犯罪と欲望に塗れたインヤンガイの、とある街区。 ティエンライの下層付近に住んでいるのは、貧しい人々がほとんどであるが、中心部にある市場<マーケット>を始めとして、闇と光がごたまぜになったような、猥雑で、活気溢れる地域が広がっている。 年の巡りを祝う『巡節祭』の際には猶の事。日々を生き抜くのが精一杯の住人たちも、この日ばかりは働く手を休め、古くからティエンライに伝わる祭りの儀式を楽しむという。 「まず、『星見』っていうのがメインテーマだな。見上げてみりゃあ判るが、ここいらは縦に横にと無茶な増改築を重ねた建物がこれでもかってくらいギュウギュウに詰め込まれてる上に、オレら下層の住人達はその僅かな隙間を埋めるみてえに生活してるもんだから、なんたらガスだの汚染物質だのが相俟って……ま、はやい話、星なんてものは見えない」 ティエンライに住まう探偵、ヤン・シーイィが語る。 「だから、オレ達が見るのは星じゃねえんだ」 住人達はその日、街が夕闇に覆われると同時に、全ての明かりを消すのだという。すると、徐々に暗くなっていく筈の街並みが、薄青く、ボンヤリとした光に包まれ、宙空に時折、小さな光がキラキラと煌めくのだ。 「あの光を、そこらを漂ってる霊力エネルギーだ、なんて言うやつもいるが、本当のとこは分からない。住人達はその光景を眺めて酒を飲み、御馳走を食べて祝うわけさ」 その夜、住人たちが楽しみにしているイベントがもうひとつ。 『天花(ティエンホァ)探し』である。 「天の花ってのは、紙細工の花なんだ。夜が更けると街の中心部にある広場に露店が並ぶ。天花は、その広場でひとりにひとつ配られるんだが、花びらの一枚に植物やら、想像上の生き物やらが描き込んであるんだ。花びらの模様は数十種類とあるが、自分と同じ模様の花を持つ人間を探し当てて、それぞれの花を交換すると、幸せな一年を送ることが出来る…という、まあ、そういう他愛も無い遊びだな」などと言いつつも、シーイィのそわそわとした態度からは、彼自身も楽しみにしているのであろうことが窺える。 「他にも花火やらなんやら、賑やかで楽しい祭りだ。いつも世話になってることだし、もしよかったら案内するぜ」 * * * 「……という、シーイィさんからのお誘いがありました」 世界司書、アマノがにこにことして告げる。 「世界図書館からも、この時期のインヤンガイを調査して欲しい、という依頼が出ていますので、もし興味のある方がおられましたらインヤンガイへ行ってみませんか? ティエンライは普段は物騒な地域なのですが、お祭りの時期だけは平和なんだそうです。きっとそれくらい神秘的で、楽しいお祭りなんですよ。ですので、よかったら」言いながら、アマノがチケットを差し出す。 「楽しんできて下さいね!」
一.はじまり 瓦礫の街を照らす光が薄く色褪せて、ティエンライの、昼の時間は終わる。だがこの物騒で活気あふれる街は眠ることが無い。昼の終わりと同時に爆竹が鳴り、飲食店の提灯に明かりが灯され、昼よりもさらに猥雑で、危険で、その分魅力的な、ネオン煌めく極彩色の夜が始まる。 「でもでも、この時期は物騒じゃないんですよね?」 少しずつ熱気を増してゆくような雑踏に気を取られ、地面の凹凸につまずきながら、青く澄んだ目を僅か不安げに揺らした少女――春秋 冬夏が、隣を歩く男に尋ねた。 「ああ、少なくとも俺が知ってる限り、つーことはこの2、30年くらいの間ってとこか、『巡節祭』の間は平和そのもの!ってなもんだ。その点は安心してもらっていい」 「よかったあ」 ティエンライの探偵、シーイィの言葉に、冬夏がほっとしたように笑う。 「普段は危ないみたいだから、なかなか来れないなあって思ってて。今回はお祭りのおかげで初めてインヤンガイへ来れることになって、楽しみにしてたんです! いろいろ見て回ろうっと。シーイィさん、何かおすすめあります? 苦くないものだったら、何でもいけるんですけど」 「そうだなあ、まずは月餅だな。これがもう、ナッツ盛りだくさんで、うまいのなんのって――」 東江 千星は、耳に入ってくるふたりの会話をぼんやりと聞きながら、こちらも、ほっと胸をなでおろしていた。 (インヤンガイは怖そうで中々来ることが出来なかったけど、このお祭りを機会に雰囲気を知って慣れておけば、今後の冒険に役立つかな。) そう思いを巡らせながら、辺りを見回す。 見上げればどこまで続くとも分からない高層ビルの群れ。そこに秩序は無く、無造作にブロックを積み上げたような継ぎはぎの歪な建物の間に、木材や段ボールや、古びたプラスチック等の資材を使った住居のようなものが並んでいる。 「人が住んでるのかしら?」 唐突に背後から聞こえた声に、千星はびくりと肩を竦ませた。振り向くと、声の主、茉莉花 理緒がその赤い瞳を細めてにこりと微笑みかけてくる。 「いえ、ずいぶん、なんていうか、質素なお家だなあと思って」 「本当ですね。どうなんでしょう」 理緒は千星よりも年下だったが、豊かな黒髪を揺らし、並んで歩く二人は同世代の少女のように見える。むしろ大人びた眼差しを持つ理緒と、どこか幼げなしぐさを見せる小柄な千星では、千星の方が年少に見えぬことも無かった。 「住んでるよ」シーイィが会話に加わる。「下層での生活はたいがいこんなもんだぜ。ああいう家を俺たちは<巣>って呼んでる。鳥の巣みたいだろ」 そう思って見ると、それぞれに工夫して作ってあって、可愛いかも。千星は思う。 (インヤンガイも、怖いばかりじゃないんだ。) それらの<巣>を含め、屋台や街灯、ありとあらゆる建築物が、今夜は派手に飾り付けられ、ぐるぐると巻きつけられた明りに照らされて、輝いている。 (煌めく街並みに夜空を薄く照らす神秘の光。それに天の花……か) 「ふふ、まるでこの日だけは、ここが天界か何かのようですね♪」ご機嫌に言って、くるりとあたりを見回すと、ひと際楽しげにはしゃぐ人々の姿が理緒の目に入った。彼女らよりも少し先を歩いていた仲間たちである。 「うっわ、ちょっと待って、これも買う! 絶対美味しいぜ、間違いないって! おばちゃん! このゴマ団子、いち、にい、さん、……あー、10個!」 「おいおいおいおいそれ以上持てるのか? おまえの両手はすでにふさがってる様だけども」 「大丈夫だよ。両手あいてる人間ならそこにいるじゃんっていうか、あっちの桃饅頭! すっげー美味そう!」 「はあ?! 俺の手には可愛い可愛い汐ちゃんと手を繋ぐっていう、大事な役目があるんですけど?! そんな、なんか、テンション上がり切った食欲魔人のゴマ団子とか、ココナッツ団子とか、エッグタルト!?とか、持ってるような、余裕は無いんですう!」 「あ、わたし、持つのお手伝いします」 「サンキュー! ほら、こんな小さい女の子が気ィ使ってくれてんだぜ? 娘の方がよっぽど大人ってか、優しいよなー」 「なんで?! 汐ちゃん!! こんな物騒な街で、汐ちゃんみたいな小さい女の子がひとりで歩くなんてダメ、絶対! もし迷子にでもなったらパパどうしていいか!!」 繋いでいた手を離し、団子の入った袋を受け取ろうとするピンク色の髪の少女は手塚 汐、黙っていれば綺麗に整った顔を悲しげに歪ませて、うるうると涙目になっているのは汐の父親である手塚 流邂。 ただでさえ大きな、猫のような目を輝かせ、先程から目に付く露店をはしごして食べ物を買いまくっている、騎士服をまとった青年はハーヴェイ・イングラムである。 「汐も大変だよな。こんな過保護な父親、先が思いやられるぜ」 「先?! うちの汐ちゃんの将来が、おまえと何の関係がある! あっ。まさか! まさかおまえ汐ちゃんのこと……!!」 「ちょっとパパ、やめてよ! ごめんなさい、ハーヴェイさん、父がおかしなことばかり言って。気にしないでくださいね?」 三人のやりとりを見ていた冬夏が、思わず吹き出した。 「わかるわかる。汐ちゃん可愛いもんね」 「娘を持つ父親ってのは、こんなものかも知れないですね……」呟く理緒に、千星が、うんうんと頷く。 「や、あれは行き過ぎだろ、どう見ても!」突っ込んでおいて、シーイィはツアーガイドよろしく片手を上げ、旅人たちに言った。「そろそろ明りの消える頃合いだ。それぞれ自分の食料を調達したら、星の見える場所に移動しよう」 二.星見の宴 「な、どっかビルの上とかさ、そういう高くて見晴らしのいいとこで星……じゃないのか、まあいいや、その、『星見』を出来ねーかな?」ハーヴェイが他の仲間たちの反応を窺うように見回すと、「それ、いいと思います」と千星が瞳を輝かせて同意する。千星は、その名にもあるとおり星が好きで、『星見の宴』を楽しみにしていたのだ。 シーイィがぽんと手を叩いて言った。「はいはいはい! そういうことだったら旦那、いいトコありやすぜ」 「えー。なんかいかがわしいですっ」ぴしゃりと言う理緒に、「ちがっ、ただ絶好の場所思いついたからさあ」言い訳しつつ、シーイィはみなを先導して歩く。 「『星』の見えるポイントってのはまあ、いくつかあって、人気の場所は人だかりで大変なんだが……、高いとこ!ってので思いついた。俺が使ってる<巣>のひとつが、最高のポジションだと思うぜ。ま、とりあえず行ってみよう」 「……その<巣>って、裏通りの方だったりしませんよね?」 「ん? や、俺いちおう探偵だし、その<巣>は目立たないとこにあるけど」 「出来れば人通りの少ない所より、賑やかなとこでお願いしますっ」 (怖い思いをするのはそういう依頼のあったときだけで十分です……!) 普段は物騒な場所、ということもあって不安を募らせる理緒に、「大丈夫だって!」とハーヴェイが笑顔を見せる。「なんかあったら、なんとかするからさ!」 「それなら、安心ですね。ありがとうございます♪ 頼りにしてますっ」 「おう!」 最年少の汐も、露店より『星見』派だった。 (どんな感じなんだろ。どうして光るのかな。きっとキレイだろうなあ!) 好奇心旺盛な汐の赤い瞳が、きらきらと煌めく。 「汐ちゃん、こう見えてもパパ強いから、何があっても大丈夫だから、安心してていいよ! 何かあったらすぐに言うんだよ? 汐ちゃんがなにも言わなくったってパパ、絶対に汐ちゃんのこと守って見せるけどねっ!」 星ならぬ星に思いを馳せる汐を覗き込むように捲し立ててくる父親の顔を、汐は、(うん、さすがにすこしじゃまだな)と思いながらじっと見つめた。自分のことを溺愛して、心配してくれているのは分かる。自分がまだまだひとりでは何もできない子供だ、ってことも分かる。けれど早熟なところのある汐は、汐から片時も離れず、大事に大事に守ろうとしてくれるパパ――流邂を、反対に心配してもいたのだ。 (何事にも、夢中になり過ぎるタイプなんだよね。) 「うん、わかった」 わずかに生じた間、何か考え込んでいるような娘の様子を不安げに見守る父親に汐はにっこりと笑って言い、空いている方の手で流邂の手を取った。 数分後。通りを南に下り、細い路地を何度か曲がったところでシーイィが足を止め、振り返って言った。「俺の<巣>(2号)へようこそ!」 「あ、やっぱり……」 建物を見上げた理緒が言葉を濁す。 「想像通りというかなんというか」 「パパ、失礼だよ」 「ぼろいですね」 「千星さん!? ときどきさっくり言うんだね!」 「とはいえ実際ボロいもんな!」 「この建物、中に入れるんですか?」 「うん、一応ね、俺ここで仕事してたりもするしね、って理緒、そこまで言うか! おおおお、もう、もう、気に入らないやつらは入らなくていいッ!! そこで待ってたらいいさ!!」 「あ、いえ、行きます、ね、理緒ちゃん?」 「ええ、危険さえなければ、ぜひお邪魔させて頂きたいですっ」 どうやら傷付いたらしいシーイィをなだめたりすかしたりしつつ、旅人たちは、壁際に取り付けられた細い階段を上っていく。しばらく行くと、くねくねと不格好に続く、何段あるとも分からない階段が途絶え、正面に鉄の扉が現れた。 「ここがシーイィの<巣>か。ドア、開けるぜー! よ、っと」 一番に辿りついたハーヴェイが重い扉を軋ませ、開け放つと、目の前には、奇妙な空間が広がっていた。ハーヴェイの立っている場所は、外に面しており、ティエンライの街が見下ろせる。だが、上を見上げても見えるのは空では無く、やはり継ぎはぎの、積み木状になったビルばかりなのである。シーイィの<巣>は、積み木の間にできた、ぽっかりとした隙間のような場所にあった。 「ふっふっふっ。なかなかいい場所だろ」 追いついてきたシーイィの自慢げな様子に、ハーヴェイは満面の笑顔を見せ、ぐっと親指を上げて応えてやる。実際、不思議で、興味深い眺めだった。階段を上がり終えてきた旅人たちも、扉の向こうの景色に歓声を上げる。 「見て、明りが……」冬夏の声に、辺りを見渡すと、ぽつり、ぽつりと、少しずつ、ネオンや提灯の火が消されていくのが分かった。 やがて全ての明かりが消え、周囲が闇に包まれる。 先程までの喧騒が嘘のように、街は、しん、と静まり返り、旅人たちは固唾を飲んだ。 はじめは、ひとつ。 またひとつ。 ふわ、ふわ、と、微かな光が浮かび上がる。 気を取られるうちに闇は去り、ティエンライの街は青色の光にうすく照らし出されていた。時折、ちかちかと煌めく光が目に入る。 「あれが、『星』」 千星がため息のように呟く。 いつも眺めている星空とは違う、この『星』が、ティエンライの人たちの星なんだ。 (とても綺麗。) 素直に思う。いまもティエンライのどこかにいるに違いない、彼らの『星』を愛でるひとたちの姿を思い浮かべ、千星は、ふわりと心があたたまるのを感じた。 (私も、星が好き。) 誰にともなく、呼びかける。 「すごい……」隣で空を見上げる汐も、感激に言葉を失っているようだった。汐の後ろには勿論、流邂が、汐を守るように立っていて、(不思議な星空に照らされる娘の可愛いこと! もはや天使!)などと相変わらずな感想を抱きつつ、存分に彼らしく『星』を堪能している。 ハーヴェイはというと、錆び付いたフェンスによじ登りながら、必死に手を伸ばしていた。「んー! あとちょっとで、届きそうなんだけどなー! ……っと」 「だ、大丈夫かなあ?」私だったら絶対転がり落ちてる、と思いつつ、見上げる冬夏に、「こっからの眺めもすごいぜ!」と無邪気に叫ぶ。「えーい!」手を振り回しても、煌めく光は、次の瞬間には消えてしまい、その正体と同じく捕らえようがない。(霊力エネルギー……なのか?)司書の言葉を思い出し、首を傾げ見つめる先に、ふわりと舞うものがあった。 色とりどりの、ちいさな欠片。 「花びら?」 「わあ! きれーい!」聞こえてくる楽しげな声に、見下ろすと、湧き出すようなたくさんの花びらと、その中心で大きな扇を振りかざす冬夏の姿が目に入った。 「私のトラベルギア、こうやってあおぐと、四季の花が出てくるんです。星空にお花を散らせたら、綺麗かなあって思って」 「ほんとうに、『星』もお花も、すごくすごくきれい……」 「うん、綺麗! まるで夢の世界みたいですね♪」 綺麗だ、すごい、たいしたもんだ!などと口々に感想を述べる仲間たちに囲まれて、次から次へと花びらを舞わせながら嬉しげに笑う冬夏の姿を、ハーヴェイは見下ろし、いい祭りだなーと満足しかけ、はっと思い出した。この祭りには後半戦があるのだ! 軽やかな身のこなしでひょいひょいと半ばまでフェンスを降り、面倒だとばかりに、残りの半分を跳び下りる。 「ひとまず、はらごしらえだ! 『宴』が済んだら『天花さがし』だぜ!」気合いのガッツポーズに、星と花の舞でぼんやりと夢見心地になっていた旅人たちは、思わず声を合わせ、「おー!」と手を振り上げる。 よしよし、と頷きながら、ハーヴェイは買いこんできた食料を広げた。 「わー、これ、よくこんなに持てたなあ」と半ば呆れ、半ば感心しながら言う流邂に、「フフフ食欲魔人の本気をなめてもらっちゃ困るぜ」と上機嫌な猫のように目を細め、ばくばくと幸せそうに団子だの、タルトだのを平らげていく。「さ、みんなも、遠慮せず食えよな!」と、それぞれの目の前に置かれた食べ物を、「わあい、ありがとうございます!」と汐もぱくつき、冬夏と理緒は「おいしい♪」「そっちはどんな味ー?」と互いに味見をしつつ頬張り、流邂とシーイィのふたりは、「やはり『宴』と言えばこれですな……」などとシーイィ秘蔵の酒を酌み交わし、そうしてふと、みなが一斉に、さっきからひとり大人しくしている千星の方を見た。 千星は、真っ青な、とげとげとした突起物に覆われた、もはやなんだか宇宙的な団子をじっと見つめている。 「なんだろうあれは」みなを代表するように流邂が言った。 「うん、何だかわかんねーけど勢いで買った!」ハーヴェイがあっけらかんと告げる。 「や、無理しなくても」いいと思いますよ……?という冬夏の言葉が終わる前に、ばくり、と、千星が団子を口に入れた。 「あっ」 「ひとくちで!」 勇気があるというか、見かけによらず大胆で無鉄砲な行動にあっけにとられる面々に、「……何かはわからないですけど、おいしいです」と千星は言い、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。 「俺も絶対それ、おいしいと思ったー!」とハーヴェイが叫び、「いや、無い、それは無い!」と流邂が突っ込み、シーイィの<巣>は賑やかな笑いに包まれ、みなが『星見』のことも忘れかけた頃――、ふいに、銅鑼が打ち鳴らされ、一斉に人工の明かりが灯った。薄明かりに慣れた目に眩ゆい光が飛び込む。 シーイィが、飲みさしの杯をくい、と呷って言った。 「『天花さがし』のはじまり、だな」 三.天花さがし 広場はすでに人だかりだった。 中央に数か所と東西南北それぞれの端に荷車のようなものが置かれ、そこに紙細工の花が積まれている。『天花』は並べた手のひらに載るほどのサイズで、透けるように薄く、それでいて丈夫な紙を糸でつなぎ合わせたものだ。『天花』を受け取ったティエンライの住人達はそれぞれに自分の花の絵柄を確かめ、今年の幸運を願いながら、同じ模様の花を持つ人間を求めて歩き出す。 「ちなみに、この広場での交換は、ダメ」シーイィが指でバツ印を作る。「広場を出てからがスタートだから。じゃ! 健闘を祈る!」 『天花』を手にさっさと広場を出ていこうとするシーイィを、冬夏と理緒が追い掛けた。 「よかったら一緒に回りませんか?」その方が安全そうだし、ね?と、理緒に同意を求めると、理緒も頷き「ええ、同じ絵柄の『天花』、しっかり探さなくちゃですよっ」とシーイィを焚きつける。 「ああ、勿論そのつもりだけど……、どうだろうな。結構難しいと思うぜ。俺、ここ数年交換できた記憶一切無し」と、なんだか幸先の悪い話を聞かされながらも、ふたりは前向きだった。「大丈夫! それはシーイィさんが運悪いだけだから!」 がっくりと項垂れ、シーイィは、ふたりの少女の後へと続く。 ハーヴェイは準備を整え気合いを入れると、広場を出てから『天花』をひっくり返し、花びらの柄を確認した。 「あ、うさぎ」 「!?」 突然聞こえた声に振り向くと、斜め後ろの方向から、千星がつま先立ちになってハーヴェイの『天花』をのぞき込んでいる。人見知りしがちな千星は、誰かの持っている花をのぞき込み、そうっと模様を確認することで、自分と同じ柄の『天花』を探そうとしているのだった。 「千星のは?」 「……ドラゴン、みたいです」言いながら、ほら、と、絵柄の入った花びらを示す。 「おっ。かっこいいじゃん! ほんと、いろんな柄があるんだなー」と、自分の花びらのウサギと見比べながら言うと、千星は「面白そう。花も、綺麗だし」と微笑んだ。 「綺麗だし、それに、天の花だなんて、すげぇ幸せになれそうな名前だよな! 交換できなくても持ってるだけで幸せな気分になれるっつーかさ」 千星が頷くと、ハーヴェイは顎に手を遣って、思案するような表情を浮かべた。 「あ、でも、待てよ。交換出来りゃ俺だけじゃなくて、その相手も、もっと幸せになれるよな! 考えただけでワクワクするぜ! ――そうだ、千星も来るか? ちょっとした作戦があるんだ」 手塚 汐の『天花』には、沢山の花びらをもつ、美しい花の絵柄が描かれていた。花びらの色は層ごとに異なっており、汐は、これは架空の花なのだろうと考えた。 (こんなお花、見たこと無いもん。でも、すごく綺麗だな。) 「パパの絵は、なんだった?」 「んーとね、ちょっと待って……あ、パパのはヘビだね。蛇かー。幸せの花に蛇って! 微妙!」 「きっと何か意味があるんだよ。がんばって探そうね!」励ますように言う汐は、外見を除けば、まるで流邂の保護者のように見える。 (ああ可愛いなあ、汐ちゃんは、可愛いし、優しいし、賢いし、元気だし、もし天使で無ければ何!? 女神?! 俺の女神さまなの!?) 流邂は祭りの熱気で上がり切ったテンションに加え、先程のアルコールも手伝って、かなりハイな状態になっていた。 「汐ちゃん、ホラ射的だよ! パパ超得意だからちょっと見てて!」 通り沿いに、元の世界の縁日でよく遊んでいた、懐かしの射的を見つけた流邂は、ここで娘にいいとこを見せなければ、と、人込みをかき分けていく。「あっ。ちょっと、パパ?!」 それでも、2、3発目までは、父親の雄姿を見ていたのだ。だが、小さな身体を人波の流れにさらわれそうになった汐は、さっさと抵抗を諦めて、自分だけで『天花』を探すことにした。 見事5発の玉をすべて的に命中させた流邂が汐の不在に気付いたのは、賞品のぬいぐるみを選んでもらおうと、うしろを振り向いたときのことだ。 「ん?」理緒が立ち止った。 「どうかした?」尋ねる冬夏に、「なんか、男の人の叫び声が聞こえたような気がしたんだけど」と答え、今度はふたりで耳をすませる。 「……気のせいじゃない?」 「そだね」 露店が立ち並ぶ賑やかな大通りを歩きながら、ふたりは物珍しげに辺りの景色を眺め、色鮮やかで派手なデザインの髪飾りやお面に惹かれては寄っていく。 「うーん、おみやげは買っておきたいよね……」冬夏は指を折り、頭の中のおみやげリストを確認する。(えーと、アマノさんには、面白いものがいいかな。) いつもニコニコ穏やかな世界司書の、いたずらの前科を思い出し、ついで冬夏は、妹のような存在である青い目の少女を思い浮かべた。 (あの子はしっかりものだから、どちらかといえば、私の方が妹みたいだけど。) 「おみやげは、何か美味しいものにしよっと!」駆けだす冬夏に、「あまり遠くに行くなよー」とシーイィが声をかける。 「私も、おみやげ買おう♪」理緒は、いつも元気な親友と一緒につけようと、色違いの髪飾りを次々と手に取り、楽しげに選んでいる。 (これなんか、絶対似合うわ。だとしたら私のは……) 悩みだすとキリがない。 「しっかし張り切ってた割に、理緒も冬夏も、さっきからみやげものばっかりだなあ。一応タイムリミットもあんだけど、いいのか?」 「そうなんですか?」理緒はきょとんと首を傾げる。 「ああ、花火が終わるまでが、『天花さがし』の時間って決まってんだ」 「ふうん。そうなんですね」自分の『天花』を見つめて、にこりと笑う。「でもこれ、すっごく綺麗だし♪ 花を探して歩くのも楽しいし、交換できたらラッキーだけど、それよりお祭りの時間を楽しんじゃうのもアリだなーって♪」 「楽しんでもらってるなら、いいんだけどな」 「楽しいですよ♪」 「そうかそうか」 「はいっ♪」 「ところで冬夏の姿が消えてるんだが」 「あっ」 「……ここらへんで、いいか」ハーヴェイが呟いて立ち止ったのに気付き、千星が顔を上げる。ハーヴェイの選んだ場所は、大きな通りが交差しているちょっとした広場で、人の行き来は多いが、かといって密集しているわけでもない。なかでも人の少ないスペースに陣取ると、ハーヴェイは精神を集中させるように大きく息を吐き、おもむろに剣を抜いた。予想外の展開に、千星が目を見開く。 大きな剣をすっと頭上に構えたポーズから、流れるような動きで、架空の敵を切り裂き、舞う。行き交う人々が足を止め、ハーヴェイの周りにはあっという間に人だかりが出来ていた。華麗な剣さばきで周囲の敵をすべて倒したらしいハーヴェイは、剣をおさめると、緊張を解いていつも通りの人懐っこい笑顔を見せた。見物客から拍手が巻き起こる。歓声に手を振って応え、ハーヴェイは、「ところで俺、『天花』探してるんだけど」と切り出した。「この中の誰か、ウサギの柄の『天花』持ってないか? ドラゴンの絵は?」ざわめく人々を見回すも、どうやら該当者はいないらしい。 「ま、一回では無理か」それぞれ『天花さがし』に戻っていく住人達の後姿を眺めながら呟くハーヴェイに、千星がもういちど拍手を送った。「すごい、上手なんですね」 「上手ってほどでも無いけど、人目を引くにはバッチリだと思ってさ」 嬉しげに笑うハーヴェイが披露したのは、彼が元いた世界の『華南地方』にある武術と、イングラム家に伝わる剣術とを組み合わせ、即興でアレンジしたもので、彼が知る限りインヤンガイにも似たような流派がある筈だった。これだけ注目を集めたのはハーヴェイの読み通り、彼の舞にこの地方の剣舞と相通じるものがあったからに違いない。「もうちょい、この作戦でいってみようぜ!」ハーヴェイは言い、千星も元気に頷いた。 さてこの時点で迷子になっている旅人を確認してみよう。 まずは、手塚 汐。彼女はとても落ち着いていた。空間を把握する能力――イーグルアイを持つ彼女には、実際、迷子になる、という概念は無かった。それよりも、自分とはぐれた父親の方が心配だった。(あれでも一応大人だから、大丈夫だとは思うけど。) せっかくのお祭り、心配ばかりしていては勿体ないと思った汐は、ひとり、『天花』を探して歩いた。物怖じせず、道行く人に話しかけては、花びらの絵柄を確認し合う。数十人を超えたかと思う頃出会った、足の悪い老婆が、汐に言った。「ちいさな子。あんたは素直でおひさまのような子だね。あんたのような子に出会えたのが、あたしのしあわせ。『天花さがし』ってのはそんなものなのさ。つらい時も悲しい時も、空を見上げて歩くのよ。話しかけてくれてありがとう」 二人目は、春秋 冬夏。冬夏は彼女のセクタン、ルゥリオンに、スタート地点の場所を記憶させておこうとして――すっかり忘れていた。「ここ……どこ?」両手にいっぱいのおみやげを抱えた冬夏は手掛かりを失い、途方に暮れた。もともと転びやすい体質(?)である冬夏は、『天花さがし』に夢中の人々や、両手のおみやげものの重量のバランスや、いろんな理由で、いつも以上に人や物にぶつかり、こけた。カバンの中に常備してあるカットバンをひざに貼り付け、ドングリフォームのルゥを肩に乗せ、ね、ルゥ覚えてるよね? 道案内してね? などと話しかけながら歩く様子は、しかし、彼女の楽天的な性格もあって、迷子な割に楽しげで陽気な道行である。 そして三人目。誰よりも悲惨なのは、汐が心配していた通り、手塚 流邂であった。言葉にならない声を上げ、息も絶え絶えに汐の姿を探す流邂。手近な紙(作者注※もしや『天花』であろうか……)に、思いのほか上手に汐の似顔絵を描き、すれ違う人々に彼女の行方を尋ねて回る。元の世界では実力派俳優として名を馳せていながら、実は重度のオタクでもある彼は、無駄に絵がうまかった(特にベタフラが)。「汐ちゃん……パパが悪かったよ……戻ってきて、天使の笑顔を見せておくれよおおおおおおう」家出娘でもあるまいし「戻ってきて」も無いのだが、錯乱したその様子には哀れを誘うものがあった。「あのう」そんな流邂に、おずおずと話しかける女性が。「その女の子、さっき、あっちの方で見たかも……」「ほ、ほんとですかっ?!」声が上ずる。「ええ、『天花』を見せあったの、その子だと思います」 「ああああ、あ、ありがとうございます!!!」叫ぶや否や、流邂は脱兎のごとく走り去った。 迷子組はさておき、誰よりものんきに歩いているのが、理緒とシーイィのふたりである。冬夏のことは心配だったが、理緒はトラベラーズノートのエアメールを使って、冬夏が気付きさえすれば二人の居場所がわかるようにしておいたのだ。いつかは合流できるだろうと、理緒はゆったり構えていた。 「それにしても、同じ絵柄の『天花』、なかなか見つからないものですね」 「なー? 見つからないだろ」口々に言い合いながら、ためいきを吐く。 「やっぱりね、工夫が必要なんだよ。たくさんのひとを集めて、一度に尋ねてみるとかさあ。歌とか踊りとか、そうそう剣舞とか、ほら、あれ、ちょうどあんな感じで」 道の交差する広場に出来た人だかりを指差し、シーイィが羨望の眼差しを向ける。 「あーいうのがさあ。すげえなぁってね? 毎年……」 「って。あれ。ハーヴェイさん?!」 ハーヴェイの剣舞はあちこちで評判になり、次は西だ、東の方でも見かけた、などと、ティエンライ住人たちの間で話題になっており、回を重ねるごとに観客の数を増やしていた。 「ここに、ドラゴンか、ウサギの花を持ったやついるかー?」もう何度目かもわからない問いを叫ぶハーヴェイの前に、ちいさな男の子が、ちょこちょこと進み出る。 「ぼくの、ウサギだ」 互いに差し出した『天花』を見比べ、「見つけた!」と嬉しげに頭上へ掲げると、周囲の人だかりからわっと歓声が沸き起こった。 「ぼくも、『けんぶ』をやってみたい。……おにいちゃんみたいに」ぼそり、と恥ずかしげに告げる少年に、ハーヴェイが背を屈め、笑顔で答える。 「ありがとな。しっかり練習しろよ! 今度会った時負けないように、俺も鍛錬するから」 「約束だよ」 「おう! 約束だ」 ふたりは拍手と歓声の中、『天花』を交換し、握手を交わした。 「結局、ドラゴンは見つからなかったなー」残念そうに言うハーヴェイに、千星が笑顔を向ける。「でも、幸せはいっぱい見つかりましたよ」 楽しかった今日一日の出来事をひとつずつ、思い返す。 私だけじゃない。たくさん、たくさんの幸せが、ティエンライの其処此処にあった。 『天花さがし』は、幸せを見つけるんじゃなくて、幸せに気付くお祭りなんだと、人々の笑顔を見ながら、千星は思った。 「あー交換してるー! いいなー!」 「作戦勝ちってヤツ」 心底羨ましそうに叫ぶシーイィに、ハーヴェイは得意げに『天花』を見せる。 ふたりの様子を微笑ましく見守っていた理緒は、騒ぎを聞きつけて広場に現れた冬夏を見つけてぶんぶんと手を振った。 「冬夏ちゃーん!」 「理緒ちゃん、いたー!!」 なんとか再会した二人は手を取り合い、おみやげを見せあったあと、友情のしるしにと、『天花』を交換した。理緒の花には、空を駆ける麒麟の絵、冬夏の花にはつやつやとした赤い木の実が描かれていて、ふたりはそれぞれ、なんとなく、似合ってるよね、と笑った。 「ね、こういうのもアリでしょ? シーイィさん」 「まあ、アリだな!」 悪戯っぽい理緒のウインクに手を振って大人の笑顔で応えながら、(だったら誰か俺とも交換してくれたらいいのに!)と探偵が心で叫んでいたのは、旅人達には秘密である。 四.夜空の花 ティエンライの『巡節祭』は盛大な花火で締めくくられる。 最初の花火が打ち上げられるほんの少し前のこと。大通りを見下ろす高台にある公園の遊具の上で、流邂と汐は劇的な再会を果たした。 「汐ちゃああああああん!!!」流邂は涙で顔をもう、なんだか、ぐちゃぐちゃにして、ひし!!と汐の小さな体を抱きしめた。「パパひとりにしちゃって、ごめんね」よしよし、と、汐は流邂の背中をやさしくなでる。 ぼろぼろに錆びたジャングルジムの上で、ふたりは、静かに話をした。 「じゃあ結局ふたりとも、同じ絵の『天花』、見つからなかったんだね」 「うん。でも、楽しかったからいいんだ」 「そっか。じゃあよかった」流邂が微笑む。「思い出すなあ。『天花』じゃないけどね、ママとも、こんな遊びをしたことがあるよ」 「そうなんだ」 珍しくしみじみとした口調に、汐の胸はきゅう、と痛んだ。 「……じゃまなんて、うそだよパパ。ごめんね。パパとここに来れてよかった」 「え? なになに? じゃまって言った? じゃまって言った??」 「ううん。いってない、っていってるの」 「そう」分かったような分からないような表情を浮かべて、何でも無いことのように告げる。 「あのね、パパ、汐ちゃんのことすごく愛してるよ。ママのことも。今もこれからもずっと」 ふいに意味も無く涙がこみ上げ、汐はこらえるように顔を上げた。 一発目の花火。 「あ」 大輪の花にふたり、同時に声を上げ、顔を見合わせる。 『つらい時も悲しい時も、空を見上げて歩くのよ』ふいにあの老婆の言葉が浮かんだ。 色とりどりの花は、花火だったんだ。 紙を縫いとめてある細い糸を解くと、幾重にもなった花びらがはらはらと零れ落ちる。汐は、手のひらの上の花びらを思いっきり高く放りあげた。 「交換だよ! ティエンライの空!」 今年もたくさんのしあわせが、みんなのもとへ降り注ぎますように。 再び花火が上がる。 精一杯の願いを込めた天の花びらが、旅人たちの上に、ティエンライ住人達の上に――、舞い上がり、夜空に咲いた花々と共に、闇に溶けて消えた。 大通りの中心にある広場で、旅人たちは花火を見上げている。 『天花さがし』のリミットも迫り、広場は相変わらず賑やかだったが、彼らは広場の片隅に座ってそれぞれに空を眺め、思いを馳せていた。 理緒は胸の前で手を組み祈る。 この花火に。この『天花』に。この、神秘的な夜に。 ――いつか、ここの人たちもお祭りの日だけじゃなくて、いつでも安心して暮らせるように…… 冬夏はうっとりと花火を眺めている。花を愛する冬夏は、手にした紙細工の花と夜空の花に、胸いっぱい感激していた。ターミナルに戻ったらこの感動を伝えようと、一生懸命、風景を目に焼き付ける。(うん、今年もきっと、いい年になるよね!) ハーヴェイはすっかり疲れきって植木の根元に寝そべり、ぽかんと空を見上げていた。心地よい疲労に、うとうとと目を閉じそうになる。と、ふいに見慣れた顔が瞼に浮かび、ハーヴェイは目を瞬かせた。よく見慣れた――、いまは懐かしい彼ら。彼の仕える皇子や堅物な親友と、ここに来ることが出来たら、どんなだったろう。 (あいつらにも、見せてやりたかったな。) 夢うつつに思い、ハーヴェイは眠りに落ちた。 ……これでは風邪を引いてしまう。 千星は羽織っていたストールをハーヴェイのお腹のあたりに掛け、立ち上がった。この幸せを、やっぱり、誰かと分かち合いたい。花火を見ているうちに、千星はどうしてだか、そういう気分になってしまった。 (だって私、ハーヴェイさんにくっついていただけだもの。) 花火が終わるまでにはまだ時間があるはず。もう少しだけ、探してみよう。 千星は『天花』を手に、ひとり広場を出た。 * * * 「結局パパの『天花』、ヘビって、どんな意味だったんだろう」 「見せて見せて」 「これ」流邂が、ちぎれてぐしゃぐしゃになった花びらを見せる(作者注※やはり似顔絵に使った紙は『天花』であった)。 「…………パパ」 「なあに汐ちゃん?」 「これ、ヘビじゃない。ドラゴンだよ」 「どらごん?」 「ドラゴン! 竜だよ!」 「嘘これヘビじゃないの?! パパすっかり、アオダイショウだって思い込んでた!」 「誰か、このへんにドラゴンの絵の人いないかな?!」 最後の花火が咲き終わるまで、あと、ほんの少し。 了
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