本日もターミナルの空はどこまでも続く青色だ。 あたたかな陽射しのなか。 うーん、うーんと唸るキサ・アデルをロストナンバーたちは見守っていた。 本日の勉強が『本を読んで感想を書きましょう』とのこと。そんなわけで世界図書館にきたのだが……「本が決まらない……」 そうである。 宿題の課題読書が決まらず困っていた。 それも世界図書館にはずらりと本が並び、たぶん揃ってない本はないのではないか、というほどの膨大な量だ。目移りするなというほうが無理な話。 本日のお勉強を進めるためにもロストナンバーたちは本を見繕っていた「キサちゃん、がんばってください。私も手伝います」「メルチェットさん」 身長的には低いメルチェットがキサを見上げてえっへんと胸を張ってお姉さんぶる。「どういう本がいいでしょうか? キサちゃんの好きなものを私に教えてください」「読んでみたい本……うーん、かっこよくて、かわいいの!」 むむっとメルチェットは唸り上げる。「うーん、難題ですね。しかしメルチェは大人なので、キサちゃんの要望にお応えできる本を見つけてあげます」「……」 キサがとっても不思議そうな顔でメルチェットを見つめる。そんなこと露知らずメルチェットは本棚をじっと凝視する。「かっこよくて、かわいいのですね!」「うん」「では、この本なんてどうでしょう。ん、んん、手が届かない!」「キサがだっこしてあげるー! よっこいしょー!」 メルチェットをキサが抱っこして本をとる。これだと、どっちがお姉さんなのかいまいちわからないぞ。「ふふ。ありがとうございます。これはどうでしょう? 素敵な冒険ものですよ。キサちゃん」「冒険! 素敵! けど、感想文ってよくわからないの。メルチェットさんって感想文、書ける?」「私は大人ですから、それくらい簡単ですよ」「本当? じゃあ、キサが書くとき、アドバイスしてね!」「も、もちろんです!」 二人のやりとりをロストナンバーたちはほほえましく見つけながら自分たちもキサの課題図書とともに今日は一緒に読書タイムと自分たちの本も探していたが「あ、これ、面白そう! ……「おくさんおこめですよ。あら、おこめやさん、いけません、わたくしにはしゅじんが……」」 キサぁああああ! なに読んでるんだぁ! 傍にいたメルチェットが真っ先に反応してばしっと本を奪うと、棚に返した。「あー!」「これはだめです! キサちゃんには早いです。こういうのは大人にならないと読んじゃいけません!」「……メルチェットさん、先から大人大人っていうけど、じゃあ、大人ってなに?」「え」「メルチェットさんは大人なんでしょ? けど、キサとあんまり変わらないもん。どこが大人なの? どうしたら大人になれるの」「え、え、え」「おしえてー」 ロストナンバーたちはなまぬるく微笑んで、暇つぶし用に手にとっていた本を棚に戻した。 ああ、ゆっくりできるなんて思ったのが間違いさ。間違いだったさ。
「はい!」 すちゃと赤と白の可愛らしいサンタガールのミルカ・アハティアラが元気よく手をあげた。 本日、家庭教師という名目でキサと本を探すのを手伝いをしていて図書館にある素敵なサンタクロースの本をいっぱい紹介して仲良くなっていた。 「わたしも素敵なオトナになりたいです!」 きらきらと期待に満ちた朝焼け色の瞳がじっとメルチェットを見つめる。 「だって、七夕のときに教えてくれるって言ってくれましたよね! 超期待してます」 「ほんとう! ミルカちゃん」 「はい! だから二人で仲良く素敵なオトナになりましょう!」 キサが食いつくとミルカは大きく、深く頷く。 「すごいです。わたしたちとそんなにも変わらないのに、メルチェットさんはオトナなんですよ」 「すごいすごい!」 キサとミルカが二人してもりあがり、お砂糖をまぶした御菓子のような輝く瞳で同時にメルチェットを見つめる。 「おしえて」 「おしえてください」 「め、メルチェットさんは大人だから大人なんですよ!」 「すごーい」 「すごいです!」 なんとなくわかるようなわからないようなけれどメルチェットさんがいうととってつなく説得力がある言葉にえっへんと胸を張るとキサとミルカは大興奮でうんうんと頷いて尊敬のまなざしを向ける。 やれやれ。まったく。 アレクサンダー・アレクサンドロス・ライオンハートは肉食獣独特の凄味のある金色の瞳を細めて、ごろごろと喉を鳴らした。大きな巨体は図書館を利用する人々の邪魔にならないようにと小さくするため床に腹這いになり、太い前足を組んで顎を載せ、三人娘たちを見守っていた。 司書から「せめて、一人くらいは保護者がいたほうがいいとおもうんだ、よろしく、よろしくな」などとちょうど依頼がないかと探しているところ、ぐわしぃと両肩を掴んで押し付けられ……頼まれたのだ。 大人か…… アレクサンダーは大人に憧れる無邪気な娘たちを見ると、しみじみと呟く。 「時間と経験が解決するのだけどなぁ」 ま、憧れるのも一つだよな。 「あれ、みなさん、なにしてるんですか?」 ちょうど、各世界の衣装デザインやら薄い本のネタやらを探していた天下の腐乙女の吉備サクラはなにやら騒がしいのに「もしかして、なにかのネタでしょうか?」と吸い寄せられてきた。 腐った乙女とはどんなときだってネタを探し求める無駄な行動力は誰にも引けをとらないのだ。 「あ、サクラさん! こんにちは!」 ミルカがぱっと笑う。 「お久しぶりです、ミルカさん。ゆっくりお話しするの、パジャマパーティ以来ですね。元気でした?」 「はい! あのときは楽しかったですね!」 二人は以前、ソアの家に集まって女の子同士で御菓子を持ち寄ったパジャマパーティをしたのだ。みんなで騒いで、恋の話などしてとっても楽しかった 「パジャマぱーてぃ?」 キサが不思議そうに小首を傾げる。 「ふふ。パジャマをもらって、それでやったんですよ!」 「楽しかったですね!」 「いいなー。キサもー、ねぇ、メルチェットさんはしたことある? やっぱり大人だからしたことあるの? いいなー」 「なら、キサちゃんもみなさんとしましょうね。そのときは私が一緒にいてちゃんと指導します。なんといってもメルチェットは大人ですから」 「わーい、やっぱり大人ってすごい!」 キサが嬉しそうに笑って両手をあげる。 「大人ですか?」 サクラは不思議そうに首を傾げたるのにミルカはとびっきりの笑顔で答えた 「実は……」 「はぁ、そうなんですか」 ミルカの説明にサクラは納得して頷いた。 「メルチェットさんは大人なんだよ」 「そうです。わたしたちと同じくらいなのにもう立派なオトナなんです!」 「はい! メルチェットは大人なんです」 いつの間にか姉妹のように息のあった三人娘のやりとりにサクラは眼鏡の奥の瞳を丸めたあと微笑む。 「大人……大人って自分が言うんじゃなくて、他者からの評価という部分も大きいかと思います。少なくとも大人かどうかと言う判断は総合評価です。この中で本当に大人なのは、アレクサンダーさんだけかなと思います」 何気ない。 それはとっても何気ない言葉だったが、この場では核爆弾、いや、世界破滅ボタンなみの威力を発揮した。 どちゅーん!(なにかの崩壊した三人娘をおおくりします) 「え、あの……」 硬直する三人娘を前にサクラは慌てた。別に悪気があったわけではなくて、大人に一生懸命なろうとしている姿が可愛くて、少しでも協力したいと思って発言したのだが。 メルチェットさんは誰よりも大人だと思っていたキサとミルカのなかのイメージが崩壊するのは容易かった。いや、ちがう、だってメルチェットさんだもの。ぼくたち、わたしたちのメルチェットさんだもの、そんな、大人じゃないなんて……! ターミナル一の大人だって言われているメルチェットさんが…… 茫然とする三人娘にサクラは慌てて言葉を付けたした。 「大人の判断は、身体的、精神的、経済的ってよく言いますよね? 例えば薬の服用量に大人って分類あります。お薬飲んだり多少の病原菌に対抗したりするのは体の大きさでの大人の判断です。大人と子供の差、今までの人生経験も大きいです。初めての経験じゃないほど対処法も分かっていて動揺しにくいのも大人の1つだと思います。動き方も子供と大人じゃ違いますよね。落ち着きないパタパタした動きも子供特有です。後は自分で稼いだお金だけでちゃんと生活できるのも大人の条件の1つです。複数の指標の総合判断で大人かそうでないか決まると思います」 だから、サクラは遠慮がちに微笑んで告げた。 「ここで大人なのは多分…アレクサンダーさんだけだと思います」 どかちゅーん!!(核爆弾ボタンが押されたようです) サクラの完璧な論に硬直する三人娘。 「えっと、えっと、それだとしたら……え、ええ?」 頭を抱えるキサとミルカは一生懸命、サクラの言葉を咀嚼し、飲み込んで理解しようと努めていた。 みためとせいしんと、それと、それと……? じろーとミルカとキサがメルチェットを見る。 「じゃあ、メルチェットさんは大人じゃ、ないのでしょうか?」 「え、え、え」 キサとミルカの不審の目――メルチェットさんは実は大人じゃなかったんだという目にメルチェットはあわあわする。 とうとう。 この日がきてしまった。 撒かれてしまったメルチェットさんは実は大人ではないのかもしれないという疑惑。それにミルカとキサはごくりと息を飲む。 わたしたちは、とうとう、この疑惑をとくんですね、キサちゃん そうだね、ミルカちゃん、キサたち、とうとう疑惑を解消するんだね そんな昏い会話を視線でかわすキサとミルカの前にいるメルチェットはじりじりと後ずさる。 「あの、二人とも、」 「サクラの言うことは正しいとおもうぞ。大人ってのはなぁ、成長してなるものじゃ」 今まで黙っていたアレクサンダーが太い声で語るのにミルカとキサはそちらを見る。ひらりとアレクサンダーは尻尾を振る。 「大人じゃと言われるわしだって、生まれたばかりの頃は子供じゃったんだし。まずは肉体じゃ。時間とともにつれて成長していくんじゃ。親の庇護を得られている時間でもあるんじゃ。おまえさんたちもそうじゃろ?」 ミルカとキサは顔を見合わせる。 「ミルカちゃんはいた?」 「わたしは、そうですね。サンタのおじいさんですね。けど、とっても抜けていて靴下に穴があいていたり、帽子を忘れそうになったりして、わたしがしっかりしなくちゃって思いました。キサちゃんは?」 ミルカの故郷は壱番世界によく似ている。ただし特殊な力を持った人間や魔法を使える生き物などが当たり前のように存在している。ミルカは両親の元を離れて、サンタである祖父のあとを継ぐために二人暮らしをしていた。祖父のおっちょこちょいを見ているとミルカは自分がしっかりしっかりしよう! と思うのだ。だから大人に対する憧れはキサと同じくらい強い。だって、素敵な大人になりたいもの。 「キサ? キサはねぇ……いま、にゃんこちゃんのところにいるけど、いつもはね、博物館のみんなとめっこちゃんといるの。いつもキサのこと見ててくれるよ!」 キサはターミナルでは司書が保護者だが、最近はターミナルに保護してくれたエク、それにターミナルであれこれと世話を焼いてくれるイテュセイが今のキサにとっては親といっても過言ではない存在だ。 「うむ。時間と共に肉体は成長していくのじゃ、それと共に、心も成長していく。経験を積み、少しずつじゃ……まぁ、成長しても、心が子供のままだって事もあるんじゃけどな。どのみち、時間がおとなにしていくのじゃ。だが、しかし、実はロストナンバーは、肉体の時間が停止している身じゃ。即ち、再帰属するまで子供のままって事じゃ」 最後にものすごーい爆弾きたぁあああああ!! ぱしゃああああん(思わず目を覆うような閃光、そして崩壊) サクラが大人だと言い切るアレクサンダーの言葉はかなりの威力を持ってキサとミルカの頭の上にどーん! のしかかってきた。 「じゃあ、やっぱり、メルチェットさんは大人じゃないんだ!」 「そんな!」 がぁああん! メルチェットの頭上にもおもいっきりダメージが落ちる。 「サクラのいう論からいうと、そうなるのぉ」 「え、ええええ、それだとキサたちも」 「永遠に子ども!」 キサとミルカはふるふると震えて互いに見つめ合う。 覚醒したままでは永遠に憧れの大人にはなれない。 実はメルチェットさんは大人ではなかったのも衝撃だったが、この真実は二人を叩きつぶした。 ひしっと手を合わせて半泣きである。 「そんな」 「そんなぁー」 「まてまて、おまえら、わしの話には続きがあるぞ」 「え」「え」 「先ほどのはサクラの話を聞いたうえで、わしなりの大人について語らせてもらったわけじゃ。そんなお前さんたちみたいにちっちゃいのに大人なんぞ言われたら、わしは、肉体が大人に成長するのに3年かかったのじゃぞ? おかしいじゃろう。んん?」 アレクサンダーは太い前足を伸ばしてメルチェット、ミルカ、キサの順に頭をぽんぽんと撫でる。それを見たサクラが目を輝かせて、ぜひ私も! というのでアレクサンダーはぽんぽんとここにいる娘たち――アレクサンダーからいえば実際に娘と言われても不思議はない。 「それぞれきちんとした肉体の成長はある。わしは成長したのちに、群れから離れて「はぐれ」になった……自分の群れを得るまではきつかったのじゃ。過酷さに耐えうるためにも体は大きくあらねばならないのじゃが、一人でいた経験も立派な大人になるための試練じゃった……わしからすれば肉体と精神じゃが、肉体が成長せんが精神面は大人ってこともあるじゃろう? メルチェットは司書の仕事を手伝い、それに近い仕事をしている、それは立派な大人ではないのかのぅ。たぶん、ここの誰よりも経験は多いぞ」 「それも、そうですねぇ。私たちはロストナンバーですからね。ええっとね、三人とも、私が先口にしたのはこういうのが一般的だよっていうことなんです。覚醒のことを考えたらやっぱりちょっと違うんじゃないかって思います」 とサクラも微笑んで告げる。 つまり。それは ミルカとキサは目をぱちぱちさせる。 「つまり、メルチェットさんは、やっぱり大人?」 「なんですね!」 おおおおー! 一度壊れた大人メルチェットさんイメージが再び復活したミルカとキサは実はものすごーい大人なんだという視線を向ける。 「えっへんなのです!」 やっぱり大人であったメルチェットさんは胸を張った。 よかったね、メルチェットさん、大人だって証明されたよ! メルチェットさんは永遠の大人なんですよ! いいですか、ターミナルのみなさん! 「けど、キサちゃんたちはどうして大人にそんなに興味あるんですか?」 サクラの問いにミルカとキサは顔を見合わせた。 「わたしは、覚醒して、このままだと大人になれないっていわれると悲しいです。だってわたしは立派なサンタクロースになりたいんです」 ミルカの将来の夢。はやく故郷に帰りたいと思う理由。 「以前、メイムで夢を見たんです。なんでもてきぱきできる、どんなときだって冷静な自分の姿です。それでまだまだ自分は未熟だなって思ったので、やっぱり大人になりたいです」 メイムの素敵な夢を思い出してミルカは目を細める。ああなれたらいいなって強く思う。 大人になったら、みんなをもっと笑顔にできるかもしれない…… 「うむ。しかし、大人でも間抜けなやつはおるしのぉ」 「そうですねぇ。やっぱり心がけ次第だと思います。えっとですね、子どもっていうのは可能性なんです。ミルカさんがなりたい大人像があるなら、いまからいっぱい経験しておけば素敵な、理想の大人になれると思います」 「そうですね!」 アレクサンダーとサクラの言葉にミルカは大きく頷いた。 「キサは……キサの憧れはね、ママなの。抱っこされたことをキサ、覚えてるの。あたたかくておっきかったの。安心できて、嬉しかったの」 キサはほのかに唇を緩める。本来赤ん坊であるキサが十六歳の姿をしているのは母親にたいする憧れたゆえだ。 「ママみたいになりたいって思ったから、この姿なんだけど、大人ってよくわからなくて……私は大人、なのか、かなぁ」 ううーんとキサが身体だけは既に完璧な大人であるぷるんな胸の前で腕を組んで唸る。それにミルカとメルチェットはレディとして生まれたならば、そのぷるんを見るとどうしても生まれてしまう荒んだ視線を向けたのは大人な秘密である。 「まぁ、まずは経験が全てじゃな。わしも応援しておる」 本当に父親気分でアレクサンダーは四人の頭をぽんぽんと叩いてエールを送った。 「けど、このままだと身長も伸びませんし、他も成長しないんですね……精神はメルチェットさんみたいにがんばれば、いつかっと思いますが、体だって成長したいですね」 「メルチェットさんだってそう思わない?」 「むむ、そうですねぇ」 「こればかりはのぉ」 うんうんと唸っていたミルカははたと気が付いた。 「アレクサンダーさんが言ったみたいに心がけもそうですけど、外見から入るのはどうでしょうか! オトナっぽい恰好をしてみるとか! そうしたら、オトナの気分も分かるかもしれません!」 ミルカはぱっとサクラを見つめた。 「だって、ここには強い味方がいるんですよ! サクラさんはお洋服を作っているんですよね! ですから、大人な服をわたしたちのサイズにできませんか? それにサクラさんなら見立ても得意そうですけど、どうでしょう?」 「服ですか? いいでよすよ! これも一つの勉強になります!」 とサクラは笑顔で答えたあと、はたと気が付いた 精神だけ大人になる努力をするイコール経験大切イコールなんでもやってみようイコール腐教のちゃんす? 腐教とは……壱番世界のどうしようもなくピー(規制が入りました)でピー(規制が)で、ピー(規)なものが好きな女性、男性が自分のはまっているものを友人たちに教えてそれにはまらせてお前も俺も同じ穴さ。さぁ、世界を好きなものでひろげようぜ、おーいぇい! というものだ。 くいっと眼鏡のふちを押し上げてサクラはくひっ。久々にでました、くひっ笑い!! 腐乙女の七つ道具のリュック――いついかなるときだって腐教できるように好きなものはもっている。幸いにも今日は図書館でいろいろと本を借りようと思って大きな目のリュックのなかには夢いっぱい! 「ここは手早く大人になるために、こういう薄い本のお勉強するのが良いと思います! 大人の英才教育です! こういうこと知ってるのが大人です!」 「……おい」 「は、はい、アレクサンダーさん、なんですか?」 「人間ってのは、その手……エロ本は、恥ずかしいのか? わしは人間のことはいまいちわからんが、どうして雄と雄しかおらんのだ、これは? それでなんで裸なんじゃ?」 とっても常識的な大人な発言にサクラは四つん這いとなった。その全身にがーんと負のオーラが漂う。ゆりりんがつるつるの手でサクラの頭をぺちぺちと叩いた。 その傍らではお洋服の雑誌を手にしたあれもいい、これもいいと語り合うキサ、ミルカ、メルチェットの姿があった。 「けど、キサ、ミルカちゃんのお洋服いいと思うの! かわいいもん! あ、なに、これ、ばにーがーる? 大人なのにうさぎさんの耳つけるんだぁ」 「キサちゃん、キサちゃん、それはだめです! こっちです。大人の服だと、黒と白のクール系っていうのもあるみたいですよ」 「動きやすそうですね。けど、ドレスもいいですね!」 そのあとサクラに頼んで各々着てみたい大人な服装を思う存分に堪能してちょっとだけ大人な気分を味わった。
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