――ヴォロス ある盆地に、ディルイートと呼ばれる小国があった。その小国は、先代王の頃までに起こった幾つもの戦と、天災によって疲弊し、人々は貧困に喘いでいた。 それでも現在の王は、自ら財を削り、質素な暮らしをして民を救おうとしていたがそれにも限界が来ていた。 それでも、戦と天災の爪痕はまだ色濃く残っており、人々の苦しむ声が聞こえてくる。それに一番胸を痛めたのは、病弱だった王妃であった。 そんなある日、王妃は少しでも現状を打破しようと禁術書を書庫から持ち出してしまう。それは、王家に代々伝わる物の1つで、『生き物を黄金に変える』術が記されていた。 最初、王はこの力を使う事を躊躇った。というのも、王妃が「自分にその術を掛け、国の財に変えて欲しい」と願ったからである。愛する女性を、国を救う道具にしたくはない、と王は涙ながらに王妃を説得しようとしたが、彼女の決意は硬かった。 そして、遂に王は決断し……その禁術を使った。書き上げた魔法陣の中に王妃は立ち、花のような笑顔を浮かべてこう言った。「私は、この国と貴方様を心より愛しております。ですから、どうかこの体を役立ててください」「ありがとう、アリアロト。私が不甲斐ないばかりに……辛い役目を押し付けてしまって済まない……」 王はそう言い、呪文を唱える。次第に魔法陣に書かれた文字が浮かび上がり、王妃を包み込む。やがて王は全ての呪文を唱え終え、3度杖で地面を鳴らす。 魔法陣が全て浮かび上がって王妃を包み、爆ぜる。同時に漏れ出る眩しい光。それが止んだ時、現れたのは黄金の王妃の像であった。その顔は慈愛に満ちた笑みを浮かべており、いつでも優しい声を響かせそうなほど、美しかった。「……こ、これが禁術……」 王は、笑った。狂ったように一人笑った。黄金と化した王妃を抱きしめ、虚ろな瞳で笑い続けた。 ――0世界・司書室。「今回の任務は、ヴォロスにある小国での事件を解決する事です」 『導きの書』を開き、全長150センチ程のミミズクが静かに言う。目の前にいるのは深い緑色の瞳が特徴的な青年、ハクア・クロスフォード。彼は、偶然任務を受けてくれる人を探していた世界司書と出くわし、その内容に興味を持った。そして、仲間を集めて司書室へと赴き、今に至る。 ディルイートという国は戦と天災により国が傾き、人々が貧困に喘いでいたという。それに胸を痛めた国王夫妻だったが、王妃を象った黄金の像を売ってから風向きが変わった、そうだ。「なんでも、国家予算を支えられるほどの高値で売れたらしく、それらを使って人々を助け、傾国を乗り越えたそうです」 そこまでは良かったのだが、それからが問題だ。王妃が亡くなった辺りから、『身寄りのない若い娘』が次々と行方を晦ますようになったという。 国は誰もが3食きちんと食べる事ができ、病も治せ、子供たちが読み書き算盤を学ぶ場所が作られるほど豊かになった。けれども、暮らしがよくなるのを実感するたびに、『身寄りのない若い娘』の姿が消えていくのだ。「まさか……その娘たちもまた黄金にされている、というのではあるまいな」「ご明察です。今回は、このお嬢さん達の行き先を突き止め、王の暴挙を止めていただきたいのです」 ハクアの言葉に、世界司書は冷静に返し、どこか悲しい顔で言葉を続けた。「王は、愛する王妃をこんな形で喪って以降、若い娘を黄金に変える事で己を保とうとしています。けれども、このままではいけません」 因みに、この魔法は術者の死後も解除される事がなく、黄金にされた娘達はもう人間に戻ることはない、という。王はそれを知ってか知らずか、狂気を隠して『良い王』を演じ、夜になると娘を黄金に変え、オークションで商人に黄金の娘像を売りさばいているそうだ。「そして、王は若い娘たちの中に探し人をしている、という節も見受けられます。おそらく……」 司書は哀れんだような目で『導きの書』を閉ざすと、ハクア達に言った。「王は、今の所『身寄りのない娘達』のみを巧みに誘い出していますが、今後身寄りのある娘たちにも手を伸ばす可能性があります。これ以上犠牲者を出さない為にも、どうか、お願いします」 司書はチケットを人数分取り出すと、深々と頭を下げた。 悲しみから壊れ、金色に目の暗んだ王は、今日も狂気のままに娘を黄金に変える。けれども、彼はぽつり、呟いた。 ――アリアロト、お前はどこにいるんだい?=========!注意!企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。<参加予定者>ハクア・クロスフォード(cxxr7037)ライベ・ラピリト・スズシラ(cvnp5836)ニコ・ライニオ(cxzh6304)藤枝 竜(czxw1528)テリガン・ウルグナズ(cdnb2275)
起:黄金への道筋を ――ヴォロス・ディルイート城下。 活気ある市場から少し離れた路地に、ロストナンバー達はいた。彼らは誰もいないそこで、静かに打ち合わせをする。 (王国内でこの実情を知ってるのは、実行犯である王様だけ。だったら直接会いに行った方が良さそう、なんだけどねぇ) オレンジ色の毛並みが特徴的なネコ科っぽい悪魔族のテリガン・ウルグナズは帽子をかぶり直しながらそう思う。 「禁呪を使うのが王ならば、攫われた子達は王の元に連れて行かれる筈だよね」 ニコ・ライニオが赤い髪を揺らして言えば、他のメンバーもそれに頷く。 「王と捕まった娘たちの居場所は、嘗てその儀式が行われたという場所ではないでしょうかね。魔法陣は意外と手間がかかりますから」 「そうだろうな。意外と城の地下だったりするのかもしれない」 静かに言うライベ・ラピリト・スズシラに、ハクア・クロスフォードが相槌を打つ。黒い瞳と緑の瞳は微かに見える城を見据えていた。が、ややあって彼はもう一人の仲間の方を見る。 「やはり、囮が効果的だと思われますが」 「潜入調査が効果的だと思うんですけど……ってええっ?!」 ライベの言葉と視線に、藤枝 竜の肩がピクッ、と跳ねる。確かに潜入が一番効果的なのだろうが、黄金になるのは怖い。竜自身、禁呪を使ってしまった王に対して複雑な思いを抱いてはいたが……。 「俺も城への潜入を考えていたし、ニコとテリガンも何やら策があるみたいだな。今回は其々単独で調査に入るという事になりそうだな」 ハクアの言葉に、竜は他のメンバーを見た。するとニコが優しく笑う。 「僕は下町で調査をするよ。竜ちゃんが捕まった時もフォローできると思う」 「俺も下働きに変装して城へ入る。うまく娘達が囚われている所を探し出すから」 その言葉に、竜は頷き、少し怖がった様子で「絶対に助けに来てくださいよ?」というのであった。 「準備は整ったようだね。そいじゃ、張り切って行こうか!」 テリガンがウインク1つし、全員が行動を始める。下町へ消えていくニコと竜の姿を見送りながら、ライベは僅かに口元を緩める。 (あの2人にはなんとなく親近感が湧くんですよねぇ。ま、頑張ってくださいね) テリガンは城の近くまで飛んでいき、様子を探る。と、変装を済ませたハクアが城の者に混じって潜入したのが見えた。 (うまくいったみたいだな。次はオイラの番ってね) 彼があたりを見渡していると、運良く開けっ放しの窓が幾つか見つかった。湿度が低いとは言え、日差しは強くて暑い。風を通そうと開けられたのだろう。しめた、と指を鳴らし、テリガンは城の近くに植えられたであろう大木の枝に着地する。 意識を集中させると、隷属である霊体蝙蝠の群れがそこへと集まる。ニヤリ、と笑ったテリガンは、彼らにこう言った。 「あの城には、『人を黄金に変える』禁呪の魔道書がある。それを探してくるんだ」 隷属たちは音もなく飛び去り、城の中へと飛んでいった。一人残ったテリガンはふぅ、とため息をつくと何となくその城を眺めた。頑丈そうなその城のどこかに魔道書はある。果たして、それはどこにあるのだろうか? (禁呪を使わなくちゃ、国はダメになっていたかもしれない。けれど王様は、使った瞬間に大切なモノを失った。だから、今はそれを取り戻そうとしている、か) 瞳を細め、ぷるり、と飾り毛のついたカラカルの耳を震わせると、テリガンはもう一度小さくため息を付いた。 テリガンが霊体蝙蝠を放った頃、下働きとして潜入したハクアは早速仕事を与えられ、食材を調理場まで運んでいた。 (うまく娘達の居場所がつかめればいいが……) 根菜類が入った籠を運びながらそれとなく探るが、ヒントになりそうな物は見当たらない。けれども、食材を運んでいる最中にこんな話が聞こえてきた。 「あの娘達は地下においてていんですかい?」 「まぁ、仕方ないだろう。王様の考えは俺にはわからんが」 思わず足を止めようとしたが、怪しまれぬよう通り過ぎる。そうしながら彼はいかにしてそこへたどり着く道を探そうか、と考察するのだった。 下働きをしているうちに、ハクアはこの城に住む人間の数を聞き出す事ができた。王には家族はなく、使用人と合わせても20人前後だという。それにしても、届けられる食材の量は多い気がした。 「来客でもあるのか?」 「そうねぇ。ある意味そうかしらねぇ」 不思議に思って問うと、近くにいた老婆がため息混じりに言う。曰く、時折夜に茶話会を開く故軽食用の材料を多めに買っておくそうだ。しかし、ハクアには……それがなんとなく腑に落ちなかった。 一方、ライベは儀式の場所となりそうな所を探していた。ハクアと共に城へ近づいた彼はとりあえず噂から聞き込みをしていく事にしたが、案外人の口は硬く、思ったように情報は集まらない。 やり方が悪かったのか、と考えていると、垣根の隙間からハクアの姿が見えた。彼は果物が入った籠を持って何処かへ行こうとしている所だった。 (私も、情報を集めなければ) 彼が内心で呟いたその時1台の馬車が通る。危ない、と物陰に隠れた彼が見たものは、動物を連れた商人風の男だった。彼はイライラ混じりに呟く。 「動物はダメだと? ったくあの……」 それ以降はうまく聞こえなかったが、どうやら黄金に変えて売ってもらおうとでも思ったのだろうか? そして、さっきの言葉からもしかしたら魔法陣は城にあるのではないか、と疑問に思えてきた。 (と言うことは、いずれ竜さんやニコさんもここへ入るのでしょうかね?) と思う一方、彼は冷たい眼で城を見つめ、呟く。 「人を減らせば、いつかは国が立ちゆかなくなるもの。『己を保つ意味』で、身寄りのない若い娘を黄金に変える意味が皆目わかりませんね」 下町。スラムのような場所を探していたニコであったが、そういうモノは既に姿を変えている、との事で下町を散策する事にした。傍らにはここいらの娘達にアドバイスを貰って木綿のワンピースやらツユクサの花で染めた藍色の飾り紐をあしらったりした竜の姿が見える。 竜は「仕事を探しに来た、身寄りのない娘」を装って娘達から話を聞く。一方のニコは下町の娘たちから身寄りのない娘がいそうな場所などを聞いていた。 ニコの明るい振る舞いが、娘たちには受けていた。娘たちは彼に幾つかの情報をくれたが、どうやら「身寄りのない娘たちの失踪」は城下の全域でおこっていて、特にどこでというのが無いらしい。 竜に同情した娘たちが心配そうに彼女と話していた。栗毛を短く切った娘は、彼女を見、こう言って頭を撫でてくれた。 「私の友達も、つい最近攫われたのよ。貴方も気をつけて」 「ありがとうございます」 竜はぺこっ、と頭を下げながら……件の王に対し複雑な思いを募らせる。 (こんなふうに、身寄りのない人にも友達がいるんです。大切に思っている人がいるんです!) 思わず感情が高ぶる竜は深呼吸をして心を落ち着かせる。と、その時。ふと、甘い香りが竜の小さな鼻を擽る。振り返ると、青い衣服を纏ったおばさんが竜に耳打ちしてきた。 「お嬢ちゃん、お仕事を探してるんだろ? それならば夜、この通りにいればいい。いい働き口があるよ」 「?」 竜はなんのことだかよくわからないが、そのおばさんが人ごみから遠ざかるのを見送ってから、こっそりニコにその話をした。 「……それ、あからさまに怪しいんじゃないかな?」 「ですよね。でも気になります」 竜が首をかしげていると、娘の一人がニコを見つめる。 「何があったんです?」 「いや、この子運がいいみたいでね。仕事をやるって言われたらしいんだよ」 それでお礼を言われたんだ、と言えば竜も頷く。と、別の娘が少し考えてから……表情を曇らせた。先ほど竜が離していた、栗毛の娘だ。 「少し、嫌な予感がするわ。私の友達が攫われた時も、そうだったの。宿屋の下働きを探してるって言われた子がね、その次の日から姿を現さなくなって……」 何かあるな、とおもった2人は頷き合うと他の娘たちにもそんな事が無かったか、と聞いてみる事にした。 承:それは蜘蛛の糸のように ライベは一人、城の裏口にほど近い場所で身を休めていた。どうにか魔法陣のある場所を確認しておきたかったが、潜入方法を特になにも考えていなかったのである。 (さて、どうしましょうかね) 考え込んでいると、門番が交代している姿が見えた。そして、ドアが締まる直前、何やら蝙蝠のようなモノが見えた……気がした。ライベはわかったような目で肩を竦めると、いつのまにやらテリガンが姿を現していた。 「おや、テリガンさんでしたか」 「あの裏口は、かなりにおうね。どうやら件のオークションに繋がってるっぽいんだ」 幽霊蝙蝠からの調査結果を受け取ったテリガンは、ライベにそう伝えると一緒に裏口を見た。門番はウトウトしているようで、潜入するにはもってこいの状況だった。 「気が抜けていますね。これでは盗みにはいられても仕方がないでしょう」 「いや、なんかおかしい。もしかしたら……」 数十分前。ハクアは裏口の門番へ食事を持っていった際、奇妙の通路を見つけていた。ふと首をかしげていると、門番にどやされる。 「早く行け! お前のような下働きには関係ない場所だ! さっさとメシを寄越せ!!」 そう言われ、厨房から持ってきた食事を渡すと、声を荒あげた門番はサンドウィッチを1つ乱暴にとって口の中へと押し込むと、お茶をぐいっ、と一気に飲み干した。実は、こっそり眠気を誘う術を施したお茶だったりするのだが、そんな事に気付く様子はなかった。 「君も運が悪いね。あの男、腹が減るとああなんだよ」 済まなそうに言ったのはもう一人の若い番人。彼はサンドウィッチを頬張る同僚を見ながら小さな声で囁いた。 「あそこには、なんでも離れに通じる秘密の通路があるみたいだけど、本当かは誰も知らないよ。でも、先代の王様は愛人を離に住まわせて夜な夜な逢瀬に行っていたって噂だしなぁ」 「ありがとう。面白い話が聞けてよかったよ」 ハクアはそっと銀貨を1枚握らせ、若い門番は「べつにいいのに」と苦笑してそれを返す。ハクアが不思議そうにしているとややぽっちゃりした女性がやって来た。ハクアは一礼して下がると振り返る。 「今日は、陛下はお食事をお召し上がりにならないから、私たちの食事の時間は少し早くなるよ。忘れていると食べ損なうからね」 なんて茶目っ気混じりに言われ、ハクアは内心で苦笑した。ここの下働きの人たちは皆人が良くて面倒みもいい。いつの間にかいたハクアを警戒する事もなく親切にしてくれた。 (何故だろう、すごく……) 一人訝しがっていると、先ほどの女性が戻ってくる。そして、オレンジの瞳を細め、彼にそっとこう言った。 「今夜、陛下は離れでお眠りになる。だから、決して金色の眠りを妨げちゃいけないよ」 その言葉が、何を意味するか、少し嫌な予感を覚えるハクア。しかし、女性は真剣な瞳でハクアを見、こう付け加えた。 「薄々気付いてたんだ。アタシはね。でも、何もできなかった。だから、どうか終わらせておくれ……魔術師さんや」 「なぜ、わかった?」 ハクアの問いに、女性は苦笑しながら肩を竦める。 「アタシも魔女だったからさ」 だから、アンタから魔法の匂いを感じ取ったのさ、と静かに言えば彼女は必要な事があれば協力する、と言ってくれた。 (油断してますね) ライベがくすっ、と笑いながら裏口から入る。と、ハクアがそこにいた。彼はライベの姿を捉えると小声で言う 「今夜、王は娘を黄金に変えるつもりだ。恐らく、この先で」 「そうですか。それでは先に行って調べておきましょう。テリガンさんはどうしますか?」 いつのまにやらカラカルの耳を震わせたスーツ姿のテリガンがひょっこり姿を現していた。彼は狼のしっぽを揺らして首をふる。 「もうちょい、単独行動させてもらうよ」 「わかった。俺も時間を見つけてその通路へ行く」 ハクアはとりあえず、と気をつけろ、と軽く不運弾きの印を切る。そして2人を見送り、下働きとして門番の所へと食器を取りに行くのだった。 ――下町・とある広場。 竜が受けた誘いについてニコがぼやかして問うと、似たような話を聞いた娘がこの辺りでも2、3人いた事が分かった。そのうち1人は話をした翌日に姿を消していたそうだ。 「だから、やめておけって言ってたのに、カシスの奴」 そういったのは、元は孤児だと言っていた長身痩躯の女性だった。 「ここの王様が国を立て直してくれて3年ぐらいになるかな。スラムは下町に姿を変えて衛生的になったし、路上で暮らしてたアタイらにも仕事や住む場所、勉強の場所を作ってくれたりしてすっごく嬉しいよ」 自分が幼い頃はよく路上で人が死んでいたり、物乞いをしたりしていたから、としみじみと語る。 「とてもひどい状況だった、と聞いた事があるよ。しかし、3年でここまで素晴らしい所になるなんて、まるで魔法みたいだ」 とニコが言えば、彼女は「そうだな」と少し曇った表情で相槌を打つ。恐らく、身寄りのない娘達の事が気がかりなのだろう。 竜の周りにも、不安げな少女たちが集まってきた。彼女は竜が危ない目にあうんではなかろうか、と心配になったのだ。 「その話、少し嫌な予感がするわ。行かない方がいいわよ」 「ありがとうございます。けど……虎穴に入らずば虎子を得ず、ですから」 「えっ?」 思わず言ってしまった言葉に竜も「しまったっ」と思わず服を握る。ニコが咄嗟にあたりを伺うが、さっきのおばさんや怪しい存在はいなかった。首謀者に知られたら、うまく潜入できないかもしれない。 けれども、それは娘達をより協力的にさせた。おそらく、竜を「行方不明になった友達を探すために潜入しようとしている」とでも考えたのだろう。 後ろめたい気持ちを覚える竜に、娘達は首を振る。彼女たちは竜をキラキラ光る瞳で見つめ、協力出来る事があればなんでもする、と言ってくれた。 (僕より竜ちゃんの方が気に入られたみたいだね) ニコは少し複雑な気持ちでその様子を見ていたが、そんな彼の肩を叩く者がいた。年の頃は竜とさほど変わらなさそうな、猫目の娘だった。彼女は竜とニコの目を見、小声で問いかけた。 「声をかけたのはどんなおばさんだったの?」 「そうですね。青いローブの女性で、ちょっと甘い香りがしました」 竜が答えていると長身の女性が猫目の娘をまじまじとみる。 「ラキ、何か知ってるのかい?」 「アタシに昨日声をかけてきたおばさんと同じなんだよ、レーテ姐さん」 竜とニコは顔を見合わせる。そして、ラキと呼ばれた娘は思い出したようにこう言った。 「今思えば、カシスに話をしたっておばさんも、甘い匂いがしたってあの子言ってた」 その女性は今宵、ラキと竜に狙いを定めたらしい。ニコは一つ頷くと彼女にこう言った。 「今夜、僕と竜はその女性に会ってみよう。君は、決して行ってはいけないよ」 そして竜はぐっ、と拳を握り締めると俄然やる気がみなぎった。自分が行かなかったら、ラキが黄金にされてしまう。だったら……。 (ロキさん、ちゃんと後をつけてくださいよ) (少し考えがあるんだ) 2人は小声で話し、娘達から少し離れて打ち合わせをする事にした。 そして少し日が傾いた頃。テリガンは幽体蝙蝠の一体から魔道書の場所についての情報をもらっていた。 (ふぅん、通りで見付からないはずだぜ。王様が魔法で小さくして持ち歩いてるんだもんな) しかし、着替えの時ばかりは手放してしまう為そこを狙おう、と考える。現在は蝙蝠の一匹を見張りに付け、様子を伺っていた。 転:糸は縒り集まり、真相へと ライベは通路を一人進んでいき、その先で商人風の男たちを幾人も見つけた。どうやら、ここはオークションの会場になっているらしい。 (という事は、どこで術を施しているのでしょう?) 不思議に思いながらも辺りを見渡すと、出てきた通路の脇に、もう一つ穴があった。魔力の蓋がしてあり、『その道のヒト』でなければ解らないものだった。けれども、ライベは『その道』に通ずる存在である。 ライベが文様を壊さぬよう入り込むと、そこには鈍く光る魔方陣が書き込まれていた。そして、彼は思いつく。ここで黄金にかえて、それからオークションへかけるのではないか、と。 (その方が、運ぶ手間も省けるという訳ですか) 彼はノートを取り出すと調べた事を他のメンバーに知らせておく。そして返事が返ってくると、その場を出て、オークション会場をこっそりと伺う。どうやら、商人達は皆別室に案内されているらしく、誰もいなかった。彼はそっと幻覚を纏って隠れる事にした。 ――夜 頃合を見計らい、例の通路へと入ったハクアは地下へ続く道と、どこかへつながる道がを確認した。ノートにはライベからの調査報告が記されている。 (地下には娘達がいる、と。ここを真っ直ぐ行けば……) 確認しておこう、と地下に降りれば見張りと思わしき男と遭遇する。しかし、彼は予め呪文を完成させており、腹部に力を押し付けて昏倒させる。鈍い音を立てて男は倒れ、小さな悲鳴が聞こえた。 「誰?」 女性の声に、ハクアは指を唇の前で一本立てて静かにさせる。よく見ると、座敷牢らしき中に赤毛の娘が一人そこに立っていた。彼は助けに来た、と言おうとして人の声を捉える。慌てて物陰に隠れて様子を見ていると、竜とニコがそこへ連れてこられるのが見えた。 少し時間を巻き戻す。日が沈んだ後、人気のない下町の広場に竜とニコはいた。そして、2人の前に馬車は訪れていた。 「そっちのお兄さんは?」 青い服の女性は、不審そうにニコを見るも、ニコは努めて優しい笑顔をする。 「僕も身寄りはない。だから、連れて行って欲しいんだ」 そういいつつ、ちらりと馬車の中を見たが、誰も乗ってはいない。怪しい集団との戦いになるかもと危惧していたニコは、内心拍子抜けしていた。一方の竜は警戒をしつつも女性の方を見ていた。 「貴方が話したの?」 女性の問いに、竜はいいえ、と首を振る。ここで仲間である事がバレたらニコだけ置いていかれるかもしれない。けれども、女性は静かに考えると小さくため息を付いた。 「仕方ないわね。貴方も連れて行きましょ」 こうして、竜とニコは馬車に乗せられて、暗闇の中静かに城へとやって来た。そして裏口にある通路へと入れ込まれたのである。 座敷牢へと入れられたニコと竜であったが、人気が無くなった所でハクアが姿を現し、竜が炎のひと吹きして鍵を溶かして外に脱出した。目の前の出来事にきょとん、となる赤毛の少女にハクアは小さく頷く。 「彼女はどうする? こんな夜だし、一人で家に帰すなんて……」 「でも一緒に行動っていうのも危ないと思います」 ニコと竜の言葉に、ハクアはちょっと待て、と言ってその場を離れる。そして、暫くして一人の女性を連れてきた。 「ちょ、ハクアさん!」 「彼女は協力者だ」 ハクアの言葉に、オレンジの瞳の女性は一礼する。彼女が娘を匿ってくれるとの事だった。彼女はハクア達に「うまくやりなさい」と言って赤毛の娘を連れてその場を立ち去った。 その間に、竜は何気なく覗いたノートに、テリガンからのメッセージが来ていた事に気付く。 「どうした?」 「あのっ、テリガンさんが王様と一緒にこっちに来るみたいです」 時はそろそろ満ちそうだ。3人は頷き合うと細い通路へと歩いて行った。 ――王の寝室。 月明かりが照らす中、一人の男が質素だが上質な衣から着心地の悪そうなローブへと着替えていた。寝台には重そうな本が一冊置かれている。 (彼女を取り戻すまでは、続けるしかない。他の大国を押さえ込む為にも……) 男は、この国の王、ルイヴォスだった。鳶色の瞳を細めた彼はその手で魔道書に触れようとし……、そこにない事に気付く。顔を上げると、ネコ科の獣人と思わしき若者が、蝙蝠のような翼を広げてそこにいた。 「ディアボロス……か?」 その呟きに、テリガンは少しだけくすっ、と笑う。この辺りの方言で『悪魔』の事をこう呼ぶのだと風の噂で聞いていたのだ。 「そうさ。ルイヴォスで合ってたかな? オイラは力と金属を司る悪魔、テリガン=ウルグナズ」 そう言うと、指を鳴らし隷属に本を奪わせる。表情1つ変えずその様子を見ていたルイヴォスに意外だな、と思いつつもテリガンは言葉を続ける。 「この本は、元々オイラの物だ。早速で悪いけれど、返してもらうよ」 「好きにすればいい。術は、この身が覚えている」 この反応に面白くない、と思いながらもテリガンが言葉を発し用としたとき、ルイヴォスは彼に背を向けていた。 「娘をまだ黄金に変えるつもりなんだろ?」 「……」 王は、何も答えずその場を後にする。テリガンはニヤッ、と笑ってその後を追った。王はまだ知らない。黄金にする筈だった娘はいない事を。そして……ロストナンバー達がこの先にいる事を。 結:王は何を求め何を失ったのか 「こんな具合ですかね」 待ちくたびれた、とライベが苦笑すればニコと竜も同じような顔で返す。そして、その後ろではハクアが見つけ出したオークションの元締めを見えない紐で縛り上げて尋問していた。漸く全てを語り終えたのか、恐怖で顔を引きつらせた男は、その場に倒れて気絶していた。 「ライベが見つけた魔法陣で娘達を黄金にしていた、か。彼女たち自身にここまで歩かせていたんだ。黄金を運ぶ人がいなくて当然か」 そう言いながら、ハクアは男から取った書類をぺらぺらと捲り、より重いため息をついた。黄金に変えられた娘達の売り出された先が、近隣の国々の王侯貴族や商人であった為だ。なんでも、王妃の像を買った大国の王を真似ているらしい。 (この辺りでは、黄金の像を飾るのが流行っているのか?) そうとしか、ハクアには思えなかった。 王妃の願いである『国の安寧』の為に、若い娘を黄金に変えて売っているのではないか。そして、若い娘達に亡き妻の姿を重ねては彼女を探し……取り戻す為に黄金を売っているのではないか。 ハクアはそう考えていたのだが、どうやら推理は大筋では合っているらしい。彼はライベ達にもその資料を見せれば、竜がきっ、と厳しい顔になる。 「王妃様は、こんな事の為に国の犠牲になったんですか? だったら、こんな国滅びちゃえばよかったんですよっ!」 「確かに。ですが、民には罪などありません」 ぐっ、と拳を握り締める竜に、ライベがそっと言う。が、彼は耳を澄ましてこうも付け加える。 「けれども、私はここまでした王を生かす気持ちがありません」 「でも、王様がいなかったらこの国が立ち行かなくなるよ」 ニコの言葉にライベは「そこは心得ていますから」と頷くが、王への殺意は本物のようだった。 「そろそろ、来るぞ」 風から音を拾っていたハクアの言葉に、ニコ達もまた顔を上げる。そして、道の方から羽音と足音が聞こえてきた。 その少し前。通路の中ではこんなやりとりが繰り広げられていた。 「そうだ。オイラの所有物を預かってもらってたんだ。何かお礼をしなくちゃ」 テリガンがぽん、と手を打ち、ルイヴォスに話しかける。彼は黙って歩き続けるが、悪魔は言葉をやめない。 「世にも珍しい宝石? それとも沢山の金貨? 山のような金塊をお望み?」 ばらり、と手のひらから溢れ出る金貨が、ルイヴォスのローブを滑っては石畳に落ちていく。王はテリガンを無視しているように見えたが、次の言葉に、彼は足を止める。 「分かっているさ。そんな物じゃないって事ぐらいは。アンタが欲しいのはただ1つ。アリアロトだろ?」 「黙れ、ディアボロス。わかっているならば、生身で出して見せろ」 「それは、できない」 重々しい声色で言う王に対し、テリガンは、いつにもまして冷たい声で答える。最初は黄金の王妃像でもだそうと思ったが『生身の』と言った時点で出しても無駄だ、と思ったのだ。 「もう、彼女はオイラのモノだ。どんなに偽物を積まれても、彼女はお前の腕には戻らない。諦めるんだ」 「何……?」 ルイヴォスが歯を食いしばる。止めとばかりに、テリガンは黒い瞳を細めてこう言った。 ――王妃に別れを告げるがいい、ルイヴォス。 貴様の力の期限はもう過ぎ去った。 その声は、ハクア達にも聞こえていた。同時に、強い魔力が発射されるのも。 「うわぁっ?!」 慌てて飛び出るテリガンと、彼を掠める白い光。ライベとハクア、ニコは竜を庇い、逸れた光は壁に当たって砂を零した。 「争うつもりはない。そのディアボロスを仕向けたのはお前たちだな? 速やかにそいつを連れて去りこの事を忘れろ。そうすれば君たちも長生きできるぞ」 ルイヴォスはそう言って身構える。ハクアは努めて冷静になろうと深呼吸をし、王と向かい合う。その上空で、テリガンはどうにか怪我がない事に安堵していた。 「テリガンさん、例のモノは?」 ライベが問いかけると、テリガンの隷属たちが魔道書を手に飛んでいる。それを見、彼は小さな声で「上出来です」と礼を述べ、後ろへと下がらせた。それを入れ替わるように、燃える炎の目をした竜が転がるように前に出る。 「まだそんな事を続けるつもりなんですか? もうやめればいいじゃないですか! 国も救われたというのに、まだ黄金なんかに頼っているんですか! 貴方は王様失格ですよ!!」 捲し立てる竜に近づき、王は静かに少女の肩に触れた。黄金になるかと飛び退こうとした竜だったが、体に変化はなかった。どうやらあの魔法は、件の魔法陣上でなければ効果を発揮しないようだ。 ルイヴォスは、冷たい眼で竜を見つめ、諭すように口を開く。 「君に、何がわかる。資源のない国が他国から民に行き渡るように資源を買うとしたら、どれだけの金がいると思っている? 国を維持する為にも金がいる。民から搾り取るには多過ぎるほどの金がいる。アリアロトとの約束の為にも、金がいるのだよ」 「そのアリアロト王妃を探しているそうですが、探してなんになるというのです?」 ライベの問いかけに、ルイヴォスの表情が険しくなる。彼は鋭い目でライベを睨みつける。けれども、その答えを彼は言えなかったのか、言わなかったのか、押し黙ったままだった。 (ルイヴォス王とアリアロト妃は本当に愛し合っていた。けれども、妃は命を捧げ、黄金の像として売られた。弔おうにも柩は空っぽだった……) 黙って様子を伺っていたニコは、どこか寂しい気持ちになった。ルイヴォスが自然と若い娘たちに妻の姿を求めてしまうのも頷ける、と。その傍らで、ハクアがゆっくりと口を開いた。 「確かに黄金は国に富を与えたが、お前からは愛する人を奪った。そんな黄金の輝きは、美しいか?」 「美しいとかは関係がない」 切り捨てるように答えるルイヴォスだったが、それでもハクアはじっ、と王の目を見ながら言葉を続ける。 「この選択は自分で、いや、自分達で決めた事なのだろう? 王妃を止めず、黄金に変えたのは、お前自身も選択した結果なのだろう?」 その言葉に、ルイヴォスの目が見開かれる。彼は震える手を握り締め、呆然とハクアを見つめ続ける。 「王妃様も王妃様ですよ。自分の命を使うぐらいだったら他にやりようがあった筈です!」 「そうだね。だったら、こんなことにはなってなかっただろうにね」 悲しいよね、と今にも泣きそうな竜を慰めるようにニコは寄り添い、すっ、といつになく真面目な顔で声を上げた。 「人の命は、儚くて美しい。けれどもそれは『生きる』姿の輝きで、決して死してなった黄金像の輝きじゃあない。多くの人があの像を求めていたけれど、僕はそうおもう」 今も尚言葉を探そうとするルイヴォスを見据えるニコ。ライベとハクアは退路を断つようにそれとなく動き、テリガンは魔道書を自ら抱えて様子を伺う。 (これ、結局どうしよう。というより、俺もしかして早まった?) (とりあえず、様子を見よう。……早まったかもしれないが、お前がいなかったら説得の場に引き出せなかった) ハクアと小声で会話し、テリガンは一つ頷いて宙に舞う。そうしながらルイヴォスを見れば、先ほど覚えた威圧感が薄れている事に気付いた。 「王妃がこの国の現状を知って喜ぶと思ってるのかい?」 「彼女はこの国の姿を受け入れてくれる。私は、彼女の為に……その為にだけ生き続けているのだから」 何気なく問うテリガンに、ルイヴォスが更に手を握り締めて答えた。しかし、ライベは肩を竦める。 「果たして、そうでしょうか。今の貴方を見て、王妃は貴方が知るような笑顔でいると思いますか?」 自分はそうは思わない、というように冷たい目で語るライベの言葉を、ニコが受け取って口を開く。その目には深い悲しみが浮かび上がっていた。 「貴方は大事な事を忘れている。王妃様は国だけじゃなくて、貴方の事を愛し、助けようとしたのに」 ――王妃は、貴方を信じていた筈だ。 この国を導いて行ける、と。 「私は、国を導いていないというのか?」 ルイヴォスの問いかけに、ハクアが頷いて前に出る。 「お前は、国のために尽くしていた。けれども、どんなに裕福になっても、忘れてはいけないものがある」 「身寄りのない人だって、大切な人がいるんですよ。貴方は、自分の苦しみを誰かに押し付けているんです」 竜の言葉に、ルイヴォスが目を見開く。漸く何かに気づいたような彼に、ハクアとニコがさらに続く。 「自分で選んだ選択に、責任を持て。目の前の事から逃げるな。そうでなければ」 「貴方が愛した人が救ったこの国が、黄金のガラクタになってしまう」 ルイヴォスは、がっくりと項垂れその場に膝をついた。愛する人の行為が無駄になる。それは、耐え難い事だった。 「私は、どうすればいい?」 「何言ってるんですか。自分で働いたお金で王妃様を取り戻すんですよ。きっと元に戻す方法だって探せばある筈です」 まだ見つかっていないだけですよ、と竜が力説する。ルイヴォスは小さく息を漏らし、その場に蹲った。 「これは、もういらないな」 ハクアが魔道書をテリガンから受け取る。そして竜に火を吐くように頼んだ。始め竜は目を丸くしたものの、ふぅっ、と赤い赤い炎で魔道書を包み込み、あっという間に消し炭に変えてしまった。 所が、その時。ルイヴォスが何か呟き、ニコが止めようとした時にはルイヴォスの左足は黄金へと姿を変えていた。思わず悲鳴を上げる竜。誰もが釘づけになったその足に、ルイヴォスは自嘲の笑みを浮かべる。 「魔道書との因縁を切りました。だからこの程度で済んだのです。本当ならばここで死にたい。けれども、まだ時間をくれませんか?」 生かすつもりがないライベではあったが、君主制の国の事をよく知っている為、殺さなかった。それに手腕はありそうだ、とも睨んでいた。 (でなければ、国はここまで栄えなかったでしょうし) ハクア達もその願いを受け入れ、二度と人を黄金に変えないと誓った王に全てを託すことにした。 「でも、あの娘さんたちはどうなるんでしょう?」 「王様が、どうにかしてくれるといいよね」 竜が不安げに城を見、ニコが信じるように頷く。ライベはそんな2人に静かに言った。 「あの魔術を解いても、恐らく蘇らないでしょう。命を黄金に変えるような魔術ですからね」 「解決方法が見つかれば、それがよかったんだけれどもな」 テリガンが頭を書きながら呟くと、ハクアはふぅ、と小さくため息を付いた。 「しこりが残る、結末だな」 こうして、ロストナンバー達は帰路につく。確かに、黄金にされた王妃や娘達は救えなかったが、事件を止める事はできた。後は残された王がけじめを付けるしかないのだ。 彼らが立ち去った後。ディルイートの繁栄は緩やかながら長く続くものとなる。それは狂いから目覚めた王が、命をかけて国を守り続けたからであった。それから数年後に、自らも砂金の塊となって死した後も、民から慕われていたという。 (終)
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