オープニング

「アリオに聞いたのだが、年末といえば格闘技の祭典を行うものらしい。そこで、ロストナンバーの訓練を兼ねて、自由参加での格闘技大会を開こうと思う」
 リュカオスはいつもの仏頂面で宣言した。
 すでにコロッセオの中は特殊な仕掛けを施した戦場が用意されているらしい。尚、何故年末恒例の祭典のはずなのにこの時期までずれ込んだのかという問いかけには黙殺――もとい、無言の答えが返った。
「舞台はコロッセオ。対戦形式は2:2のタッグマッチだ。タッチ交代などはない。4人で同時に戦闘を開始し、四人のうち誰か一人が倒れた時点で二人ともが敗北。この時点で勝負が終了する。」
 タッチ交代の制度ではない、という事らしい。
 リュカオスは手に古い本を取り出した。
「だが、生半可な勝負では訓練にならない。かなりの危険が伴うが、流転肆廻闘輪を見事にこなした諸君なら問題ないと信じる。だが、注意だけはしてくれ。ヘタな戦士が挑んでも、試合どころか試合場で無駄に……無駄に命を落とす危険性がある」
 それほどまでに厳しい試合だとリュカオスの表情が物語っていた。
 彼はおもむろに古い本のページをめくる。
「これを機に、世界図書館 禁忌封印名物 八戦車輪大獄を開催する!」
 あまりの仰々しいあおり文句に参加者の中にはぽかんと口をあけているものまでいる。
 それをどう勘違いしたのか、リュカオスは大きく頷いた。
「世界図書館に数千年前から伝わる荒行だ。健全なスポーツを行うわけではないから覚悟しろ。そして、生半可な覚悟で参加するな。死ぬぞ」
 そしてリュカオスは準備があると言い残して踵を返した。
「おい、格闘技大会って……」
「燃えてきた。出る!」
「でも危険だってさ……」
 後に残された聴衆は口々に怪気炎を上げ始める。
 その中に一人だけ、指折り、何かを数えていたものがいた。
「……数千年前から? ……世界図書館って、そんなに前からあったっけ?」

 + + +

 扉を開いた瞬間、生温く湿った空気がロストナンバーを包んだ。明かりは薄暗く、闇に慣れぬ視界には何も映らない。
「いらっしゃい」
 のんびりとした声が、その空間に響き渡る。
 声に吊られて周囲を見渡せば、街燈の光が照らす下で、ボンネットが潰れた黒塗りの廃車の屋根に、朱金の毛玉が圧し掛かっているのが目に入った。
「八戦車輪大獄、第一の獄はこのおれ、灯緒が承認しよう。――残念なことに、猫なんだけど」
 端的にそう名乗った巨躯の虎猫は、再び四人の来訪を歓迎しながら金の瞳を巡らせる。その空間の時刻は夜。明滅する幾つかの街燈が、弱弱しく彼らを照らし出す。
「きみたちに戦ってもらう舞台は、見ての通りここ。インヤンガイのジャンク置き場」
 別にインヤンガイでなくても良いけど、と呟いて、猫はタイヤをなくした車の上で目を細めた。だが、いかんせん普通乗用車では巨躯の虎猫には小さすぎる。窮屈そうに身を丸め、しかし居心地の悪さは感じていないようで灯緒は金の目を細めて欠伸を零した。
 どうやらこの場所は、雑居ビルとビルの間に設けられた空間と言う設定のようだった。二組が入ってきた扉のある側は灰色のコンクリートの壁に覆われ、残りの二方は有刺鉄線によって区切られている。コロッセオの闘技場より一回り狭い程度の空間に車や、何とも知れぬ機械の破片が雑多に打ち捨てられているその場所は、無機物達の墓場と呼んで差し支えないように見えた。 破れたアスファルトの一部から剥きだす地面。墓標の如くに突き立てられた看板の一つが、電力も繋がっていないと言うのに時折不穏な光を燈す。
「勝敗は四人のうちの誰か一人が戦闘不能に陥った時点で決着をつける。ここでの戦闘は、トラベルギア、特殊能力の使用に制限はない。けれど、ひとつだけルールを課させてもらうよ」
 それがこれ、と怠惰な猫の言葉が響いた、その瞬間だった。

 じゃらり、が、ぢゃっ!

「「「「――ッ!?」」」」

 重厚な金属音が四人を襲う。
 それぞれの胸の内側、心臓があるべき場所が、唐突な圧迫感で満たされる。
「チェーンデスマッチ」
 この期に及んで未だ緊迫感を持たぬ声が、戸惑う四人の耳に届いた。ふと見渡してみれば、ペアを組んだ相手と自分との間に、鈍重な銀の鎖が伸びているのに気が付く。そして、それは向こうの組も同じであるようだった。
「鎖の長さは1.5m。きみたちタッグはそれ以上離れられない。変形や空を飛ぶのも自由だけど、その鎖は魂を繋いでいるから何をしても外せないよ。――勝敗が決まらない限り、ね」
 銀の鎖はそこそこの重量があるが、彼らが駆ける分には然して問題には成らないだろう。一歩動く度に擦れる音が響き、幾ら物が多い場所とは言え身を隠すのは無駄なようだった。
「それじゃあ、おれはここで寝ているから。好きに戦うといい」
 戦闘開始の合図とすら取れぬ言葉を残して、呑気な虎猫は微睡みに身をゆだねた。

品目シナリオ 管理番号1127
クリエイター玉響(weph3172)
クリエイターコメント皆様、こんにちは。玉響です。
今回は近江WRとタッグを組みまして、ばーせんしゃりんたいごく、VSロストナンバー四連戦をお送りいたします。

さて、朱金の虎猫が見守る第一の獄は、路地裏のジャンク置き場にて、ペア同士を鎖で繋いでのチェーンデスマッチとなります。
鎖は全長1.5m。魂と魂(心臓のある場所)を特殊な鋼で繋いでいるため、砕く・変形してすり抜けるなどのプレイングは採用されません。眼に見え、音も聞こえ、触ることもできます。物に引っ掛かると二人ともつんのめります。それ以外の能力に制限はありません。
この辺りも考慮してプレイングを考えていただければ幸いです。

【注意】
・重複エントリーはなし。ただし、エントリーしていたシナリオの抽選結果で、ハズれた場合は次の獄にエントリーOKです。
・タッグのチームは上二人vs下二人とします。タッグの相談は禁止ではありませんが『相談は義務ではありません』(重要!!)
・勝敗についてはいくつかポイントを設け、WRで判定いたします。「負けたいんです」申請はプレイングに書いてください。ポイントのひとつとします。
・【絶対条件】勝敗は時の運。勝敗や経過についてはうらみっこなし、でお願いします。
・グッドプレイより、グッドショー。カッコよくキメましょう。

それでは皆様、始めましょう。血沸き肉躍るお祭り騒ぎを!

参加者
ハーミット(cryv6888)コンダクター 男 17歳 歌手
マグロ・マーシュランド(csts1958)ツーリスト 女 12歳 海獣ハンター
ハーデ・ビラール(cfpn7524)ツーリスト 女 19歳 強攻偵察兵
ジュリアン・H・コラルヴェント(cutn5843)ツーリスト 男 26歳 専属エージェント

ノベル

「訓練って聞いてたハズなんだけど、相手は随分と本格的な面子ね。実践経験がないのは……わたしだけ、かな」
 首に巻いていたマフラーを虎猫に預け、華奢な体躯と中性的な顔立ちの、女とも男ともつかぬ若者が感嘆したように呟いた。パスホルダーから己の武器、居合刀【ガーディナル】を取り出して、ハーミットは勝気に笑う。
「けど、それでも簡単には負けないわ」
 明らかに場馴れしていると見える対戦相手を目にしても、惧れなど湧いてこない。
「わたしは、ハーミットなんだから」
 隠者。
 それが彼の名であり、今の居場所だ。
 そう密かに拳を握る彼へと、朗らかな声が掛かった。
「君が僕の相棒だね?」
 つぶらな瞳を煌めかせ、小柄な海洋獣人がハーミットを見上げる。彼――声からすれば、彼女だろうか――の胸元から伸びる鎖は、まっすぐにハーミットの左胸へと繋がっていた。
「ええ、わたしはハーミットよ。今回はよろしく」
「僕はマグロ・マーシュランド。一緒に頑張ろうねーっ」
 にこやかに笑みを交わし、戦いを前にしているとは思えない朗らかさでふたりは意気を統合させた。

「……此処は実に私向きの戦場だ」
 ひっそりとそう呟いて、ハーデ・ビラールは仄かに笑みを咲かせる。
 剥き出しの鉄骨や金属片が、あちらこちらで無惨な姿を曝している。何が何に繋がっているか、どう利用すべきかなどを頭の中で構築した後に、視線を向けるパートナーに気がついた。身を翻らせれば、高く結われた黒髪が生温い風に靡いて踊る。
「ジュリアンだ。よろしく」
 戦場にそぐわぬ紳士的な笑みをその貌に浮かべて、右半身に美しい刺青を走らせた端麗な顔立ちの青年、ジュリアン・H・コラルヴェントは恭しくひとつ礼を送る。
「あぁ、宜しく。先に言っておくが……模擬戦であろうと負ける気はない」
「無論、僕もだ」
 しゃらり、と涼やかな音を立てて、細い鞘から美麗な剣が引き抜かれる。刃が姿を見せた瞬間に移ろいだ風の音を耳にして、ハーデは頷いた。
「……お前は中距離でも攻撃手段があるのか。残念だったな、私の射程は零距離だ。振り回すぞ」
「幾らでも」
 薄い笑みを象った唇が放つ不穏な宣告に、それでも崩れぬ柔和な笑みは最早条件反射のようなものなのだろう。頼もしい答えに頷き合い、二人は立会人の方へと目を向けた。猶予はもう充分だ、と、視線だけで告げる。

「さて。……じゃあ、いいだろうか。始めてくれ」

 虎猫の呑気な合図と共に、四人の間に緊張が走る。
 切迫する空気。初めに足を踏み出したのは、勇むハーミットだった。マグロが鎖が張り詰めぬ距離でそれを追い、相対する二人もまたそれを請けて正面から飛び込む。
(聴こえているか)
 ジュリアンの耳に、否、脳裏に、ハーデの声が直接響く。彼女のESP能力のひとつであろうと理解し、似た世界に身を置いていた彼は訝しむでもなく顎を引いて応えた。
(ああ)
(相手に必要以上の情報を渡す必要はない)
 それにもまた、頷きを返す。道理だ。
(私は瞬間移動、精神感応、次元干渉特化型だ。PKと透視は得意ではないが、このステージ程度なら精神感応で充分相手を追える)
(それはちょうどいい。僕は念動力が一番得意なんだ)
 二人で笑みを交わし、説明代わりに近場に在った鉄屑を浮かせると、それを相手目掛けて投擲してみせる。無論攻撃は容易く躱されるが、それこそが彼らの狙いだ。横に跳び退いたハーミットの軌道に瞬間移動で迫り、ハーデが光の刃を振り抜く。
「ッ!」
「させないよ!」
 じゃらり、鋭い金属音が響いて、ハーミットが強く引っ張られる。至近距離で振るわれた刃が触れることなく、彼の身体は小柄ながらも怪力な相棒の元へと退いた。
 タッグの二人を繋ぐ頑丈な鎖、マグロがそれを引っ張ったのだ。
「……なるほど、そちらはそう使うのか」
 青い瞳を愉しげに歪め、ハーデは黒い髪を靡かせてひとつ跳ぶ。――と、その姿が掻き消えて、再び彼らから離れたところに現れた。
「……ッ、ちょ、君なァ」
 何処に跳ぶかすら判らず、ただ相方の奔放な瞬間移動に振り回されるジュリアンが抗議の声を上げるも、それは無言の一瞥によって黙殺される。基本的に女性には強く出られない性質が災いしたようだ。
「……まぁいい」
 溜め息をひとつ、そして体勢を立て直した相手タッグを見遣る。
 人とは違う身体の構造を持ち、能力を読み切れないマグロ。
 対してハーミットは、表面上は余裕を見せているものの、息は上がり心拍数も上昇している――戦いそのものに慣れていない、コンダクターゆえの高揚状態といったところか。
(狙うなら、ハーミットだ)
(だろうな)
 ざっと見たままにそう告げれば、相方からも頷きが返った。

 世界の望みを己の目的に変えた女と、己が意志を持たず命令のままに戦った男。
 彼らはとても、よく似ている。


 深く言葉を交わすまでもなく、マグロとハーミットとは互いの役割を理解していた。
「接近戦は任せて、距離が開いたらお願い!」
 奔放な瞬間移動を繰り返す二人を追って、彼らは走る。鎖を戒めとさえ思わずに、互いの呼吸を読み合って駆ける。
「了解だよー。懐に入られた時は宜しくね!」
 ハーミットの頼もしい言葉に、マグロは満面の笑みで頷いた。
 ふと、相手の瞬間移動が止まる。彼らを翻弄するかのような動きを止め、二人は身を翻して敵を待った。
 罠か。
 咄嗟にそう思うものの、互いに逃げてばかりでは勝負は決まらない。――否、持久力がある分、向こうの方が有利になるばかりだろう。瞬時に相方と目配せをして、ハーミットは正面突破を選んだ。地面を蹴る。姿勢を低くし、弾丸のように跳び込む。
「……実は、派手なのも、目立つのも、嫌いじゃない」
 金髪の端麗な青年が、ハーミットを――或いは、その向こう側を、ただ真摯に見据える。その手に構えるトラベルギア、風に似た意匠の美しい細剣が、鞘から引き抜かれ、大気を震わせる。滑る剣先。何かを穿つための、美しい刃。
 風を纏い、切先が鮮やかな彩りを纏った。
「退いてくれ」
 あくまでも冷徹な声が、吹き流れる風の如くに紡がれる。細剣を立て、己が胸の前に掲げて脚を揃えるその様は、玉座の前にて誓う騎士の仕種にも良く似ていた。
「でなければ、討つ!」
 片足を退き、剣を倒す。切っ先を走り来る二人――前を走るハーミットに合わせ、力強く大地を蹴る。
「やれるものなら、やってみなさい!」
 右手は柄に、左手は鞘に。
 マグロの狙いを逸らさぬよう細心の注意を払い、しかし駆ける脚は大胆に地面を掴む。
 互いの剣を伸ばせば触れ合うのではないかと錯覚させる距離まで近づいたその瞬間、マグロが跳び、ハーミットが屈む。
 それに惑わされる事なく、躊躇せずにジュリアンは大地を蹴って跳び上がった。彼の狙いは、初めから一人に向けられている。マグロに、――彼女のトラベルギアに。
 細剣を揮う。優美な装飾が震え、色彩をも纏う風の刃が放たれた。
 狙いを構え、まさに投擲せんとしていた銃銛を咄嗟に惹き寄せて、マグロが宙を蹴って背後へ引く。
 退く二人から取り残された、銃銛の鎖を風刃が掠める。ぴしり、感応力を研ぎ澄ませた彼の耳にだけ、小さな音が響く。
 上出来だ。
 淡色の美貌にいびつな笑みを咲かせて、重力に惹かれるまま、相方の瞬間移動に身を任せた。

 敵を見失い、体勢を崩したハーミットへ声をかける。後ろへ、その一言だけで相方が身を退くのを認め、同時に銃銛を斜めに構えて、空間が撓んだ場所目掛けてそれを投げつけた。
「! 危ない、ハーデ!」
 ――が、美しい放物線を描いたはずのそれが唐突に軌道を逸らす。狙い通りの場所に現れたはずのハーデを仕留める事は出来ず、マグロは咄嗟に鎖を掴んで己の手元に引き寄せた。
 何者かの干渉が働いた、そうとしか思えぬ動き。
「……ジュリアンさん、かな」
 先程彼らへ向けて鉄屑を飛ばした力、あれも彼のものだと思えば納得がいく。風を操ったか銛そのものを操ったかは定かではないが、投擲に長けたマグロにとっては厄介な力を持っていると言えるだろう。
 つぶらな瞳を険しく細めて、洋装の剣士へ目を向ければ、端正な顔立ちに歪んだ微笑を浮かべて青年は応えた。それに怒るでもなく、マグロもまた笑みを返す。
 彼女にとって、鎖は枷ではない。
 むしろそれは、友であり、パートナーとの間を繋ぐ、絆だ。
「鎖の扱いだったら誰にも負けないよ? 僕の銛で使い慣れてるからねー」
 戦うと言う意思ではない。
 戦いならば、戦場に慣れ親しんだ相手二人に敵うとは思わないから。
 だからこれは、狩りだ。此処は狩り場で、標的は、目の前の二人。
 そう思えばこそ、負ける気は起きなかった。

 幾度となく擦れ違い、剣を噛ませ合うも、互いに決定打は打たせない。 一撃を遮られる度に体勢を立て直し、退いて、また打ち込む。引き絞られた弦の如き張り詰めた緊迫感が、剣閃を交わす両者の合間に垣間見える。
 マグロの的確なフォローに何度も救われながら、己の息が上がるのを、ハーミットは自覚していた。最早疲れを押し隠す余裕もないが、それを相手に気付かれて、狙われる事だけは避けたい、とそう思う。マグロの足手纏いになるような真似だけは。焦りにも似た何かに背を突き飛ばされるようにして、ハーデの懐へと飛び込んだ。ガーディナルの鞘を払う。この一撃で、決めると。
「危ないな」
「――ッ」
 抜き去ろうとした刀の柄頭を掴まれる。強い力で抑えつけられ、刃を放つ事ができない。
 均衡する力。
 ならば、と鞘を握る手に力を籠め、防御壁を発動させる。彼を護るように撓む空間。それをも予期したのか、不意にハーデが跳び退る。追い縋ろうと前へ進み出た、その瞬間、

 何かが彼を貫いた。

「…………え――な、に……」

 時が止まる、錯覚。

 ゆらゆらと降りたハーミットの視線は、己の胸で止まった。
「どういう、こと」
 言葉と共に、口から血が溢れ出る。止め処なく、遮ることすら思い浮かばず、ただ胸から零れる血を見下ろす。赤い。判り切った事を、思う。
 己が手にしてるトラベルギア――ガーディナルの柄から、刃とは反対の方向に伸びた眩い光が、自身の右胸を貫いている。
 揺れる視界。数歩離れた場所に立つハーデが、勝ち誇ったかのように佇んでいるのが、視える。
「光の刃」
 刀は、鋼でできている。
 鋼とは、すなわち金属だ。
「お前のトラベルギア、居合刀の中心(なかご)から私の刃を具現化させた」
 褐色の肌が夜闇に融ける。鮮やかな青を閃かせて、ハーデは口端を持ち上げた。笑うと呼ぶにはいびつすぎる表情で、女は嗤っている。
「私向きの戦場だと言っただろう。……こういう事だ」
 至る所に、刃を具象化させるための物が揃っている。
 合図も無く光の刃は消え失せて、穿たれた胸の穴だけが残った。傍に在った電光掲示板を掴んで傾ぐ身体を支え、改めて襲い来る痛みに顔を顰める。取り落とした刀が、高い音を立ててアスファルトに跳ねた。
「幸い第三戦に高速治癒術者が参加している。一撃死でさえなければ問題ない」
 呟く声は、あまりに凍てついている。感情も、感慨も、何もかもを排した、孤独な戦場に生きる者の言葉だ。
「これでもちゃんと場所を選んで抉った……降参しないなら、次は選ばん」
 それでもその言葉に一筋ばかりの情を遺して、孤独な強攻偵察兵は目を伏せる。
「こう、さん……」
 疼く痛み。ハーデの提示したその言葉だけが、混濁した意識の中で強く輝く。
 それを選べば楽になると判っている。
 だが、まだ。――まだ、出来る事が、あるのではないか。

『おい、ハーミット! マグロ! 聞こえてるか!?』

 閃く焔。それに似た強い声が、彼らの鼓膜を容赦なく叩く。
 戦場の隅に取りつけられた大型のモニターが、闇の中で不意に映像を浮かび上がらせた。闘技場らしき光景の中央で、青い髪の青年が佇む。彼らと共に、第四獄で戦っている仲間の一人だ。
 揺らいで、彷徨う金の瞳が、項垂れるハーミットを捉えた。
『……おいおい、何へたってんだ?』
 煤け、痣の残る頬を歪ませて青年が笑う。
『楽しいじゃねえか。まだやろうぜ』
 言葉が聴こえたのか、ハーミットの身体が一度小さく震える。ゆらりと持ち上げられた視線が、モニター越しの仲間と交叉した。
『そっちも随分と勝ち目薄そうだなぁ。残念ながらこっちもだ。どーしよーもないわー。……あははっ、これってさ、逆転したら相当格好良いんじゃねーかな? 俺ももう駄目かもしんねーって諦めかけてたけど、これじゃ格好悪すぎるからなあ』
 掌と拳を打ち合わせて纏わせた鮮やかな焔は、その瞳の奥に閃く意志と同じほどに、画面を見上げる者の目を射た。
『折角大将に選んでもらったんだ、もうちっとだけやってみるわ。気が向いたら悪足掻きに付き合ってくれよ』
 じゃあな、と朗らかな声だけを遺して、モニターは唐突に映像を閉ざした。
 後に残された、二人の胸の内に火種が燈る。苛烈な焔は瞬く間に弱い心を焼き尽くした。
「……そう、ね」
 茫然と漂う、ハーミットの虚ろな目に焦点が戻る。己が血に彩られた凄絶な表情で、笑う。
「此処で諦めたら、格好悪い……ええ、そう」
 否、それは確かに笑みだったのか、或いはただの痙攣だったのかさえ、判然としない。ただ気丈に唇を曲げて、血を吐き出したハーミットは、身を支える腕に力を籠めた。
「逃げたり、しないわ。……わたしは、“ハーミット”なんだもの」
 勝つまで弱音は吐かぬと決めた。
 その隣にはマグロが居てくれる。モニターの外には、共に闘っている仲間達が居る。
 ならば、ここで退く意味などない。
「誰も……手加減なんて、頼んでない。本気で来ないとぶっ飛ばすわよ!」
 高揚する想いのままに、魂の底から轟く声で吼えた。
 寄りかかる電光掲示板が軋む音を立てて傾く。崩折れそうになる身体で、それでも彼は気丈に眼(まなこ)を吊り上げた。
 その鼓膜を、音楽が揺さぶる。
 歌声だ。
 澄み切った水面の、凪いだ海原の鮮やかな青を思い起こさせる、美しい歌声が、無機物の墓場に響き渡る。言葉は無いただのスキャットだが、それは美しく、聴く者の耳に、心に沁み込んでいく。
「マ、グロ……ちゃん?」
 口元から溢れる血を拭い、顔を上げたハーミットはその声の主――己と鎖で繋がれているはずのマグロを見る。瞼を閉じ、歌に心を注いでいたマグロがゆるやかに瞳を開いて、彼に視線を向けた。
「今だけは、聴いて。僕の歌」
 孤独な海妖の歌声に感化され、彼女は独力で歌を“力”に変えた。
 優しく、包み込むような音色はハーミットの胸に空いた傷を塞ぐ事こそできないものの、痛みを僅かに和らげて行く。
「……ありがとう」
 男のものでも女のものでもない、しかしどちらのものでもあるような、中性的で伸びやかな歌声がマグロの声に重なった。それがハーミットのものであると、目を向けなくともマグロは知っている。視線をただ虚空へ、星も昇らぬ空へと上げて、心から溢れる衝動を音楽へと変えた。
 胸を貫かれて歌うのも辛い筈なのに、苦痛など全く感じない。マグロの歌に合わせて声を紡ぐ度、胸から溢れ出る血が、その流れが緩やかになっていくのが判る。“セイレーンの唄”に隠者の歌声が重なる事によって威力を増したのか、或いはハーミット自身の気が上向いた事による自己治癒の効果なのか、それは彼らに判らない。
 ただ判るのは、共に歌うことの楽しさ、そして共に闘う事の心強さだ。

 歌声が、曲調が、変わる。

 明瞭で軽快な、聴いているだけで躍り出してしまうようなものへと。マグロが即興で描く韻律に見事に付き添い、ハーミットがコーラスを乗せる。
 三本の鎖の音色をリズムに変えて、踏み抜く足でステップを刻む。
 二つの歌声が、彼らの胸の内から力を湧き起こした。
 まだ戦える。どちらからともなく、彼らはトラベルギアをその手に取った。

 ハーデが目を見開く。これで勝敗が決すると、彼女はそう確信していた。計算を覆されて、驚きと共に彼らを見遣る。
「それでもまだ立ち上がるか……面白い」
 口調こそ堂々としていたものの、その口許にはいびつな笑みが浮かんでいる。声を放つ喉が震えるのが判る。この状況下で新たな力を得、新たな戦い方を生み出す彼らへの畏怖と、少しの不安。首を振って振り払い、ならば叩き潰すのみ、と己を奮い立たせた。
 隣に立つジュリアンに目配せを送り、駆けてくる二人へと再び対峙する。先程とは異なり、前をハーデが走る。
(大丈夫か、ハーデ)
(……本当に甘い男だな。お前こそ自分の心配をしろ)
 歌が已む。
 しかし、彼らが駆ける脚の力強さは変わらない。
 ハーミットの斜め後ろに付き従い、駆けながらマグロは銃銛を肩に支え持つ。狙い違えぬようしかと構え、叫んだ。
「いっくよー!」
 どこか朗らかですらある合図の声が、薄暗い路地裏に響き渡る。
 銃銛の引き金を引く。
 二又の刃の中央から、轟音と共に炸裂弾が発射される。
 衝撃に空気が震え、鉄屑が吹き飛ばされて行く、その中央を真っ直ぐに炸裂弾が駆け抜ける。びりびりとマグロの鼓膜が鳴る。だが、それさえもが勝鬨の叫びであるように、彼女には思えた。
 かぎろいの如くにハーミットの身体が駆け抜ける、その道筋に幻影が立ち昇る。
 低く屈み、ハーデの閃く青い双眸を睨めつける。伸び上がると共に、左手で鞘を、右手で柄をしかと握って、両手ごと彼女の懐へ押し出すようにして飛び込む。
「その力、見せてみろ」
 対峙する女が笑った。何処か挑発的なその様子は、真っ向勝負を受け容れた故か。だが、畏れる必要などどこにもない。
 己が刃は此処に在る。
 胸の内で擦れ合う絆の音が聴こえた気がして、握り締めた右拳を、力の限り捻った。
 抜き放たれる刃を、マグロの放った炸裂弾が掠める。着弾し、踊り出した焔をその鋼に乗せて、閃かせた。

「爆炎――衝撃波ァアッ!!」

 焔を纏い、刀身が美しい揺らぎを見せる。
 灼熱の刃が走る。衝撃の波が熱を抱いて、立ちはだかるハーデへと向かう。
 両腕を核として現出させた光の刃が、衝撃と爆炎とを受け止める。
「残念だったな、こちらは囮だ」
 受け切れなかった刃と熱に身を切り裂かれながらも、ハーデはその笑みを崩さなかった。己の役割は、パートナーを待つ一瞬の間、ハーミットを引き付けている事。ならば、これで充分の筈だ。
 す――と、その頬を鮮やかな烈風が掠めて、笑い出したくなる衝動を抑えてハーデは両腕に力を籠めた。

 立ち昇る硝煙に、マグロの視界が塞がれる。
 ハーミットの力強い叫びが聴こえた。ならば、心配するまでもない、と笑う――その隙を、烈風が襲った。
 煙の中を突っ切って、一陣の風が姿を見せる。途切れる白煙、渦を巻く大気を纏って飛び込んでくるのは、金の髪に白き洋装の剣士。
「――えッ!?」
 至近距離で閃く笑みに、マグロが大きな瞳を更に見開かせた。
 優美なる細剣を真っ直ぐに突き付け、風刃を纏わせて己が武器と一体化したジュリアンが迫る。螺旋を描く風はそれ自体が西洋槍の如き頑なさを伴い、鋭利にただ一点だけを狙い穿つ。ガン・ハープーン――その、射出口を!
「圧し砕く!」
 風の刃が大型銛を刻み、砕き割ろうと圧し迫る。細剣の切っ先は熱を持ち煙を吐く射出口に突き付けられ、内側から破ろうと風が更に細かい渦を為す。
 だが、マグロも大人しく砕かれるつもりはない。足を退き、己が怪力で以って踏み止まり、襲い来る風の猛攻を凌ぐ。細やかな刃に身を切り裂かれようとも、銃銛を支える腕が痺れようとも、
「退くわけには、いかないんだよ――!」
 この力までは、砕かせないと。

 みしり、と銃銛の軋む音がした。
 ぴしり、と刃の毀れる音がした。

「なっ……!」
「……悪くない」

 巻き付く鎖よりも鋭い轟音が、相討つ二人の鼓膜を襲った。

 拮抗する二つの力が、砕けた。
 どちらが、ではない。どちらもが。
 射出口ごと銃銛の刃が割れ、ただ折れた柄だけがマグロの手元に残る。細剣の刃は微塵に砕けて、ジュリアンの腕を切り刻みながら周囲に飛び散る。舞い狂う風もまた、静かに凪いだ。
 マグロは驚きと焦燥に顔を歪め、ジュリアンは精一杯の笑みを咲かせる。この結果もまた、想定内だ。
「マグロちゃん!?」
 ハーデと渡り合っていたハーミットが焦燥に喉を震わせるが、目を逸らすわけにはいかない。背後で何が起こっているかは定かではないが、ここで気を散らせてしまえば、その隙を突かれると判っていたから。ただただ険しい目で、前に立つ女を押し退けようと全力で立ち向かう。
「頼みの綱は砕かれた。諦めろ、お前たちに勝機はない」
 対峙するハーデから、嘲るような笑いが落ちる。何処か懇願にも似た声が落ちる。だが、此処で退く意志など彼には無い。たとえその言葉が事実であろうとも。
「譲らないわ」
 ぎり、と唇を噛み締める。強張る脚に渾身の力を籠めて、もう一歩踏み込む。
「決めたの、簡単には負けてやらないって!」
 ありったけの気を注ぎ込んで、鞘から力を広げる。護る、勝つ、その意志だけを強く持って。広がる力は盾に変わり、肉迫していたハーデを勢いよく突き飛ばした。強靭な女戦士がたたらを踏む。
「……く、」
 背後に退き、ハーデは刃を己の前に翳して次の一撃を受け止める構えを取る。が、退いた剣が激しく明滅を繰り返し、そして、彼女の視ている前で消えた。
 光の刃の発動維持限界。そう気付いて、ハーデは強く下唇を噛んだ。己の分析以上にハーミットの持久力が在った。その所為で計算を狂わされたのだと、今更ながらに理解する。
 痛みを噛み締めた歯の隙間に殺して、一歩、ハーデへと踏み込む。斜めに振り翳した刃を、思いのままに叩きつける。

「――ハーデ!!」

 不意に干渉した力によって、太刀筋が強くぶれる。
 不意に掛けられた叫び声に、意識が大きくぶれる。
 しかし最早退くことなどできない。勢いのままに刃を振り抜いて、目の前に在る物を切り裂いた。
 それは白。或いは、淡い金。
 ハーデとは真逆の色彩をした、しかし青い瞳。
「ジュリアン!?」
 焦燥の声が跳ぶ。それに吊られて、ハーミットは狭まっていた視界を上げる。
 端麗な貌を笑みに歪めて、刃と衝撃とを受け止めたジュリアンが彼の前に佇んでいた。袈裟掛けに斬られた胸から滴る血が、典麗なる衣裳を赤く染め上げる。
 念動力によって刃を己の元へと引き寄せ、己が身を呈してハーデを庇ったのか。
「……あ、」
 血に塗れながらも鋭利な刃の如き威圧感を崩さぬ男に、ふつりと恐怖にも似た何かが湧きあがり、もつれる脚で一歩、二歩、ハーミットは退く。それを待っていたかのように、しなやかな身体が傾ぐ。
 膝を着く。
 駆け寄る相方を手で制して、そのまま握り締めた拳を大地に叩きつける。勝敗の合図をかける為に立ち上がりかけた立会人をも、鋭い一瞥で押しとどめた。
「まだ、だ」
 可能性は潰えていない。倒れそうになる体を叱咤し留め、俯く顎を強引にも上げた。あるだけの力を掻き集め、意識を集中させる。
 刃は砕けた。だが、消えてはいない。彼の武器は、まだ其処に在る。
「僕の武器なら、応えてみせろぉおおお!!」
 喉を振り絞った声が、叫びに変わる。叫びが風に変わる。力に変わる。
 渦を為した風が、散らばる破片を捉えた。引き寄せる。己の手元に。

 浮かび上がる無数の刃。渦を為す螺旋の突風。
 その中心には、まだハーミットが残っている。

「! ハーミットさん、逃げて!」
「え、何、これ――きゃああああああ!?」
 マグロの叫び虚しく螺旋の風と煌めく刃は中央へと殺到し、ハーミットを襲った。無数の刃が、砕けた破片が渦を巻いて、彼の身を切り刻む。風と刃に巻かれて、赤い血が吹き荒れる。
 絶え間なく開く幾つもの裂傷と流れて行く血に引き摺られ、途絶えそうな意識を、左胸から繋がる鎖が強く強く引っ張った。マグロの怪力が彼を護るように己が手元へ引き寄せて、舞い交う刃の檻から解放する。
 浮遊する刃が、静かに堕ちる。
 翳む視界の向こうに、マグロの支えを借りながらも確りと立つハーミットが視える。最後の一撃は、どうやら決定打とはならなかったようだ。
 拳を握る力すら失って、ジュリアンはその場に倒れ込む。最早立ち上がる力さえ残っていない。これで完全に終わりだ、と、何処か自嘲気味に呟いた。
「おい、無事か!」
 叱咤に似た声が降り注ぐ。
 テレパシーを使う事すら忘れ、屈み込んだハーデが彼の頬をしきりに叩いてその反応を促す。億劫げに瞼をうっすらと開けば、切羽詰まった顔つきの――何処か幼くすらある、彼女の表情が映り込んだ。
「馬鹿な事をする! 何故私などを庇って……!」
「……悪かった、な。格好……つけたんだよ」
 その言葉は悪態にも似て、薄れ行く意識の中でジュリアンは己のみっともなさを嘲るように唇を歪めた。何処までも弱く、無様な男だ、己は。

 ああ、だけれど。

「……無事でよかった」

 護りたかった。
 それは確かに、自分の思いだ。自分だけの意志だ。
 ふ、と呼気が漏れる。酷く充足的な、穏やかな笑みだけを残し、彼は暗濘の底に意識を委ねた。

「ジュリアン・H・コラルヴェント、戦闘不能――ハーミット・マグロチームの勝利とする」
 厳かに、試合の終わりを告げる声が落ちた。

 パートナー同士を繋いでいた銀の鎖が、ほどけるように爆ぜて空に融けた。試合の行く末をただ見つめていた虎猫が、乗っていた車の屋根を蹴って大地に降りる。
「トラベルギアを砕き、それを新たな武器に……無茶な事をするね、彼は」
 口振りは呆れながらも、その健闘を湛えるように穏やかに笑い、巨躯の獣はなだらかな背を倒れるジュリアンに向けた。「さあ、乗せるといい。医務室に優秀なメディック班を呼んでいる。おれが運ぼう」
「その必要はない」
 しかし、それを強い語調で制したのはタッグの相方であるハーデだった。血に塗れた青年の手を取り、馬鹿な男だ、と呟いて、立会人に目を向ける。
「私のテレポートなら一瞬だ。……認めたくはないが、庇われた恩がある。私が連れていく」
 言うや否や、二人の姿が熱気の籠った風に掻き消えた。
「……素直じゃないわね、あのひと」
 マグロに肩を借りながら、ハーミットはひっそりと笑う。
「きみは」
「ああ、わたしなら平気よ。歩ける歩ける」
 虎猫の寡黙な問いに、ぱたぱたと力なく手を振って応える。が、その身体を軽々と持ち上げる手があった。
「ハーミットさん、無茶は禁物だよ」
 表面上は収まったように見えるが、抉られ、切り刻まれた傷がまだ完全には癒えきっていない事を、他ならぬパートナーである彼女は誰よりもよく知っている。幼い貌を苦く顰め、少年一人をあっさりと抱え上げたまま小柄な海洋獣人は歩き始めた。
 地に足が付いていない居た堪れなさに戸惑いながらも、彼はその好意に甘える事とした。マグロの頼もしさは充分理解している。
「……わたしたち、勝ったのね」
 ぽつり、と言葉にすれば、奇妙な実感が湧いてきて、全身の力が抜けて行く。同時に蘇る痛み。軋みそうな呻きを噛み殺す。
「うん。お疲れ様、ハーミットさん」
 ただ前だけを見据える相棒からそんな答えが返って、安堵と共に彼は意識を手放した。

クリエイターコメント四名様、御参加ありがとうございました! 四連作の第一弾をお届けいたします。

実は、間違えて鎖の長さを短く設定しすぎたため、プレイングを描きづらいのではと非常に不安でした。本当はこの倍はあった方が戦いやすかったと思います。
ですが、近遠の役割分担や鎖の短さを逆に利用する戦法など、皆様しっかりとプレイングを組み立ててくださっていて、感嘆しきりでした。未熟な記録者から、改めて御礼を申し上げます。

>ハーミット様&マグロ様
御二方ともはじめまして!
鎖を枷と考えず、むしろ積極的に利用して行こうと言う戦略がとても素敵だと感じました。互いの『絆』として鎖を操るイメージから、パートナー、或いは相棒といった感じで、ハーミット様の決して折れない志とマグロ様の劣勢でも輝き続ける御心をメインに据えて書かせていただきました。
尚、ハーミット様の呼称にちょっと悩みましたが、心根は男性なのかな、と感じましたので『彼』となっております。

>ハーデ様&ジュリアン様
御二方とも、二度目の御縁をありがとうございます!
格好いいコンビだなあ、と思っておりましたが、よく見たら性格キーワード『気が弱い』繋がりで更にときめいてしまいました。
心境的に似た境遇に在ったお二人かな、と思いましたので、盟友、或いは戦友といったイメージで、ハーデ様の冷徹さと奥底に秘めた優しさ、ジュリアン様の『折れてこその矜持』をメインに据えて書かせていただきました。負け姿の格好良い男性は稀少だと思います。

『八戦車輪大獄』は今、終結へ向けて走り始めました。
これからの三戦の結果は、皆様御自身の眼でお確かめください。

それでは、また何処かの階層にてお逢いしましょう。
公開日時2011-03-06(日) 14:00

 

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