がたんごとんがたん 列車の音が響き渡れば ことんかたんことん 不思議大好き熊モフ達が集いだす からんころんからん 今日はどんな不思議がやってくるのかな? 陽気な歌声に誘われてロストレイルから降り立ったのは一匹の竜、フラーダだ。辺りを興味深く見回しながらゆっくりと歩を進めていく。すると駅が騒がしくなったのに気が付いた熊のアニモフたちがわらわらと集まってきたのだ。そして一匹の熊アニモフがフラーダに近寄って来て声をかける。 「君、なんて言うの?」 「フラーダは、フラーダ!」 名前を聞いて熊アニモフは嬉しそうにフラーダの名前を連呼する。そして 「ようこそフラーダ! いっしょに遊ぼう!」 ニコニコ笑顔でフラーダに手を差し出す。その手を取りフラーダは熊アニモフたちに引かれながらモフトピアの駅を出た。 ● フラーダがつれてこられたのは色々な種類のアニモフ達がいる公園のような場所だった。砂場が砂糖のような、滑り台がキャンディのような、ブロックがマシュマロのような。タイヤ代わりにグミが埋まっているような。色とりどりの遊具に囲まれてフラーダは目を輝かせていた。先ほど、一度グミを噛んでは見たものの思ったより硬めで味もしなかったので食べることは諦めた。 「ねぇフラーダ」 「?」 「フラーダに似たアニモフがいるんだよ」 「フラーダ、そっくり?」 そう聞き返してアニモフは似てるけど違うなー、と陽気に返事をした。あっち見て、と言われた方に目線をやるとソコには純白の竜のようなアニモフが居た。羽は2枚で純白、顔つきは更に幼さをかもし出している。原型自体がヌイグルミのアニモフという生命体なのでどうしても幼くかわいらしくなってしまうのだろう。そんな矢先、そっくりという竜のアニモフがこちらに気が付いて駆け寄ってきた。見た目は大人の感覚で見ればデフォルメされたような感じであり、そっくりとは言い難い。竜のアニモフは近付くなりフラーダの顔を覗き込み、 「そっくり!」 白き竜は無邪気な顔で笑う。 「そっくり!!」 四色の竜も同じく子供の様な顔で笑う。 お互いにコロコロと笑いながら話をする。 不思議だねー。 こう言うのが他人の空似って言うんだって。 それ! 知らない! すっかり意気投合し一緒に遊ぶことに。新しい仲間が出来たようでフラーダもなんだか心が温かい。他愛の無い会話で笑い転げる二匹の竜。しかも同世代くらいの背丈格好が似ている同士である。仲良くならない方がおかしいだろう。 「フラーダ! フラーダもわたぐもやまに行こうー!」 「わたぐもやま? おいしそう! フラーダ、行く!」 「わたぐもやまは食べられないよー?」 ケラケラと笑いながらフラーダは数匹のアニモフに連れられフェルトの森をアニモフ達の声に合わせながら歩む。宛ら遠足中に合唱会の練習をしているかの様に先頭を切っている熊アニモフが指揮棒を振るう動作をし、それに合わせてる様な合っていない様なリズムで他のアニモフ達が歌いだす。フラーダもその歌の分かり易いメロディをすぐさま覚えて一緒に歌う。アニモフ達が横揺れすればフラーダも体と尻尾をふりふり揺らし、アニモフ達が手拍子すれば4枚の羽根で空を切る。 がたんごとんがたん 楽しい楽しいモフトピア ことんかたんことん アニモフいっぱいもっこもこ からんころんからん 楽しいことが大好きさ! 「だいすきさー!」 一緒に歌って区切りの良い所でフェルトの木々の終わりが見え視界が開けてきた。思わず駆け足で駆け出すフラーダ。それを追ってアニモフも走る走る。上り坂の後の下り坂もなんのその、走り出したら止まらないフラーダとアニモフ達は視界が一面真っ白世界にやってきた。 「なんだこれ! まっしろ!」 「ここがもこもこ王国わたぐもやま!」 「モフトピアのくもが溜まっちゃう凄い所!」 「まっしろ! フラーダ、全部まっしろはじめて!」 「モフトピアのくもは、もふもふくも!」 「もふもふ! フラーダくらいもふもふ?」 「ふふふっ! フラーダよりももっふもふ!」 「! ふ、フラーダ…負けた……」 ががーんとショックを受け、肩を落とすフラーダの背後から竜アニモフがタックルしてきた。ポーン! と真っ白な空間に投げ出されるフラーダだったが、次の瞬間もふもふの雲と跳ねて飛んでまるでトランポリンみたいに雲の上を行ったり来たり跳ね回る。 「わー! すごいすごい! 羽! してない!飛んでる!」 羽を動かしていないのにぽんぽんと空中に投げ出されるのが楽しくなり、思わず歓声を上げるフラーダを見て、アニモフ達も一斉にくものかたまりへと飛び込んだ。反動で思いっきり高く宙に放り出されるフラーダの顔はとてもご満悦だ。きゃっきゃとはしゃいで笑っている。その顔を見てアニモフ達も楽しそうに飛び回って、跳ね回る事と来訪者が楽しんでることを喜んでいるようだった。 「フラーダー」 「んー?」 「えいっ」 ぼふんっ 「?!」 目の前が一層真っ白になったのは熊アニモフがくもをちぎって投げてきたから。びっくりしたフラーダだったが、いたずらっぽく笑ってる熊アニモフを見て頬を膨らましながら仕返しだと言わんばかりにくもをちぎって投げる。熊アニモフはさっと避けたが後ろに居た別のアニモフに当たり、そのアニモフがちぎっては投げ……宛ら雪合戦の様。目の周りについたくもを払おうと首をぶんぶんと振って落としたと思えばまた当てられ、こちらから当てようとすれば竜のアニモフは白い体を生かしくもの中に身を隠してしまい、あれあれ? と困惑してると後ろからじゃれ付きタックルを食らったり。何時しか膨らませた頬もすでに萎れ先ほどと同じ様に無邪気に笑い転げていた。 そして何時しか楽しい時間は過ぎ夕焼けが一面のくもに当たりきらきら輝く海の様に光り始めた頃、フラーダはふかふかのくものベッドの上でうとうととまどろんでいた。遊びつかれたのか竜のアニモフもフラーダとお互い支え合うように背を合わせ雲の中でうとうと。穏やかな一面のオレンジ色に囲まれてみている夢の光景はきっと今に至るまでの楽しい思い出。眠るフラーダに浮かんだ微笑が物語っている。 と、そこへ一匹のパンダのアニモフがやってきて。 「フラーダー! 帰る時間だってー!」 と告げに来た。その声で目を覚ましたフラーダは寝ぼけ眼を擦って首を振る。 「うー、フラーダ、ごはん食べる……」 その声で気が付いたのか、竜のアニモフも同じ様に目を擦り、フラーダの方を見て 「フラーダ、帰っちゃうの?」 と尋ねる。 「フラーダ、帰る。たつこ、心配」 「そっかー」 「フラーダ帰る、さみしい?」 「寂しい。けど」 「?」 「フラーダが来ればいつでも会えるもん!」 不安も心配も見えないほどの笑顔で言い切る竜アニモフ。その自信は何処から来るのか分からないが、フラーダは目を丸くした後同じ笑顔でこう返す。 「……うん! フラーダ、また来る!」 「うん! またもふもふ合戦しよーねー」 「もふもふ、ぱわーあっぷしてくる!」 「ふふふ、負けない!」 「次、フラーダ勝つ!」 来た道を来た時と同じく歌いながら歩いていく。皆、はしゃいで疲れているはずなのにその歌声は高らかだ。来た時と同じくらい明るく元気な声。疲れているはずなのに体はまだまだ軽い。 がたんごとんがたん 日も暮れおうちへ帰るんだ ことんかたんことん 今日のご飯はなんだろな からんころんからん 汽笛が鳴る鳴るやれ急げ! 日が完全に落ちる前にフラーダは駅へと着いた。そこには大好きな世話人の女性の姿。心配半分、羨ましさ半分といった表情で「何処に行ってたの?」と。世話人はモフトピアでは相当な事が無い限りネガティブなことは起きない事を知っている為、そこまで心配はしていなかったがやはりきゃっきゃワイワイしているフラーダを見て癒しを補充したかったようで無念な表情は隠せていなかった。しかし、フラーダの笑顔を見て全て吹っ飛んだ様だ。 「たつこー、フラーダ、また遊ぶ! また来る!」 その言葉を聞いてああ楽しかったのだな、と思いうんうん、と彼女は頷いた。 「ばいばい! フラーダ!」 「また遊ぼーねー!」 手を振るアニモフ達の見送りを受け、フラーダも尻尾を振り返す中、列車は出発した。列車が、モフトピアが見えなくなるまでずっとずっとお互い振り続けた。こうして今日の冒険と言う名のお出かけは終わったのだった。 モフトピアとフラーダの周りの世界は今日も平和です。
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