クリエイター橘真斗(wzad3355)
管理番号1153-14783 オファー日2012-01-01(日) 21:28

オファーPC ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノ(cppx6659)コンダクター 女 16歳 女子大生
ゲストPC1 飛鳥 黎子(cusr3796) ロストメモリー 女 15歳 世界司書

<ノベル>

~緊急指令アフターファイブ~
 ドンと大きなもの音が静かな部屋に響いた。
「はい、ご苦労様」
「これで報酬も支払えて、報告書もだせたから今日の 仕事は終わりよね」
 柔らかな表情を浮かべる老人に向かって、少女が告げる。
 彼女の顔は釣りあがり気味な目と鋭い八重歯が光って脅しているように見えた。
「その手に持っている導きの書が不吉な未来を予言しなければ終わりですよ、ほっほっほっ」
「あったって、見なかったフリしてやるわ。じゃあね」
 赤いハンコの押された書類を持って飛鳥黎子は執務室をでた。
「これは飛鳥殿ではあらぬか。丁度良いところに出会ったのう」
「ジュリエッタじゃない。仕事ならないわよ。私もこれから帰るとこなんだから」
 飛鳥は図書館にやってきた友人にでさえ睨むような目つきで言い放つ。
 元々こういう大きな性格なのは誰もが知っていることだった。
 胸を張る決めポーズは大きいが、胸そのものが慎ましいのも周知のことである。
「それはタイミングが悪かったが、せっかくの機会じゃからの。お茶でもいかがか?」
 ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノは友人の変わりない仕草に微笑んでいた。
「しかたないわねぇ、どうしてもというなら付き合ってあげなくもないわ!」
「うむ、では参るとしよう。最近美味しい茶をだしてくれる店を見つけたものでの」
 ふくみ笑いをこらえて凛が案内しようとしたとき人だかりが押し寄せてくる。
 もみくちゃにされた飛鳥の手から重そうな本、すなわち『導きの書』が落ちた。
 世界司書の持つこの本は起こるであろう未来を見せる力を持っている。
 つまり、書かれていることは現実に起こることなのだ。
「なんか、保護したロストナンバーがターミナルで暴れ出すとか書いてあるわ」
 本を拾い上げて、開かれたページに目を走らせた飛鳥の口からため息が漏れる。
「それは一大事、早く対象せねばならんのう」
「えー、これからお茶なんでしょ、いつ起こるかわからない事件に首をつっこむのは……」
「おい、なんかロストナンバーが暴れてるらしいぞ」
「怪我する前に退散しなきゃな」
 飛鳥が全力で撤退の姿勢をとろうとしたとき、通行人のヒソヒソ話を聞いた。
 聞いてしまったのである。
「今起きているのであれば、すぐに参ろう。わたくしは依頼も探していたところじゃしの」
「はいはい、わかったわよ。ついていけばいいんでしょ。ついていけば」
 期待に満ちたジュリエッタの視線を受け、飛鳥はしぶしぶ頷いた。


~招かれた客~
「マルゲリータよ、捜索頼むのじゃ。騒動の元をたどれば大凡の位置は掴めるはずじゃ」
 オウルフォームのセクタンを飛ばし、ジュリエッタは飛鳥へ顔を向ける。
「賊の手がかりは何かあらぬかの?」
「ちゃんと見てるわよ。相手は変身能力をもつマネキンタイプのロボット兵士『B4_01[ビーフォーアン
ダーゼロワン]』というそうよ」
 飛鳥が手にしている書物から導き出された情報を彼女に伝えた。
「変身能力とはやっかいじゃの。暴れている目的はなんじゃろうか……」
 友人からの解説を聞きながらジュリエッタは今回の騒動について頭を巡らせる。
「さぁねー。ターミナルの住人に被害が出ているんだから、そんなことより確保よ、確保」
「うむ、そうじゃな。見つけたぞ。うまく誘導できればコロシアムへといけそうな道じゃ」
 バタンと飛鳥が本を閉じると同時にマルゲリータの目を通してジュリエッタが目標を捕捉した。
「好都合ね。他のロストナンバー達も動いてるでしょうし、誘導を頼んじゃうわよ」
 飛鳥は携帯電話を取り出すと知り合いに片っ端から連絡をして騒ぎを起こしているロストナンバーを誘導
してもらうように命令口調ではあったものの頼んでいく。
「フフフ、私の仕事終わりを潰した償いを身を持って味わってもらわなきゃね」
「うーむ、ノリノリじゃの……」
 はじめは嫌がっていた友人が既にノリノリで八重歯を光らせる邪悪な笑みを浮かべているのが多少不安に
なった凛だった。


~女の戦い~
「ココハ……ドコ?」
 多くのロストナンバーの追っ手からのがれ、マネキンのビーフォーが辿り着いたのは文化遺産にでもなりそうな古代ローマ風のコロシアムだった。
 追ってきていたはずの人の群れはなく、ギギィッと音をたてて閉じられた扉が誘導されたことを物語る。
「少々お痛がすぎたようじゃの」
「ここで成敗してあげるわ、覚悟なさい!」
 正面には二人の少女がポーズを決めてビーフォーを見据えていた。
「ワタシハ……ワルクナイ、イジメるヒト、キライッ!」
 一方的に悪人と決めつけられているビーフォーは怒りに身を任せて二人に飛びかかる。
 全身をゴムのように伸縮させ、しなる四肢を鞭のごとくビーフォーは舞わせた。
「飛鳥殿、こっちじゃっ!」
 外見からは予想しなかった攻撃方法に一瞬唖然となった飛鳥の腕を凛が引っ張って四肢の一撃を硬い地面
にぶつけさせる。
 軽々と地面が抉れ、砂埃が巻き上がった。
「直撃は受けていられないのぅ」
「『死因:ミンチ』なんてごめんよっ、さっさとお縄につきなさいっ! グレートアスカキィィィックッ!」
 一撃でも受ければ終りと思った飛鳥はダッシュしてからのドロップキックをお見舞いする。
 こういうときはパンツが見えても恥ずかしくないらしい。
 衝撃実験のダミー人形のごとく体を変形させたビーフォーがコロシアムの壁まで吹っ飛びめり込んだ。
 ひらりとスカートを翻して飛鳥は地面へと着地する。
「いつもながら見事な蹴りじゃの」
『ダメージカクニン。コピー』
 感嘆の声をあげる凛の耳にアナウンスのような声が聞こえてきた。
 壁にめり込んだビーフォーが瓦礫を押しのけて飛び出す。
「あれは、飛鳥殿?」
 ぷるんと揺れる胸部の塊以外はソックリな姿となり先ほど飛鳥が放ったドロップキックを飛鳥に蹴り返し
ていた。
 威力もそのままなのか、強い衝撃を受けた飛鳥は地面に転がり土煙をあげて滑る。
「コピー能力とはやっかいじゃの……全力でゆくべきか、否か」
 倒れている飛鳥はゆっくりと起き上がろうとしている。
 友の状態が心配ではあるが、脅威を取り払うことが優先だと凛は意識を目の前に集中させた。
 胸の大きな飛鳥となったビーフォーがぷるぷると見せつける様に揺らして凛へと近づきパンチを放つ。
「いくら姿形がそっくりであろうと、飛鳥殿の拳の鋭さは真似できていないようじゃの」
 合気道や居合道を祖父に叩き込まれている凛にとって、肉迫する距離での戦いは得意な戦場である。
 流れる水のごとく、ビーフォーの拳をいなして走ってきている相手の勢いを使って投げ飛ばした。
『ダメージカクニン。コピー』
 先ほども聞いた声をだしてビーフォーが今度はぽっちゃりした凛の姿になる。
「それはわたくしか? いくらコピーをしたからとそれはないじゃろう」
 向かいあう二人はまるでダイエットの成果写真のようだ。
 それだけに腹が立つのが乙女心である。
「凛っ! 遠慮なしにやっちゃうわよ」
「わたくしもそのつもりじゃっ!」
 仕事から、私事へと切り替わった二人が挟み撃ちをするようにぽちゃっとした凛に迫った。
 ぽよんと柔らかい音をだしてビーフォーがはねる。
「逃がさぬわ!」
 小太刀を凛が掲げると上空から雷撃が迸りビーフォーの動きを痺れさせて止めた。
「偽物は消えないよっ! 稲妻かかと落としぃっ!」
 更には飛び上がった飛鳥のかかとがビーフォーの頭をしたたかに打って地面へと叩きつける。
 落雷が起きたときの様な衝撃と轟音が響いた後、コロシアムは静かな時を取り戻していた。


~意外な結末~
 ゴシゴシキュッキュ。
「も~なんで、また世界図書館に戻ることになんのよ」
「やり過ぎてしまったというのは確かじゃからの」
 パタパタサッサ。
「暴れていた理由がセクハラを受けたからだなんて、ちゃんと言えばいいのにさぁ」
「うむを言わさず追い込んでどうにかしようとしていたのはわたくし達じゃからの」
 バシバシゲシッ。
「飛鳥殿、真面目に掃除いたそうか」
 世界図書館の廊下の壁にほうきで八つ当たりしていた飛鳥を凛はたしなめた。連れてきたロストナンバーを 真っ黒こげのズタボロにしてしまった責任をとらされた二人は廊下掃除をしている。
 飛鳥は家に帰ることができずに図書館へトンボ帰りな訳だ。
「はいはい、するわよ。すればいいんでしょ」
 口を尖らせすねている飛鳥の胸をみた凛はくすりと笑う。
「やっぱり飛鳥殿はそのままが一番可愛らしいのう。侘びとして、これが終わったらわたくしが奢ってやろうぞ」
 凛の言葉に飛鳥の手が止まった。
 それは期待ではなく……。
「勘弁してよ。また何か事件に巻き込まれるフラグが見えるから」
 今日の事件を思い返し、掃き掃除に戻ったとき掃除道具置き場にぶつかり、上に載せていた『導きの書』が床に落ちてページがパラパラとめくれた。

~Fin~

クリエイターコメントどうも、発注ありがとうございました。
橘真斗です。

中々シナリオを出せない身の上ではありますが、こうして知っている方のを書かせてもらえるのは嬉しい限りです。

これからも飛鳥をよろしくお願いしますね。
それでは次なる運命が交錯する日まで、ごきげんよう。
公開日時2012-02-02(木) 22:00

 

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