オープニング

「霊力都市・インヤンガイからの依頼です」
 世界司書リベル・セヴァンが口にした名前は、最早旅人達も耳慣れたものとなっていた。インヤンガイ。死者の慟哭と闇に満ちながら、それでも生を手放さない、人間達の街だ。
「場所はリージャン街区。古くからの伝統や、土地神と言った民俗的な信仰が色濃く残っている地域です」
 故に、暴霊に関する事件が起こりやすい土壌でもある、とリベルは語り、一旦口を閉ざした。開いたままの導きの書に視線を落とし、最早白紙に帰っているその紙面を見る。
「皆様に行っていただきたい依頼は、暴霊の退治になります。……ただ、幾つか特殊な点がありますので、それについては現地の探偵に話を伺ってください」
 深く頭を下げ、彼女はロストナンバー達の無事を祈る。

 リージャン街区は他に比べ、霊力開発の遅れている地域でもある。故に通りを照らす光は壱番世界で見る様な街灯ばかりであり、それ以外と言えば、剥き出しの配線が霊力によりほのかに青い輝きを燈している程度だ。――街区の中でも、その一角は特に住む人間が少ない。立ち並ぶ建物もそこかしこが崩れ、最早廃墟街と呼んでも差し支えが無いほどだ。
 錆びたドアを開き、ガラクタを掻き分けて足を進める度、埃が舞う。それでもどうにかして奥へと辿り着いた旅人達を迎えたのは、肘をつき窓の外に目を向ける一人の男だった。
「来たか」
 響く怨嗟の声から視線を逸らす事無く、素気ない言葉で男は旅人達を歓迎する。
「俺はイェン。この街区の探偵をしている。……アンタらに頼みたいのは、アレさ」
 すっと伸ばされた指が指し示すのは、窓の外に見える、倒壊した建物の跡地らしき場所。瓦礫が積み重なり、天井は抜け落ち、漆喰の剥がれた壁からは鉄骨が剥き出しとなっている。建物としての機能を喪い風雨を凌ぐ事すら出来ぬ有様で、道路を挟んだ向かいに在るこの建物からも、充分に内部を確認する事が出来た。
「視えるだろ、あの地獄が」
 廃墟の中で噎び泣く、無数の暴霊達。
 硝子を隔てたこの部屋にまで届く程の悲鳴と、終わりの無い断末魔。其処に囚われているのは、或いは二足の人間であり、或いは四足の獣であり、或いは足すら持たぬ蟲だ。様々な暴霊達が、嘆きもがき呻きながら互いに互いを傷付け合っている。獣の爪が人型の暴霊を引き裂き、倒れたその腹部に何頭もの蟲が群がり喰らい尽くす。かと思えばそれは巨躯の暴霊に纏めて踏み躙られ、呆気なく霧散した。
 ――まさしく、その場所は地獄と呼ぶ他ない。
 互いに互いを喰らい合う、餓えた亡者達が嘆き、喘ぎ、血と肉とを撒き散らしている。
 飛び散る赤は虚空に貼り付き、そこに不可視の壁があるかのように空を伝い、滴り落ちた。
「……アイツらは、閉じ込められてるらしい」
 伝聞系で締めくくられたのは、探偵自身も詳しくは知らぬからだ。知り合いの知り合いの知り合いらしい術師を捕まえて、彼の場所の見立てを行わせたが、有益な情報はそれくらいしか掴めなかった。
「空間は甕の様な形をしていて……暴霊は、其処から出らンねェみたいだ」
 ――こりゃぁ、相当に古い手法だねぇ。けど、しっかり施されてる。
 亡者だけが越えられぬ壁。生者は自由に出入りが出来るらしいが、空間の外側から彼らに干渉する事は出来ない、とその術師は語っていた。
 人間への被害などは、現時点では無いようだ。暴霊達は廃墟の空間から外に逃げる事すら叶わず、ただただ殺し合っているだけなのだから。
 だが、いつその空間が破られ、暴霊が外に放たれるかも判らない。
 そうなる前に、彼らを屠らねばならないのだ。
「……あの中に飛び込め、って、無茶苦茶言ってるのは判ってんだけどな」
 何の力も持たぬインヤンガイの住民であれば、入った途端に餓えた亡者達の餌食になるのは目に見えている。探偵は首を振り、指先で甕の形をした空間の輪郭をなぞった。
「あれは暴霊域とは違う。暴霊か人間かは判らねェが、確実に誰かの手で作られてる」
 何かに対する果ての無い悪意。憎悪か侮蔑か判別も付かぬ瘴気に似た何かが、甕の中に満ちて、淡い紅の色を成している。探偵にもそれが見えるほど、異常な光景であった。
「俺は、ここ数日ずっとここでアレを見張ってンだ。生きた人間が近付かねえようにな」
 その懸念も必要無く、元より廃墟で在ったこの周辺に好んで足を踏み入れる人間は居ないようであったが。
「……あそこに現れるヤツこそ居なかったが、何回か生きた人間の気配を感じたコトはある」
 それが何であったのか、探偵には判別がつかない。だが、何か――悪意ともつかない何か、おぞましいモノがこの周囲に満ちている。
 探偵は悪寒に身を震わせて、旅人達へ縋る様な眼を向けた。

 噫、アア、嗚呼、ああ。

 そこかしこから呻きとも嘆きともつかない声が漏れ、廃墟に溢れ返る。
 しかし、彼らはその先に続ける言葉を知らない。その甕から抜け出す術を知らない。その苦しみから解き放たれる術を、何一つ。

「救ってやってくれよ。あの甕の中から」

 ――苦痛が『憎悪』となって、生きる街へ解き放たれる前に。

品目シナリオ 管理番号464
クリエイター玉響(weph3172)
クリエイターコメント皆様、こんにちは。玉響です。
此方のノベルでは、霊力都市・インヤンガイにて暴霊との戦闘を行っていただきます。

廃墟の中でもがき苦しむ亡者達と戦い、斃し、解き放ってやってください。
内部の暴霊達は互いに喰らい合い、数を減らし続けていますが、それでも現時点で数十体ほどは居り、人間、動物、芋虫、蜥蜴などの暴霊が多いようです。暴霊が数を減らした所を狙って斃すか、一匹ずつ斃していくか、と言った手段を選ぶ事が出来ます。
尚、暴霊を斃すには空間の中に入る必要があります。外側からの攻撃は不可能ですので、御承知ください。
純粋な戦闘シナリオとなるつもりですが、猟奇的な描写は、記録者が記録者ですのでそれほど酷くはならないかと。好きに大暴れしてくださいませ。

この場所で、果たして何が行われているのでしょうか。討伐の傍ら、推測・詮索してみるのも良いかも知れません。

ちなみに、諸事情によりプレイング受付期間が六日となっております。お気を付けくださいませ。

それでは、踊りましょう。紅の色を纏い、餓えた死者達の手を取って。

参加者
世刻未 大介(cuay8999)ツーリスト 男 24歳 特務機関七課三佐
エルエム・メール(ctrc7005)ツーリスト 女 15歳 武闘家/バトルダンサー
ハーデ・ビラール(cfpn7524)ツーリスト 女 19歳 強攻偵察兵
真遠歌(ccpz4544)ツーリスト 男 14歳 目隠しの鬼子

ノベル

 ――ああ、噫、アア、嗚呼。

 真遠歌の鋭敏な聴覚に、亡者達の呻き声が強く響く。助けを求め、飢えを訴えるその声は彼の鼓膜に縋り付き、仮面で隠された真遠歌の顔に苦い表情を走らせた。
「……これは」
 付近に立ち込める空気は、異様な程に禍々しい。眼の見えぬ彼にも痛いほどに――否、眼が見えぬからこそ、それは強く感じ取れる。肌に突き刺すような不穏な冷たさを感じ、聴覚には哀れな嘆きがしがみついて離れない。視覚以外の全てから、その場所の異質さが嫌と言うほど感じられる。
 甕の形をした檻。閉じ込められ、喰らい合う亡者達。同じ立場に立たされた者を喰らう事で、何かに対する果てなき憎悪、悪意、それら全てを無理に増幅させられている。
 ――呪え、憎め、と、知らぬ者の声が聴こえるようだ。
「蠱毒、なのでしょうか……」
 突き刺さる悪意に微かな震えを覚えながら、真遠歌はひとりごちる。
「コドク? なんだよ、ソレ」
 応えを求めない独白であったそれに、彼の左手に当たる方向から訝しげな声が返った。声の方向に儀礼的に顔を向けて、ひとつ頷く。あまり多くない言葉を集め、蠱毒を知らぬらしい探偵に出来得る限りの説明をした。
「私も、詳しくは知らないのですが……呪法のひとつとされています。蟲や蛇など、毒を持つ動物を集め、ひとつの甕に閉じ込めて……互いに喰らい合わせ、最後に生き残った一匹を呪に用いるのだとか」
「……ソレを暴霊でやってる、ッてのか」
 暫しの沈黙の後、胸糞悪いな、と落とされた声に、再び頷きを返した。
 白き鬼子の胸に閃くのは、微かな憤り。
 インヤンガイがどう言う摂理で巡る世界なのか、真遠歌は知らない。この世界において、彼ら暴霊と鬼である己は近しい存在なのか、それさえも。だが、善意だけで生きる事が出来るほど穏やかな場所ではないと、それは理解している。
「……許す事は出来ません」
 幸いな事に、ゼロ世界と言う仮の故郷で、真遠歌は優しい人達に囲まれて生きている。血の繋がらぬ『父』も、よく似ているようで自分とは違う優しい『兄』も、皆愛しい存在だ。そんな人達と共に生きていられる今の己を幸福だと思うし――それ故に、この蠱毒を許せない。
 その必要も無いのに、彼らを飢餓に追いやり、殺し合いを強要させる。かつては喰らわねば生きて行けぬ世界に身を置いていた真遠歌だからこそ、その行為の残虐さを知っていた。暴霊達の痛み、苦しみが聴こえるほどに。
 降ろしていた拳を静かに握り締める。そこに満ちるのは、穏やかな決意。
「アンタは……」
 不意に、探偵の声が、此方を向いた。
「……何か?」
「あア、いや」
 その顔を見る事が出来ぬ故に彼の意図を計りかね、首を傾げる真遠歌に探偵の苦笑が返った。
「その面。似てると思ってな」
 主語を排した言葉は、時に不親切でもある。思わず顔の上面を覆う白に手を添わせ、「何に、でしょうか」と問い掛けていた。
 探偵は今度は誤魔化すつもりも無かったのか、真遠歌から顔を逸らし――声の方向が変わった――、言葉を続ける。
「リージャン街区の祭に使われる、鬼神の仮面だ。色は違うが、額の両脇に角のある、紋様の入ったヤツでな」
 仮面に触れていた手を上へと滑らせ、己の額の角に触れる。彼のそれは皮膚から突き出した本物の角であるが、それを説明する事はしなかった。
「……私は、鬼ですから」
 けれど、これくらいならば言っても構わないだろう。探偵もそれを冗談と受け取ったのか、くつりと喉の奥で笑い、肯定の気配を返した。
「知ってるさ。頼んだぜ、鬼ッ子」
 響く怨嗟の声に、唇を引き締め、徒人である彼を安堵させるように頷く。
「……この蠱毒を仕掛けた『術者』が、何処かに現れるかもしれません」
 忠告の言葉を投げかけながら、硝子窓を開いた。建て付けの悪いそれは軋む音を立てながらも横へ滑り、小柄な人間が行き来できるほどの空間を作り出す。途端に忍び込む、腐臭を孕んだ濁った風に、探偵が一度小さく呻いたのが聴こえた。
「蠱毒から離れているとはいえ、油断なさらぬよう」
「……ああ」
 ひらり、と軽やかな動作で鬼子は桟へ飛び乗る。首から下がる大きな真鍮を握り締め、祈りに似た仕種で一度俯いた。
 正面の廃墟から絶えず響き渡る、怨嗟の声。鼓膜に貼り付くそれを拒む事もせずに、白き鬼は桟を蹴り、高く飛び上がった。
 深紫の羽織が、濁色の街に翻る。

「私より弱いくせに……お節介だな」
 金で装飾の為された黒いノートを片手に、ハーデ・ビラールは小さな溜め息を吐いた。
 世界を喪った旅人に与えられるこのノートでやり取りが出来るのは、同じ旅人同士だけ。今彼女に余計な情報を与えて来た相手もまた、ゼロ世界か――壱番世界に居るはずの、ひとりの旅人だ。
 曰く、壱番世界にもこれとよく似た呪法が存在しているらしい。
「えーと、なんだっけ。コドク、っていうんだったかな?」
 鮮やかな色の髪を靡かせ、華やかな彩の布を幾重にも纏った少女が、踊るかのような軽やかな口振りで首を傾げた。ノートの紙面に視線を落したままのハーデが頷き、肯定の意を示す。
「製作者は、最後まで生き残った暴霊を使い……第二の美麗花園を作るつもりかもしれんな」
 強大な霊力災害によって崩壊し、全てが死と暴霊の棲み処へと変じた街区。その惨劇をまた、この街区で繰り返そうとしているのではないか。彼女に情報を与えた旅人は、それを懸念している。お節介め、ともう一度声に出さずに呟いて、ハーデはトラベラーズノートを閉じた。黒と金の手帳が音も立てずに消え去り、空いた手を軽く握る。
 ハーデの言葉を聞き、よくわかんないけど、と少女は小さく首を傾げた。
「これって、暴霊に殺し合いをさせるのが目的なんだよね。つまり、バトルロワイヤル」
 亡者達の嘆きに苛まれた場所に居ながらも、決して明朗さを崩さぬ少女はあっさりとそう言ってのけた。左手を高々と掲げれば、纏う碧の布が翻り、昏い色の空に鮮やかに閃く。
 己自信で納得したように頷き、エルエム・メールはからりと晴れやかな笑みを浮かべた。
「なら、エルが全員ぶっ飛ばしちゃえば妨害完了! うん、判りやすいッ」
 依頼内容を至極簡潔な言葉に変え、軽やかに廃墟へ向け駆け出す。薄紅の髪と色鮮やかな衣装が躍る背中、それが紅満ちる甕の内側へと飛び込んだのを眺めて、ハーデは一度爪先で大地を蹴った。鉄板の仕込まれた軍靴がアスファルトにぶつかり、硬い音を立てる。
「……暴霊だから殺し合わせていいと、誰が決めた?」
 姿の見えぬ敵へ向けて、呟く。
 ――呪法の過程を監視している術者が、必ず近くに居るはずだ。それを嘲るようにして、色の濃い肌に強い笑みを刻む。燐光を孕んだ青の瞳が細まり、煌めきを落とす。
「殺す者は殺される。それが世界の範と知れ」
 紅の闇の中で戦い舞う彩を追って大地を蹴れば、二筋の青を纏った黒髪が跳ねた。

 充ちる色は、限りなく薄められた血液、それ自体にも似ている。ゆるやかに顔を持ち上げ、世刻未 大介は半ば崩れ落ちた天井を茫洋と眺めた。
 ふと、コンクリートの隙間から差し込む光が、遮られる。
 高く跳躍し、牙を剥き出して、巨躯の獣が彼へと落下する。腐り落ちた独眼は爛々と輝き、飛び込んできた新鮮な獲物だけをただ狙っていた。
 しかし、その獰猛な牙も、その兇悪な爪も、大介を焦らせるには足りない。緩慢に頭上を見上げて、漆黒の大鎌を己の身体の前で構えた。
「……気分が悪いな」
 落とされた気だるげな声を、暴霊は聴き留めない。
 ――それが獣の耳に届くよりも早く、漆黒の刃が走っていたから。
 獰猛なあぎとを備えた頭部と、醜悪な爪を抱いた身体とが一薙ぎで分断され、血の一滴もこぼさずに霧散する。降り懸かる薄紅の欠片に眉を顰め、大介は踏み込んだ足を大きく退く。至極無造作なその動作さえ、群がる亡者達には歪んで見えているのだろう。
 数は多くとも、所詮はただの暴霊に過ぎない。
 体感時間をも操る大介の【刹那】を、追うことの出来る者はいないのだ。
 怠惰に目を細め、頬を歪める彼の背後で、大きな気配が蠢く。頬を切り裂く風の勢いでそれを悟るが、大介はそれには構わず、大鎌をゆるやかな動作で振るい再び目の前の暴霊を屠った。
「――油断大敵ッ、」
 視界の端で、橙の光が閃く。
「だよ?」
 切った言葉は再び繋がれ、大介の背後に迫っていた巨躯の暴霊が、いとも容易く薙ぎ払われる。再度橙の色が煌めき、薄紅の長い髪が彼の視界を横切った。
「油断はしてない。あんたが居たからな」
「それ、信頼されてるってコト?」
 楽しそうに笑うエルエムの言葉に、頷く事もせず僅かに眼を細める。――何も言わずとも、この場であれば伝わると知っていたから。
「同士討ちで数が減るのを待つのは基本だけど……」
 独りごとの様に少女はぼやき、大介の背を庇う様にして左手を振るう。纏う布の碧が彼女の手を離れ、光、或いは風の刃と成って黒蛇を縦から二つに切り離した。
 舞に似た華やかな動きを止める事は無く、虹色の衣裳を翻してその全てを刃へと変える。宵闇の漆黒を振るう男の背後で、色鮮やかな光が踊った。
「そういうのは面白くないし、待ってる内に何か起きそうだからボツ!」
 高らかにそう宣言して、眼前の暴霊に人差し指を突き付けた。
 戦場に似つかわしくない朗らかなその様子に絆され、鎌を振るい続ける男が薄い笑みを浮かべる。
「同感だな」
「でしょ?」
 軽やかに跳躍し、脚に巻き付けた青い布を刃に変えて人型の暴霊へと振り降ろす。断末魔の叫びすらも許さず、霧散する亡者を薙ぎ払ってエルエムは快活に笑った。
「――って事で、覚悟はいい? エルが本当のバトルロワイヤルって奴を教えてあげる!」

 耳を澄ます。
 暴霊達の発する叫び、嘆き、懇願、悲鳴、全てを跳ね除けて、ただ生の音だけを手繰り寄せる。右手前から、背後から、上空を跳ねる、三か所から確かな音が聴こえる。――そうして、真遠歌は小さく安堵の息を漏らした。噫、誰一人として欠けていないようだ。
 仲間達の鼓動を聞き洩らさぬよう、注意を傾けながら、腰に提げた大振りの刀を抜き放つ。波打つ刃紋が紅の中で閃き、焔の如き苛烈な色を見せた。
 返す刃で迫り来る一匹を屠り、その場に足を止める。
 眼が見えぬ己は乱戦には不向きだ。今でこそ心音で敵味方の区別を付けているが、敵に囲まれてはそれもいつ聴き取れなくなるか判らない。
 ならば、なるべく動かず、襲ってくる敵だけを迎え撃てば良い。
 刀を己の前で構え、白き鬼子は刃、それそのものの如く気を研ぎ澄ます。

 光の刃の持続時間が、じきに切れる。
 戦う術を喪う前に甕の外へと飛び出し、ハーデは暫しの休息に詰めていた息をゆっくりと吐き出した。
 充ちる紅の瘴気の中、満ちる暴霊達の数を眼だけで測る。
 派手に暴れるエルエムと大介、鉄壁の如くに立ち尽くし、甕の外へと逃れようと殺到する暴霊を余さず屠る真遠歌、そしてハーデの奮闘により、亡者達は一目で判るほどにその数を減らしていた。
 積み重なっていた屍体をあらかた平らげ、餌を喪った蟲達は出口を探して紅の霧中を彷徨う。それを四つ足と三つ足の暴霊が踏み躙り、咆哮と断末魔の絶叫を上げる。その光景はやはり地獄と呼んで差し支えないものだが、彼らがその場所に飛び込んだ当初よりはずっと落ち着いていた。
「ハーデ」
 空間の内側から、漆黒を振るう男が怠惰な眼を彼女へと投げかけた。返事の代わりに眉を上げて言葉の続きを促せば、再び刹那の動きで大鎌を振るい、大介は向き直る。
「気付いてるか」
 刃と同じ、漆黒の瞳は――ただ、ハーデの背後を静かに捉えている。
 彼女は振り返る事無く、小さく頷いた。
「ああ。……『居る』な」
 その一言で、大介には全てが伝わったようだ。行くのか、と視線だけで問い掛けられ、再び頷く。
「これも、館長の言っていた『邪悪』とやらの仕業なんだろうか」
「どうだろうな。問い詰めてみなければ判らない」
 言って、身を翻す。それを会話の終わりと取ったのか、男もまたハーデから離れ、再び暴霊の甕の中で刃を振るった。
 断末魔の中で刻まれる死の舞踏を背後に、昏い色をした路地裏を駆け抜ける。

 人の形をした暴霊目掛け、舞布を巻き付けた片足を高く振り上げた。威力を高めた蹴りが乾いた顎を砕き、そのまま勢いを付けて縦に宙返りする。風に舞う衣裳は色とりどりの刃に変わり、群がる羽蟲を切り裂いた。
 大地を這う大蜥蜴の頭部に飛び乗った彼女目掛け、暴霊の鉈が振り降ろされる。三度(みたび)の跳躍でそれを躱せば、大蜥蜴の脳天に鈍重な刃がめり込む。断末魔を上げる暇さえなく絶命したそれへ、すぐさま餌に在り付こうと蛆が集った。
 群がる蛆が、次第に肥えて行くのが判る。それを目にし、エルエムは小さく首を捻った。
「殺し合う、だけじゃダメなのかな?」
「……蠱毒は、本来毒を持つ生物を喰らい合わせる事により、一匹に毒を集中させるものです」
 真遠歌がそれに応え、群がる蛆へと一閃を送る。先程よりも確かに太く、長くなっていたそれらは、しかし大刀の一振りで容易くその命を散らした。瘴気の中で刃が煌めき、停滞する風に乗って屍が霧散する。
「この呪法もまた、同じなのでしょう」
 布に覆われた拳で鈍色の鉈を受け止め、がら空きの胴へ目掛け蹴りを放つ。
「暴霊、だから……霊力ってヤツだっけ。それを一匹に集めようとしてるってこと?」
「ええ」
 舞う様にその場で身を翻せば、靡く七色が立ち込める瘴気ごと暴霊を引き裂いた。跳ね、屈み、ステップを刻み、高く脚を振り上げては拳を突き出す。途絶える事の無い流麗な動作、軽やかに切り裂かれる風は目隠しの鬼子をも惹き付け、その口許に微かだが笑みを浮かばせた。
 他の霊力を喰らい、無理矢理ひとつの身に力を詰め込まれた、暴霊。いびつな呪の塊。
「……何に使うかも定かではありませんが……ここで止めなければなりません」
「そうだね」
 真摯に落とされた言葉に、同意を返す。
 知らず高揚する気分に、最早痛覚は意識の外へと追いやられていた。

 ◆

 建物と建物の合間、網の様に張り巡らされた影の下を縫って走る。黒と青を身に纏った女は黄昏時の路地裏を進み、影の為す闇に紛れて低く跳んだ。
 崩れ落ちた壁へ眼を向け、分厚い隔たりのその向こう側を透し視る。生の気配を探る。呪の気配を探る。
 ――探偵とは離れた場所に、ひとつ、揺らめく何かが在る。
 確信と呼ぶには証拠が足りず、勘と呼ぶには選択肢が足りない。曖昧だが確固たる意思を抱え、ハーデはその方角へと駆ける脚を向けた。
 蠱毒の行われている廃墟と、探偵が張り込みを続けていた建物。それらを線で結んだその延長に、ゆらゆらと蠢く何者かの気配がある。
 初めは不確かであったそれが、近付くにつれ次第にしっかりとした形を伴い始めている。それと共に気配の場所も一カ所に定まり、ハーデの透視で茫洋とだが、確認する事ができた。
 黄昏に染まり、赤みがかった影が人の形を取って佇んでいる。
 障害物越しの透視(クレヴォワイヤンス)ではその程度しか判らなかったが、彼女にとっては充分だった。
 人影の立つ場所を目印に、己が力を展開させる。
 駆ける脚がぶれ、その姿が揺らぎ、空に翳んで消える。――空間移動(テレポート)、彼女が最も得意とするESPのひとつだ。
 空間を転移する、その一瞬の間に光の刃を振り翳した。

 ◆

 立ち込める瘴気は薄紅で、少女の髪もまた薄紅だ。
 それでも確かに、彼女は融け込む事なく死の舞踏を刻んでいる。薄紅の髪が、右手に纏う橙と左手に纏う碧が、腰から翻る様々な色彩が閃く度、集う亡者の身が切り裂かれていく。鮮やかに少女は舞い、閉じ込められた命を解き放っていく。
 大鎌の刃に残った蛆の屍を無造作に振るい落とし、大介は軽く肩を竦めた。
 楽しそうに戦う女だ。
 命のやり取りではなく、真摯な立ち合いを心から楽しんでいる。彼女にとっての戦いとは殺し合いではなく、踊りに等しいものなのだろう。人の眼を惹き付ける事を喜びとしている、それがよく伝わる動作である。
 ふ、と唇が緩みそうになり――しかし、それが笑みの形を取る事はなかった。
 渦巻く紅、舞う虹の色。
 色鮮やかな踊り子の背後で、巨大な影が揺らめいた。
「おい、!」
 眼を瞠り、警告の声を放とうと唇を開く。咄嗟に手の中の大鎌を強く握り締め駆け出そうとした、その刹那、エルエムが軽やかに身を翻した。
 微かにこちらに視線を向けた彼女の、口角がわずかに上がっている。
 ――まるで、信頼している、とでも言いたげなその表情に、一度は遮られた笑みを再びその顔に乗せた。
「……油断大敵、だな」
 からかうような語調を持って呟き、【刹那】に身を躍らせる。華やかな笑みを返し、舞いを止めない少女へと距離を詰めた。
 歪む時の中を跳ぶようにして駆け抜け、振り上げるのは漆黒の刃。鋼鉄の煌めきを落とす牙が隙無く立ち並ぶ口腔を、一閃の下に断ち斬らんと両腕を振り抜き、
「ッ!?」
 ――切り裂いたのは、紅の渦巻く虚空。
 暴霊の横合いから、濁った白が視界に飛び込む。鎌の軌道を修正する暇も与えず、それは大介の獲物を容易く奪い取って行った。
 獲物ごと横へと跳び、彼らから距離を取るようにして白は転げた。既に動きを止めた獣の無防備な首筋に牙を深々と突き立て、縋りつく様にして貪り喰らう、それもまた獣だ。通常では有り得ぬほどの巨躯――成人である大介をも軽々と凌駕する体長――にまで肥大した、白い毛並みの野犬。獲物をあらかた味わい尽くし、紅に塗れたあぎとをゆらりと持ち上げる。

 その犬の体内で、喰らわれた全ての暴霊が生きている。

 否、暴霊なのだから生きているはずがない。その犬の中に、喰らわれた全ての暴霊が死ぬ事も出来ぬまま蠢いている、ただそれだけだった。
 或る者はその腹部から顔を浮かび上がらせて助けを懇願し、或る者はその首を突き破って外へ飛び出し、すぐに霧散する。眼球の腐り落ちた眼窩からは絶えず蛆や蛇が湧いて出、ぼろぼろと地面へ垂れ落ちてはあっけなく霧散した。まるで、傷口から滴り落ちる血の様で――死体から腐り落ちる、肉片の様でもある。
「……蠱毒が、完成した……!?」
 焦燥を滲ませた驚愕が、仮面の鬼子の唇から零れた。小さく洩らされたその声に、場が震える。何かに怯えるかのような響きを伴って、白き獣が咆哮を上げた。大きく轟いたその叫びに、場が罅割れ、紅の瘴気を包む甕が、澄んだ音を立てて弾けた。
 彼らを取り囲む不可視の結界が、張り詰めていた殺戮の場が、唐突に崩壊する。
 吹き込んできた風に浚われ、流れていく紅を全身に浴びて、ロストナンバーは立ち竦む。
「え、何、どういうこと!?」
「知るか――!」
 当惑に周囲を見回し、けれど握り締めた拳に巻いた布を外さぬエルエムに、大介は一言だけ吐き捨てて答えた。結界が崩壊するなど、予測もしていなかった事態だ。
 仮面の下で、真遠歌は必死に周囲の気配を探る。
 蠱毒が完成してしまえば、最早甕で封をする必要はない。後はただ、術を施した張本人がそれを回収し、然るべき呪に使用すれば良いだけの事。回収するために、この場所に術師が訪れるであろうと――真遠歌はそう睨んでいたのだが。
 悲鳴とも勝鬨とも似付かぬ咆哮は唐突に止み、白き野犬が抉る様に大地を蹴る。薄く紅の瘴気が残る中を、獣は勢いを増して駆け出した。咆哮が、再び轟く。
 尾を引く叫び声はまるで、罠にかかり逃れようと暴れる卑小な獣のそれで――暴霊は、引き寄せる『何か』を恐れている様にも見えた。
「……まさか、蠱毒を己の下に引き寄せている……?」
 そちらへと進み続ける脚とは反対に、腐り落ちていない片目は恐怖に怯え、しきりに首が後ろを向く。
「――逃がすな! そいつを、ここで仕留めろ!」
 暴霊の駆け抜ける先に立つ真遠歌へ、大介の声が掛かった。状況を把握したのか、迷いを振り払ったその鋭い声音に、真遠歌の視えぬ視界に掛かっていた霧もまた、唐突に晴れる。
 ひとつ頷いて、大刀を再び強く握り締め構えた。
「……来なさい」
 迫りくる風の音が、鼓膜を穿つ。憎悪とも悲鳴ともつかない叫び声が通りを覆い尽くし、禍々しい気配が彼を蹂躙すべくまっすぐに駆け込んでくる。
 しかし臆する事も無く、真遠歌はその場に佇んだまま刀を頭上に掲げた。盲目の鬼子が退く事はない。ただ真摯に、迫る憎悪を待ち侘びる。
「ただし……暴霊風情に、鬼を喰らえるとお思いですか」
 仮面に隠されていない口許が歪み、静かな言葉が落ちた。
 一歩脚を踏み込めば、刀の柄から下がる鈴が、ひとつ清涼な音を落とした。淀んだ大気に沁み込んで行くその音色に、暴霊の象る犬の形が強く揺らめく。
 振り翳した白刃を、まっすぐに滑らせる。

 鬼神の一閃が、駆け抜ける獣を両断した。

 ――しかし獣は、動きを止めない。獣の形を取っていた数多の暴霊は分断され、真遠歌を避けて左右に飛び散った。
 形を絶たれ、最早それらは犬の姿を留めることすら出来ない。蟲が人が獣が蛇が濁った黒塊の表面に代わる代わる浮き出し、悲鳴を上げてはまた沈んでいく、それは最早何とも形容出来ない。与えられる名を喪った、醜悪な呪いの出来損ないだ。
 そして、右と左に分かたれた蠱毒の成れの果てを、ロストナンバーが逃すはずもない。
「――行かせるか」
 静かだがよく通る声が、逃げ行く暴霊を追う。
 焦りの色ひとつ浮かべず、刹那を発動したまま大介は地面を蹴り、駆け出した。鈍く輝く漆黒を握り締める手に、力を込める。
「今を噛み締めろ」
 ――Carpe, diem.
 怠惰に放たれたその言葉に応え、時が歪曲する。
 いびつな世界は最早形を留めぬ獣を取り囲み、強く重圧を掛けた。駆ける暴霊の脚が、叫びが、懇願が、唐突に勢いを喪って行く。加速する大介とは対照的に、逃げるそのスピードは遅くなって行くばかり。
 静かな音を立てて、構える漆黒の刃が軋む。
 幾何学模様、走る稲妻の筋にも似た亀裂が、その切っ先から鎌を蝕んでいく。ぼろり、と漆黒が一欠片零れ落ちたのを眼にし、それでも大介は進む脚を止めなかった。
 停滞する時の中で、不穏に蠢く背中を捉える。
 振り翳した漆黒を、その背筋へ向け突き立てた。
 響き渡る断末魔もまた、時の停滞に苛まれて低く尾を引く。それをも振り払う様にして、自壊の進む刃を再び翻した。怠惰な一閃が暴霊を薙ぎ、叫ぶ声が途絶える。唐突に訪れた静寂が、空恐ろしくすらも感じた。
 砕けた漆黒の破片が周囲に散り、差し込む光を受けて鈍い煌めきを放つ。
「……お前達に恨みはない。――安らかに、眠れ」
 小さな鎮魂の声を、亡者達は聞き届けただろうか。

 二つに分かたれた『蠱毒』のもう片割れもまた、或る方角へ向け引き摺られるようにして走り抜ける。絶えず様々な顔が浮き出て色の違う悲鳴を上げるそれらは、助けてくれ、行きたくない、と――そう啼いている様に、旅人達の耳には聴こえた。まるで、行き着く先には苦痛だけが待っている、と知っているかのように。
「……行きたくないなら、捕まえてあげるよ」
 駆け抜ける一陣の呪を視界に捉え、エルエムは不敵な笑みを浮かべた。
「エルの本気で、ね?」
 疲れた様子など微塵も見せず、色鮮やかな布を翻して軽やかに言う。高く跳び上がり、駆け抜ける暴霊の塊へと狙いを定めた。
「――コスチューム・ラピッドスタイル!」
 纏う色彩を、勢いよく脱ぎ捨てる。虹の色彩が宙を舞って地面へと落ちて行く、その様は華やかで美しい。
 衣裳をその場に捨て、空を掴み、後ろへと蹴り飛ばす。その反動に乗ってエルエムは風の上を駆け、長い薄紅の髪を靡かせた。生温かい空気を切り裂いて、踊り子は一陣の風へと変わる。色彩を纏った風。濁った街に春を呼び寄せる、薫風によく似ている。或いは、宵闇を引き裂く一筋の光、それそのものにも。
 舞い交う風の速さで暴霊に肉迫し、逃げ去ろうとするその背中へ虹の舞布を放った。
 紅が、碧が、橙が、紫が、七色の彩が迷いの無い動作で、獣の成れの果てへ襲い掛かる。蠢き浮き出す数多の亡者、怨嗟の叫び声を上げ救いを求めるそれらひとりひとりを、色彩のひとつひとつが捕え、切り裂いた。

 虹と同じ色の、花が咲く。

 断末魔も刹那に掻き消え、死者達はしがらみから解き放たれる。
 ひらり、と大地に舞い降りて、エルエムはぴっと手を上げておどけてみせた。
「エルがチャンピオン! ――なんてねッ」
 その仕種を見咎め、隙を窺う敵は最早居ない。呪の舞台も、喰らい合う暴霊も、完成した蠱毒も、全てが霧散し消えた。
 暮れ行く陽光が彼らの立つ廃墟を覆い尽くし、ただ穏やかな黄昏の色が降り注ぐ。

 ◆

 それは遠目には、確かにヒトであったはずだ。
 だが、ハーデの振り抜いた光の刃は、彼女の手に感触のひとつも残さない。赤みがかったその影は太刀筋に合わせて大きく裂け――そして、見る間に再び同じ形を取り戻した。
 水だ。
 否、水ではない。それは粘り気と流動性を持っている様に見えて、しかし彼女が手を伸ばしても触れる事は敵わない。それは幻だ。

「……残念だ」

 当惑に目を瞠る彼女の前で、陽炎のように揺らぎを見せる真紅の影が、小さな呟きを洩らした。影に合わせてゆらゆらと揺らめくそれは、しかし確かに人間の言葉を伴っている。
 焔の様に立ち昇り、水の如くにうねるそれの向こう側で、何者かがハーデを見ている。――そんな悪寒が、彼女の背筋を駆け抜けた。
「折角犬が生き残ったのだから、犬蠱が出来ると思ったのだが」
 もう一度「残念だ」と呟くその口調には、一欠片も残念そうな様子は見られない。ただ薄く笑う様な響きがハーデの鼓膜を揺すった。
「やはり蠱毒は暴霊ですべきものではないな」
 怪訝と不快に顔を顰める。それさえも幻の向こう側から見ているのか、陽炎の紅は一層高く笑った。
「しかし、よくやった」
 労いの言葉を模した嘲りが、ハーデの耳に届く。
「この借りは、またいずれ返そう」
 ――そして唐突に、陽炎は掻き消えた。
 小さく頼りない焔が風に浚われ儚く散る、その様を思わせる呆気ない消失であった。黄昏の薄紫に融けた幻は、ただ彼女を嘲笑うかのように色彩のひとつも残さない。
 消失の間際に落とされた言葉は、旧友へ告げる別離にも似て、宿敵をいざなう挑発にも似ていた。
「……」
 残されたハーデはその場に茫然と佇み、幻を切り裂いた右手を見おろす。実体の無いものを切り裂いたのだ、まるで影にでも触れたかのように感触は無く、しかし冷水を浴びたかのように鋭い感覚だけが残っている。
 借りを返す、とその声は言った。
「……面白い」
 くつり、と唇を歪め、青い瞳に好戦的な光を燈す。冷たくも揺るぎの無い声で、瞳で、陽炎の消え去ったその向こう側を睨み据えた。
「やれるなら、やってみるがいい。……簡単には殺されてやらんがな」
 幻は掻き消えた。
 だが、その主が何処かで確かに聴いている、と奇妙な確信を持って、応える。

 西の空に鮮烈な赤が燈る。
 沈み行く陽の色は――立ち込める瘴気の薄紅に、よく似ていた。

クリエイターコメント四名様、ご参加ありがとうございました。
薄紅の霧充ちる中、餓えた亡者達との鮮烈なる死の舞踏を記録させていただきました。

『この場所で何が行われているか』の答えとしては、『呪術』だけで正解とするつもりでしたが、四名様共に『蠱毒』であることを看破してくださいました。お見事です。
また、戦法も的確なもの(喰い合いで数が減る前に殲滅する)でしたので、それほど苦戦せずに呪術を阻止する事が出来ました。ありがとうございます。

筆の向くまま自由に捏造してしまいましたので、口調、設定、心情等、イメージと違う点がありましたら御伝えください。出来る限りで対処させて頂きます。

皆様の多様な武器と戦闘方法にときめきつつ、とても楽しく書かせていただきました。ありがとうございました。
御縁が在りましたら、また何処かの階層で御逢いしましょう。
公開日時2010-05-11(火) 23:30

 

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