オープニング

 どっかのロストナンバーが言ってた話。それが本当かどうかなんて実際目にしたものしかわからない。ただの嘘かでたらめか、それとも――

 壱番世界のどこかの飲食店。そこにいた人たちになにやら上機嫌のロストナンバーが酒の入ったグラスを片手にその理由を得意げに話し始める。

 「オレァな~最近までさっぱりツイてなかったんだよ。 それがだよ、行商人だって言ってたやつに『コレは幸運のお守りだから』っつって貰ったこの羽を首飾りにして身に着けてたらよォ……すんげーツキ初めてよ……。 信じても信じなくてもいいぜ。 だけどクジに当たって超絶機嫌が良いんだ。 アンタ達に一杯奢らせてくれよ」

 そう言ってそこに居た客全員に酒を振舞ったという。しかも、その店の中で一番の上酒だったらしい。その日、店は笑顔で溢れたという。


 「――ということで、その話を詳しく調査したいという奇特な人が居ましてー……皆さんにその羽をゲットしてもらおうという依頼なのですよねー」
 どうやらそういった類のパワーグッズを科学的に調べている人間からの依頼らしく、先の男は全く見せても触らせてもくれなかったので自分で入手するしかないとなったらしい。
 司書の説明によると現在判明している情報は、

 ・モフトピアで高い山や大きな湖などの自然が多いある浮遊島の一つで【正月中に鷹のアニモフの羽】がうわさのお守りらしい。

 ・中でもあるタイミングに何枚か落とす【黄金の羽】は特に希少らしい。

 ・その羽でアクセサリーを作ると約一年間ご利益があるとかないとか。

 ・ただ、具体的な場所や黄金の羽になるタイミングは詳しくはわかっていない。正月に関係があるらしいが……。


 ……なんともあいまいではあるが、大体はこんな感じ、と付け加えるように言う。
 「まぁ調べるって言っても少し観察したらお返しするので後はアクセサリーにするなりしおりにするなり好きにしてくれ、とのことなので縁起物をゲットしに行くって感じで言ってみたらどうでしょうか。 特に危険なものもなく丸一日ほど時間はあるようですし、鷹型のアニモフの他にも今年の干支のウサギのアニモフも居ますので癒されても良いと思いますよ」
 柔らかく笑うと司書は笑顔で送り出した。皆さんに幸運が訪れますように、と言って。

品目シナリオ 管理番号1124
クリエイター淀川(wxuh3447)
クリエイターコメントパワーグッズというよりは縁起物です。皆様あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
今回も気楽に気張らず参加して楽しんでいただければいいな、と思ってます。

正月に関係ある感じに【鷹アニモフの居る場所】と【ゲットするタイミング】と【運】が一致すれば見事黄金の羽ゲットだぜ!もしかしたら【ある食べ物】でおびき寄せることも出来るかも……。
一人が鷹アニモフを見つければ幸運の羽はもれなくゲットできたり背中に乗って空の旅を満喫出来るかもしれません。
その他、日々お疲れの人はウサギのアニモフと戯れていやされることも出来ます。超ラビットファーです。
羽は本当にご利益があるかどうかは実際わかりません。信じれば報われる……かも?

皆様のご参加お待ちしております。

参加者
藤枝 竜(czxw1528)ツーリスト 女 16歳 学生
蓮見沢 理比古(cuup5491)コンダクター 男 35歳 第二十六代蓮見沢家当主
幽太郎・AHI/MD-01P(ccrp7008)ツーリスト その他 1歳 偵察ロボット試作機
ツヴァイ(cytv1041)ツーリスト 男 19歳 皇子
虚空(cudz6872)コンダクター 男 35歳 忍べていないシノビ、蓮見沢家のオカン
シーアールシー ゼロ(czzf6499)ツーリスト 女 8歳 まどろむこと
コレット・ネロ(cput4934)コンダクター 女 16歳 学生
ワード・フェアグリッド(cfew3333)ツーリスト 男 21歳 従者
玖郎(cfmr9797)ツーリスト 男 30歳 天狗(あまきつね)
バナー(cptd2674)ツーリスト 男 17歳 冒険者

ノベル

 いつもの様にモフトピアの駅に到着して、その噂の鷹アニモフが居ると言う浮遊島に着いた際、何人かはまず時間を確認した。
 「現在午後11時くらい……か。目指すものは多分あの山、だな」
 大きなバックパックを背負った虚空がそう呟くと、理比古の方へ視線を送る。そして指差すは頭に白銀を乗せた高い高い山。それに気がついた理比古は多分正解、と言わんばかりに笑みで返事を返した。周りを見渡してみると皆同じことを考えている。この浮遊島で【一番高い山】へ向かおうとしているのだ。そして時間も……
 「ん?どうしたんだ。時計と睨めっこなんてモフトピアで似合わないぜ」
 そうツヴァイが不思議そうに口走った。するとコレットが袖をくいっと引っ張り、
 「多分、皆タイミングのコト、気にしてるんだと思うの……私の予想だとまだ時間はあるけれど」
 手に入れるタイミングのことを気にしているのだとこっそり伝える。多分、【タイミング】に関して気がついている人は……みな同じ時間を連想していた。
 「思ったより時間もあることだし、腹ごしらえでもしましょう!」
 と竜が皆に声をかけた。案外皆食べるものをもってきている。竜に至っては小休止の時の全員分のバーガーまで持ってきていた。これで山を登っていてお腹が空いても大惨事には至らないだろう。ただ、皆の半分以上のものは……そう、茄子。一富士二鷹三茄子。全員が口を揃えて言った壱番世界の正月の縁起物だ。
 「コレダケ茄子ガアレバ、万ガ一オナカガ空キ過ギテモ大丈夫ソウダネ……」
 と幽太郎。理比古が茄子料理をしようと思っていたため結構な量を持ってきており、他の人の分も合わせておそらく5日間はずっと茄子料理出来るんではないかという量で……その量を見てゼロは現地調達は無用だな、と思ったという。
 そしてその茄子の山(の一部)を使った茄子料理、麻婆ナスを作る作業へと移った。なんといっても何匹いるかわからない鷹アニモフの分プラス十人分の量である。作るのからして骨が折れそうだ。と、思っていたがこれだけ人数が居ればそうでもないようだ。以前の経験から話をしながらもてきぱきと釜戸を作る理比古と虚空。
 「野営訓練を思い出すねー。 あの時よりよっぽど気は楽だけど」
 「……まあ、あの時の行軍に比べりゃどってことねぇけどよ」
 「こんなところで役に立つとは思わなかったけどね」
 「あの、茄子切り終りました」
 出来たかまどに竜が火をつけ、鍋が温まってきたらコレットやゼロが切った茄子を入れ炒めて……
 「わ、もうできたんです?」
 思ったよりも早く出来た茄子料理を皆でおいしく頂くことに。おかわりももちろんある。
 「一富士二鷹三茄子……だよネ? ……でモ、なんデ? 縁起ってなあニ?」
 食事をしながら素朴な疑問を口にして首を傾げワードが尋ねる。それに対して玖郎が答える。
 「縁起とはなにかが起こる前兆やそのきざしなどを指す言葉だ。いいことや悪いことが起こるときにつかう言葉だな」
 真剣に問答を繰り替えしていくこの二人をよそに、ゼロはキューブのことを考えていた。ロストレイルの中でのこと、運試しにナレッジキューブでコイントスを行おうとしたのだが、どこが表でどこが裏なのか判らず仕舞い。そのことを考えているうちに到着して今に至る。もちろん問題は解けてない。……というかそこが問題ではない。雑念を掃うかのように頭をブンブンと横に振った。
 けっこうたかいなー、と山を見ながら竜が言うとこの浮遊島で一番高い山だもん!そりゃ高いよ、とバナーが返して。ツヴァイがコレットが切った茄子うまいぜ!というとコレットは微笑を浮かべながら皆で切ったのよ。でもありがとう、と言った。
 お腹が一杯になり、皆の士気が高まった所で……
 「「行きますか、あの山の頂まで!」」


メルヘンの世界、モフトピア。だからといって侮ってはいけない。メルヘンだからこそ現実より厳しい世界が広がっている場合もあるのだ。
 「急な坂、というか……子供が描いた山を大きくしたというか……」
 まるで張りぼてに描いてあるかのごとく凹凸も無く平らに45度斜面が続いている山。飛べる玖郎やワードは特に苦も無く上まで飛んでいけるだろう。
 「見た目より……距離もけっこうあるな」
玖郎が少し先まで見に行ったがやはり一番高い山、一筋縄ではいかないようで。
鍛えている男性はともかく平均的な体力の女性は参ってしまうぐらいの急な坂。ゼロが巨大化して頂上まで連れて行くですか?と尋ねるが、もしかしたら驚かせてしまうかもしれないという理由で別の方法を考える。飛行が出来る者達が女性を背負って登っていくにはちょっと時間が足りないくらいか、でも出来れば皆で登りたい、と頭を抱えているとそこに数羽のフクロウ(というにはあまりに大きい、胴体だけで1.5mはあろうかというサイズ)のアニモフがやってきた。
 「ぼくらはこのやまのリフトやさん!」
 「おいしいモノとこうかんでゆきのないとこまでまでいっきにはこんであげるよ!」
 雪ノ無イトコロ、トイウト八合目付近マデカナ、と幽太郎が山の上を見ながら言う。
 「なんだかいいにおいがこのひとたちからするんだよ!」
 「それをわけてくれたらみんなはこんであげるよ!」
 その話を聞いてバナーが
 「まだ茄子ってあるんだよね?じゃあ分けて上げてもいいと思うんだよー」
 と言った。おいしいものは皆で分かち合うのがいいと思うんだ!と付け加えて。一行は頷くと、コレットが持っていた茄子料理を渡すと目の前でまるで漫画のごとくお皿ごとぺろり!と平らげてしまった。
 「おいしいね!げんきでた!」
 バサバサバサっと翼を羽ばたかせ喜ぶフクロウアニモフ達。皿は消化出来るのだろうかと思ったがとりあえず口にはしないゼロがそれは良かった、と返す。
 「じゃあみんな、これにのって!」
 フクロウアニモフたちは取り出した大きく綺麗な布を地面に広げると、これに乗れと促す。その布からは複数の紐が伸びており、アニモフたちの足に結んである。
 「ぼくらがほんきをだせばどらごんだっておちゃのこさいさいさ!」
 玖郎とワードは自分で飛ぶ、と言ってフクロウリフトをサポートしながら登るつもりだ。もっとも同じ鳥類として話をしてみたい、と思ってこの依頼に参加した玖郎としては、この大きなフクロウアニモフ達も興味の対象である。
 「ついでだ、おまえたちや鷹アニモフ達のことでも道すがらきかせてもらおうか」
 幽太郎もおろおろしながらもその布に乗っかる。大丈夫だよ、と理比古は優しく声をかけると幽太郎も少し落ち着きを取り戻した。幽太郎の心配もつかの間、フクロウリフトは瞬く間に飛び上がり、落ちる気配も無く大空へと羽ばたいた。フクロウたちは苦しそうな顔もせずすいすい空を飛んでいく。喜んだ竜が呟く。
 「おお!すごい!空飛べるワードさん達と同じ空間に居る!坂道を一気に駆け上がるのも気持ち良いけどこっちも気持ち良いですね~!」
 「うン、皆ト、飛べるなんテ、思ってなかったかラ、ちょっと嬉しイ」
 ニコリ、と笑うと頑張っテ、とフクロウアニモフ達に声をかけて。がんばる!と返したフクロウアニモフの声にまた笑みがこぼれる。玖郎がたまに下から皆を持ち上げたりのアシストをして飛んでいくスピードは落ちることなく、ものの数十分で地面と雪の境目の部分まで運んでくれた。

 頂上までの道は大分楽にはなったものの、まだ若干険しい。先ほどほど角度は無いものの今だ急な斜面が存在する。各々、時計を確認しながら上へ上へと進んでいく。息を上げて歩を進めるコレットに大丈夫か?と心配そうに声をかけるツヴァイ。
 「な、なんなら俺が背負ってやろうか?」
 思いきって提案をしてみたのだが、コレットは笑顔で首を横に振る。
 「あともう少しだもの、自分の足で頂上に着きたいわ。気持ちだけ受け取っておくわね。ありがとうツヴァイ」
 と言い、再び前を向きなおした。ツヴァイはそうか、と言いながらどうせなら羽を手に入れてから言えばよかったかと少し後悔したのだった。ゼロも少し息が上がっていてそのやり取りが聞こえたので代わりに背負ってもらいたいな、と思ったがそれもなんだか悪い気がしたので顔を上げてあともう少しであろう終点を目指す。バナーも寒さで寝てしまいそうになるところを何とか耐え、登り続ける。
 目指すべき場所は高い山の頂上、そしてそのタイミングとは……そう、日の出である。現在は午前5時。壱番世界の富士の初日の出時間は…6時46分ごろ。あと少し、あと少し、と一行は登る。
 本当に頂上に鷹のアニモフは居るのだろうか。そして羽をゲットできるのだろうか……。居なかったら、羽を見つけられなかったら…と不安が走る。だが歩みを止めるものは誰も居ない。あともう少しで頂上なのだ。
 「頂上ダ……頂上だヨ! あト、少しだかラ、頑張っテ!」
 「もう少しで頂上なのです……!」
 ワードが頂上を告げるとゼロが繰り返すように声をかける。空の半分が紺色の闇から徐々に明るくなっているがまだ日の気配は無い。どうやら間に合ったようだ。全員が頂上へ辿り着いた、とその時、バサバサッという音が聞こえてくる。その頂上に一本だけ立っている巨大な樹木に鷹アニモフ達の巣はあった。予想は当たったのだ。先ほどのフクロウアニモフと同じくらいの大きな鷹アニモフたちは突然の来訪者を見つけ、物珍しそうに舞い降りてきた。
 「わぁお!お客さんなんて珍しいな、みんないっつも寒くて嫌がるんだ」
 嬉しそうに一行に声をかける鷹アニモフ。他の鷹アニモフもバッサバッサと降りてくる。あっという間に周りを囲まれるほどに。
 「ここの景色はすっごいんだよ。 だけどみんな見に来てくれないんだ」
 「今日という日はなんてすてきな日なんだろう!」
 思った以上にフレンドリーな鷹アニモフたちに圧倒されつつも、次第に会話が弾んでいく。
 「うわー!おっきですねぇー!さっきのフクロウさんよりおっきいですよ~! あ、よだれが」
 鷹アニモフたちの形状や大きさのあまり、興奮してよだれが思わず垂れてしまった竜。それを見た鷹アニモフは大笑いして。
 「ね、ね。羽、触っても良いかな?すっごい憧れがあるんだよね。だめかな?」
 「いっそのこと背に乗せてもらってはどうだ?」
 理比古が目を輝かせながら鷹アニモフを見て溢した言葉に虚空が提案をすると鷹アニモフも嬉しそうに承諾する。虚空も一緒に乗せてもらおうよ、とも理比古が言うとしょうがない、と言いながら空の旅に付き合う承諾をする虚空はまんざらでもなさそうな顔で。肩に乗っていたセクタンのヒンメルが呆れた顔をしていた。
 「鷹が好きなモノ、持ってきたんだヨ。さっキ、皆で作った茄子料理もあるかラ、一緒に食べよウ?」
 油揚げやパンなど持ってきていたワードが鷹アニモフに差し入れ。もぐもぐと食べるアニモフと並んでメロンパンを頬張るワード。
 「お、思ったより大きいね……た、食べたりしないよね?」
 見た目がリスのバナーは鷹型というアニモフに身の危険を感じるがアニモフたちは僕達お菓子か茄子か料理されたやつしか食べないよーと笑って言い。むしろ現時点で唯一の肉食系であろう玖郎の方を警戒するべきかもしれない。
 「おれからも土産だ。……しかし、どうやって茄子をたべるんだ? 嘴がじゃまでないか?」
 その物理的な意味で肉食系の玖郎からも茄子の差し入れが。そして小さな疑問を口にして。アニモフたちは不思議そうにしつつも、実演して見せてくれた。上に放り投げて、そのままパクリと。まるでアニメや漫画の表現だがまさにモフトピアと言うべき食べ方だ。
 「アノ、オ友達ニナッテ、クレル……?」
 予定よりも早く光学迷彩を解除してアニモフに声をかける幽太郎。もちろん、もう友達だよ!というアニモフだがどこからともなく現れたのが不思議なのか、アニモフたちはもう一回やって!と子供のようにせがむ。その後、アニモフ達とセンサーを使ってエスパーごっこをしたりして遊ぶ。
 「日の出までの時間、暇を潰す為に持ってきたのです。真剣勝負で遊ぶのです」
 ゼロはお正月な感じの遊び道具を持ってきていた。羽子板で鷹アニモフと本気の勝負。もちろん墨も用意済み。日の出が近くなった頃には他の皆も巻き込んでの大羽子板大会へと発展していた。
 一息ついて皆で竜が持ってきていたハンバーガーを食べていたときだった。いくつもの浮遊島や大きな綿菓子の雲の間から差し込むオレンジ色の光。
 「ホラ見て! 太陽が宝石みたいでしょ?」
 「そのキラキラが僕らにも移るんだ!」
 「ホラキラキラ!」
 キラキラ光る羽をバサバサと羽ばたかせながら見せようとする鷹アニモフ。抜け落ちた羽がオレンジの日の光を浴びながら辺りをひらりひらひら舞い落ちる。そう、まるで黄金の羽のように輝きながら。
 「これが、黄金の羽、なの……? 綺麗……」
 思わずコレットが漏らす。羽を羽ばたかせるたび舞い上がり落ちる黄金の羽は、まるで魔法のようなきらめきを放っていた。ツヴァイも息を呑んでその幻想的な光景を見ていた。この光景だけでも十分幸せになれそうなパワーがあるんじゃねぇかな、と柄にもないことを思いながら。朝日が十分顔を出した所で、皆我に帰った。そうだ、羽を貰わないと。落ちている羽は不思議なことに先ほどと同じようにキラキラ輝いたままである。
 「なぁ、この羽一枚貰ってもいいか?」
 ツヴァイが遠慮がちにアニモフ達に尋ねる。
 「え? 抜けた羽なんか僕らはいらないよ。だって羽なんていっぱいあるもん!」
 「こんなもの欲しがるなんて変な人たち!」
 「でもおもしろい!」
 アニモフ達は自分達の抜けた羽を欲しがる一行が不思議でおかしかったようで、楽しそうに一行を見ていた。
 「この羽が、幸運の羽と呼ばれているのです。それでゼロたちはこれをゲットしにきたのです」
 ゼロが説明するがアニモフ達はまだ不思議そうに頭をかしげている。
 「幸運の羽が生えてると、やっぱり鷹さんもすごく幸運なんですか?」
 コレットが尋ねると、アニモフ達は余計不思議そうにして
 「幸せだと思えることが幸せだから僕らは幸せだよ!」
 「何を言ってるかわかんない! 幸せだって思えばいつも幸せなんだよ!」
 「それもよくわかんない!」
 と笑いながら話していた。
 「……出会えたら、プレゼントしよう」
 そういって大事に羽を仕舞い、もう一枚を虚空に渡す。
 「お世話になってるから、ね」
 虚空は驚いた表情で理比古を見、手を差し出……した所でひょい、と避ける理比古。
 「なーんてね!」
 「……」
 そんな二人のやり取りを見てヒンメルはクスクス笑っていた。
 「なんかすごい神秘的だけど……でもこれって、どうなるのかなぁ? 案外いつも通りだったりしてね?」
 とバナーは今だきらめく羽を見て、怪訝そうにしている。でも綺麗だから観賞用もいいかもねー、と羽を掲げてひらひらさせて。
 「コレット、幽太郎、キミ達ハ、この羽、どうするノ?」
 ワードがコレットと幽太郎に尋ねる。
 「僕ハ、沢山オ友達ガ増エルヨウニッテ、オ願イスルヨ……叶ウト良イケド」
 「じゃあ今回のこれで皆さんとお友達、ですよね? 名前的にも親近感ですし!」
 話を聞いていた竜が羽を振りながら言うと、恥ずかしそうに幽太郎も頷く。
 「フフフ、早速効果あり、かな? ワードさんはどうするの?」
 コレットはその光景を見て微笑みながらワードに尋ねて。
 「僕ハ、そうだナ、ベルゼに渡そうト、思ウ。彼にハ、幸せニ、なって欲しいからネ」
 ほころんだ笑顔を浮かべて。
 
 帰り道、鷹アニモフ達が先ほどの約束だと、うさぎアニモフ達がいる場所まで連れて行ってくれるという。大きな背中に乗るのはまるでファンタジー世界そのまま!……幽太郎の場合は背中に乗る夢叶わず3匹で持ち上げなければいけなかった。むしろ250Kgの幽太郎が3匹で持ち上げれることがすごいわけだが。
 「す、すご~い! まるでジェットコースター!」
 竜が猛スピードで滑空するスピードにしがみつきながら思わず口にする。
 「ちょ!? あっぶねぇ!!」
 ツヴァイがアニモフに1回転をお願いして、それをアニモフが得意げにやった所、危うく落ちかける。変な汗をかいてしまった。
 玖郎は鷹アニモフの一匹から競争しよー!と持ちかけられ、付き合ってやろう、と地上までの競争が始まった。後から飛び立ったのだが、次々と抜き去る。それに触発された他のアニモフ達もスピードを出して……
 「は、速いのです……!」
 ゼロはまさかのスリル体験を味わうことになるとは思っていなかった。

 降り立つとそこにはうさぎのアニモフたちが戯れていた。うさぎはこちらに気がつくと走ってやってくる。
 「たかさんずるい! ぼくたちもあそびたい!」
 「僕達は見送りさ。 あとはこの人たちに聞いてごらんよ」
 「ねぇねぇいっしょにあそぼう!」
 「もふもふしよー!」
 「もふもふしたらみんなしあわせになれるかも!」
 わらわらと集まってくるうさぎ達。足に触れるたびにもこもこして暖かくて幸せになれそうである。
 「時間までもう少しあるから、遊んでいこうよ」
 「そうですねー! わー、うさぎモフさんたちかわいい~。食べちゃいたいくらい~」
 言いながら理比古も竜もすでにうさぎアニモフ達を撫で回している。撫で回したいと思ったらすでに撫で回しているのだ。
 「かわいいのです……もふもふアニモフ。このまま寝てしまいたいのです……」
 もこもこすりすりされながらうとうとし始めるゼロ。多分、このまま寝たらきっと幸せだろうな、と思いながらも帰らなければいけない時間が近い為おちおち寝てもいられない葛藤に悩まされていた。
 「かわいいいなーうさぎさん……どう、した、の?」
 バナーが、じっとうさぎアニモフ達を見る玖郎に気がついて恐る恐る聞いてみる。
 「……兎のアニモフは、からだの中まで綿がつまっていそうだな」
 聞こえるか聞こえないか位の声で狩るのはよそう、と呟いたのが聞こえてしまいバナーはビクリとする。
 「コレット、さっきの羽さ、どうするつもりなんだ?」
 ツヴァイが落ち着かない様子で尋ねると、コレットは後ろに隠して
 「ツヴァイさんは?」
 と尋ねる。
 「えっと、俺は……コレットに。今年も一年間宜しくな!」
 こちらに着いて早々に羽をチョーカーに加工していたツヴァイはそれをコレットへ手渡して。 
 「ふふ、ありがとう。……私は、ね」
 そう言って隠していた手から赤いリボンのついた羽をツヴァイへ。
 「ツヴァイさん、今年も宜しくね?」
 そういって渡す二人の周りにはうさぎアニモフ達が集まってきていた。ワードも山の上から持ってきた雪で小さいが雪だるまを作ってうさぎアニモフたちと顔作り。出来た顔は福笑いみたいに変な顔だったがそれもいい思い出になった。
 そうして列車が発車する直前まで一行はうさぎアニモフたちと仲良く遊んだ。


 いくつか持って帰った分を変わり者の学者に渡し、残りは各自自由、とのこと。効果があるかどうかはわからないが、あの美しい光景が生み出したアイテムならば御利益がありそうな気がすると、誰かが言った。
 本当に効くか、信じる信じないは自分次第。黄金の羽は未だキラキラ光っている。

クリエイターコメントこの度はご参加真にありがとうございました!まさか全枠埋まるとは思っておらず、嬉しい悲鳴が……!
書いていて、皆別々な性格・目的なのに生き生きしてるな、と心底思いました。モフトピアは皆気楽に楽しめるので良いですよね。皆さんにも楽しんでいただければ幸いです。

またご縁がありましたら、宜しくお願いいたします。
公開日時2011-02-03(木) 20:20

 

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