オープニング

 ふと気配に気づくと、つぶらな瞳に見つめられている。
 モフトピアの不思議な住人――アニモフ。
 モフトピアの浮島のひとつに建設されたロストレイルの「駅」は、すでにアニモフたちに周知のものとなっており、降り立った旅人はアニモフたちの歓迎を受けることがある。アニモフたちはロストナンバーや世界図書館のなんたるかも理解していないが、かれらがやってくるとなにか楽しいことがあるのは知っているようだ。実際には調査と称する冒険旅行で楽しい目に遭っているのは旅人のほうなのだが、アニモフたちにしても旅人と接するのは珍しくて面白いものなのだろう。
 そんなわけで、「駅」のまわりには好奇心旺盛なアニモフたちが集まっていることがある。
 思いついた楽しい遊びを一緒にしてくれる人が、自分の浮島から持ってきた贈り物を受け取ってくれる人が、わくわくするようなお話を聞かせてくれる人が、列車に乗ってやってくるのを、今か今かと待っているのだ。
 
●ご案内
このソロシナリオでは「モフトピアでアニモフと交流する場面」が描写されます。あなたは冒険旅行の合間などにすこしだけ時間を見つけてアニモフの相手をすることにしました。

このソロシナリオに参加する方は、プレイングで、
・あなたが出会ったのはどんなアニモフか
・そのアニモフとどんなことをするのか
を必ず書いて下さい。

このシナリオの舞台はロストレイルの、モフトピアの「駅」周辺となりますので、あまり特殊な出来事は起こりません。

品目ソロシナリオ 管理番号1727
クリエイター霜月玲守(wsba2220)
クリエイターコメント久々にもっふもふになりたくなりました。
一緒にもっふもふになりませんか?

参加者
セリカ・カミシロ(cmmh2120)ツーリスト 女 17歳 アデル家ガーディアン

ノベル

 まだ時間がある、とセリカ・カミシロは空を見上げる。
 約束は正午。太陽が真上に訪れた時だ。
 初依頼を請けて訪れたモフトピアは、空が澄み渡るように青い。
(ここが、モフトピア)
 ふわふわの地面に、暖かな雰囲気。メルヘンチックでほんわかするその空気を感じつつ、辺りを見回す。
(あ)
 もじもじと、セリカを見つめる、熊型のアニモフだ。
「こんにちは」
 微笑みながら声をかけると、アニモフはぱあっと嬉しそうに笑って、とてとてとセリカに近づいてきた。
「こんにちは、なのー!」
(本当に、話ができるのね)
 セリカは感心したように、チケットを見る。もふもふのぬいぐるみのような、アニモフ。チケットがあれば会話ができるとは事前に説明を受けていたものの、実際にこうして会話ができるとどこかほっとする自分が居た。
 ほんの少し、不安に思っていたから。
(杞憂に終わったようね)
 セリカは近づいたアニモフと目線を合わせるために、そっとしゃがみこんだ。
「私、モフトピアは初めてなの。どんなところか、教えてくれる?」
「ぼくで、いいのー?」
「もちろん」
 こっくりと頷くと、アニモフは少し照れたようにもじもじとした後「分かったのー」と頷き返した。
「じゃあ、まずは……」
「あ、待って」
 とてとてと走り出そうとするアニモフに、セリカは慌てるように呼び止め、立ち上がってからアニモフを抱き上げ、縦抱っこする。
「どうしたのー?」
 きょとん、と尋ねてくるアニモフに、セリカは微笑む。もふもふとした毛並みと、つぶらな瞳が近い。
「顔を合わせて、お話ししたいの」
「でもぼく、先導できないの」
「それなら、何処に行けばいいのか、方向を教えてくれる?」
 セリカの提案に、アニモフは「分かったのー!」と答え、指示をする。
 色んな木の実が取れるカラフルな森だとか、活気あるアニモフの村だとか、七色の花々が咲き誇る花畑だとか。
 そのどれもが新鮮で、優しく、柔らかい。
「ええと、次は……あ、あそこにいくのー!」
 アニモフの指示に従っていくと、ふわっとした雲に到着する。
「この上、乗れるの?」
「もちろんなのー」
 セリカはどきどきしながら、雲の上に乗る。柔らかな感触が、歩き回った足に心地よく感じる。
「……わあ」
 そして目の前には、今まで回ってきた場所たちを一望できる、絶景が広がっていた。そよそよと吹く風も、実に清々しく感じる。
「ここはとっても綺麗で、平和で……」
 優しい空気がまとわりつき、セリカは胸がいっぱいになる。
 そんなセリカを、アニモフはじっと見つめる。
 セリカもその視線に気付き、アニモフをじっと見つめる。
(……緊張から解き放たれて、穏やかな気持ちになれるわ)
(それは良かったの)
 言葉には発していない、心での会話。
 美しい景色と清々しい風、柔らかな感触に優しい空気。
 同じものを見、感じ、思い。セリカとアニモフはシンクロしたのだ。
(いい世界ね)
(ありがとうなの)
 セリカとアニモフは笑いあい、今一度目の前の風景を見渡すのだった。


 正午が近づいたため、セリカはアニモフと別れる事になった。
 セリカはそっとアニモフを地面に下ろし、鞄から白いリボンを取り出す。
「首に、巻いていい?」
「もちろんなのー!」
 するりと巻かれるリボンは、セリカの髪についているものとお揃いだ。
「また一緒に遊びましょうね。約束」
 アニモフの頭を優しく撫でながら、セリカは言う。
「約束なのー!」
 アニモフも嬉しそうに笑い、セリカもつられて笑う。
 実に、晴れやかな笑顔で。
 ふわり、と風が吹き、セリカの髪とアニモフの首にそれぞれ巻かれた白いリボンが、ひらりひらりと揺れるのであった。


<リボンに約束を込めて・了>

クリエイターコメント この度は、ソロシナリオにご参加いただきまして、有難うございます。いかがでしたでしょうか。
 少しでも気に入ってくださると、嬉しいです。
 それでは、またお会いできるその時まで。
公開日時2012-02-22(水) 21:30

 

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