする蛇に、ハルカは手を伸ばす。
(何も生み出せない)
 力の使い過ぎで遠退きかける意識の中、呻く。
「こんな虚しくて禍々しいものを残しちゃいけない」
 タスケテタスケテ、多くの人々を殺した朱の蛇獣が小さな声で繰り返す。
「なまじ抑えるゆえ抗する」
 玖郎が制止したのは、けれど蛇の助命の為ではない。
「この地にて可能なわざかは分からぬが」
 そう言い置いて告げるは、荒ぶる霊威を祀り上げ、神として神域に封じる、玖郎の郷里の習い。
「怨霊を高殿へ崇め奉りてなだめ、怨念を霊験へあらためんとする」
 呪いの根源は一人の人の念。それを朱の蛇獣にまで膨らませたは、多くの人々の怨念。
「呪いがひとの意識に象られたものならば、」
 己とて、と玖郎は心の内に呟きながら続ける。
「その形を変えるもひとの意識なのだろう」
 玖郎の言葉を受け、地を這う一族の王が朱の蛇獣を小さな掌で掬い上げる。制止の声上げるクロにそっと首を横に振って見せ、
「主も私も、空仰ぐは幾年振りじゃろうの」
 仇敵である朱の蛇獣の欠片を両手に戴き、シエラ王は雷雲の後に現れた蒼穹へと顔を上げる。


クリエイターコメント 大変お待たせいたしました。
 企画シナリオ、お届けにあがりました。

 書き切れませんでしたプレイングが御座いますこと、お詫び申し上げます。私の筆力不足です。
 想定していたよりも人死にが少なくなりました。話中の空気が明るくなりました。
 
 お楽しみ頂けましたら幸いです。
 ありがとうございました。
公開日時2013-08-04(日) 20:10

 

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