いつものように依頼がありますとのエアメールが入り、ロストナンバー達は視聴覚室を訪れた。うっかりもののロストナンバーでもいたのか扉はノックなしで開けられ、聞こえてきたのは聞いた事あるようなCMソングのメロディに乗った鼻歌のような。「♪つーるぺーた、なんて気にしなーい……わ……」 なんだろう、今すごく聞いちゃいけないモノを聞いた気がする。「…………」「…………」 支配する静寂。何とも言えない空気感に堪えかねたのか。「あ、あの、えっと……」 リクレカは口を開き。「た、例えばそれは貧乳誘拐魔……っ。壱番世界で、ロストナンバー保護を、お願い、します……」 依頼内容にとどめを刺されたのか、映像端末の再生ボタンを押しながらその場に崩れ落ちた。というか、その例えもどうなんだ。☆映像スタート☆ とある世界に、一人のお姫様が居ました。 豊かで平和な国のそのお姫様は国民にも慕われ、何不自由なく暮らしていましたが一つ悩みがあったのです。(私、どうして20歳を過ぎてもこんなにつるんぺたんなのだろう?) 王室の他の人々は豊かな体形だったのですが、お姫様の胸部装甲では豊かではなかったのです。 お姫様ラブな近衛兵長さんが居ました。 お姫様と幼馴染みでもある彼女の胸部装甲は平均値でしたが、日々接しているお姫様の悩みはどうにかしてあげたいと思っていました。(ああっ、姫様今日も麗しい。その慎ましやかな胸が私の恋心と欲望を刺激してたまりません。つるぺたは人類の至宝と早く気付いてください) その方向性は、色々とアレだったのですが。 そんなわけで、近衛兵長さんは実際に行動に移りました。 こっそりと街に出てはお姫様と似たような境遇の人に声を掛け、籠絡して、仲間を増やしながらお姫様に自信を持って貰えるよう説得を続けたのです。 ええ、籠絡です。彼女はそういう人なんです。ゆりんゆりんで見せられないよな展開です。見せられないので砂嵐です、しばらくお待ち下さい。 それはともかく、彼女も凛々しくて街の女性に人気があったので皆喜んで受け入れたそうです。 説得のはずが姫様ラブが高じてお姫様ともゆりんゆりんな展開になったりもしたそうです。 そして遂に彼女はお姫様も陥落させて、姫を正妻に夢のつるぺた百合ハーレムを築いたのでした。 めでたしめでたし。 ――とは、いかなくて。「ここは、どこ?」 幸せ一杯ルンルン気分で新たなハーレム入会希望者に会いに行く途中だった近衛兵長さんは、いつの間にか全く知らない場所にいたのでした。☆映像終了☆「つまり、この近衛兵長さんが今回の保護対象?」 ロストナンバーの確認に、床に手を付いたままこくこくと首を縦に振るリクレカ。なんかしばらくダメっぽいのでそっとしておこうと、一同は端末の近くに置かれたメモに目を通した。リクレカが説明用に用意していたメモにはこのような個条書きが記されていた。・山奥 近くに村・忍者あるいは暗殺者 大人貧乳フェチ・(貧乳欠乏症+籠絡)×現地人=誘拐=おまわりさんこの人です←時間の問題・押してダメなら引いてみる ……何のことだか分かるような分からないような。『えっとつまり、隠密に近いので捕まえるより誘き出した方が良さそうなのと、あまり時間をかけると現地の、あの、その、彼女の趣向に合致する方が恥ずかしい目に遭いかねないのでその前にどうにかしてください』 映像端末に文字が浮かび上がった。恥ずかしさのせいか机の下に潜り込んだリクレカが送ったらしい。 ちなみに近衛兵長、非番のお出かけだったので武器は持っていないらしい。冷静な状態なら話も通じるだろうとのことだ。メモに凄く気になる言葉はあったけど。 とりあえず、どう接触しようか……いっそ囮で誘き出す?(知らないものだらけだわね。ん? 音を立てて走ってくるのは……鉄の塊?) 近衛兵長ことルーシア・リアッシュは手頃な木に登って周囲を観察していた。周りの植物も時折見かける動物も、見たことがあるようで何処か違う。 彼女が鉄の塊と称したのは林業関係者のトラックだった。間伐でもするのだろうか、チェーンソーを取り出して声を掛け合いながら木を切っていく。(木こりかしら、声は聞こえるけど言葉が全く分からないわね。でも、人が来るということは) はっきりとは確認できなかったが、森の合間に集落のようなものが見えた気がする。(動き出したらついていって、人里に出たらまずは人体の大平原を堪能……じゃなかった、情報集めね) 飛ばされたタイミングがタイミングだったからか、うっかり欲望に忠実になりかけたようだ。大丈夫なのだろうか。(それにしてもうるさいわねあのノコギリ。って、あら? ち、ちちちちょっとその木人が居るから、上にいるからって、きゃー!?) 危うく木と一緒に地面に叩き付けられそうになり、彼女は慌てて別の木に飛び移った。「なあ、今何か居なかったか?」「んー? 鳥か猿じゃね?」 まさか木の上に人がいるとも思わず、作業を続ける村人達。言葉が分からないこともあり、ルーシアはひとまず様子を窺うことにした。
「やっぱりさ、なんていうかさ」 行きのロストレイルの車中、参考資料にと持ってきた例の映像を見ながらツィーダがふとこぼした。シーアールシーゼロとシュマイト・ハーケズヤが無言で先を促す。 「どうしようもなくダメだこの人ー!」 なのでツィーダは思ったままをとりあえず叫んだ。それは批判というよりむしろ一種の愛というか哀というかそういった感じの何かのような。 「全くだ、変態なら間に合っている」 一方のシュマイトはそういった感情を微塵も含まない、嫌悪感を隠さない声音で同調した。性格といい性癖といい色々と関わりたくないが放置するのも危険だ。なので彼女にとっては依頼内容が迷子の保護ではなく変態の回収になっている。 「ま、それはそれでアリだとも思うけどねー」 なので続くツィーダの言葉にシュマイトは思わずのけぞった。 「あ、ありなのか?」 「ほら、貧乳はステータスとか希少価値とか言うし?」 「くっ」 ツィーダの何気ない一言。シュマイトはMPにダメージを受けた。ちなみに今回のMPはマジックポイントではなくメンタルポイントである。 「そういうキミはどうなのだ?」 「ボク? そうだねー、過剰に大きすぎないならまな板でも巨乳でもいいかな」 「まな板……」 ツィーダのちょっぴりオタク的な思考。シュマイト、MPに小ダメージ。 実際問題、周りから見れば萌えポイントでも本人的にはコンプレックスだったりというのは割とあるわけで。シュマイトにとって貧乳嗜好は全くもって嬉しくない。個人で楽しむ分にはともかく、巻き込まれるのは全力で遠慮したい。 しかし、その手の悩みは当人や同類じゃないと分からない部分もあるわけで。そこら辺の事情をまるっと無視してルーシアの考えを鵜呑みするとどうなるかというと。 「ところでゼロ、さっきからその視線は何なのだ?」 2人のやり取りを横目に再度映像を見直していたゼロは、いつの間にか何かを悟ったかのようにシュマイトに尊敬の眼差しを向けていた。 「よく判らないけれど、シュマイトさんは知性以外でも世界の至宝だそうなのです。すごいのですー」 「ぐはっ!?」 ゼロの尊敬の一言、シュマイトはMPに致命的ダメージを受けた。なんだろう、以前も似たようなことがあった気がする。1年くらい前に。 「あれれ、どうしたのですー?」 何がどう作用したのか全く気付いていないゼロはシュマイトの顔を覗き込む。当の本人は心の中で戦闘中だったりして。 (ヒラキナオッタホウガラクダヨー、ラクダヨー) (一体何を開き直れと言うのだ何を!) (カミサマホトケサマツルペタサマー) (ええい、やめないか) 脳内でオウムの姿をした何かの使いとそんな格闘を繰り広げつつ、シュマイトが立ち直るにはしばらくの時間を要したそうな。ついでにシュマイトの中で依頼内容が変質者の捕縛にランクアップした。 まあそんなやり取りもありつつ。 ルーシアの確保自体はシュマイトとツィーダに任せることにして、ゼロは現地の人達が巻き込まれないようにすることにした。どうするのかというと……あれです、確実に釣りたいなら他の餌を無くしてしまえとかそんな感じの発想です。あるいは貧乳は2人だけで十分だ? そんなわけで彼女が取り出したのはその筋ではお馴染み(?)の謎団子。今回は怪・カスタム、改じゃなくて怪なのだ。 どんな代物かを説明すると、対象無差別(勿論非生物他も含む)の完全栄養食品だが本人が飲食を必要としないため味が極端にランダムな元祖謎団子を、味の振れ幅さらに倍&栄養価も一口で数分間マッチョorセクシーダイナマイトクラス(それは栄養価なのかと突っ込んではいけない)にした謎団子・怪、さらにそのマッチョorセクシーダイナマイトの持続時間を強化したのが今回のカスタムバージョンだ。 え、説明が長い? じゃあ名状しがたいナレッジキューブ製の何かということで。 巨大化を利用した増殖法で量の確保は問題ない。ということでゼロは村へ出向いて巻き込まれそうな人に謎団子・怪・カスタムを配っていった。 その成果かどうかは分からないが、先に結果を言えば村にルーシアの魔の手が伸びることはなかった。まあ別の意味で阿鼻叫喚だったり腰を抜かしたりせっかくだから以下省略とか色々あったそうですが、旅人の外套効果とか不条理度合とか諸々重なって村人達の間では夢オチにされたらしいです。あと怪談にもなったとか。 一方、ルーシアの確保に向かった2人はというと。 「とりあえずダメなひ……ええと、近衛兵長さん好みの見た目に外見データを弄らなきゃ」 ツィーダはそう言いながら外見を20歳前後のほっそりとした少女へと変化させる。それはツィーダの生みの親である早坂ことりの20歳時予想外見を成長予測アプリで出したものだったりするのだが、おあつらえ向きに胸は見事に平坦だった。年の割に小柄で幼く見えるのは長い病院暮らしの影響だろうか。 (あーでも、ことりにはちょっと申し訳ないかも) ある意味もう1人の自分ではあるけれど、生みの親の姿を変態の釣り餌にするわけで。もし本人が知ったら怒るだろうか? それとも、案外喜んで力を貸してくれたりするのだろうか。 ふとそんな事を考えてちょっぴりしんみりしているツィーダを横に、シュマイトも準備を始めていた。 「見た目は大丈夫と思うが、変態の感知力は侮れないからな」 「あー、そうだねー」 身近というか身内に変態なメイドさんが居るシュマイトの言には説得力があった。まあ件の彼女は特化型ではなく全方向っぽいけれど。 そんなわけで、念のためにシュマイトも囮になることにした。外套と帽子を脱いで、白のドレスシャツの胸部に自作の皮膚浸透性の即効性麻痺毒を仕込む。本人はこれまた自作の特性防毒下着を着用しているので影響はない。堪能したいなら素手だろうと予測しての罠だった。 準備を終えた2人は一路山奥へ。地形的に探しにくいことは容易に想像できたので、ツィーダはサーモグラフカメラのARアプリを立ち上げて熱源探査も併用していた。 程なく、熱源探査に複数の反応が引っかかった。小動物っぽいのは排除して、温度が高いのはチェーンソーのエンジンだろうか。消去法でルーシアの熱源を推測すると、シュマイトのギアの音響拡散効果のある魔法弾丸を併用してツィーダの音声アプリから女性の悲鳴をその方向へと再生した。彼女の現状と職業からこちらの方がいいだろうとはシュマイトの言だ。 「では、手筈通りに」 「だね」 あらかじめ入手しておいた地図アプリで目星を付けておいた細い林道へと入り、ルーシアが来るのを待つ。近くで作業していた現地人が先にやってきたが、そこはシュマイトが魔法弾丸で元居た場所に戻って貰った。ツィーダの狙撃アプリによるサポートで長距離射撃になったので本人達は直接こちらには気付いていないはずだ。程なく別の熱源が近づいてきたのだけれど。 「あ、どうしようこれ」 「どうした?」 「猪が来ちゃった」 まあ山奥だし、ビックリして出てきたのかもしれない。さっきのようにさっさと帰って貰っても良かったのだが。 「ふむ、考えようによっては使えるか」 シュマイトは少し考えると、減速効果のある魔法弾丸を猪に撃ち込んだ。そして。 (確実性を狙ってのこととはいえ、何故ここまで) 2人は猪から逃げていた。もちろん本気ではなく、ルーシアにそれっぽく見せるための演技が半分くらい入っている。先に外套を脱いだのも胸のサイズを見えやすくするためだし、逃げているのも走っても揺れない様子を見せるため、なのだが。 (何故ここまで胸の無さを強調せねばならんのだ) これが最も合理的だろうと導き出したのは他ならぬ自分なのだが、もれなく自分のコンプレックスを利用することになるのでシュマイトはMPにスリップダメージを受けていた。依頼のためとはいえとても恥ずかしいし悔しいし少し哀しい。こうなったらもうさっさと出てきて欲しいと心が折れかけたところで、ようやく目的の人物が現れた。 「とーぅ」 何か無駄に格好をつけている。 「ひっさぁつ、ウルトラスペシャル……えーと、どうしようかな」 いいからさっさと助けろと2人とも思った。多少は余裕がありそうに見えているのだろうか。 「ハイパワー、マグナムドロップキーック」 何処かで聞いた事あるような、でも微妙に違うような技名を叫びながら、ようやくルーシアは猪の横っ腹に跳び蹴りを入れた。道から転がり落ちていく猪を後目に、彼女は空中で一回転してしゅたっと地面に降り立った。 「大丈夫かしら、お嬢さん達」 キラーンと効果音が付きそうな笑顔で2人の方を向いたルーシアに、ひとまずはお礼を言う。 「うんうん、無事で何より。ところでちょっと訊きたいことがあるのだけれども――」 おそらくはここが何処なのかを訊こうとしたであろうルーシアの言葉が、途中で止まった。 彼女の目の前には、小柄で儚げだけれど成人っぽい少女と、大人な雰囲気だけど体つきは子供っぽい少女。2人ともつるぺた、うん、つるぺた。 「質問、は……というか、その手は、なんだ」 色々と消耗して肩で息をしているシュマイトが続きを促した。彼女の指摘通り、ルーシアの手は何故かわきわきと動いている。 「え? あーこれ? これはね、持病の発作?」 「持病なの!? というか疑問系!?」 色々とアレな発言にツィーダは突っ込んだ。 「うん持病。あのね、実はお姉さん(つるぺた分的な意味で)とぉってもお腹空いているんだけど、助けてもらえないかしらじゅるり」 「え、あ、うーん……いい、かな」 近衛兵長さん欲望と涎がだだ漏れですよ滅茶苦茶怪しいですよ、とはあえて突っ込まないツィーダだった。ついでに視線移動から自分が狙われていることにも気付いていたが、落ちつかせるためにはある程度堪能されるのは仕方ないかなと割り切っていた。姿を借りたことりには非常に申し訳ない気がするけれど。 「ありがと、じゃあ遠慮無く……頂きます」 許しを得られたルーシアは、よほど貧乳に飢えていたのか雰囲気から表情から色々と崩壊してただの変態と化した。 「ハスハスハスくんかくんかくんかふおぉぉぉ……」 (な ん だ こ の 変 態 は!?) 訂正、破壊力の高いド変態と化した。想像を超える変態っぷりにシュマイトは別の意味でMPにダメージを受けた。ツィーダも飛びかかられた時はビックリしたが、色々と耐性を持っていたのでどうにか受け止めた。のだが。 「ふぅんふぅん……あれ、何か違う?」 (うわ、気付かれた? さすがド変態) レベル高いなーと思わず感心する。ツィーダのARアバターは常人では判別できないくらい完成度が高いのだが、熟練者にはさすがに見破られてしまったようだ。熟練の方向がとってもアレだけど。 「手触りとか匂いとか違和感あるような……偽物?」 「ち、違うもん。虚乳じゃ……ないもん……」 偽物とまで言われてMPに中ダメージを受けるツィーダ。いやあの、あれですよ? ことりさんの胸のことじゃなくてARを見破られた方ですよ? 「あ、ごめんごめん。ちょーっと違和感あっただけだから。あれかな、お姉さん疲れているのかなー?」 「うぅ、好き勝手しておいてヒドイ」 「う、うぐっ」 ツィーダのカウンター気味の精神攻撃が効いているのか、ルーシアは正気に戻りかけている。 (このままいけ……ないか) しかしその目がシュマイトを捉えると、再び瞳に危険な光が宿った。 「あれ、お嬢さんってひょっとして……成長に悩んでいたりするのかしらぁ?」 「え? あ、い、いや、その、だな……」 しどろもどろになるシュマイト。MPダメージがかさんだところに図星だったからか冷静になりきれない。本人としては非常にコンプレックスだが周りから見れば萌えポイントになっていることは少なくないし、中にはコンプレックスそのものに萌えるという本人にとっては非常にありがたくない嗜好もあったりする。どうやらルーシアは成長コンプレックス萌えも持っているらしい。 「ふふっ、可愛いわね。悩む事なんてないのよ、こんなに魅力的なんだからはぁはぁ」 「いや、その語尾だけでも台無しなのだが」 他にも色々だだ漏れているし。というか色々嬉しくない気がするのだが。発言内容自体はかろうじてまともだけれど。 「貴方が魅力的すぎるのがいけないのよ」 「そんな表情で言われてもちっとも嬉しくないのだが。キミには分かるまい、年相応に見られない切なさが」 「それもまた魅力よ?」 「嬉しくないと言っている」 ダメだ話が通じない。話術で説得できる余地があればよかったのだが、やはり罠に掛けるしかないのだろうか。 「もう、わからずやさんね」 「それはこっちの台詞だ」 「そんなお嬢さんには……直接教えてあ・げ・る」 このまま胸に手を出させれば狙い通りだ。狙い通りだが、何か底知れない恐怖を感じる。触られるのは一瞬だ。一瞬なのだが、大事な何かを奪われてしまうような、取り返しのつかないような。これが変態の実力なのか。あのメイドももし本気を出したらこうなるのか。 「ふふっ、頂きまぁす……う゛!?」 緊張に時間感覚を引き延ばされてとても長く感じていたシュマイト。が、実際はほんの一瞬のうちにルーシアは手を伸ばしていて、ぺたっと掌が触れるとそのまま彼女は動けなくなった。 「え、あれ、どゆこと?」 ようやく全てが終わる。その安堵とこれまでの諸々を表情に隠さず、シュマイトはルーシアに告げた。 「大人しくお縄につきたまえこの変質者!」 後にルーシアは語った。般若を見たと。 合流したゼロが目にしたのはどんよりした空気を漂わせるシュマイトと、ロープに包帯に手錠に毛布に掛け布団にとこれでもかというくらい過剰に縛られたルーシアを地面に引きずっている鳥人姿のツィーダだった。過剰に縛ってあるのでルーシアが直に地面とこすれて怪我をすることは一応無さそうだ。 「ふふふ、ゼロか。ご覧の通り近衛兵長は捕まえたよ。わたしの身は汚れてしまったがな、ふふふ」 「シュマイトさん大丈夫なのですー?」 覚悟していたとはいえ、変態オーラだだ漏れの人物に胸を触らせたことはやはりダメージが大きかったようだ。親友同士でいちゃつくのとは訳が違った。 「あら可愛らしい子」 「襲うなよ変態」 「やだなぁ、幼女は愛でるものでしょ。手は出さないわよ」 シュマイトに睨まれ慌てて言い返すルーシア。言外にあなたにはとの含みを感じてシュマイトの全身を悪寒が走った。まあ麻痺が解けていないし拘束されているので手の出しようもないのだが。 「近衛兵長さん、お話は出来るのです?」 「ええ、大丈夫……あら? そういえばどうして貴方達には言葉が通じるのかしら」 どうやら大分落ちついてきたらしい。そんな彼女にゼロは現在の状況や世界図書館に説明した。ルーシアはすぐに状況を理解したようで、ついでにお互い自己紹介も済ませた。 「ごめんなさいね、そうとはしらず襲ったりして」 「分かればいい」 「ボクはそんなに気にしてないけどねー」 むすっとしたままシュマイトが答える。ツィーダはそれほどでもないようだ。 「ルーシアさんは大平原が好きなのです?」 「ええ。まあこれから膨らみそうなのは除くけどね」 「凄いよね貧乳マイスターっぷり。ボクの変身に気付かれるとは思わなかったよ」 「あはは、多少は本職も関係あるわよ?」 まあ王室の近衛兵ならその手の能力もいるかもしれないが、多少なのか。 それはともかく、ツィーダとルーシアはそれなりに打ち解けたようだ。 「ゼロは最初からこの姿で永遠にこの姿なのです。ゼロの胸部は永遠に平面なのですー」 そしてゼロは何故か自分の平面をアピールしていた。って、あの? 「そして無限に大きくなれるので、無限で永遠の大平原を用意できるのですー」 「ゼロ、何を言っているのかねキミは」 思わずシュマイトが突っ込む。なんでこう自分から死地に飛び込むような真似をするのだろうか。というか明らかに誘惑してますよねゼロさん。 「ゼロは思うのです。ルーシアさんは人体の大平原が好きなのです。そしてロストナンバーは成長しないのです。つまりロストナンバーなら幼女でもルーシアさんの好みに合うのです」 「いやそれはもっと危ないと思うよ?」 ツィーダも思わず突っ込んだ。もう充分変態なのに更にロリ属性まで付与!? 「大丈夫なのです。ストライクゾーンが広がれば需要と供給が一致する確率は高まるのです。双方が同意の上ならば問題はないのです。つまりルーシアさんがゼロで満足すれば問題ないのです」 「「いやいやいやいやいやいや」」 2人が揃って首を振った。確かに問題はないかもしれないが、いややっぱり問題じゃないのか? というか、だ。 「ゼロ、頼むからこれ以上変態を刺激しないでくれ」 「はいなのですー?」 シュマイトの言葉にゼロは首を傾げる。表向きはそう言っているものの、シュマイトの本音はむしろゼロに汚れて欲しくない気持ちの方が大きいかもしれない。自分自身もそうだし、友人もきっと望まない……はず、うん。ちょっと怪しい人が居なくもないけれど。 「それにこの手の変態さんって、ねえ」 ツィーダはルーシアに視線を向ける。彼女はよく分かっているわねといった表情で言い放った。 「ええ、1人になんて絞りきれないわ」 「黙れこの変態」 「だよねー」 シュマイトが吼え、ツィーダがやっぱりと頷く。ゼロはむぅと唸って考え込んだ。 後日、諸々の手続きが終わったルーシアはゼロに呼び出され、巨大化したゼロに無限の広さの永遠の大平原を存分に堪能……ええっ!?
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