オープニング

 ――海老が食べたい。ものすごく食べたい。

 そんな事を考えていたゼクス・ザイデルホーファーの手に握られていたのは、壱番世界の某スーパーの広告だった。どんな経緯で入手したかはさて置き、彼の目は海老の値段に釘付けになっている。
(どんだけ高騰してるんだ!!)
 まぁ、その広告の日付からして、もしかしたら変わっているかもしれないのだが、まぁ、ものすごく海老が食べたくてしょうがない彼としては、困った事態である。
「……そんなに食べたいのか?」
 彼の上着の胸ポケットから、ぴょっこりと顔を出す小人の青年。相棒ともいえる陸 抗の言葉に、ゼクスはこくり、と頷いた。
「ああ、食べたいさ。ものすっごくな」
 きっぱりと真顔で答えるゼクスに、抗は小さくため息を付いた。と、そこへ背中に灰色の翼を背負った青年が近づいてくる。彼はゼクスの肩を叩く。
「……? 何だ?」
「海老をご所望なのですね」
 話を聞かれていたのか、その青年はどこからともなく『導きの書』を取り出した。どうやら、世界司書だったらしい。
「何? 食わせてくれるのか!?」
「こ、声が大きい!!」
 テンションが上がるゼクスの声が頭に響き、抗は思わず耳を抑える。その様子を見つつ世界司書の青年はふふ、と不敵に笑った。
「お望みならば、思う存分召し上がってください。但し、働かざる者食うべからずです」
 その言葉に、ゼクスと抗は首をかしげる。世界司書はくすり、と笑って『導きの書』を開き、こう言った。
「竜刻の回収に赴いてください。貴方々だけでは心もとないでしょう。仲間を集めて来ていただけますか? なるだけ早く」

 ゼクスの呼びかけに応じた仲間達の前に、世界司書が現れる。彼は『導きの書』を開き、一同を見た。
「集まっていただき、ありがとうございます。今回は、ヴォロスへと赴き、竜刻を回収していただきま……」
 世界司書が説明を始めようとしたその時、ゼクスが拳を握りしめて叫んだ。
「諸君、海老が食べたいかぁああああっ!」
「「「おーーっ!!!」」」
 それに答えるロストナンバー達。突然の事に世界司書は驚き、抗がポケットから落ちそうになる。どうにか腕がぷるぷるいうのをこらえてポケットに戻っているうちに、集まった面々がそれぞれ楽しそうに言っている。
「ニンニクと塩、胡椒で炒めて食べるのと、生でわさび醤油でつるりといくのと……捨てがたいな」
 と言ったアキ・ニエメラのそばでは金の瞳を輝かせ、ルンが手を上げる。
「ルン、戦うの、得意。狩りも、得意。任せろ!」
「予言で住民や観光客への被害が出る、ともあるしな。ここで俺達が狩らねば! 断じて海老料理が目当てではないぞ、うん!」
 言い繕っているがお腹がきゅう、となったのは風雅 慎。そして、その真横では凛とした印象の女性、スピアが
『大きな獲物を相手とする狩りはご無沙汰だ。つれていってほしい』
 と書いたプラカードを手にしている。
「今度はヴォロスか……。海魔が美味しいのは知っているけど、どうなんだろう?」
 とわくわくしつつマルチェロ・キルシュが相棒のロボタン・ヘルブリンディと共にいろいろ考えている。
「いや、これ竜刻回収の依頼だぞ?」
「そうですよ! 手遅れにならないうちに……」
 海老で盛り上がる面々に対し、抗と世界司書がツッコミを入れるも、巨大エビでテンションの上がったゼクス達の耳には入っていない。
「よし、巨大海老を倒して食べ尽くすぞ!!」
「「おーーっ!!」」
 ゼクスの声に、仲間達が拳を上げる。その様子に世界司書は静かに付け加えた。
「言っておきますが、背わたはちゃんと取らないとお腹を壊しますからね」
「……匙投げたな」
 抗はがっくりと項垂れ、世界司書はこほん、と咳払いをしてから説明を始めた。

 今回の舞台は、巨大な湖だ。そこではとても美味しい海老が取れ、多くの観光客が訪れる。ところが、先日そこを嵐が襲い、その結果竜刻となった翡翠が湖へと落ちたらしい。
「問題はここからです。その竜刻の影響を受け、海老が巨大化し人々を襲う、という予言が出ています」
「……どれぐらいの大きさなんだ?」
 不意にゼクスが問いかけ、司書は『導きの書』をめくる。
「全長30mもありますね。それがボスです。その他、子分的な者で15m。これが2匹。計3匹を倒していただきます」
 そこで、集まった者たちがどよめいた。やはり30mの海老だけではなく、15mの海老もいるとなると、流石に骨が折れる依頼になるだろう。それは抗も思っていた。
(危険な依頼になりそうだな)
 と、彼が内心で呟いていると、ゼクスだけでなくアキの、ルンの、慎の、スピアの、マルチェロの口元に不敵な笑みが浮かぶ。
「「相手にとって不足無し!!」」
『久々に腕がなるな』
「ああ、力仕事を得意とする俺達の出番だな」
 スピアとアキが顔を見合わせて頷き合う。
「ルン、食べる! お腹いっぱい、なる!」
「料理は任せろ。腕によりをかける!」
 ルンの言葉にマルチェロが力強く頷く。
「あくまでも、人々の命と平穏を守る使命として、そのついでに海老をだな」
「開き直って海老を食べに行くぞ」
 慎の肩を叩き、ゼクスが笑う。その光景に世界司書は「仲の良いことで」と呟き、抗だけが無事に終わるのか、心配になってきていた。
「因みに私はエビアレルギーなので食べられません」
 誰も聞いていないのを実感しつつ世界司書が、ぽつりと呟いてチケットを取り出した。

 こうして、ゼクス達はヴォロスへと向かった。果たして、彼らは巨大エビを食べることができるのだろうか。そして、竜刻をちゃんと忘れずに回収してくれるのだろうか。

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!注意!
企画シナリオは、便宜上、参加枠数が「999」になっていますが、実際には特定の参加予定者のために運営されています。

この企画シナリオは下記のキャラクターが参加予定です。他の方のご参加はご遠慮下さい。万一、参加予定でない方のご参加があった場合は、参加がキャンセル(チケットは返却されます)になる場合があります。

<参加予定者>
ゼクス・ザイデルホーファー(ccse3180)
陸 抗(cmbv1562)
アキ・ニエメラ(cuyc4448)
ルン(cxrf9613)
風雅 慎(czwc5392)
スピア(cyhn9848)
マルチェロ・キルシュ(cvxy2123)

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品目企画シナリオ 管理番号2757
クリエイター菊華 伴(wymv2309)
クリエイターコメント菊華です。
リクエストありがとうございます。
タイトルに、深い意味などありません。

どうしてこうなった? と言われないように歪みないプレイングを期待しています。はい。

司書情報補足
竜刻:翡翠。重さは500gほど。
   なかなか大きい。そして湖の中だ!

海老:竜刻付近にいる。
   リーダー格は30m 子分は15m
基本、行動パターンは普通の海老と変わりません。ただ、でかいので跳ねて津波が起こるかもしれません。

船:現地で借りることも可能です。

水中について
コンダクターさんはジェリーフィッシュタンが有効です。ツーリストさんは街の住人から魔法をかけてもらう事でジェリーフィッシュタン所有のコンダクターさんと同じ行動力を得る事も可能です。

倒しても元の大きさには戻りません。
背わたはとって食べましょう。
倒したあとは煮るなり焼くなり揚げるなり。

蛇足
野菜は、新鮮なものが現地で入手できます。調味料も住人から分けてもらえます。

プレイングは7日間になります。
なお、諸事情によりお時間を長めに頂いております。ご了承ください。

それでは、よい狩りを。
※注意:これは、竜刻回収任務です。

参加者
ゼクス・ザイデルホーファー(ccse3180)ツーリスト 男 22歳 無職
ルン(cxrf9613)ツーリスト 女 20歳 バーバリアンの狩人
マルチェロ・キルシュ(cvxy2123)コンダクター 男 23歳 教員
陸 抗(cmbv1562)ツーリスト 男 17歳 逃亡者 或いは 贖罪に生きる者
アキ・ニエメラ(cuyc4448)ツーリスト 男 28歳 強化増幅兵士

ノベル

起:海老と戯れよう 竜刻回収編

 ――ヴォロス・とある大きな湖。

「海老……っ!!」
 水色の瞳を輝かせ、いきなり叫ぶ美青年、ゼクス・ザイデルホーファー。その胸ポケットで、ちっちゃな剣士、陸 抗は思わず耳を押さえた。あまりにもゼクスのテンションが上がりすぎている模様だ。その声は水面いっぱいに広がり、周りの人々も思わず振り返る。
(恥ずかしい……っ!)
 顔を真っ赤にして胸ポケットの中で縮こまる抗。しかし、こうしていても依頼は達成されないのでどうにかひょっこり顔をだす。
「やっぱり、日々の糧を得るための戦いってのは腕が鳴るし、心も踊るな」
「狩る! ルン、お腹いっぱいになる!!」
 生きる事はそういう事だよな、と深海色の瞳を細め不敵に笑うアキ・ニエメラ。彼の傍らでは金色のライオンヘアーをしゃん、と揺らすルンが両手を上げて気合を入れている。そんな面々の様子にマルチェロ・キルシュは内心でため息を吐いた。
「い、一応竜刻回収任務って事忘れてないよな?」
「ルン、覚えている! これは竜刻回収依頼!」
 彼の声にルンが反応し、懐から何か取り出した。……が、それは誰がどうみてもマヨネーズのボトルである。思わず目が点になるマルチェロとうんうんと頷くゼクス。
「ルン、マヨネーズ持ってきた」
「いいじゃないか! 茹でた海老につけて食べよう!!」
 じゅるり、と思わずよだれがでてしまうが、それを豪快に拭うルン。がっくりと項垂れる抗にマルチェロは大丈夫だ、という眼差しで答えた。そうしながら、茶色い瞳でメンバーを確認し、来る事が出来なくなってしまったメンバーを思う。
(後でお土産を持っていこう。喜んでもらえるといいのだが……)
 その内の一人はとある依頼で負傷してしまったが故、来る事ができなくなった。その具合を心配しつつ、彼は欠席者の分までがんばろう、と気合を入れる。
「さて、どこからはじめようかな……」
 アキがあたりを見渡し考えていると遠くで水の跳ねる音が聞こえる。湖へと目を向ければ既に3匹の海老がウェルカムと言わんばかりのテンションで迫っていた。厳しい戦場出身のアキは気楽にいながらも既に海老との戦闘がすぐにでも行えるよう、意識を海老に向けている。
「向こうは気づいているのかわからない。攻撃するには少し近寄る必要があるかもな」
 抗がゼクスの肩によじ登って水面を見る。全長30mの海老は飛沫を上げながら跳ね、既に波を起こしていた。見ていた住人やら観光客達はあっという間に避難し、余裕のある物は魔法やら翼やらで上空から見ていた。
「ギャラリーが多いな。……まぁ、いい。海老は俺達の物だぁああああ!」
 更にテンションの上がったゼクスがびしっ、と海老を指差し、片一方の手は腰にやってポーズを決める。そして、彼は言い放った。
「全員突撃!」
「おーっ!」
 ゼクスの言葉に、真っ先に動いたのは野生児系乙女ルン。彼女は思いっきり湖へ飛び込むとそのまま潜ってしまった。因みに10分間ぐらいは潜っていられるらしい。
「距離からして、泳いでいっても大丈夫そうだが津波がな……」
 アキはふぅ、と息を吐くと集中し、空気を自分の周りに集めて湖へと潜る。そして高速で水中を進んでいく。強化兵であるアキはどこでも行け、戦えるのだそうな。
 その様子をうんうんと頷きながら見送り、自分も海老へと向かおうとするゼクス。だけど彼だけは丸腰で、しかも他人が見れば到底戦いに行くようには見えなかった。
「兄ちゃんは戦わないのか?!」
「俺を戦闘の頭数に入れるとは、貴様さてはモグリか?」
「何のだよ?!」
 思わず突っ込む地域住民らしき男の声にどーんと言い放つゼクス。思わず突っ込んでしまうマルチェロだったが、そこでふと自分の相棒であるセクタンのヘルブリンディ(以下:ヘルと表記)を見る。普段ロボタンである相棒を今回はジェリーフィッシュタンにしたのだが……、お菓子の好みが変わっていた。普段は焼き菓子が大好きなのだが、現在はゼリーや氷菓が好みらしく、今ももにゅもにゅとゼリーを食べている。その姿に内心困惑してしまった。
(今回はこっちの方がいいか?)
 抗もまたアキと同じように空気を集め、ゼクスと共に水の中へ。因みにゼクスは海老へ走って向かおうとしたが元々戦闘力が全く無いので走れず、水中に入る前に倒れそうになっていた事を付け加えておく。

 海老は現れたロストナンバー達を見つけてもさほど気にする事なく水中に潜っていた。しかし、それはルンがボス海老の殻の継ぎ目を思いっきり叩くまでの事。叩かれた途端、海老は思いっきり体を仰け反らせ、子分海老がルン目掛けて頭突きを放とうとする。
「海老~~~っ!」
「だから暴れるな! 膜が割れる!!」
 海老へと突貫しようとするゼクスを抗が窘めつつ意識を集中させる。エビの一体を真空の筒で覆い、ルンへの突貫をせき止めるのだ。
 そうしている間にもマルチェロとアキは竜刻を見つける事が出来た。500gはあるという翡翠原石は白っぽく、滑らかな石だった。これの影響で海老がでかくなった、らしい。ルンがもう一匹の子分海老の腹に拳を入れて動きを鈍らせている。回収するならば今のうちだろう。
「そっちは任せた!」
 抗の言葉にアキとマルチェロは頷き、動けるようになったボス海老が2人へと突進しようとする。その勢いで子分海老やルン、ゼクスと抗は押しのけられてしまうものの、アキが咄嗟に凝縮した水をあらぬ方向に放って気を引いた。
「行け!」
「ああ!」
 アキの合図を受け、マルチェロが綺麗なフォームで竜刻へと向かう。そしてゆっくりと水底から持ち上げて浮上すると、子分海老の一匹が水面から飛び上がったのが見えた。
「浮上しよう」
 アキはマルチェロに手を伸ばし、彼をも空気の膜で包むと共に浮上した。

「そっちに行ったぞ! ルン、思いっきり殴れ! 抗も続くんだ!!」
「ルン、殴る!」
「俺にまで接近戦を求めるな! 溺れる!!」
 一方、押しやられたメンバーは湖上へ上がっていた。息継ぎの時間となったルンは獲物も浮上したので矢を使おうとも思ったが、思いっきり息を吸い込んで再び潜っていった。一方無茶ぶりを求められた抗は突っ込みつつも再び真空壁を展開し、もう一匹の子分海老へ電撃を思いっきり叩き込む。
(狩る、狩る、狩るっ!!)
 ルンはというと、殻の継ぎ目へと強力な一撃を次々に見舞い、子分海老を悶絶させる。しかし殻は思ったよりも硬く、子分海老は振動で身悶えているようだった。
 ぷはっ、と音を立てて再浮上するルン。頭を震えば陽光に濡れた金髪と水しぶきが輝く。彼女の視線の先には飛び跳ねる子分海老の姿があった。
「射る!」
 彼女は近くに浮かんでいた船に飛び乗ると、トラベルギアである弓を構え、矢筒から矢を取り出して身構えた。津波のせいで船は揺れているのに、それでもフォームが崩れないのは気づいたアキが特殊ESP『静止』で津波を止めてしまったからだ。
「で、なんで俺まで巻き込まれてる?」
「そこにいたからだろう」
 不思議そうに首を傾げるゼクスに、アキは飄々と答える。そして狙いを定めると着水したばかりであろう子分海老へと向かい、意識を集中する。
「破ぁっ!」
 掌を前にだし、一緒にイメージするのは煌く水の槍。それは現実となり、海老へと向かい、押し倒す。貫かないのは前もって「海老をなるだけ傷つけないように戦おう」と抗が提案したからだ。
 青い空、飛び散る雫、跳ね上がる海老。ロストナンバー達は果たして、この海老達を倒し胃袋に収める事ができるのだろうか?

 え? 竜刻? 無事回収されたから無問題!!

 因みに、ルンも竜刻については覚えていた為、マルチェロが持っていたそれに一応封印のタグを貼り付けておく事にした。

承:海老と戯れよう 下ごしらえ編

「いけ、抗! でかいのお見舞いしろっ!」
 飛沫に濡れながら叫ぶゼクスの上を、ボス海老が飛び跳ねる。抗はそんなゼクスに「そんな場合か!」と突っ込むも、それよりも早く念動によって宙に浮く2人。
「任せておけ!」
 楽しげに笑って、アキが念動で飛んでいた。そして繰り出した水の一撃が殻の継ぎ目に辺り、海老は身を仰け反らせる。
「狩る! 海老、皆で食べる!」
 ルンもまた別の海老へ向かって行く。再び水中へ潜った子分海老を追って水の中へ飛び込めば、強力な一撃を叩き込む。
そんな中、一同から少し距離を置き、マルチェロは考察を重ねていた。傍らではジェリーフィッシュタンのヘルが相棒に「どうするの?」と問いかけるような眼差しを向けている。
(多分、寒さに弱い筈)
 生きたまま出荷・流通させる伊勢海老の事を思い出し、彼はアキと抗を探した。視線の先に目を狙って風の刃を放つアキの姿がった。
「アキさん! 抗! 冷気を作れるかな?」
「冷気、か?」
 マルチェロが問いかけると、アキは少し考える。
「それだ! ありったけの冷気で湖面を凍らせるんだ!」
 宙に浮いたゼクスがぽん、と手を打っているとざぶん、と波をかぶる。それよりも早く防御壁を展開し、抗は濡れて張り付いた前髪を払いながら答えた。
「冷気系はちょっと自信がない。……でも、意図は分かる。俺に出来る事でなら、こんな方法があるんだが」
「? それはどんな方法なんだ?」
 興味を持ったマルチェロが問いかけると、抗はアキと彼に別の案を提示する。と、2人とも「なるほど」と手を打った。
「わかった。どんな風にアシストすればいい?」
 抗がゼクスの肩からアキに飛び移り、耳打ちする。内容を理解したのか、彼はにっこりと笑ってくれた。
「何か閃いたのか?」
「話聞かせろ! ルン、囮、やる」
 ゼクスが顔を上げると、先程まで海老とガチ勝負をしていたルンがやって来た。彼女の後ろでは子分海老の一匹が気を失って浮いていた。この乙女の強さを改めて実感しつつマルチェロと抗はふと思いついた事を話した。そして、ゼクスもニヤリ。
「よし、下ごしらえだ」

 暫くして、作戦は実行された。最初、ルンとマルチェロで囮を行ない、ゼクス、抗、アキが浮かんでいる地点まで誘い込む。
(緊張してきた……)
 マルチェロはトラベルギアである両刃ナイフ『シギュン』を握り締め、ルンの横を泳いだ。彼はルンや仲間達がピンチに陥ったら必殺技を解き放つつもりだ。
 表情が険しいマルチェロを見、ルンはにっこり笑ってみせる。それはあたかもこう、言っているようだった。
(大丈夫。ルン、一緒。囮、成功する)
 それに気づき、マルチェロは肩の力が少し抜けるようだった。
(ありがとう、ルン。……よしっ!)
 彼もまた笑顔で答えると、海老に向き直る。手にしたトラベルギアはあくまで保険。マルチェロは海老に近づいてかるく突く……が、その横で、ルンが思いっきり子分海老を殴りつけていた。

「来たか」
 飛沫を上げて迫る子分海老とボス海老。アキはそれを確認し、囮2人の姿も見つける。ルンはマルチェロの手を握って猛スピードで泳いでゼクス達の所までやって来ており、そこを抗が空気の膜で覆って回避させる。
「俺の海老、俺の海老! 俺の海老!!」
 表情はあまり変わらないのにすっごく楽しそうなゼクス。そのまま飛び込みそうな気配はあるがそんな体力はゼクスにはなく、アキによって念動力で浮かんでいた。
「よしっ!」
 アキがエビの周りの水ごと虚空へと浮かばせる。先ほど使った大技の疲労はあったものの、この程度だったら負担は軽い。そしてアキの肩に飛び乗っていた抗はその水に向かって自分の力を注ぎ込む。
「これなら、夢見心地になられるぞ」
 ぽつりと呟けば、その水が次第に雅やかで芳醇な香りを漂わせ始めた。そう、抗が持つ物質組成PKによるものだった。
 酒に付けられたボス海老と子分海老は次第に動きを鈍らせる。術が解かれた時、既に2匹の海老はおとなしくなっていた。

 こうして海老は3匹とも沈黙(但し生きている)し、街の人達もまた、彼らの活躍を拍手で称えるのだった。しかし、本当の戦いはこれからだ!

 どーん、と鎮座する巨大海老3匹。それを見て、マルチェロとアキは腕がなるな、と笑いあった。
「でかいってことは大味なのか? だったら、エビチリやらフリッターやら、油を使った料理にした方がいいのかな」
「いや、お酒に付けていない1匹をみたら生でも美味しそうだった。わさびと醤油で食べたら絶品じゃないかな?」
 首を捻りつつ考えるアキにマルチェロが報告する。と、アキは氷の入った箱から山葵と山葵用のすりおろし機を取り出した。
「生の山葵?!」
「ああ。きっと美味しいぞ」
 目を輝かせるマルチェロに、アキはにっこりして海老に向き直る。あまりにもでかいそれの解体は大変だろうが、調理が実に楽しみだった。

「料理は任せた。ルン達、食べる係!」
「という訳で活け造りにフリッター、フライ、マヨネーズ炒めにチリソース炒め、青菜と一緒に炒めた奴もいいな! そうそう、海老焼売と餃子も……」
 めいいっぱい体を使ったルンなら話はわかるが、波に揉まれたり命令したりだけしていたゼクスに頼まれ、抗は苦笑する。まぁ、いつもの事だと諦めはついているが、一体細い体のどこに沢山の食べ物が入るのだろう?
「? 胃袋だが?」
 まぁ、上記のような返答が多分帰ってくると思いつつ、抗もまた地域の人から色々な材料を分けてもらうのだった。


転:海老と戯れよう 調理編

 退治された巨大海老は、一旦鮮度を保つために湖の中に入れてある。湖の一部をロープとブイで仕切り、生簀(にしては大きいプール)を作った。因みに生命力が高かったのか、海老は三匹ともとりあえず生きてはいる。しかし、ボス海老と子分海老の1匹は抗の施した術によってよっぱらっているような状態ではあるが。

 調理しやすいように、と地域の人々が用意してくれた場所で、一行は早速海老料理という名の格闘を行う事になった。
 何故この様な表現をするかといえば、この海老があまりにも大きい為、解体作業から始めなければならないからである。もたついていたら鮮度が落ち、傷んでしまう。その事を考慮しながら調理を担当するアキ、マルチェロ、抗は目の前で大人しく(?)ピチピチ言っている海老たちを見た。
「これは、殻を剥いて、背わたを取る所からやった方がいいな」
「背わた……」
 アキの呟きに抗が海老をじー……っと見て眉を顰める。身長17cmの抗と全長30mの巨大海老。どうみても他者から見れば絵本の世界にしか見えない。
「この部分、だな。人間で言えば腸に当たる。取り除くとなれば背中に切れ目を入れて取り出す事になる」
 念の為に、と持ってきたおままごと用の海老のフィギュアを持ち出したマルチェロは、どれだけのおお仕事になるか、と考えながら2人に言う。抗はふう、とため息をつくものの、アキは早速楽しげに解体作業にとりかかった。
「腹わたはどうする?」
「一応、取ったほうがいいと思う。あ、それとアキさん、殻は取っておいて貰えないか? いい出汁が出ると思うんだ」
「ああ。一箇所に集めておくよ」
 エビの腹部を見ながら問う抗に、ロキがいい、アキもまた彼の頼みを聞き入れる。こうして3人によるエビの解体が始まった。
硬そうだ、と睨んでいた殻を剥ぐのは意外と簡単だった。まぁ、ルンが思いっきり叩いてくれたお陰で柔らかくなっていたからだろう。足を毟り、ナイフ等を使って背中を切り開き、太い背わたを3人がかりで引き出せば海老の濃い匂いが鼻を刺激する。食欲がそそられるも、子供の腕ほどの太さもある背わたを取り除くのは、PKを使ったとしても一苦労だった。腹わたも同様である。そんな姿に見かねたのか、地域の人々も海老の解体を手伝ってくれた。
 程なくして海老は艶々としたむき身姿となった。その上殻は綺麗に集められている。改めて3匹の巨大海老と、その殻を見、ゼクスとルンが小躍りしているのが遠目に見えた。
「これだけあるんだ。街の人達を呼んで皆で食べないか? 解体も手伝ってもらった訳だし……」
 その提案にゼクスが「そんな勿体無い!」という顔になるが他のメンバーは概ね賛成であった。
 とりあえず、とお刺身分をどうにか切り出したマルチェロと抗。アキが持ってきた山葵をすりおろし、地域の人から分けてもらった醤油と共にルンとゼクスに出す。これだけでも、結構な量であるのだが、ゼクスとルンに書かれればあっという間になくなってしまうかもしれない。
「先にこれだけ食べて待っていて欲しい」
「地域の人には今アキさんが説明しに行っているから、なるだけテーブルのセッティングをお願いしたいんだが……」
 マルチェロと抗の言葉を聞いているかは不明だが、ゼクスとルンは早速お刺身を食べ始めた。そのとろとろとした舌触りと、海老独特の風味の濃さに、2人のテンションもだだ上がりである。
「こら! それは俺の分だ!」
「これ、ルンの分。食べたもの勝ち」
 そんな事を言い合いながら盛られた海老の刺身を食べていく2人。仕方なくてきぱきとテーブルセッティングをしてから料理に取り掛かるのであった。

 アキに誘われて来た地域の人々は、巨大海老を退治してくれた事を喜び、その上料理にして振舞ってもらえると聞いて恐縮したが、最終的にはお相伴に預かることにした。彼らの見守る中、3人の料理人がそれぞれの腕を震えばルンとゼクスだけではなく、多くの人々が魅了される。
「今度は俺ががんばる番だ。気合を入れないと……っ!」
「俺も負けていられないな」
「それじゃあ、全力を尽くすとするか」
 マルチェロ、アキ、抗が奮戦する中、ゼクスとルンがわくわくと見守る。その間に刺身の残り1切れをどっちが食べるかで争ったはいいが結局ルンに押しつぶされ、彼女に軍配が上がったのはここだけの話である。
(抗に後でお土産用の料理も頼もう)
 幸せそうに最後の1切れを食べるルンの横で、ゼクスは内心でぽつり、と呟いたがよく見るとマルチェロが何やら海老料理を持って現れる。それはエビの切り身と新鮮な野菜、海藻を合わせたオードブルであった。胡麻の香りが食欲をそそるドレッシングがジュレのように煌いているのは、海藻の影響だろう。
「ん? ゼクス、肩落とすな。新しいの……」
「頂いた!!」
 しっかりと見ていたルンの声に、ゼクスはがばっ、と身を起こした。そして皿が置かれるや否や、自分の器にしっかりと盛る。そんな様子に目を丸くするマルチェロと、遠くから見て呆れる抗。ルンは負けじと食べ始め、アキは優しい目で見守る。
「そんなに慌てなくても、これからもっと沢山の海老料理が並ぶんだ。気長に待っていればいいんだ」
「そうは行かない! こちとら久々の海老料理! 食って食って食いまくらないと気がすまん!!」
 普段貧乏な為、今日は食い溜めするつもりらしい。そんな姿に益々抗は頭を抱える。そんな彼の肩を優しく指で叩き、アキは小さく頷いた。
「ああ、頑張るよ。まだまだ材料はある訳だからな」
 それに抗が頷き、マルチェロが戻るのも待たずに調理を再開した。おいしく食べてくれるゼクスとルンの姿に、アキは更に笑顔になる。
(あんな姿を見ると、より腕がなるな……っ)
 どうやら、彼らのお陰でパワーアップしているようだ。それを抗とマルチェロは頼もしく思うのだった。

 料理の内容は、ゼクスが注文した物の他に酢海老(酢豚の豚を海老に替えたもの)、揚げ海老団子、海老カツ、海老のカクテルサラダ、ピラフにドリアに春巻き、酸辣湯……と種類豊富。それを腕利きのシェフ達があっという間に作り上げるのである。地元でレストランやホテルを経営する人々はそんな彼らを勧誘したいなぁ、という目で見つめていた。
「ふぅ、こんなものかな?」
「大きいから、もうこっちも戦場だったな……」
 マルチェロが額の汗を拭って料理の数々を見れば、抗はマルチェロの肩で少し休ませてもらいつつ、安堵の息を吐く。アキは最後の一品を作り終え、漸く彼らの傍に戻ってきた。
「果たして、どれぐらいで無くなるかな?」
 不敵な笑みを浮かべ、ちらりとゼクスとルンを見れば、2人はまたもや最後のひと切れを取り合っていた。

 こうして3人によって作られた料理は所狭しとテーブルに並べられ、街の人々をも魅了する。ゼクスは待ちに待った海老料理の数々にテンションがだだ上がりだった。
「これだ! 俺が求めていた物は……っ!!」
 桜海老すら捉えられるか、という程の彼が料理にダイブしそうな勢いであれもこれもと料理を皿に持っていく。そしてもっしゃもっしゃと豪快に食べる姿は作ったメンバーを喜ばせる。これだけ喜んでもらえれば、本望であろう。
「美味しい。 ルン、まだまだいける」
 じゅるり、と言わせた口元を拭って、ルンも負けじと食べていく。地域の人々と交流しながらその様子を見ていた3人もまた、早速海老料理を堪能することにした。

 そんな中、ぽつりとゼクスが呟く。
「卵もあれば、最高だったのだがな……」
「?! それはそれで滅茶苦茶大変な展開が待っていそうだ……」
 その呟きに、マルチェロは嫌なイメージが湧き上がりそうになり、傍らの相棒、ヘルはそんな彼の肩をぽん、と慰めるように叩いた。


結:海老と戯れよう 卓上は戦場編

「「いただきますっ!!」」

 食事会場から響く、はしゃぐ声。待ちに待ったパーティーは開始される。先程までしっかり食べていたゼクスは水色の瞳でじーっ、と料理を見つめ、ぱっぱかと他人が取るよりも早く取って行く。今もぷりっぷりに湯がかれた海老を掻っ攫い、ルンが持ってきたマヨネーズを失敬してたっぷり絞る。
「熱っ……! でも、こうしながら食べるのが美味しいものだな」
「普通の海老とは違うね」
 抗も少しずつ料理を取りながら食べていたが、元々体が小さい彼はほんのちょっとの量でお腹いっぱいになってしまう。しかしゼクスやルン等がお皿をあっという間に綺麗にしてしまうので、残るとはあまり考えていなかった。
(お土産用は確保していて、よかったな)
 別の任務で重傷を追った仲間へのお見舞いを考えていたマルチェロは、お土産用の箱と、自分で作った海老塩をちらり、と見た。スープの出汁に使った海老の殻を再加工した物だが、予想以上の量が出来た。流石に一人では使いこなせないのでこれも地域の人々と分け合う事に。
「天ぷらとかに、合いそうだな」
 アキがエビマヨを皿に盛りながら、海老塩を見て呟く。海老の風味豊かな塩は、きっと料理に花を添えてくれる事だろう。それを使った料理も試してみたい、と内心ワクワクするアキに、マルチェロも「ぜひ使って欲しい」とにっこり笑う。
「まだまだ、いける。アキ、抗、ロキ、有難う!!」
 ルンは金色の瞳をキラキラさせて料理を次々に食べていく。戦闘でも大活躍した乙女の姿は地域の若い男どものハートを掴んでいたらしく、料理を運んでくれる者もいた。それを横からかっさらうゼクスに、ルンは負けじと美味しそうに料理を平らげる。
「……何だか、ルンの周りは歓声が上がっていないか?」
「さぁ……?」
 抗の呟きに、アキが首を傾げる。しかし、戦闘だけでなく料理でもカッコイイ姿を見せたトリオもまた、若い娘たちから黄色い悲鳴の洗礼を浴びている。けれどもそれよりもお腹がすいていたので、笑顔で答えつつもそつなく料理を楽しんでいた。
「うん、美味しいな。持って来た甲斐があった」
 持って来た山葵をすりおろし、刺身につけて食べるアキ。予想以上に風味豊かな山葵に、顔が綻んでいく。海老のしっとりとした甘さも至福の時をくれていた。
「臭みが無い。あの湖がとても綺麗な証拠だな。味がいいのも頷ける」
 マルチェロは海老のフリッターを食べながら湖を見つめる。湖の透明度の高さを思い出し、今度は落ち着いて泳いでみたい、とも思った。彼は相棒にも海老料理を与え、より笑顔になった。
「これなら、食べつくせそうだな……。おかわり」
 ゼクスはガツガツと海老カツを頬張りつつ今度は焼売に手を出す。綺麗な顔にパン粉やタルタルソースをつけてもぺろり、と舌で取り、綺麗に食べ尽くす姿は清々しい。こんな姿を見ると調理場トリオは嬉しくなって突っ込めなくなった。
 海老とおこげのあんかけの香ばしい匂いに食欲をそそられたアキはふうふう言いながら食べてみる。先ほど食べた酸辣湯の酸っぱ辛い風味もよかったが、素朴な塩味もまた幸せをお腹に運んでくれた。それだけではない。どの料理も海老のぷりぷり感のお陰で飽きることなく食べる事ができる。頷いていると、満面の笑みを向けるルンと目があった。
「美味い、幸せ。アキ、幸せか?」
「ああ。とっても幸せだよ」
 そんな二人にマルチェロはエビチリを食べつつ、
「話に聞いたけれど、元々ここの海老はぷりぷり感が好評だそうな。だったら、この美味しさも頷ける」
 と聞き及んだ事を説明する。全員で納得が言っていると、エビマヨの皿に1つだけエビが残っている事に気がついた。
「「もらった!」」
 ゼクスとルンが一気に手を伸ばすも、それよりも早くアキが皿に盛る。そしてくすり、と笑って食べてしまうと、ゼクスとルンは悔しそうに見つめるのだった。

 沢山あった料理も、ゼクスとルンを中心にあっという間になくなってしまった。成人しているメンバーは少しお酒を頂きつつも平和になった湖を見つめる。あの巨大海老を生み出した竜刻も無事回収され、恐らくあのような巨大海老と遭遇することは今後ないだろう。……多分、おそらく。
「ふぅ、腹八分目かな」
「あれだけ食べてまだ八分目か!!」
 ゼクスが口元を紙ナプキンで拭いつつ呟けば、思わずマルチェロが突っ込む。その胸ポケットでは抗が戦闘や調理での披露と満腹感でうとうとしている。
「もう、食べられないな」
「ルン、まだいける」
 そんな呟きに、ルンがマヨネーズを片手に笑う。その様子にマルチェロはつっこみたくなったが、気を取り直した。
「お土産用は別にしておいて正解だったな」
 アキがそう言ってお弁当箱を見せる。人数分より多いのはこれなかったメンバーの分であった。そして、マルチェロはエビアレルギーと言っていた世界司書の為に買ったお土産(白い石のバングル)を見、気に入ってもらえるといいな、と考える。
「旅人の皆さん、今回はありがとうございました。お陰で、私たちも安心して営業ができます」
 そう言ったのはこの辺りの街長という初老の女性だった。彼女は仲間と共に深々と頭を下げ、それに恐縮する人々。ただしゼクスは「エビが目的だったからな」と言いそうになり、抗に口を抑えられた。

 またいつでも遊びに来て欲しい、と言われ、見送られる一同。彼らは満腹感と充実感の中停留所を目指していく。
「しかし……」
 その最中、ゼクスがふと、口を開く。なにか危惧する事があったのか、と首をかしげるやら、見つめるやらしていると、彼はぽん、とこう言った。
「あの巨大海老、また出現しないのか」
「「もういいよ!」」
 抗とマルチェロが思わずツッコミ、それにアキはからから笑う。それに対し、ルンだけはぜひそうして欲しい、と心から願うのだった。

 ――こうして、ヴォロスでの任務は完了する。
 その後、海老料理の匂いが染み付いた竜刻を提出され、お腹がすく司書達の姿を世界図書館で見かける事になったのだった。

(終)

クリエイターコメント菊華です。
大変お待たせいたしまして、この様な結果になりました。そして執筆中お腹がすきました。海老は大好物なんです、僕ぁ!
僕がロストナンバーだったらみなさんに同行して、波に揉まれていたかと思います。

竜刻が無事回収されたおかげで、巨大海老は出現しなくなりました。もし忘れていたら再びどえらい事になっていました。ありがとうございます。

今回の依頼で次のものを取得しました。
海老ずくし弁当
(ヴォロスの湖で採れた巨大海老をふんだんに使用した料理が入った弁当。お早めにお召し上がりください)

海老塩
(風味豊かな海老塩。たくさんできたのでぜひお使いください)

それではまた縁が有りましたら宜しくお願いします。
公開日時2013-07-21(日) 00:20

 

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