クリエイター竜城英理(wwpx4614)
管理番号1200-9407 オファー日2011-03-08(火) 00:26

オファーPC フォッカー(cxad2415)ツーリスト 男 19歳 冒険飛行家
ゲストPC1 スイート・ピー(cmmv3920) ロストメモリー 女 15歳 少女娼婦
ゲストPC2 アーネスト・マルトラバーズ・シートン(cmzy8471) コンダクター 男 23歳 動物学者または獣医
ゲストPC3 ティリクティア(curp9866) ツーリスト 女 10歳 巫女姫

<ノベル>

 + 百貨店にて +

 4人がやって来たのは、充実した品揃えを誇る百貨店。
 当時から今も店内を飾るアンティークの装飾が、格式高く見せている。
 高い天井に、吹き抜けを煌びやかに彩るクリスタルの装飾。
 階段は赤い絨毯が敷かれ、絨毯留めのポールも鈍く金色に輝いて、年月を経て得た雰囲気を店内に醸し出していた。
 大人客の姿の方がが多いこの店も、今日は店内を使ってのイベントの為に、こどもの姿も多く見られた。
 身に纏っている衣装が、普段見かける衣装に比べて、賑やかな色合いや凝った小物、化粧を施した人々の姿があった。
 部隊に近い所に並ぶ姿は、様々だ。
 その間にも舞台上では、司会進行役が良く通る声と聞き取りやすい喋りで、観覧者を楽しませている。
 司会者の背後には、幾つかのディスプレイが取り付けられ、カメラの捉える映像を流している。
 これと思うコスチュームを用意して身を包んだ参加者は、これから百貨店内の客が入り込める場所、カメラの設置可能な場所を鬼ごっこのフィールドとして使用するのだ。
 一般の参加者に混じって参加している4人、フォッカーとスイート・ピー、アーネスト・マルトラバーズ・シートンとティリクティアで、不思議と各人が身につけているコスチュームは、特殊能力などが使えなくなっており、一般参加者同様の運動能力になっている。
 個々の身体能力もあるが、平均的なコンダクターレベルの体力程度になっていた。
 アーネストは元々コンダクターであるから、あまり変わりはしないのだが、他の3人は少し落ち着かなさげである。
「どうですか、様になっていますか?」
 色白で理性的な青の瞳に柔らかな印象を与える眼鏡、適度に撫でつけた茶色の髪は、灰色の毛並みに覆われ、姿が見えない。
 けれど、中から聞こえる声はアーネストだ。
 コスチューム自体は、会場で着替えたあとに、顔合わせするまでどのように変化するのかは知らなかったので、初めてのコスチュームプレイ姿を目にする事になる。
 灰色狼の顔つきは、どことなく動物好きで一緒に居ることの多い、知性ある動物の姿をしている友人に似ていた。
「とても似ているわ」
 ティリクティアが、そっと毛並みに触れる。流石に手触りは本物には負けるが、十分に手触りがいい。
 そういうティリクティアにも耳がある。猫耳だ。服装は、メイド姿で衣装は萌え文化でよく身につけられている短めの物ではなく、適度な長さのあるヴィクトリアンメイドの姿だ。その方が、この百貨店に合う気がしたから。
「可愛らしいお姿です」
「ありがとう! この耳、本物っぽい感触なの」
 猫耳を指さして、触って確かめてと勧める。ふんわりとスカートが揺れる。その手触りは、さらりとした感触で心地良い。
「それなら、この翼も良い出来だよ」
 そう言って、スイートは開いた翼が上下するのを見せてくれた。
 背中には真っ白な可愛らしい翼をつけ、キューピッドよろしく弓矢を手にしている。矢の先は吸盤で、店内や商品などを傷つけないように配慮してある。
 フォッカーは低い身長を生かして、ペンギンの姿だ。
 ぺたんぺたんと歩く足音が可愛らしい。背中に背負ったリュックには、魚の模型の尻尾が覗いていて、ご飯持参のペンギンさんといった雰囲気。
「おいらは逃走チームにゃ」
「わたくしたちは、鬼チームですから、追いかける側ですね」
 アーネストがスイートと目を合わせ、フォッカーとティリクティアを見やる。
「ふっふっふ、簡単には捕まらないのにゃ」
「はい♪ 簡単には捕まりませんから」
 ペンギンの中は、肉球つきの5本指な2足歩行猫なフォッカーで、ティリクティアというと、猫耳メイドで面白い組み合わせだ。
「作戦を考えましょ?」
 スイートがおっとりとした口調で、アーネストのセクタン、ベントテイルを撫でている。可愛らしいものには目がないスイート。
 もし、優勝したら、もちろん獲得したい商品も、可愛らしいものだ。
 是非とも優勝していただきたいもの。


 + 鬼ごっこ開始 +

 司会進行役がベルを鳴らし、逃走チームに所属する面々が百貨店の店内という広いフィールドを舞台として軽やかに駆け出す。
 豪速で駆け抜けていくものや、普段のショッピングにおける歩行速度と変わらないもの、最初から隠れる所を決めていて、真っ直ぐに目的地へとぶれずに向かうもの、やりかたは様々。
 店内のあちこちにあるカメラは、参加者が腕輪にしている発信器で位置情報を確認して、参加者の近くにあるカメラが姿を追っている。
 制限時間は2時間。

 鬼チームは、2時間内に逃走チーム最後の1人を捕まえた鬼が優勝。
 逃走チームは、2時間を過ぎた後、最後まで捕まらなかった人が優勝。

 となっている。
 今は出発地点が同じであるから、カメラで姿を追いかけていられるが、いずれ姿を見失う者も現れるかも知れない。
 その場合には、双方のチームの勝利条件に近い方に勝利をもたらすということになっている。
 とはいえ、全員を見つけて貰えるのが一番なのだが。
 主催の目的は、百貨店内で催されるコスチュームプレイで普段と違った広い場所でのお遊びである。
 十分に楽しんでくれている参加者の様子は、百貨店入口で配られるペーパーに開催している旨と、着ぐるみのひとが店内を歩き回っていても、変な人ではないからと書かれていた。
 そんなわけで、買い物をする客には伝えられており、買い物客が参加者の動向に興味を示していれば、上手く手助けしてくれる事もある。
 店内の買い物客による参加者への助言や手助けはルール違反にはならないので、上手く立ち回れば、同一の場所に隠れ続けることもできるし、逃げ続けることも可能だろう。

 ティリクティアは、ぱたぱたと可愛らしい足音を鳴らして、吹き抜けを取り囲む様にある弧を描いた階段を駆け上がる。
 ふんわりとスカートの裾を持ち上げて、軽やかに。
 階段を上がれば、すかさず物陰へと飛び込んで、あとを追いかける者がいないかどうか、そっと覗き込む。
 ぴこぴこと猫耳が覗くが、様々な品が売られている百貨店内では、そう違和感はない。
 レジャーランドでも動物の耳がついたカチューシャも売られているし、衣装に合えば普段でもうけている人もいる。
 売り場の洋服や商品が陳列されているケースの物陰を隠れるスペースとしながら、背後に勿論気をつけて、スタート地点から距離を稼ぐ。

 反対側にある階段は、フォッカーがぺたんぺたんとリズムよく、ペンギンの足を交互に持ち上げている。
 ペンギンの姿だからと遅いかもというのは、すこし認識を改めた方が良いかもしれない。
 サイズも自身と同様なベストサイズなペンギンな分、動きにくいということは無いのだろう。
 が、どうやらそれは階段だけで、平坦な床になると、一気にペースが落ちる。
 ぺたんぺたんと歩きにくそうに、店内を見上げて、どこに隠れようと、なるべく人の多い場所へと足を向けた。
 ぺたんぺたん。
 その音に惹かれて、母親に手を繋がれて歩いている子どもが、フォッカーを指さす。
「ママ、ペンギンさんがあるいてる!」
「あら、本当に可愛らしいわね。でも、本物じゃないのよ? 着ぐるみなのよ」
「ちいさいひと、はいってるの?」
「あなたと同じくらいの子が入ってるのかもしれないわね」
「なにしてるのかな?」
「鬼ごっこしてるそうよ? ほら、お店の入口でペーパーを貰ったでしょう?」
 そういって母親がバッグからペーパーを取り出す。
「がんばってね、ペンギンさん」
 子どもがフォッカーに手を振っている。
 フォッカーが立ち止まり、振り返る。
 ぶんぶんと手を振って応えた。
「隠れるところを探さないとにゃ」
 ぺたんぺたんと可愛らしい音をたてて。

 逃走チームから、20秒カウントした後、スタートするのは追いかける側である鬼チーム。
 ベルを奏でられ、逃走チームよりは余裕のある動作で追いかける。
 逃走チームがスタートしたと同時に、どの方向へと向かったのかを確認し、ターゲッティングしている分、目標はしっかりとしている。
 アーネストは、長身を生かし、上側から隠れていそうな場所へと視線を向ける。
 脳内では捜索範囲をグリッドで区切って、その区画を順番に捜索していく感覚だろうか。
 ひとつひとつを潰して行き、隠れている地点を明らかにしていく、地味にも見える作業。
 ベントテイルは、スイートの状況を把握すべく、手渡してある。
 可愛いもの好きのシートは喜んで抱きつつ、逃走チームの探索に参加している。
 紳士服や婦人服を扱う店がある階は、紛れやすく、人の姿も多い。
 日用品や食料品を扱う階も多いといえた。
 化粧品を扱う場所は、香水の香りも漂って、男性には足を踏み入れにくい場所だ。
 そういう場所は、適材適所で任せればいい話である。
 ペットを扱う階に、ペンギンの手が見えた様なきがして、立ち止まる。
 じっと見つめて、確かめてみる必要がありそうだと、は虫類や熱帯魚の扱うエリアへと足を踏み入れた。
 ぺたんぺたん。
 特徴的な足音。
 広い足幅で、その音の聞こえた場所へと進む。
 通路にでた。
 通路を挟んで向こう側は、ペットグッズを扱っている場所らしい。
 動物の遊び道具が所狭しと並んでいる。
「居た気がしたのですが……」
 暫く、周囲へ視線を巡らせるも、目的の人物は出てこなかった。

 アーネストが去った後、十分に秒数をカウントして出てきたのはフォッカー。
 ペットグッズ売り場の大型犬の犬小屋の中に紛れて居たのだ。
「危なかったにゃ」
 呼吸の音が聞こえないか心配で、ペットグッズのお店のエリアに入ってきたときには、吃驚して、息を詰めてジッとしているしかなかった。
 見つかったら、逃げようがないからだ。
 次の隠れ場所に移動したほうが良さそうだった。

「見つけた」
 スイートが、白金色の髪を視界に収め、気付いていないのを見て取ると、キューピッドの弓矢を取り出す。
 吸盤の付いた矢を番え、ティリクティアを狙う。
 これなら、上手く当たる、そう確信して発射した。
 が、着弾する直前、ティリクティアは、ぺたんとしゃがんでしまった。
 当たるはずだった場所を通過し、床にぺたんとくっつく矢。
 ちょうど、しゃがんだティリクティアが、その矢を見た。
「た、大変だわ」
 矢の飛んできた方向を見やれば、スイートが近づいてくる所だった。
 運で回避したティリクティアは、ふわりとした軽さを感じる動作で、スイートから離れて行く。
 念のために持って居た、ビー玉をころころと幾つかをスイートに向けて転がす。
 一生懸命に追いかけるが、運動音痴なので、スイートが思って居るより追いかけるスピードは遅い。
 上手くスイートの居る辺りにビー玉は転がり、その1つを踏んでしまう。
 顔面激突は回避したかったので、何とかバランスを取るも、後ろからすてーんと尻餅をついて転んでしまう。
「いった~い」
 スローモーな口調なので、そう危機的な感じには聞こえない。
 大丈夫ですかと、店員に手を差し伸べられ、立ち上がると、礼をいい、追いかけた。
 スイートの転んだ姿は見ていたのだろう、ティリクティアは見える場所に居た。
「待ってくれないとスイート泣いちゃう~」
 待っておくべきか、待たずにいるべきか考えていると、そこに現れたのはペンギン姿のフォッカー。
「逃げるにゃ!」
「はい!」
 ぺたんぺたんと足音を立てて、去っていく2人に、残念そうに呟くスイート。
「騙されてくれなかったなぁ」
 残念だわ、というシートの天使の翼が、ほんのちょっぴり下がっている気がした。
 2人を追いかけるのはアーネストのベントテイル。
 スイートの腕の中に居たベントテイルは転んだ時に、さり気なく飛び降りて、小さな身体を生かして、追いかけていた。

「もふもふしていい?」
 そうティリクティアが確認するも、既にフォッカーはもふられていた。
 抱きつく様にして、フォッカーを全体的に抱きしめる。
「既に抱きしめているにゃ」
「もう少し、奥へと行ってみる?」
「そうだにゃぁ……」
 フォッカーが答えようと何となく、ティリクティアの後ろへと目をやった。
「ん?」
 何か居た様な。
「どうしたの?」
「見つけましたよ」
 聞こえたのはアーネストの声。
 ティリクティアが、咄嗟にフォッカーを抱き上げて立ち上がる。
「逃げなきゃ!」
「逃がさないわよ」
 ベントテイルを追いかけてきたスイートが、矢をつがえて発射する。
 その矢は、ペンギン姿のフォッカーにぺたんとくっついた。
「2人一挙に捕まえましたね、おめでとうございます」
 開催サポート員の店員が、連絡を入れる。
「捕まっちゃった」
「なかなかやるにゃ」
 ぷらーんと矢をくっつけて、残念そうに顔を見合わせた。
「良かったですね」
 一緒にくっついているとは思わなかったので、スイートに全部持って行かれてしまった。
 とはいえ、楽しんだのは確かなので、問題ない。
 アーネストはフォッカーについた吸盤つきの矢をきゅぽんと音をさせて外して、毛並みを整えた。
 たわいない会話をしつつ、舞台のある会場へと戻る道すがらに、ベルの音が館内放送で流された。
 ゲームの終了の合図だった。


 + 優勝者は +

 鬼チームの優勝だった。
 司会進行役の男性が結果を記されたペーパーを手にして、結果報告をしている。
 その間に、鬼チームには、欲しい景品を聞いている。
 手渡されているカタログは、この百貨店で扱い、贈り物を贈るときに、最適な品を載せたもの。
 プレミアム感溢れるカタログを手にして、スイートとアーネストはどれにしようかと悩んでいるが、スイートは目的の物が載っていたので、そこにブックマーカーを挟み込んで、景品引き換え用紙に品名を記入して、判子を貰った。
 あとで店内にある店に自分で引き取りにいくのだ。
 アーネストは、高性能な双眼鏡が載っていたので、それにする。
 景品選びを楽しんで居る間に、内容は進行し、司会が終わりの挨拶をしていた。
 司会から、百貨店の支配人にマイクを引き継ぎ、参加してくれた人や観客、店内で買い物をする客に向けて礼をいい、これからもよろしくお願いしますと、話を締めたのだった。

 参加者にとティールームを開放してくれた場所で、3時のティータイムを楽しんで居た。
 コスチュームは着替え、各自普段の服装に戻っている。
 テーブルの上には、飲み物や洋菓子が並ぶ。
 あとは、獲得した景品が披露されていた。
 アーネストは、性能の良い双眼鏡で、首に掛けられるように、長さも調整されている。
 スイートは、ドピンクの特大テディベア。テーブルの上には置けないので、もう1人のメンバーとして、椅子に座っていた。
 店内に入ってきたときには、注目を一気に集めていたくらいだ。
 両手で腕が回りきらない位の大きさで、色と共に大きさも十分な存在感を示している。
「可愛いでしょ?」
 満足そうに言うスイートに、フォッカーは見上げていった。
「おいらより大きいにゃ」
「抱いて貰えそうねぇ」
 スイートは、ふふふっとその様子を想像して笑う。
「ペンギンは大変だったにゃ」
 泳ぐのもの凄く早い分、やはり歩くのが遅いペンギンは本当に歩きにくいのだなぁと実感して。
「コスプレ楽しかった!」
「野生観察とは違った観察が出来たのでよかったです」
 それぞれの感想を述べて、楽しい一日を終えたのだった。

クリエイターコメントオファー有り難う御座いました。
大変お待たせしてしまいました。
鬼ごっこの雰囲気になっていればいいのですが。
満足頂ければ嬉しいです。
公開日時2011-07-20(水) 21:10

 

このライターへメールを送る

 

ページトップへ

螺旋特急ロストレイル

ユーザーログイン

これまでのあらすじ

初めての方はこちらから

ゲームマニュアル