静まり返った蒼い世界に、時折、鈴を思わせる何かの鳴き声が響く。 足元に咲き誇る銀の花は、明らかな金属光沢を放ちながら、凛冽な泉を思わせる清らかな芳香を立ち上らせていた。 「……不思議なところですね……」 藤枝 竜が空なき空を振り仰ぐ。 高い高いそこにあるのは、淡く美しい光をまとった、鉱石ともガラスとも取れぬ質感の天井だ。 「あっ、竜ちゃん見て見て、あそこ、ウサギ! あっちにはリス、あそこには小鳥さん……でもからだが透き通ってるね。あれは生き物? それともつくりもの?」 「生き物だって聞きましたよ。金属生命体、っていうんだそうです」 「生きてる金属なんだ。すごいねぇ、不思議!」 スイート・ピーが、見慣れぬ来訪者たちに興味津々といった体でこちらへ近づいてくる小動物たちに目を輝かせる。 「で、えーと……そう、一衛だっけ。その、ロストナンバーがどこにいるか判るか? この【電気羊の欠伸】に転移したって話なんだけど」 「黒羊の支配領域にいる。“星の墓標”と呼ばれる階層だ」 「そこに行くにはどうしたらいい? 早いとこ連れ帰ってやりたいんだわ」 「あの辺りは閉鎖区域だからな……少し待て、ここから回廊を通す」 五十嵐 哲夫はというと、この世界の守人という、生き物のにおいのしない奇妙なヒトガタからの情報収集に励んでいる。 「その、“星の墓標”ってどんなところなんだ?」 「百年以上昔、【電気羊の欠伸】への侵攻を企てた帝国との戦いがあった場所だ。以前は整然とした自律空間だったんだが、さすがに壊滅的な被害を受けたものでな、今では閉鎖され遮断されている。住民のみならず、羊も、我々夢守も滅多にあそこには行かない廃棄空間だ」 「じゃあそこには誰もいないってことだよな? だったら尚更早く助けてやらないと。たぶん、すごく不安な気持ちでいるだろうし」 ふたりが話す間に、鈍く光る金属が唐突に周囲から湧き出すと渦を巻いて組み合わさり、蓮の花を髣髴とさせる台座となった。結構なサイズのそれは、哲夫たち三人が乗るのに充分な規模だ。 「これに乗ったら行けるってことか?」 「ああ、“星の墓標”まで回廊をつないだ、その入り口まで送る。少々多忙でな、同行は出来ないが、お前たちなら大丈夫だろう? その移動装置はお前たちの意識を読み取らせれば別の乗り物に変化させることも出来る、有効活用してくれ」 「ん、まあ何とかなるだろ。ってことで行こうぜ、竜、スイート」 呼ばわりながら台座に飛び乗る。 竜とスイートがそれに倣うと、蓮花の装置はふわりと浮かび上がった。 周囲を煌く膜のようなものが覆うと同時に、眩暈に似た軽い浮遊感が三人を包み、風景が先ほどの蒼い森から漆黒の空間へと変わる。 「わ、遊園地のアトラクションみたいです」 「うん、ちょっとわくわくしちゃう」 「遊園地かあ……ロストナンバーさんを助けたら、お祝いに皆で行くのもいいですね」 竜は世界司書から預かった資料を取り出し、紙面を眺めた。 射川 光(いがわ・ひかる)、十七歳男性。 恐らく、竜や哲夫と同じ『現代叙事詩』の出身だ。 裏づけが取れているわけではなく、同郷者には何か『通じる』ものを感じる竜の勘だけなのだが。 「それにしても、このロストナンバーさん……『天からの贈り物を受け取る能力』だなんて、なんだかロマンティックですよね」 「ねー。雪の結晶とか花びらとか、流れ星なんかを受け止められたら素敵」 「私はお菓子が降って来てくれたら嬉しいですね!」 「あっ、それも素敵だね! スイート、ふわふわの綿菓子を両手いっぱいに受け止めてみたいな。それで、綿菓子を敷き詰めて眠るの」 「甘くて美味しい夢が見られそうですね、それ!」 超遠未来世界の、荒廃した大地でのロストナンバー救出とはいえ、危険なモンスターが出現するわけでもなし、行って帰ってくるだけのことだろうと三人とも思っていた。 たったひとり、何もかもが死に絶えたかのように静まり返った閉鎖空間に放り出された彼を一刻も早く見つけ出し、もう大丈夫だと安心させてやりたい、そう思いつつも、それほどの危機感を持っていたわけではなかった。 ――この時までは。 だから、別階層での作業に勤しんでいた夢守が、ふと手を止めて、 「――……ん、しまった。あそこはまだ“星”が生きているんだったな。認識性だから、まさか作動するようなことはないだろうが……まあ、仮にそうなったとして、彼らなら何とかするだろう」 他人事のようにつぶやいたことなど、三人に知る由もない。 * * * * * “星の墓標”に辿り着き、移動装置から降りてみたらそこは戦場だった。 星空を思わせる擬似空から、超高熱の白光がある一点をめがけて降り注ぎ、間断なく爆発音が聞こえる。建造物の残骸が十字架の如く突き立つ、擬似星の光に照らされた白い荒野を、腹に響く重低音が震わせる。 「……どういうことだこれ」 哲夫が呆然とつぶやく間にも、一定の間隔を置きながら、白い光は地上の一点へと降り注ぎ続けた。 どおん、どどおん、と、腹に響く音が聞こえてくる。 「流れ星? 違うな、ビーム兵器みたいな……空にあったら衛星兵器って言えばいいのか? でも、なんで」 「えーと、確かここってすごい技術がある遠未来っぽい世界なんですよね? 一衛さん、戦争の跡地だって言ってましたし、そういう武器みたいなのが残ってたんじゃないですか?」 「ありえる。そういうことは先に言っといてほしかったけどな。……しかし、これって誤作動してんのか?」 「光さんが標的になってる、とか。動くものすべてを殲滅する! みたいな」 「うーん、可能性は捨てきれねぇけど、さすがにそんな危険なもんがあったらあいつも警告してくれるだろ。……とりあえず、行ってみるか」 「ねぇねぇ竜ちゃん哲夫ちゃん、あの光、ちょっとずつ降る位置が動いてないかなぁ?」 移動装置に記憶を読み取らせ、大型バイクの形状に変えようとしていた哲夫は、小首を傾げたスイートの言葉に眉をひそめた。 「それって、何か狙うものがあって、それが動いている、ってことですよね。閉鎖された廃棄空間で動くものなんて、」 「――乗れ、竜、スイート! 急ぐぞ!」 哲夫の合図で少女ふたりが後部に飛び乗ると、 「かなり揺れるぞ、しっかりつかまってろ!」 バイクは小石を吹き飛ばす勢いで奔り出した。 ごうっ、と、砂煙が舞い上がる。 一直線に、弾丸のように飛び出したバイクは、白い光が流れ星のように降り注ぐ一点をめがけて疾走を始めた。白く沈黙した風景が、どんどん後方へと流れていく。 「すごい、速い速い!」 竜の腰にしがみつきながらスイートが歓声を上げる。 ふたりが振り落とされないよう気遣いつつバイクを操っていた哲夫の背後で、竜が不意に声を上げた。 「あ、そっか」 「どうした、竜」 「『天からの贈り物を受け取る』能力ですよ、哲夫さん。光さんの場合、空から来るものすべてに適用されちゃうんじゃないですか? 本人の望む望まないに関わらず」 「……心底納得した。じゃあ、あの衛星兵器にしちゃ、友達にプレゼント贈ってるようなものなのかもしれないな」 「光さん的には死の宣告に等しい贈り物ですけどね」 「あっ、哲夫ちゃん竜ちゃん、あそこ!」 大体の事情が読めたところで、スイートが前方を指差す。 甘くとろける魅惑のマシュマロヴォイスが指し示す先に、バイクを駆る少年の姿が見えた。1km以上離れているのに、必死の形相と判る。よほど追い詰められているのだろう、顔色が蒼白だ。 「通学途中に覚醒してバイクごと飛ばされた、ってところか。アシがあるのは悪くない、このまま誘導して脱出させよう」 「……でも、私たちが入って来た方向とは完全に逆に突っ走ってますよ、彼」 「だな。どうもあの衛星兵器、チャージのための空白時間があるみたいだから、その隙をついていったん停まらせよう」 「じゃあ私、一度降ります。追いつくのには軽いほうがいいでしょうし、こっちに走るっていう目印がいたほうがいいと思うので」 哲夫が速度を緩めたところでバイクから降り、 「光さんと合流できたら合図してくださいね、こっちで火柱上げますから。あとちゃんと回収していってくださいね。おいてきぼりとかなしですよ」 「判った。んじゃスイート、しっかり掴まれよ!」 「うん、スイートもちょっと考えてることがあるからあとで降りるね」 再び走り出すそれを見送って、竜は自分たちが来た方向へ一直線のラインに陣取る。 「大丈夫……すぐに助けてあげますからねっ!」 声など届く位置ではないが、気合充分に宣言し、竜はトラベルギアを引き抜いた。 鋭い切っ先が煌く。 * * * * * 衛星兵器がエネルギーを充填するのに必要な時間は、計測した限りでは二分四十秒ほど。 エネルギー充填が完了すると、天空から照準器の一種と思われる光点が照射され目標がロックオンされる。次の瞬間には、純白の光条がロックオン先に降り注ぐ、というのが衛星兵器の一連の動作だった。 「とおおおぉおぉりいいいいぃいあああああえええええずううううううう!」 右へ左と逃げ回るバイクを追って、ものすごい形相で哲夫はバイクを操る。 元ヤンキーという経歴のお陰でバイクの運転は一通り出来る哲夫だが、さすがにこれだけの速度をキープしながら、半パニックで逃げ回る蛇行運転のバイクに追いすがるには気力も体力も必要だった。 すでにすっかり汗だくである。 それでも、ここで追いつかなければ話が始まらない、と、 「うをおぉおおおおおおぉ! いいから停まれごらあああああぁあぁ!!」 咆哮に近い叫びのお陰で、ようやく光がこちらに気づいた。 よし、と快哉を叫ぶより速く、 「うひぁ!? ご、ごごごめんなさいすんませんごめんなさいいいいぃい!」 どうやら、迫力満点の必死顔があだになったらしく、光は顔を引き攣らせると更に速度を上げてしまった。 「えっ!? ちょ、だから俺たちはおまえを助けに来たんだっつーの! 停まれ、そっち行くな……うぉ!?」 最後の叫びは、エネルギーチャージの完了した衛星兵器から『贈り物』が撃ち放たれ、たった今まで光のバイクがあった位置をごっそりと抉ったからだ。それは要するに哲夫たちのバイクの目の前にビームが落ちた、という事実に他ならず、当たらないよう必死でハンドルを切り、車体を立て直しながら光のバイクに追いすがる。 きゅうん、きぃん、きゅうん。 何かを引き絞るような音とともに、光る熱線が荒廃した大地に降り注ぐ。 「ぎゃああああああ!!」 光の絶叫がここまで聞こえてきた。 「うぉ、ッ、とおぉ!?」 ビームに巻き込まれそうになって、必死の、紙一重の回避でどうにかかわし、埒が明かない、と舌打ちしそうになったところで、スイートのハニーヴォイスが耳朶をくすぐった。 「ねぇ哲夫ちゃん、スイートに考えがあるの。光ちゃんのバイクの横に行ける?」 「……やってみる」 振り返るまでもなく、竜が待つ帰還のためのポイントからはかなり離れてしまったのが判る。これ以上遠ざかってしまうと、更に危険は増すだろう。スイートの『考え』に託すしかなかった。 折しも衛星兵器は二分四十秒のチャージタイムに入ったようだ。 静けさを取り戻した大地に、二台のバイクが立てる爆音が響き渡る。 そんな中、絶妙のテクニックで哲夫が横付けしたバイクの後部で、 「光ちゃん、話を聴いて、ねぇ? ――大丈夫、絶対にスイートが、スイートたちが助けてあげるから。ね?」 とろけるように甘いスイートの声が、驚きに目を見開く光を絡め取る。 「えっ、あッ、あのッ!?」 「よし、とりあえず停まれ、方向転換すっぞ!」 「え、あ、はいッ!」 虚を突かれ我に返った光が急ブレーキでバイクを停めて、哲夫は大きく弧を描くかたちで車体を回転させながらバイクを停止させ、光が方向転換するのを待った。 「スイート、光ちゃんといっしょに行くね!」 追いついてきたバイクの後部に、スイートが「よいしょ」とよじ登る。 「え、あ、あああ、あの、危ないから、あの……ッ」 「……大丈夫、大丈夫よ、光ちゃん。すぐに、安全な場所まで行けるから。スイートを信じて、ね?」 光の手を取り、胸に当てると、どこにでもいる、といった風情の少年の顔が真っ赤に染まった。 あどけない可憐な顔立ち、露出度の高い大胆な出で立ちをした少女に、潤んだストロベリーソーダ色の双眸でまっすぐに見つめられれば、耐性のない純情な少年にはひとたまりもないだろう。 「えと、あの……うん、わかった」 真っ赤になった光がもごもご言う間に、 「……充填が済んだみたいだ、行くぞ!」 哲夫が高らかにホーンを鳴り響かせると、前方約2km先に巨大な火柱が上がった。 「とりあえずあそこまで走れ、そこから先はまた誘導する!」 「は、はいッ!」 「頑張って光ちゃん、スイート、応援してるから!」 ふたつのエンジンが盛大に唸り、二台同時に飛び出す。 その瞬間、先ほどまで彼らがいた場所を、眩しい光条が大きく抉っていた。 「躊躇なく突っ走れ、話は後だ!」 哲夫は、先行する光とスイートを援護するように後方を走る。 執拗に撃ち放たれる熱線が荒野を穴だらけにしていく。 「くっそ、しつこいな……って、言うだけ無駄か」 間一髪で回避しつつひた走る中、スイートがトラベルギアの砂時計を取り出した。 それがさかさまにされ、鮮やかなピンク色の砂が零れ落ち始めると同時に、衛星の放つ熱線がまるでスローモーションのように緩慢になった。のろのろと伸びてくるそれは、見当違いの場所を貫き、抉る。 「砂が落ちてる間だけだから、今のうちに行こう?」 スイートが小首を傾げる間にも、砂はどんどん落ちていく。 「でもまあこれなら行ける。おおい、竜! 急ぐぞ、乗れ!」 光とスイートを先に行かせ、 「はいはい、お待ちしてましたよっ!」 わずかに速度を緩めたところで、ひらり、と、絶妙のタイミングで竜が後部に飛び乗る。 「っし、あとは一気に脱出だ! そのまままっすぐ行け!」 怒鳴る哲夫の背後で、きゅうぅん、と、弓を引き絞るような音。 「わわわ、来ますよ哲夫さん! 危ない!」 「あづぁ!? むしろ危ないのはおまえだ! あちちっ、燃えるなテンパるな、引火したら爆発するぞ!?」 「うわわっ、ごめんなさい、つい!」 きゅぼっ! 熱線が建物の残骸を吹き飛ばす。 コンクリートではないだろうが、大きな塊が宙を舞い、こちらへ激突しそうになるのを、 「負けませんよっ!」 竜が炎をまとわせたトラベルギア『フレイムたん』で斬り飛ばした。 その後も、ビームの巻き添えを食って吹き飛ばされた建物の残骸を、竜はバイクの後部にまたがったままで器用に――的確に防ぎ、撃墜して援護に勤めた。 そのまま一直線に、流星だか弾丸だか判らない速度で突っ走ること数分。 見つめると視界がぶれる、不思議な黒い穴が見えてくる。 宙に浮かんだようなそれに不安を覚えたのか、光から動揺と緊張が伝わってきたが、その背をスイートの華奢な手がそっと撫でると、少年は身体から力を抜いた。 天を見上げれば、無数の“星”が最大級の光を蓄えているのが見て取れ、哲夫はぎゅっとハンドルを握り締める。 「降りてる暇はない、そのまま突っ込め! こっちの装置で受け止める!」 叫びざま、光のバイクと横並びになり、同時に『入り口』へ飛び込む。 背後で特大の爆発音、衝撃波すら伴った震動。 「うわわわわわ、お、落ち……!」 「だから、大丈夫だって。――間一髪だったな」 落下しているのか上昇しているのかわからない、曖昧な感覚の中でも特に慌てることなく哲夫がバイクに触れると、それは彼らがここに来たときと同じ蓮花の形状に戻り、四人をふわりと受け止めた。 すぐに周囲を静けさが包み込む。 気が抜けたのか、光は深い溜息とともにその場に座り込んでしまった。 「任務完了、ですかね。始めまして射川光さん、異世界の旅へようこそ!」 「え、あの、どういう……なんでオレのこと、知って……?」 「はい、事情を説明しますね。ひとまず、同じ『現代叙事詩』の方とお会いできて嬉しいです。本当に無事でよかった」 にこっと笑う竜を、途方にくれた目で見上げてから、 「ね、絶対に大丈夫って言ったでしょ?」 傍らに寄り添うスイートに、光は曖昧な、困ったような笑みを浮かべてみせた。 「スイート、光ちゃんとお友達になりたいから頑張ったの。だから、光ちゃんが無事でとっても嬉しいな。――これ、あげるね。お友達のしるし」 満面の笑みのスイートが差し出す、カラフルでキュートなキャンディを受け取り、ようやく表情を和らがせる光と、覚醒や世界図書館について説明する竜を視界の端に見つつ、哲夫はやれやれと息を吐いた。がしがしと頭をかき回す。 「しかし……また同郷か。これで何人目だ? ……なあ、これって本当にただの偶然なんか? 胡散臭さMAXなんだが?」 「うーん、どうなんでしょうね? 私には判りませんけど……まあ、誰も怪我なく帰還出来そうですし、大団円じゃないですか?」 「……まあ、それは、な」 「それにしても大冒険でしたね! スリル満点でした。また、こういう冒険がしたいですね」 「俺はしばらく遠慮するわ……むちゃくちゃ疲れた」 「あっ、ねぇねぇ哲夫ちゃん竜ちゃん、光ちゃんが無事だったお祝いも兼ねて、みんなで遊園地に行こう?」 「あ、いいですね、賛成です!」 「いや、だからスリルはしばらくいいって……」 「みんなで行こう?」 「……いや、うん、まあ……うん、好きにしてくれ……」 ぐったりと座り込む哲夫の傍らに、楽しげに笑った竜が腰をおろす。 「とにもかくにも、皆さんお疲れ様でした! 帰ったら美味しいもの、食べに行きましょうね!」 闊達な、満面の笑みにつられて全員が笑い、緊張が完全に解けたからか、光の腹が盛大に鳴った。 首まで真っ赤になる光を、スイートがやさしい眼で見ている。 「……ま、いいか」 肩をすくめ、哲夫は不思議とやわらかい光に満たされた外の景色に眼をやった。 移動装置は滑らかに空を滑っていく。 彼らがロストレイルに乗り込むまで、もうそれほど時間はかからないだろう。
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