クリエイター橘真斗(wzad3355)
管理番号1153-9039 オファー日2011-02-06(日) 16:35

オファーPC ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノ(cppx6659)コンダクター 女 16歳 女子大生
ゲストPC1 飛鳥 黎子(cusr3796) ロストメモリー 女 15歳 世界司書

<ノベル>

~小悪魔との契約?~
 試験的に行われた『夜』に怪談話を楽しんだジュリエッタ・凛・アヴェルリーノは久しく味わったことのない夜の街を歩く。
 街頭などというものはないので、皆、キャンドルを軒下につるし画廊街も雰囲気ががらりと変わっていた。
「試験的とはいうておったがのぅ。たまにはこういう刺激もありじゃろうて」
 世界図書館上層部ではイザゴザがあったのだが、知る由もない凛は実に気楽に『夜の街』を散歩する。
「あー、はいはい。パンプキンパイはもうちょっとで焼きあがるから待ってなさい! そこ! 夜だからって万引きするな!」
 比較的静かな画廊街の一角から、威勢のいい声が聞こえてきた。
 凛にとっては聞き間違える事のない友―飛鳥黎子―の声である。
「繁盛しているようじゃな、飛鳥殿?」
「冷やかしならかえって頂戴! ようやくひと段落付けるんだから‥‥これからパンを焼いて並べて‥‥夜だからって動き出す人もいるのよね。ああ、忙しい!」
 むしゃむしゃーと頭をかきむしる飛鳥の姿はかなりテンパっていた。
「冷やかしではないぞ、飛鳥殿。友が困っているというのであれば手を貸さないでもないぞ」
 もったいぶった口ぶりでジュリエッタは飛鳥を見つめる。
「べ、別に出つだって欲しいなんていってないわよ!」
「ふむ、ではわたくしはもう少し夜の散歩をしに参ろうかのう‥‥」
 そっぽを向いて困っていたことを否定した飛鳥を凛は見捨てていこうと踵を返した。
 だが、その手はつかまれてその場から離れることを許さない。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! て、手伝わせて欲しいなら手伝わせてあげてもいいわよ?」
 行動では気持ちが出ているが、あくまでも口では負けを認めない飛鳥だった。
「別にわたくしは手伝わせて欲しいとはいっておらんよなぁ、マルゲリータ」
 飛鳥の行動と言動の食い違いが面白いのか凛は一緒にいるオウルフォームのセクタンに話しかけて焦らす。
「ああ! もう、わかったわよ! 人手が足りないから手伝いなさい! これでいいでしょ!」
 ギリギリと歯軋りをした飛鳥はつつましい胸を張りながらびしっと凛を指さした。
「頼みごとをする態度ではないのじゃが、飛鳥殿らしいといえばらしいの。じゃが、ワシもただではやれぬからな、一つ条件を飲んでもらうぞ」
 ふふふと凛は小さく笑いながら条件を口にする。
 小悪魔との取引に乗ってしまったと飛鳥が後悔したのは直ぐのことだった。
 
~二人でコスプレ!~
「ちと露出が多い気がするが、わたくしの衣装はなかなか可愛いじゃろう? 飛鳥殿は魔女ぶりが板につい……ゴホン、三角帽子やローブが似合っておるのう!」
「不覚だわ……何よりも負けているのが悔しい」
 どことはあえて言わないが飛鳥の悔しがる部分は非常に少ない。
 凛の持ち出した条件はハロウィンらしい仮装をすることだった。
 可愛くも胸や腿などを露出させ、白くてみずみずしい肌を惜しげもなく出す凛の小悪魔と三角帽子にローブ、そしていつものゴシックワンピースに近いダークな魔女の飛鳥が店を切り盛りする。
 パンを焼いて並べるのは飛鳥で、呼び込みは凛で行っていく分担でまずはやっていく。
「さぁ、皆のもの。折角の夜じゃ歩きながら食べれるチュロスと共に夜の街を楽しんではどうかのう? パンプキンパイも焼きあがりじゃからサクサクで美味いぞ」
 パンパンと手を叩き、珍しい夜のお供にとドーナツやパイを中心としたメニューを凛が提案し、飛鳥はそれにしたがって用意していった。
 魅惑的な凛の売り子に人が先ほど以上に集まって大盛況となる。
「はい、チュロスとドーナツ揚げ終ったわ。くっ、私が売り子しているときより多いじゃない」
「わたくしの可愛い姿を気に入ってもらえているようで嬉しいのう」
「ふ、ふん! 私だってね、水着とか着ればあんたになんか負けないんだからね!」
「はっはっはっ、では、次は水着を一緒に買いに出かけたりもしたいのう。案ずるなわたくしがぴったりのを選んでやるからの」
「しまった……また、乗せられたわ。もういい! 次の焼いてくる!」
 自分からボロを出してしまった飛鳥は恥ずかしさに顔を赤くしながら調理場へと戻っていく。
「さぁ、焼きたてのうちに食べないと損をするぞ。味はわたくしが保障をしよう。是非、買っていくのじゃ!」
 びしっと、腰に手を当てて指をさす飛鳥の決めポーズをまねしながら凛は売り子に精をだした。
 昼間だらけのターミナルのように夜が一向に過ぎないターミナルの中で、時計だけが動き閉店時間を告げる。
 ターミナルナイトでのメランジェブーランジュの営業は翌日の種まで使うほどの大盛況ぶりで幕を閉じたのだった。
 
~ミッドナイトパーティ~
「ほんと、町並みが違うわね。夜自体が少ないから本当に不便だわ」
「人工的に作ったとはいえ、夜に喫茶で友と休憩するというのは初めてじゃ」
 店内にあるカフェスペースで飛鳥と凛は普段着に戻ってあまったパンを中心にコーヒーと紅茶で味わう。
 この場にいるのは飛鳥と凛の二人きりだ。
「飛鳥殿は司書ゆえなかなか顔を合わせる機会は少ないものじゃからな」
「本当にね。依頼では会うけれど、こうしてゆっくりできる機会は本当に少ないわね」
 お気に入りの紅茶を飲み、飛鳥は上機嫌に凛の言葉に頷く。
 冷える夜の暖かい飲み物は気持ちを落ち着けてくれるいいものだ。
 あまりものの手作りパンも働いて疲れたお腹にあっという間に片付く。
「いいひと時じゃな。飛鳥殿のパンも美味しいぞ。わたくしも通いたくなるものじゃ」
 コーヒーを飲む凛の顔も実に穏やかだ。
「ところで、飛鳥殿はバレンタインにチョコを渡す相手とかいるのじゃろうか?」
「ぶッ!」
 不意打ちに近い質問に飛鳥は思わず紅茶を噴出してしまう。
「な、なんで……そんな話を……」
「やはり年頃の女子といえば恋バナじゃろう? わたくしも良い婿殿を探しているところじゃ」
「知り合いに適当に配るだけよ……友達になるきっかけとか、そういうんじゃないんだからね!」
 照れた顔で飛鳥は紅茶を入れて飲みなおした。
 バレンタインには友チョコというものもあるから、友達作りのきっかけにしたいのかもしれない。
 強気できつい言葉の多い飛鳥だからこそ、常日頃は上手く友達作りができていないことがわかった。
 意外な一面を見られて、凛は嬉しく微笑む。
「その中にはわたくしも入っているのじゃろうな?」
「欲しいなら、あげてやらなくても……ないわよ」
「では、わたくしも友チョコとやらを用意してもいいかの」
 未だに顔の赤い飛鳥に凛はもったいぶった様子で話を持ちかけた。
「貰ってやっても……いいわ」
「うむ、素直なのが人間は一番じゃのぅ。飛鳥殿ももっと素直に気持ちを表現できれば良いと思うのじゃがの」
 蚊の飛ぶような小さい声で答える飛鳥に凛は目じりを下げて慈愛に満ちた瞳で見つめだす。
「うっさい! ほっときなさいよね。私は私、全部まとめて私なのよ! 文句あるわけ?」
 凛の視線が気に食わないのか、飛鳥はない胸を張って強気にでた。
 ころころと表情の変わる姿は見ていて飽きないと凛は思う。
「文句などはないぞ、飛鳥殿は飛鳥殿の魅力があるからのぅ。さてさて、わたくしもそろそろ帰って寝るとするかの」
 時計を見た凛は営業が終わってからかなりの時間話していたことに気づいた。
 楽しい時間はあっという間に過ぎるというのは本当らしい。
「そうね、私ももう寝るわ。今日は……その、ありがとう……ね」
 ぼそぼそとお礼を言う飛鳥に凛はうむりと小さく頷いて答えた。
「では、またじゃの、飛鳥殿」
 凛は椅子から立ち上がると、メランジェ・ブーランジュを後にする。
「ふん、暇だったらこちらから捕まえてやるから覚悟しなさい」
 最後は仁王立ちでびしっと指をさすポーズを決めて飛鳥は凛を送るのだった。

クリエイターコメント遅くなって申し訳ありません。

女の子同士の楽しいやり取りは見ていて和むといいますか書いててちょっと和みました。

凛さんとはこれからも良い友達でありたいですね。
飛鳥は素直に言わないでしょうけれど。

それでは、次なる運命が交錯する日までごきげんよう。
公開日時2011-03-09(水) 23:40

 

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