オープニング

 それは決まった形を持たなかった。
 ゆらゆらと、静かに海の中を漂い続けている。
 静かな凪も、荒れる時化もそれは気にせず漂い続けていた。
 気の向くままなのか、それとも波が任せなのかもわからない。ただただ、それは漂うのだ。
 しかし、その動きが変わった。
 漂うだけのそれは、明確な意志を持ってその動きを変えていく。
 不気味にうねり、その形を攻撃的に変えていく。人を襲い、飲み込む姿へと変わっていく。
 それは巨大な不定形生物。スライムと呼ばれる存在は、見つけた交易船へと向かう。そこにいる、自身の栄養源を取り込むために。

「集まってくれて感謝する」
 世界司書シド・ビスタークはそう言って集まったメンバーを迎えた。
「今回はブルーインブルーの世界に行き、交易船の護衛を頼みたい」
 交易船を襲うのは透明なジェル状の海魔であり、スライム状の生物である。
 スライムと聞くと、それほど強いイメージを抱くことはないだろう。しかし、このスライムは生命力が桁違いである。斬ればすぐに切断面が癒着し、打撃を加えても半端な威力ではその柔らかな体に分散されてしまう。
「現れる海域は一定で幾度も船が襲われているらしい。勇敢に立ち向かう者もいたが、倒すことはできなかったという」
 だが、それでも生き残る者もいた。多大な犠牲を払い、幾度も傷を負わせていくとそれは海へと去って行ったという。
「恐らく、無限に回復するわけではない。まして不死身ということもないだろう」
 必ず、倒すことはできる。
「そいつは交易船に正面から乗り込んでくる。いつかは分からないが、今までの出現時間からして太陽の出ている間にくることは間違いないらしい」
 乗り込む前に、その船に絡みつき動きを止めるので、来るときは察知できる。
 察知すれば後は戦うだけだ。交易船のデッキは広く戦うのに問題は無い。
「攻撃方法は単純なもので、大質量の押し潰しが主なものだ。他にも自ら体を切り離し高速で飛ばしてくる」
 戦術はほとんどなく、生命力にものを言わせて襲いかかってくる。部分的に硬質化してくることもあるが、それほどの硬度ではない。
「生命力が高く、しぶとい敵だ。だが、逃がしてしまってはまた襲われる船が出てきてしまう。ここで、確実に倒してほしい」
 これは、お前たちにしかできないだから。そうシドは締めくくった。

品目シナリオ 管理番号810
クリエイター琴月(wemt9875)
クリエイターコメント 皆さん初めまして。初期から登録させていただいていたのですが、諸事情で正規シナリオ初の琴月といいます。ベータで参加してくれた方はお久しぶりです!

 今回は完全に戦闘中心のものとなります。
 敵であるスライムは攻撃手段がそれほど強力ではありませんが、やたらとしぶといです。
 でも何度もやっていれば間違いなく倒れるでしょう。皆さんの全力全開で航海の安全を守ってください。
 できるだけ派手に戦ってもらえれば幸いです。
 それでは、参加お待ちしております。

参加者
太助(carx3883)ツーリスト 男 1歳 狸
緋夏(curd9943)ツーリスト 女 19歳 捕食者
コレット・ネロ(cput4934)コンダクター 女 16歳 学生
オルグ・ラルヴァローグ(cuxr9072)ツーリスト 男 20歳 冒険者

ノベル

 空は快晴。ブルーインブルーの海は穏やかな顔で航海中の船を受け入れている。航海に問題は何もなく、交易船には穏やかで平和な空気が流れている。そして、ロストナンバーたちもその空気とは無縁ではない。
「海魔と戦うのも重要だが、ゆるりと楽しむ船旅も悪くないよな」
「ええ、本当に。……ふふ、お兄ちゃんとこうして旅できて嬉しいわ」
「お前と同じ船に乗れて俺も嬉しいぜ」
 そう話しているのはオルグにコレットの2人。オルグの言葉に同意するコレットの髪が、本人の気持ちを表すように潮風に揺られて楽しげに踊っている。
「まあ、のんびりなのはいいことだなー」
 2人の近くで釣り糸を垂らした緋夏が楽しげに笑いつつそう呟く。特に何か釣れているわけでもないが、別段気にした様子はない。
「そうだな、こういうのも悪くないと思うぞ……って、こら、ちょ……触りすぎだぞ!」
 同意する太助だったが、緋夏にもふもふと触られて悶えている。ただ釣りを眺めていただけなのだが、つい緋夏の手が伸びてしまったようだ。本人もお腹のもふもふは自慢なので、緋夏の手を払うことはなかったが、流石にくすぐったくなってきたらしい。
「んー、悪くないもふもふだねー」
 もふもふに、気持ちよさそうに笑う緋夏。
「ふっ、オレの自慢だからな!」
 自慢げに笑う太助。
 良い感じにかみ合っている。そんな2人の笑顔を見て、やはりゆるりとした船旅も悪くないなとオルグとコレットは笑い合うのだった。
 航海は順調に進んでいる。だは、それはけしてこの先も順調だという保証になりはしない。そして、雲行きが怪しいと気付いたのは釣り糸を垂らしていた緋夏だった。
「なんだか嫌な感じ……」
 釣れていたわけではない。しかし、釣り糸から魚の気配が遠ざかっている気がした。まるで、この海域から魚が逃げだしたように感じる。垂らしていた糸を引き上げ、竿を片付け始める。
「おっ、何かかかったのか?」
「そういうわけじゃないぞー?」
 苦笑して緋夏は太助の腹をもふもふとする。
「ただ、そろそろかなって思っただけ」
 そして、その考えは間違っていなかった。来るべき海魔の脅威は、まさにこの瞬間に来たのだから。
 ガクン、と大きく船が揺れた。それは船が無理やり止められたことによる慣性。今この瞬間から、この交易船は戦場へと変わる。
「海魔が出やがったぞ!船の中に避難しろ!」
 オルグは叫び、船の前方へと走り出す。周囲の船員たちは船内への避難を開始しているが、遅れて犠牲者を出すわけにはいかない。
 全員が全速力で交易船の甲板に集まると同時にそいつは現れた。不気味に蠢き威嚇するように大きさを変えてくる不定形の物体。船上に這い上がり、一気に膨れ上がり巨大な質量で獲物を求めて襲い掛かってくる。
「おっと、まずはこっちが先だぜ!」
 襲い掛かってくるスライムに先制攻撃を仕掛けたのはオルグの炎だ。オルグから放たれた黒炎はスライムを燃やし、その体を大きく削っていく。
 力技が効かないのなら己の炎で燃やし尽くせばいい。読み通りにオルグの黒炎はスライムに傷を負わせた。焼けて削られた分、その体を構成するものが削ぎ落とされる。
 しかし、スライムは傷を省みず突撃を仕掛けてくる。いかな攻撃を受けようとも、その体はまた増やせばいい。そのために栄養が必要なのだ。だからこそ、それを補うために突撃の勢いを止めようとはしなかった。
「簡単には、いかせないの……!」
 コレットの羽ペンで描かれた大きなクマが実体化し、スライムを押しとめる。一度に一気に押し潰そうとしていたスライムだったが、クマの力強い支えを簡単には突破できはしない。まして、オルグの炎で削られたスライムではクマを押し潰すこと叶わず停止させられる。
「今のうちです……皆さん、お願いします」
「おっしゃー、まかせとけー!」
 太助は事前に用意していた土器を投げつける。だが、それはスライムの体に当たるとそのまま中へと取り込まれていった。物理的な衝撃では何もダメージはないそのはずだったのだが、取り込んだ瞬間にスライムが明らかに怯み、拮抗していたクマに押し返された。
「たくさん辛いもの混ぜたソース入り土器は凄いぞ! しかも土器なら水に溶けて後に残らないし、安いし……いわゆるえこっていう奴だぞ!!」
 へへん、と自慢げに言いつつ大量に用意してあった土器を投げつける太助。土器そのものは大したダメージにはならないものの、中に詰め込まれた物の凶悪さにはスライムにも有効なダメージとなった。
 取り込んでは危険と判断し当たる場所を硬質化して弾くも、その中身が溢れて体へと降りかかってくる。ハバネロやそれに類するものを混ぜたそれは、スライムに吸収され凶悪な威力となっているようだ。
 コレットのクマに、太助特性土器の辛さに怯んだスライムは、準備に十分な時間を取られてしまった。
「汚物は消毒だー!」
 威勢よく叫んだ緋夏が、巨大な焔のハンマーでスライムの体を叩き割る。再生する間も無く幾度も幾度も幾度も幾度も、振り下ろす振り下ろす振り下ろす。緋夏の炎で生まれたハンマーは凶悪な威力でスライムの体を蹂躙していく。焼き潰し、その体を確実に削り取る。
 巨大なスライムは千切れ、幾つもの塊に分断され、更に分断されていく。
「俺も、負けてられないな!」
 緋夏が叩き潰し損ねた塊を、鋭い剣線が刻んでいく。さらにその表面は焼かれ簡単に癒着することは出来ないでいた。
 振るわれた剣線はオルグのトラベルギアの生み出した軌跡。自身の黒炎を纏わせたそれは、スライムを切り刻みその断面を焼いたのだ。 
「やっぱりお前も炎の使い手だったか。なんとなく、匂いで分かったぜ」
「そういうものなの?」
 手近なところは焼き潰し焼き裂き、2人に軽く余裕が出た。だが、やはりそれも束の間の余裕ではあった。
「うわっ、こいつやっぱりしぶといぞ!?」
 太助の驚きの声も当然。焼かれ散り散りに四散されたはずのスライムが再び集合していた。単純な構造であるが故の再生力が惜しみなく発揮され、その体は最初と変わらぬ不気味な動きで存在している。
「ちっ、炎でもあんまり聞いてねえのか?」
「……っていうか、ここまでとは思ってなかったしー」
 と、そこで上のほうから声がかかった。
「でも……ここでやめるわけにもいかないよ」
 空から巨大な拳が舞い降りてスライムを打撃する。打撃はスライムを再び小さな塊へと変えてしまう。致命的な傷とはならないが、本来の巨大さのないスライムでは大質量による押し潰しは使えない。
 強力な打撃を打ち込んだのはコレットの描いた大きな巨人。自身に羽を描き空に舞い、海上で巨人を完成させていたのだ。
「お願い……巨人さん。……みんなを、守りたいから」
 巨人は強力な一撃でスライムを打撃していく。巨人の打撃はすぐに回復されてしまう。しかし、打ち込まれたスライムは一度に多くの組織を潰されていた。更に最初に描いたクマもその攻撃に加わっている。
「巨人かっこいいな! 俺ももっと投げるぞ!!」
 太助が土器を更に追加で投げていく。エコな土器兵器は激しい刺激を持ってスライムを襲い続けている。
「どうだどうだー、辛いぞー!痛いぞー!」
 それに呼応するように、激しくその体をくねらせるスライム。顔のないソレから表情をうかがうことは出来ないが、その動きから怒りと苦痛に悶えている様に見えた。
 スライムは諦めない。怒りに身を任せて襲いかかってくる。幾度も抉られ削られようとも、その身が不滅だとでもいうかのようにその身を躍らせる。
「いい加減、しぶとすぎるぜ!」
 オルグがその巨体を横一線に斬り付ける。だが、それがまずかった。スライムはその巨体で倒れこみオルグを飲み込んだ。避けようとするも、斬り付け振りぬいた体勢からでは間に合わない。
「お兄ちゃん!?」
 コレットが助けに向かおうと急降下するも間に合わない。スライムはやっと捕獲した獲物を体内へと取り込み、自身の養分にしようとする。
 だが、甘かった。ここまでの戦いで気付くべきだっただろう。今回の獲物が、ただの獲物ではなかったことに。
「燃え……尽きろぉ!」
 スライムが炎の柱に吹き飛ばされた。燃え盛る黒炎が取り込まれた内側からスライムを焼きオルグ自身には傷一つない。
「この程度じゃ俺をとめることなんてできねえよ」
「……心配するから、そういうのはどうかと思うよおにいちゃん」
「悪いな。けど、小言は後にしようぜ。……終われば、幾らでも聞いてやるからよ」
 吹き飛ばされたスライムは千切れた状態から、更に分断される。ただし、それはあくまでスライム自身の行動で。
 スライムの一部が高速で射出され、ロストナンバーたちへ襲い掛かる。
 撃ち出された弾丸はマシンガンのごとく降りかかってくる。全員がそれぞれ凌ごうとするが、その必要はなかった。一歩前に飛び出し、緋夏が挑戦的な笑みを浮かべていた。
「そんなの、きかないよ」
 体内にある火種を膨らまし、スライムに負けぬ速度で炎を噴出し一気に焼き尽くしていく。緋夏の炎が全ての弾丸を燃やし尽くす。そのまま一気に距離を縮め、残った火種を燃やし強力な炎をスライムへと叩き込んだ。叩き込まれた炎は表面を焼き、更に中へと一気に熱を浸透させ、スライムの体を破壊する。
 幾度も再生し、不滅を謡うスライム。だが、それの体積が目に見えて減少しているのが誰の目にも分かった。炎は確かに有効な手段となっていたのだが、あまりにも強力な再生力と膨大な体組織に効いていないように見えていたのだ。
「やった、これいける…って、尽きちゃったか」
 体内の火種を使いきり、緋夏の体が縮んでいく。マッチの用意はあるがいちいち着火している暇もない。
「火種の補充は俺の炎で足りるか?」
 言葉と同時にオルグの炎が緋夏の元へと。力強い炎。十分すぎるほどにそれは火種となる。
「助かるよ。……今度こそ本当に、消毒しつくしてやるー!」
「辛さでもっと消毒だぞ!」
 炎を取り込み、もとの体を維持しなおした緋夏が、炎のハンマーでスライムを思いっきり打ち上げるようにスイングする。それと同時にまたも太助が土器を投げる。しかし、それはスライムに向けてではなく、スライムと緋夏のハンマーの間。
 ハンマーに打撃された土器は勢いよくスライムに突き刺さり、中の液体を広くスライムに浸透させた。強烈な刺激に動きを乱されたスライムは、そのままハンマーで空へと。
「巨人さん…お願い」
 打ちあがったスライムを今度はコレットの巨人が叩き付けた。体中に激辛の液体を混ぜられ、強烈な打撃に続けて打ちのめされたスライムは体を維持できずに辺りに四散した。四散した体は元に戻ろうと蠢くが、最初ほどの速度はなく纏まることが出来ない。
 今度こそ終わりだと誰もがそう思った。だが、それではまだ足りない。スライムの武器は生命力。そして、その生命力は戦うためのものではなく、生き残る為の武器。
「違う、まだ終わっていません……!」
 気付いたのは空を飛ぶコレット。空から俯瞰していて、四散した体の中でも一番大きな塊が海へ向かって這い進む姿を見つけたのだ。速度はそれほどでもないが、今からでは誰も間に合わない。
「私が……いかないと!」
 コレットはスライムに向かってダウンアタックを仕掛けるように突っ込んでいく。彼女自体にはそれほど強い戦闘力はない。トラベルギアである羽ペンで武器を描く暇さえない。だから、彼女は自身を囮にしてスライムを足止めしようとしたのだ。
 自分が止めれば、皆が倒してくれる。自分ならばセクタンの力で一度なら無事で済むからと。
 そして、スライムは食いついた。逃げるにせよ、今の体では回復するのにも時間がかかる。逃げるときに、少しでも栄養を確保しておきたかったのだ。スライムは小さな体を限界まで広げてコレットへと牙をむく。
 コレットは目を閉じなかった。襲い掛かるスライムの巨体を目をそらすことなく見据える。自身が飲み込まれるその瞬間から逃げないというように。
 しかし、その瞬間は訪れない。飲み込まれる瞬間、強い力で後ろへと引かれたから。
「コレット……お前は俺から離れるなよ。お前のことは俺がしっかり守ってやる」
 コレットの目の前に立つのはオルグ。間に合うはずのない距離を走破した彼はスライムに向かって言い放つ。
「これで終わりだ、何度も言わせるなよ……燃えつきやがれ!」
 日輪と月輪が神速ともいわれる速度で振るわれる。黒炎を纏った日本は残ったスライムの体を粉微塵に切り裂き焼き尽くす。
 コレットの前に立ち、大切な妹を守ったオルグは余裕の態度で構えを解いた。
 恐るべき再生能力を持つ海魔は、その限界を超えて塵へと帰ったのだった。

 海魔を潰し、船を守りきったロスとナンバーたち。彼らは船乗りたちから感謝され、今後の航海を快適に過ごすことができた。
「みんなも、お兄ちゃんも、無事でよかったね。……お兄ちゃんに、助けられちゃった」
「無茶しすぎだぜコレット。いくら一度は無事だからって、自分を囮にするなんてやっちゃ駄目だ」
 オルグがコレットの無茶な行動に対して説教している。そんなことされて心配する自分の立場を考えて欲しいと。
 困ったようにコレットは笑う。確かに、無茶すぎることだったと自分でも理解している。けど、何処かでお兄ちゃんが助けてくれる気がしていた……なんて言うことは勿論口に出しはしない。それは流石に、照れくさかったから。
「おお、今度は凄い釣れるな!」
 緋夏はまた空いた時間で海釣りに勤しんでいた。海魔が出る前とは違い、今度は大量の魚が釣れていた。だが、ちょっとその顔は物足りなさそうだ。片手が何ともなしに空をさまよう。何かをもふもふと触るような仕草。
 先ほどまで太助は緋夏の釣りを見ていた。釣れた魚に興味心身で、近寄った瞬間に跳ねて尻尾で叩かれ転んだりしていた。怒って魚に掴みかかるが滑り上手くいかず、往復ビンタをくらった上に、魚は海に逃げ込んだのには緋夏も笑ってしまった。 
「……やっぱり悪くなかったなー」
 モフモフしたいなと、緋夏は軽く呟いた。
 太助は海の中に潜っていた。イルカに変身し、船から離れすぎないようにしつつ海の底を探検中。
 太助が潜ったのは海底に何かないか調べるためだった。あんな海魔がもしまた生まれるような事があれば、また犠牲者が出てしまう。何かあれば今のうちに潰せると考えたからだ。
「何もないな、俺がこんなに探してもないなら、もう大丈夫だな!」
 近くには何もないと確信した太助は船に戻ろうと、海上を目指して泳いでいく。すると、目の前に自分をビンタした魚が。それに太助は競争心が生まれる。
「負けないぞ!」
 逃げる魚を追い太助は海を行く。うっかり船から離れすぎてしまい、合流するのに苦労することになるのだが、それは本人の尊厳を守る為に深く語るのはやめておこう。
 それぞれが自由に船の上で過ごす。そして、日が暮れ初めたころに、コレットが小さな花束を持ち船尾に立つ。
「お話して解決出来なかったのは、少し寂しいけど……でも、あのままだと船乗りさんたちが危ない目に遭ったから……」
 だから、自分は戦った。けど、スライムが生きる為に襲い掛かってきたのも理解できる。最後を見ていたコレットにはそれが痛いほど分かった。
 コレットは花束を海に投げ込み目を閉じる。弔いに捧げた花束が海に浮かび波間を漂っている。せめて安らかにと願い、コレットはその場を後にした。

 恐るべき再生能力を持ち、執念深いほどの生命力を備えたスライム。
 単純な力しかなく、単純であるが故にしぶとく強力な存在だった。
 この海域を縄張りとし、多くの人たちを喰らい続けた存在はもういない。
 これからも、安全な航海が続きますように。

(了)

クリエイターコメント お待たせいたしました。原書の襲撃者をお届けいたします。
 無駄に生命力が強く頑張ったスライムですが、フルボッコで消滅です。
 けっこう酷くしぶといので苦戦方向になるかなぁと思ったのですが、的確な内容も多くガンガン攻める感じにスライムも太刀打ちできなかったようです。
 ひとまず、この海域でスライムによる被害は大丈夫でしょう。
 皆さん、ご参加ありがとうございました。
公開日時2010-08-20(金) 18:10

 

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