クリエイター近江(wrbx5113)
管理番号1154-9733 オファー日2011-03-13(日) 01:44

オファーPC 鵜城木 天衣(ccnf3012)コンダクター 女 28歳 古生物学者

<ノベル>

『脳波および衝撃力による、複数条件連動型トラベルギア「リアニマエルダ(ReanimeElder)」効果時間変動の基礎的検討』

 著者:鵜城木 天衣、リベル・セヴァン、宇治喜撰、ヴァン・A・ルルー、E・J(世界図書館)

 ●Introduction
 現在、トラベルギアの使用方法については効率的な運用はされていない。
 普遍的なトラベルギアの性質が解明すれば有効活用の範囲が広がり、ミッションの遂行や生存確率の向上に貢献することが可能と思われるが、現時点でトラベルギアの性質について解明されている点が少ないといえる。
 もっとも考えられる原因として、トラベルギアの性質が所持者によって異なるため、個人の経験によるノウハウの蓄積が普遍的な法則に直接結びつかないからである。
 そのため、各個人所有によるトラベルギアの解明を通じて、全トラベルギアに普遍的な法則を見出す事が求められるが、現状として全体はおろか個人レベルでの研究も進んでいない。
 前述したようにトラベルギアはその所有者毎に大きく形、機能を変化させるため、トラベルギアの分類方法についても未だ確立されているとは言いがたい。
 今回の報告では、トラベルギアを利用する者が最大限に有効活用できる論理の究明を目的とし、その糸口として著者に貸与されたトラベルギア「リアニマエルダ」が機能する条件について調査結果を報告する。

 ●Survey
 トラベルギアは過去の研究により、所有者の感情を反映するタイプが存在する(*1)ことが分かっている。
 ヴァン氏のレポート「トラベルギア~機能と形態~」に標された分類表(図1)に基づいた場合、トラベルギア「リアニマエルダ」は条件連動型に分類されるトラベルギアのうち、複数条件連動型の条件を満たす。
 この場合、分類の定義として、条件連動型はそれ自身の操作に寄らず、外部の条件変化によりその機能を変化させるものである。(*2)
 一例として媒体の有無および質や量、気候、使用条件、あるいは所有者の感情など、機能を増加させる要因は各トラベルギア固有のものが多く、使用者も詳細を知らない場合が多い。
 リアニマエルダが分類される複数条件連動型は二つ以上の条件の高低に効果が左右されるため、意図的に条件を整えることができる反面、安定した効果を望むことが難しいという欠点がある。
 条件分岐図(図2)より、リアニマエルダは感情型の条件(正)と、使用時の威力(正)に影響される。
 感情連動型のトラベルギアの定量的評価方法として、脳波を使用する方法が提唱(*3)されており、感情連動型のトラベルギアの効果把握に一定の成果をあげているとされる。
 ただし、複数条件連動型のトラベルギアの条件に感情が含まれる場合、薬物投与の効果による感情の変化は例外的な動きをするという報告(*4)もあるため、本実験では脳波の上下について薬物を用いる方法と、用いない方法のパターンを試した。

 ●Development/Result
 まず、今回の実験に使用したトラベルギアについて簡単に紹介する。著者に支給されたトラベルギア、名称「リアニマエルダ」の形態は写真1に示す通り、一般的な玄能(ハンマー)と同様である。
 金属の頭部を用いて化石を殴打する事で、化石が生前取っていたと推測される姿が具現化する事が既に知られている。(以下、この現象を具現化と呼称する)
 経験則として殴打時の衝撃力の強弱が具現化の精度、および具現化時間の長短に正の相関関係がある事も知られており複数条件連動型の条件を満たすが、定量的評価を行った例はない。

 本実験では実験対象として中生代白亜紀後期のアンモナイト化石コスマチセラス科(写真2)を用いる。以降、この対象を「化石」と呼称する。
 化石に対し、先端部に最高加速度計を装着したリアニマエルダを使用して実験1、2の条件で、各10,000回殴打し、具現化の効果時間を秒単位で測定する。 
 この時、条件の変化を定量的に測定するため以下の二点を観測装置として用いた。

 a)質量m(kg)のリアニマエルダが加速度a(m/s^2)で化石に衝突した場合、衝突による力F(N)[kg・m/s^2]は、F=maで求める事ができる。
 この時、化石自身の受ける衝撃力は化石自身のバネ係数により変動するため、ここでは同一化石を使用する事でバネ係数による差をなくし、実験条件を統一する。
 b)感情の指標として前頭部の脳波を用いる。本実験ではオシロスコープ連動型の前頭葉の脳波測定装置を用いて10Hzから20Hzまでを段階的に着目した。
 それ以下および以上の脳波時はサンプル数が少ないため本実験では対象外とする。測定結果については参考数値として別表Bを参照されたい。

 上記の測定方法を、興奮物質を用いない状態で実施する。
 脳波をコントロールするためラジオ型世界司書が著者の過去日記の朗読を行い、心的外傷を刺激する事で興奮要素とする。――(1)
 興奮物質(無水カフェイン100mg)を投与した後、1時間経過後から3時間経過しない状態で実施する。――(2)

[実験器具]
 ・リアニマエルダ(写真1)
 ・最高加速度計(世界図書館備品No.12481-3y321-238)
 ・衝撃吸収パット(世界図書館備品No.492-3487hy-18s)
 ・脳波測定装置 オシロスコープ連動型(世界図書館備品No.221-a32aa1-a)
 ・ストップウォッチ(世界図書館備品No.899-2gj-1 最小計測単位1/10秒)
 ・ラジオ型世界司書(ProductName.EJ-31)
 ・無水カフェイン(小木製薬「ねむけっとれーる」1錠あたり50mgの無水カフェイン含有)

 [実験結果]
 (1)
 全測定結果のうち82%で、具現化時間が30秒~1,800秒であった。全測定結果を別表Aに付記する。
 表1は殴打時の最大加速度aを横軸に、具現化の再生時間を縦軸にプロットした。補助線は3N毎に具現化時間の中央値を結んだ。
 表2は殴打時の脳波(Hz)を横軸に、具現化の再生時間を縦軸にプロットした。補助線は1Hz毎に具現化時間の中央値を結んだ。
 表1、2共に一見乱数のように見えるが、どちらも中央値でみると正の相関関係が見てとれる。
 今回の実験対象である範囲(20≧x≧10)において、具現化の時間が指数関数的に増加した。その近似曲線を各表に標す。
 即ち、最大加速度および脳波が化石の再生時間に有意に影響することが分かる。
 x軸に最大加速度,y軸に脳波,z軸に具現化の再生時間をプロットした立体方眼紙(図3)では「x、yが共に高い時」「xが低く、yが高い時」「xが高く、yが低い時」「x、yが共に低い時」の順でz軸に高い値の記録が多い事が分かった。
 この結果より、脳波が高いほど再生時間が長い。殴打の衝撃力が高いほど再生時間が長い。効率的に変動が可能な範囲において殴打の衝撃力より脳波をコントロールする方が有効である、という三点が分かる。

 (2)
 全測定結果のうち91%で、測定値が30秒~1,800秒の間であった。全測定結果を別表Bに付記する。
 表3は殴打時の最大加速度aを横軸に、具現化の再生時間を縦軸にプロットした。補助線は3N毎に具現化時間の中央値を結んだ。
 表4は殴打時の脳波(Hz)を横軸に、具現化の再生時間を縦軸にプロットした。補助線は1Hz毎に具現化時間の中央値を結んだ。
 表3には正の相関関係が見られるが、表4では近似曲線の有意差はない。
 即ち、薬物投与によりコントロールした脳波では、化石の具現化時間に有意な影響を見ることができない。

 ●Discussion
 リアニマエルダによる化石の具現化時間について、対象を殴打する際の衝撃が強い程、具現化時間が延びる。また、脳波による感情変化により具現化時間が延びる事が分かった。
 実験結果(1)より、使用者の意図によりコントロール可能な範囲において、脳波による変化は衝撃による変化よりも優位なコントロール手段と言える。
 ただし、実験結果(2)に示す通り、無水カフェインを使用した状態での実験では脳波と具現化時間に有意な相関関係が見られなかったため、薬物に依存した具現化時間の増強は期待できない。
 使用時の一例として、興奮が予想される戦闘時の使用ではリアニマエルダの効果を引き出すのは打撃力に左右されるためにコントロールは比較的容易であるといえるが、隠密行動時の使用に関して、脳波の上昇を図る方法の模索が必要である。
 なお今回、著者が行った方法、即ち心的外傷の刺激による手段を取ることはあまりにも精神的疲労および後悔が激しいため推奨できない。

 ●Conclusion
 リアニマエルダの使用条件として、脳波および衝撃力に注視した実験を行い、通常状態のリアニマエルダの使用についてある程度の基礎検討を行うことができた。
 複数条件連動型のトラベルギアのうち、感情に起因する条件を持つ個体では、薬物に依存しない自然発生的な興奮状態に限定して感情の上下による効果の増減が見られた例といえるが、今回の実験において薬物に依存する形での脳波の上下が具現化時間に影響しなかった事から、脳波それ自体は条件の一つではないという仮説を提起できる。
 現在主流ではないものの、感情を条件とするトラベルギアの解明においては心拍数および血圧を基準とする方法の提唱(*5)もあり、トラベルギアの条件分岐の解明に様々なアプローチを執ることが求められ、今後の解析技術の発展が望まれる。

 ●RelatedIssue
 参考資料として、今回実験に使用したリアニマエルダの経験則を列記する。

 i)本来の身体の何%が化石として保存されているかにより具現化時間が異なる。
 ii)本来の身体の質量差により、具現化時間が異なる。
 iii)人間の言語を解さないはずの生物が具現化時に著者の命令に従うことがある。
 iv)錐部を使用した際、単位面積あたりの衝撃力以上の変化が見られる。

 i)に関して。80%程度の形質が見られる化石を使用した場合は、30%程度の形質が残る化石に比べて明らかに具現化時間が長い。
 ii)に関しては、同程度の条件でアンモナイト(約0.5kg)とスティラコサウルス(約3,000kg)を比較すると、明らかにアンモナイトの方が具現化時間が長いとされている。
 今回の実験結果を踏まえると、i)およびii)の経験則から、リアニマエルダは衝撃力および感情を媒介して一定のエネルギーを化石に与えるが、エネルギーは体積あたりに必要な分量が決まっており、そのエネルギーは時間と共に消耗して、一定量以下になった時点で具現化が解除され、対象は化石に戻るという仮説が考えられる。
 iii)に関しては具現化の対象となる生物の性質によるものと見られるが、詳細については今後の研究が望まれる。
 iv)に関しては、今回の実験の予備実験として、打撃力による具現化時間の要素を定めるため、玄能の「打撃部」の他「木殺し」部分でも殴打する予備実験を行った。
 実験前の予測では、写真1に記入されているように打撃部は直径約2cmの円形であるのに比して、木殺し部分の直径は約3mmの円形であり、単位面積あたりの物理的衝撃力の上昇から、具現化時間の増加に繋がると見られたが、予備実験の際には具現化時間の増減に著しい増減が見られ、化石本来の姿に見られるはずのない形質を持った個体が具現化した。
 一例として、通常個体の七倍程度の質量を持った具現化個体や、金属質の触手を得たアンモナイトが具現化したが、後の実験により更なる解明が必要とされる。
 そのため、この予備実験については参考値として結果を別表Cに標した。
 特筆すべき点として、実験に使用した化石は、通常使用においては具現化前の形に戻り、再使用が可能であることに対し、錐部を用いて具現化した化石は具現化終了後、粉砕されるため、同一条件による比較検討は困難である。

 ●Acknowledgement
 本論文において適切な助言、参考資料の捜索および貸出を引き受けてくださった世界司書の方々にこの場をお借りして深く御礼を申し上げます。

 ●References
 ……

クリエイターコメント※細けぇこたぁいいんだよ!※
を、合言葉にお願いいたします(ぺこぺこ)

こんにちは「ノベルじゃねぇ!?的なプラノベが書きたいんですが」とか生意気な事をのたまったら、本当にノベルじゃないようなもののアイディアをどっかんどっかん貰って頭抱えて呻きながら喜びました、近江です。Mじゃないです。
とりあえず、一番無茶なのを選んでみたらガチ論文でした。
いくつか自分でもつっこみ所があったりするのですが、そのあたりは力量不足ってコトでご勘弁ください。

本論文の主査は盟友の高幡信WR、ありがとうございました。
共著者としてヴァン・A・ルルー様、EJ様。
ご快諾ありがとうございました。

そして何よりご依頼いただきましいた鵜城木天衣様、ありがとうございました。

本論文の「References(参考文献)」以下に記されていた図表や別表、参考資料につきましてはここには付与されていません。
…世界図書館の学術雑誌のどこかにあるんだと思います。きっと。


関係ないですが噂によりますと、論文から剥がし忘れられていたポストイットに「EJコカス、EJコワス、EJコロス…」と描いてあったとか。
一体、どんな方法で心的外傷を抉ったのでしょうね(爽
公開日時2011-04-15(金) 21:20

 

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