●「先日の大捜索、お疲れさまです。そのおかげで、館長についての重要な情報がわかりました」 世界図書館の一室。 集まった旅人達に軽く一礼してから、彼女は導きの書を抱きしめたまま話をする。「インヤンガイでは壺中天というネットワークが利用されています。人の精神だけをダイブさせてネットワーク空間を自由に動き回れるシステムですね。その壺中天内に館長がいることが間違いないようなのです。」 残念ながら、どこかに残されているはずの肉体の位置は未だ発見出来ていない。だから、こうしてロストナンバーである一同が呼び出されたのである。「貴方達には壺中天の中で館長に会ってきていただきたいのです。アクセス方法は現地の探偵が用意してくれています」 行って来てくれますかという問いかけに否定の声を上げる者はいなかった。「みなさん、どうか館長をよろしくお願いいたします」 ●「よう、お前たち。うまくやったようだなぁ。こっから壺中天にアクセス出来る」 探偵は吸いかけの煙草を灰皿に置いて旅人達を出迎えた。 そこには壺中天へアクセスするための設備が用意されていた。ここに身体を残して壺中点に入ることになる。「あぁ、残ってる身体は見ててやるから心配すんな」 額に落書きのひとつくらいは出来ててもしらんがと笑いながら言う探偵に少々危機感を覚えたりするが、すぐに彼は真面目な顔をして彼らに忠告してくる。「中に入ってしまえば、自由にどこでも行けるが、セキュリティきついとこに入る時はそれなりに気をつけろ。お前さん達のボスのようにスパイだとか悪意あるプログラムと判断されて攻撃される」 攻撃に対して全く対処出来ない訳ではないが、慣れない世界での無茶な行動は命取りだ。壺中天内であまりに大きな問題が起こってしまった場合、何が起こるかわからない。そうそうそのような事態には陥らないとは思うが気を付けろと探偵は言った。「一応、調べておいた感じじゃ、奇跡少女メイメイ、桂花公司、それから無双天地にアクセスの跡があった」 何だそれはと言いたげの一同に探偵はめんどくさそうに補則していく。――奇跡少女メイメイ―― 一説によるとミラクルガールメイメイと読むとか読まないとか。インヤンガイの女児(一部大きなお友達)向けの漫画の公式サイトのようなものらしい。 丈の長いチャイナドレスのおだんご頭の少女のメイメイが、派手なアクションにもかかわらず、太股近くまであるスリットから何故か下着が見えることもないまま敵をバッサバッサとなぎ倒していく漫画だそうで、幼なじみのヤンヤン(白衣の科学者風)や敵の男性幹部(甲冑を着た美形)とのロマンスがおませな女児に大好評の漫画。 一応、サイト内では漫画に出てくる妙にパステルカラーの町並みをキャラのコスプレをして闊歩する事が出来る。そして、メイメイかヤンヤンに扮して、格闘、あるいはヤンヤン開発の飛び道具(光線銃)で出てくる雑魚敵プログラムを108体倒すミニゲームをクリアすると秘密メッセージを聞けるという。「なんか、最近そのメッセージがおかしなことになっているという噂もあるが、そこまではしらん」 そんなめんどい事やってられるかと探偵は無責任に言い放つ。――桂花公司―― 医療機関からご家庭向けまで様々な医薬品を扱っている会社だという。最近は健康食品、栄養剤などから食品業界にも片足を突っ込んでいるという。 業界では五本の指に入るような大企業だという。 「だけどまあ大きな公司には黒い噂がつきまとうのはお約束だな」 ニヒルに探偵は笑ってみせる。 最近では、数ヶ月前に流行った伝染病の原因がここにあるんじゃないかとか、桂花公司の健康食品を愛用していた者から重大な健康被害が確認されたとかいう噂があるらしい。 公式サイト内では、町の薬屋さんといった風情の建物が並び、緑色の熊のようなマスコットキャラクターのファアファアが各種商品のPRと販売をしている。そして、それらに取り囲まれるようにして中心部には高層ビルとでも形容すればよいような建物があるという。そこには一般からのアクセスは出来ないように、進入経路の当たりには門番風ファアファアが並んでいる。 ――無双天地――「俺には何が楽しいのかよくわからんがなぁ」 どうして壺中天の中に入ってまでドンパチやらねばいかんのかと探偵は言う。 そこは、我々にわかりやすく一言で言うと、ネットゲーム、MMORPGというところだ。 入り口には時代がかった大きな門が設えられており、そこから登録すると広い世界を駆け回って行く事になる。最初の選択によって、初期装備なども与えられる。 剣士には青龍刀(強打を使える)、拳士には鉄甲(連続攻撃可能)、射手には弓(通常矢と制限有りの毒矢)、術者には長杖(炎を出せる)、といった具合だ。 先へ進んだり、敵を倒していくと様々な武器防具やら騎乗アイテム、回復アイテムなども手に入るようだが、詳しい事は彼はやったことがないからわからないという。 最初のエリアは草原となっており、野犬や盗賊のような比較的弱い敵がうろついている。そのエリアの敵はさほど強くないので、苦戦はしないだろうし、近くには小さな村落もあるのでそこで休憩や情報収集も出来るだろう。 そして、その村から遠くないところに……邪龍が潜む洞窟があるという。ちょっとしたボスがいるとみて間違いないだろう。 「闇雲に探すには壺中天は広すぎるからな。その辺に行ってみるといいだろう」 一通り説明を終えると探偵は一同にさっさと行って来いと促した。「じゃあ、気を付けてな」 そう言うと探偵は新しい煙草に火を付けた。 ==!注意!============このシナリオは『ヴォロス特命派遣隊』『ブルーインブルー特命派遣隊』に参加している人は参加できません。ご了承下さい。==================
●ダイブ 旅人達はそれぞれ見慣れぬ機械を前に 「これで中に入るのか」 「壱番世界にもこれ欲しい!」 珍しそうに機械を眺めるロウユエの隣では三ツ屋緑郎が歓喜の声を上げている。ゲーム好きの少年にはたまらないものがあるらしい。 そして、その一方でハクア・クロスフォードとティリクティアが探偵に対して念を押していた。 「ふむ、身体は頼む」 「いい? 私の身体に悪戯したらただじゃおかないんだからねっ!」 無表情に告げるハクアには軽く頷き、ティリクティアにはにやにやと探偵は笑って答えた。 「悪戯? 俺はお嬢ちゃんよりずっと大人だからなぁそんな子供っぽい事はしないぜ。もっとも芸術的な活動は好きだがな」 「もうっ!」 「ほら、とっとと行ってきな。他は準備が出来てるぞ」 見れば、緑郎はとっくにウキウキとした表情で装置に収まっていたし、他のメンバーも全員ダイブを待ちかまえていた。 「私の身体まかせたわよっ」 任されたと答えた探偵の姿が揺らいだ。 ●潜入成功 「ついたみたいだな」 気がつくとそこは辺り一面真っ白に塗り潰された何もない広場。 何人かの人が通り過ぎていく。道はいくつもあるが、時折道を外れてふいっと姿を消す人もいる。 「さてと、どうすっかねえ……」 三箇所一辺に周れるわきゃねーだろうしなあという黒城旱に、自分は無双天地を中心に館長を探すつもりだとハクアは宣言する。 ロウも無双天地に向かう旨を伝える。桂花公司も気になるが、人の流れの激しい無双天地が身を隠しやすいだろうと判断してだ。 「館長さん、どこに居るんでしょうか……」 七夏は彼の帰りを待つ者達の事でも思ったのだろうか、心配そうな表情をしていたが、キリッとした表情に切り替わる。 「それらしいおじさまを見かけたら、一生懸命追いますっ!」 メイメイと無双天地の二箇所を巡ってみるという七夏。 「一番人気がなさそうに思える場所は桂花公司だな。俺はそこに力を注ぐぜ」 ティリクティアちゃんはどこに行くんだという問いかけに、ティリクティアは自分の事はティアと呼んでと皆に向かって断ってから、メイメイに行くと答える。 緑郎は全部にくっついていく気のようだ。 女性陣と目的地がずれた事に残念そうな表情を旱は見せた。 「じゃあな、成功したらデートしようぜ?」 七夏にそう言い、ティリクティアにも「可愛い顔に傷付ける事はすんじゃねぇぞ?」と声をかけると桂花公司の調査へ向かう。 「それじゃあ行きましょうか」 「うん、頑張ろうね!」 「みんな気を付けて!」 ●貴方も奇跡少女メイメイ? ――漫画の世界に入り込んだみたい―― 本当にそう表現するしかないような空間がそこには広がっていた。メイメイのご近所を再現されたその場所は、普通の住宅街のようでいてどこかおかしい。 パステルカラーの町並みでどこか浮く青年達や目をキラキラと輝かせた少女が、漫画内の商店を模した公式グッズ販売コーナーを眺めていたり、図書館の姿をした作品紹介コーナーで作品の良さを語り合ったりしている。 そんな人々の中に紛れるティリクティアや七夏。他の一般人に紛れてメイメイとヤンヤンのこれまでの戦いなどを見ている。 様々な危機を乗り越えるたびに深まる二人の絆! というベタなフレーズと戦闘後のハプニングでキス直前まで顔の近づいた二人の画像などもある。 周辺の少女はステキ、羨ましいわとうっとりとしている。ティリクティアもなんとなくその中に溶け込んでいた。 こんな時じゃなければ、けっこうな時間を潰せそうな凝った場所だ。でも、皆は決して目的を忘れてはいない。 「楽しいけど、どこで戦うのかな?」 「あ、あそこじゃないか?」 「ミニゲームの入り口は体育館みたいですね」 体育館の扉から一歩踏み出すと、外から見た様子からは想像できない光景が広がっている。体育館の中に入ったらまた街が出てきたような感じだ。 眼前にはメイメイの姿とヤンヤンの姿が、ホログラフィのような映像で宙に浮かんでいる。 「好きなコースを選択してね!」 「メンテナンスは済んでいる。いつでも出られるぞ」 可愛らしい女の子とクールな男の子の声が聞こえる。どうやらメイメイ達の声らしい。 まずは見た目からよねとティリクティアは迷わずメイメイの方に近づいた。 一瞬で彼女はチャイナドレスを身に纏っていた。 「おぉー!」 それを見た緑郎も近づくと、彼の姿も一瞬でチャイナ服。 「男の子でもメイメイ大丈夫なんだ」 「すごっ! 一瞬で!」 こっちに行ったら?とヤンヤンに近づくと、一瞬で白衣姿になり、気づけば銃器を手にしていた。面白がった緑郎はメイメイとヤンヤンの間を往復し始める。 「な、慣れない格好ですが、頑張りますっ」 なんだかんだでノリノリな様子のティリクティアの横では、少々恥ずかしそうな七夏。でも、彼女は興味深げに自分の衣装を眺めて呟く。 「この服のデザイン、露出は多いけれど可愛い……参考に覚えて置こうかしら」 自分で服を仕立てる事も出来る彼女は寸法やデザインなどをあれこれ考えているようだ。 ひとまず、みんな格闘で戦う方がいいと判断し、ここに三人のメイメイが並んだ。 「よっし行こう!」 「目指せ打倒108人よっ!」 「出動準備中です。しばらくまってね」 そんなアナウンスと共に、メイメイとヤンヤンの姿が消える。 次の瞬間には再びメイメイの姿が現れてくるくると回り続けている。 「うわーローディング画面って事かなコレ?」 「まだかなー」 わくわくとした様子の緑郎とティリクティアの横で七夏はじっとメイメイの太股周辺を見つめていた。 (スリット見学を頑張って) そんな激励(?)を友人から貰ったからだ。素直な彼女は頑張って見学していた。 じーっとひとしきりスリットを見ていた七夏だったが、ハッと我に返る。それとほぼ同時にメイメイは回転を止めた。 「準備OK!」 笑顔のメイメイの声と同時に軽快なBGMと同時に、なんだか変な格好をしたキャラクターがあちこちにわき出してきた。 「全身タイツとかっ!」 雑魚キャラまんま過ぎるだろっといいながら蹴りを入れると簡単に緑全身タイツが吹っ飛んで消えた。 元より女児向けのゲームである。当たりさえすればこっちのものなのだ。 「えいっ! やっ!」 ティリクティアの可愛らしいパンチで赤タイツと青タイツが消えた。 「見た目だけで判断しない事ね」 ふふっと笑う。 どんどんと敵を倒していく三人だが、敵も数だけは多い。何せ108人。 「あ、危ない!」 捌ききれずにティリクティアの背後に回った黒タイツを片手でスリットを押さえながらも七夏の足が捉えた。 ガンガン突き進んでいく二人に、そっとフォローに回る七夏。絶妙なコンビネーションだ。 「あ、タイツじゃない。キョンシーっぽい?」 「ボス?」 「もう大分倒しましたしね」 今までのタイツ集団に比べると手の込んだ服装のキャラが目の前に立ち塞がる。 「これで終わりだ!」 張り切って蹴りを決める緑郎だったが、ぼよんっという感触で攻撃は受け流され、相手は逆に反撃してきた。 「うわっと!」 「あれ?」 「倒れませんね?」 「やっぱりボスって事じゃないかな!」 一撃で倒れないという事に手応えを感じた三人は一斉にボスへと殴りかかる。 ばしっ!ぼよんっぼすっ!ぽふんっ! そして、死闘の末、 どすんっ…… 敵はゆっくりと倒れて、消えた。 「おっめでとー!!」 「よくやったな!」 ファンファーレと共にメイメイとヤンヤンが現れる。辺りではドンドンと派手に花火が上がっている。 「頑張った貴方にご褒美だよ!」 ヤンヤンが手にしていた小さな機器が目の前にぽとんっと落とされた。 「これが、秘密のメッセージ?」 「なんだろうこれ?レコーダー?」 気がつくとメイメイとヤンヤンの姿は消えている。説明不足だなぁ。作りが甘いなどと言いつつも、機器を拾う緑郎。 「わかりますか?」 「わかんないけど……ボタンっぽいのついてるからたぶん」 「押してみようっ」 真ん中に着いていた小さいボタンをとりあえずカチッと押してみる。 「……メイメイの秘密その38!メイメイの得意料理は焼売だよ!」 そんな声が再生された。 「………」 「……えっと」 「どうでもいいーーー!!」 ガックリとする三人。頑張った割には悲しい結果である。 「38って他にもあるのかなぁ?」 「少なくとも1から37まではあるという事ですよね」 「何回クリアさせる気だよ……いいや。ちょっと桂花公司の方も見てくる」 「あ……いってらっしゃい」 「あの格好のままでいいのかなぁ?」 再生機を放り投げて、勢いよく駆けだしていく緑郎を見送る二人。 「残念でしたね」 「でも、楽しかったね。秘密あつめてみたいかも」 そんな事を言いながらティリクティアが放り投げられた再生機を拾う。その時にカチッとスイッチに手が触れた。 「あ」 「……ユンとっても楽しかった。また頑張ろうね、お父さん!」 小さな女の子の声が再生される。 「これ? 参加者のメッセージでしょうか?」 「なんかスイッチはひとつじゃないんだね」 よくよく見ると、再生機にいくつかの機能があるようだ。二人はあれこれ押してみたりして操作を試みる。 どうやら、真ん中のスイッチが再生ボタンで左の小さなボタンが録音という事は突き止める。 「メイメイの秘密8!ヤンヤンとは生まれた時から一緒なんだよ!」 「ティアもクリアしたよー……私もしました……」 次々と再生される音声。 「こっち押しながら再生かけると録音してた声が聞こえるみたいですね?」 「そうみたいだね。もっと録音されてる声聞いてみようか?」 何度も再生を重ねる内にメイメイの秘密も108まで出てきて驚愕したり、友だちに対する可愛らしい子供のメッセージに目を細めたりしていると、急に再生機がノイズを発した。 ――……ザザッ……ピィー……―― 「壊れた?」 「まさか?」 首を傾げる二人。 ――……ろす……レイル……―― 「!!」 ――ロスと……ル……アリッサ……―― 息を呑む二人。聞き漏らすまいと再生機に耳を近づけて必死に声を聞き取ろうとする。 ――……私は……さが……な……危険だ……―― 「さがすな?」 良くない予感に自分の胸を押さえる七夏と不安そうなティリクティア。 再生機はノイズを吐き出し続けていた。 ●お薬屋さんの町 メイメイで三人が奮闘している頃、桂花公司の前で旱は不思議な町並みを眺めていた。 歩いても歩いても薬屋。右を向いても左を向いても薬屋だ。基本的に古くさい木造の薬屋が多いのだが、時々妙に綺麗な建物や病院も少しだけ間に挟んでいる。 道は舗装などされていない土の道。土埃が今にも目に入ってきそうな光景だった。埃臭さは一切しないのだが。 「館長とやらがいるとしたら、やっぱ高層ビルの中だろうな……」 場の光景から浮いている近代的な建築物を見てうなる。 ビルの手前まではすんなりと来たが、どんどんと辺りには熊の着ぐるみの姿が増えている。 門番のファアファアだ。人よりもファアファアの方が多いくらいだ。 何とか進入経路を探さなくてはと思った旱は、自分の能力を使うことにする。 彼の『千里眼』はこの空間においてもそれなりの役割は果たしてくれるようだ。緑の熊の薄い一点がある。 そこには小さな通用口のようなものがあった。目立たぬその扉の前にはファアファアも一匹いるだけだ。 「……あれさえやり過ごせればな」 少ない物陰から様子を窺っていると、ファアファアは定期的に辺りを行ったり来たりしている。 うまく隙をつければ何とかなりそうだと判断する。 「!」 とんっと肩を叩かれて、旱の鼓動が跳ね上がる。 「あ、ごめんなさい。驚いた?」 そこには追いついてきた緑郎だった。 「驚くに決まってるだろうが……声くらいかけろ」 「いやなるべく静かにしていた方がいいのかなと思ったから」 ひそひそと二人は状況を話し合う。 「それじゃいいか、せーので行くからな。遅れたらしらんぞ」 「わかった」 ファアファアがくるっとターンを決めて背中を見せた瞬間、二人は一斉に走り出す。 扉が開かなかったらどうしようかと思ったものの、案外あっさりと扉は開いた。急いで身体を扉の奥に滑り込ませると、なるべく音を立てぬように扉を閉じた。 「……なんとかなったかな?」 「ひとまずはな」 中に入ると、そこはどこかの通路のど真ん中。急に無機質な印象を与える広い廊下に出た二人は面食らう。 「変なところに扉があるね」 「こっちにゃ好都合だったがなぁ……あっさりしすぎかもしれんな」 先のインヤンガイでの出来事を考えても、こんなにあっさりと侵入が出来ていいものだろうかと、二人は警戒しながら廊下を進む。 いくつもの扉がある。順番にノブに手をかけてみるが、どれも鍵がかかっているらしく、開く様子はない。 「開かない?」 「流石に何か警報に引っかかるような気がするからなぁ」 まずは仕方ないので、開く扉はないかとゆっくりと廊下を進み続ける。 「ンにしても、侵入捜査か……元居た世界を思い出すぜ。昔はこんな任務ばっかこなしたモンさ」 慎重にドアノブを回しながら旱は呟く。ドアはまた開く様子はかけらもない。 「あ……たぶん、開く」 期待しないで手をかけた扉に手ごたえを感じた。向こう側に人の気配などはなさそうだと判断し、ゆっくりと扉を開く。 「……資料室ってところか?」 金属製の棚にみっしりと紙束が詰まっている。 手に取ると、普通の資料として読めるものもあれば、急に立体映像が現れるものもある。二人は何か手がかりでもないかと次々と資料を手に取ってみる。 ただの薬の売り上げ記録のようなものから、お客様の声のような関係なさそうなものまで内容も様々だ。 「いまだに館長から連絡一つ無いってのは、直接接触する事で不利益が発生するかもしくは拘束されているかだよね」 「単純に怪我やら病気やらやらかした可能性もあるかな。ここの奴らには拘束されてないみたいだしなぁ」 「伝染病についての資料ないかな……?」 「なんとなくそっちの棚がその傾向っぽいぞ。こっちは金の事ばかりだ」 それらしき緑郎が資料を手に取ると、それは映像資料だった。 「……苦しそうだな。咳が酷い病気なようだな」 「病状に落とし子やワームに関連する要素が見られないかなと思ったんだけど……」 映像を見る限り、それは特殊な要素のある病のようには見えなかった。 苦しそうな人々の映像が続き、少し気が滅入る。その後で白衣の研究者に切り替わり、原因について解説をし特効薬の開発は難しくないなどと喋っている。 「案外まともなのかな?」 「単にここには表に出せるようなものしか置いてないって可能性もあるがな」 一通りの棚をのぞいたところで、これ以上の収穫はなさそうだと判断する。資料室を出て再び廊下を進む。先には曲がり角があった。 「……」 そろそろと顔を出して、曲がり角の先の様子を窺う。 「……!!」 慌てて顔を引っ込めると二人は小さく叫んだ。 「でかっ!」 「なんだあれは」 角の先にはファアファアがいた。ただ、でかい。ものすごくでかい。 どれくらいかというと、大きすぎて廊下に立っていられなくてお尻を床にぺたんとつけているのに頭が天井についているという有様だ。 そして、そのファアファアの後ろには今までと明らかに違う空気の扉。 「絶対、あの先になんかあるよね」 「だが、あれやり過ごすのは無理だろうよ」 「まあそうでしょうね」 「だよなぁ……って!」 急に知らない声が混ざった。ばっと振り向くと、そこには背の高い黒髪の男。 「誰だ!」 「こっちの台詞なんですけど……まあなんとなくわかってるんでいいですけどね」 「おまえ……ロウ達にやられた奴らか?」 「あぁ、やっぱりそうなんですね」 黒髪の男、リンはやれやれと呟く。 「ど、どうするつもりだ!」 「まあ普通に考えたらこの場で貴方達を拘束、上に突きだしてやりたいとこですがね」 ぐっとトラベルギアを握りしめた旱に対してフッとリンは微笑んで続けた。 「貴方の仲間には借りもありますし、このまま帰るならお見送りしますよ」 「そうはいかないと言ったら?」 「聞くまでもないでしょう? でも、そんな必要ないと思いますよ。ここには館長とやらはいない」 だから自分たちがあの洋館でやりあう事になったんだからと言う。もっともな話ではある。 「でも、お前達はともかく、桂花公司はまだ諦めていないとしたら、他の者が派遣されたりしているんじゃないのか?」 「確かに諦めてないんですけどね、上は。だから、まだ探してはいる」 「やっぱり!」 「だから、ここにはいないんですよ。まだ探し続けている。それでね、最近怪しいんじゃないかという場所があるんですよ。そろそろ自分らも派遣されるんじゃないかってところが」 「そこは……?」 「仕方ないから教えてあげます。無双天地。知ってます? 最近はやりのゲームですよ」 それじゃ、お帰り下さいとリンは笑顔で出口を示した。 「……先に行ってるみんなと合流しよう。メイメイの二人どうしてるだろう」 「一度、トラベラーズノートでも使って連絡してみるか」 女性二人に無双天地に集合するように連絡をしてみる旱だったが、なんと既に二人も無双天地に手がかりがありそうだと突き止めていた。 ――……むそ……て……無双天地……あぶな……―― そんなメッセージを最後にノイズごと再生がとまったという。 「間違いないな、行くぞ」 「行こう!」 館長はもうすぐそこだ。そう感じた二人の足取りは軽い。 「さっさと見つけてまたバーで一杯飲みたいぜ、全くよ。」 ●無双天地 そこはちょっとしたホテルのフロントのような格好をしており、カウンター内では笑顔の女性が立っていた。 ここで登録をすることで初めてゲームに参加出来るという仕組みらしい。プログラムなのか本物の人間なのかわからないが、一息で長台詞を噛むことなく話すお姉さんの説明を二人はなんとなく理解する。 「……ネットゲームはよくわからないが」 「初期装備に青龍刀が貰えるのか……」 自分の普段のスタイルから、ハクアは射手を、ロウは剣士を選択する。ここでも瞬時に二人の姿がゲーム内の装備へと変わる。 ハクアは布紐で身体にくくりつけられていた弓矢を確認すると、よろしく頼むとロウに声をかける。ロウもこちらこそと答えながら、青龍刀を一振りしてみる。なかなか悪くない感触だ。 巨人も通れそうな巨大な観音開きの鉄扉がギギギと音を立てて開く。ゲームのスタートのようだ。 話に聞いていた通りの広い草原。そこでは既にあちこちで戦闘が行われている。 「けっこう人がいるな」 「それでは小手調べといくか?」 図らずも剣士と射手というなかなか相性の良さそうな二人組だ。 手近にいた野犬がこちらを向く。二人をターゲットと認識したようだ。ロウが青龍刀を構え前に出ると、野犬はこちらに牙をむいた。 キンッ 牙を青龍刀で受けると、そのまま押し戻す。野犬が怯んだところで今度は斬りつける。きゃうんっと飛び退いた野犬にハクアからの射撃が追い打ちをかける。矢は綺麗に野犬の身体に突き刺さる。 もう一度、野犬はこちらに飛びかかる。爪がロウの腕を掠めた。微かな痛みを感じるが、怪我はしていない。よくよく見れば、野犬の方も弱っているようだが、傷ついてる様子がない。 ハクアも冷静に距離をとって敵の様子を見ていた。的確な援護射撃を続ける。 「これがゲーム……」 何度か攻撃を与えると、きゃうきゃうんっと一声をあげて野犬が倒れた。じわっと地面が赤く染まる。血のりのようだ。 「初勝利だな」 小さなファンファーレと共に宙に何らかの数値が浮かび上がって消えた。どうやら経験値を取得した様子だ。 「アイテムもあるのか?」 野犬の死体に手を触れると、ぽろっと牙が出てきた。 「倒した敵からアイテムをか。何だか追い剥ぎになったような気分だな」 ロウが複雑な心境でがさごそしてみると、もう一個だけ牙が出てきて、そしてすぅっと野犬は消えた。 「……なんとも言えない気分になるなぁ」 首を捻りながらも、牙を装備にある袋に入れる。どんな大きさの物でも入れられる不思議な麻袋だ。ちなみに、どんな金額も入る不思議な革袋(財布)もある。 「この感じなら、敵を倒すのはそう難しくなさそうだな」 「ここら辺で敵を倒しながらアイテムや装備を集めながら村へと向かおうか」 二人は今後の方針をざっと決めると、次の敵を探しに行く。 「最近、変わったプレイヤーを見たことはないか?」 「変わったプレイヤー? そんな事を聞いてくるあんたらくらいかな」 敵を倒しながら、すれ違うプレイヤーに声をかけてみるが、さほど有効な証言は得られない。プレイヤーは戦闘に夢中であまり真剣に話を聞いてる余裕がなさそうだ。 そうこうしてる内に、二人は少しずつゲームになれ徐々に野犬を倒すペースも速くなっていく。もう盗賊を倒すのもそう苦労しないな。 そう感じたくらいの頃に、二人は村へとたどり着いた。 村といっても丸太の塀で囲まれた時代がかったものである。粗末な木材や布を利用した家が並ぶ。 「少し一息つきたいところだったし丁度いいな」 「ここなら少しは落ち着いて情報収集も出来そうだな」 「最近、何か変わった事はないか?」 「変わったこと? あ、最近やっと邪龍が実装されたんだよな。まだ俺行ってないんだけど」 ロウが座り込んで装備を確認していたプレイヤーに話しかける。それを見てハクアも手近なところにあった道具屋へと入る。 「何かおかしな場所などはないだろうか?」 店主のおばあさんにハクアは尋ねる。洞窟の位置を確認出来ないかと思ったのだ。 「おかしな場所などありやしないよ。お前さんに教えられることなんてないねぇ。大体、おかしなところなんて行くもんじゃないよ」 「だが……」 「いいかい、東の泉の先の洞窟には近づいちゃいけないよ。罰が当たるよ」 「東の洞窟?」 「あそこには龍神様が奉られているからねぇ。入口は結界でふさがれてるけれど……横の龍神岩を動かすなんてもってのほかだよ」 「岩だな……」 ゲームらしく遠回し(?)に答えてくれるおばあさんに一応お礼を言うと、ついでにいらないアイテムを売っていく事にする。 けっこうな金額になったので装備を見せてくれというと、おばあさんはここは道具屋だよと冷たく返事をしてくれた。武器は武器屋らしい。 「邪龍退治をしたものはまだいないのか?」 「いないと思うな」 外ではまだ先ほどのプレイヤーとロウが話している。 「他に何か変わったことはないか?」 「そんなにないけど……あぁ、でも邪龍の洞窟さぁ。まだバグってるくさい」 「バグ?」 「なんか途中までは友だちが行ったんだけどさ、どうにも先へ繋がるルートがなくて」 「まだ行けないのか?」 「しまいにゃ、なんかおっさんの声が引き返せって」 「おっさん?」 「そ、邪龍じゃなくておっさん。バグ知らせるにももうちょっと凝って欲しいよな」 なんかとらわれの美少女くらい用意してくれよと彼は笑ったが、ロウはふむと考え込んだ。 一通り買い物等を済ませたところで、妙に賑やかな声がしてくる。 「無双天地さいっこー!」 「何とかたどり着けましたね……」 「ゲームでも逃げるのけっこう大変だねぇ」 「急いでる時の犬はうっとうしいな」 四人が追いついてきたのだ。急いで追いかけてきたらしく、ちょっとよれよれだ。 「随分早かったな。ほかを回ってきた後だろう?」 「飛ばして来たからな」 「敵をほぼスルーすればこんなもんだよ」 もっと戦ってレベル上げしたかったなぁと不満気な緑郎だが、何はともあれ六人が合流出来たのだ。 「こちらはけっこうレベルも上がった」 「邪龍の洞窟が怪しいようなんだ」 六人はこれまでの経緯をお互いにざっと報告しあう。 「メイメイも桂花公司も確かに館長の影はあったんだけれど……」 「本体はこっちにいる可能性が高いな」 「ところで、何で一人だけ格好が違うんだ?」 「服着替えなかったから!」 基本的に元の服装の上に防具が装着されているので、緑郎はメイメイの時の衣装の上に防具が装着されている。ちなみに女性二人は最初に来ていた自分の服装の上に肩当てだの胸当てだのが装着されている状態だ。 「どうせなら七夏ちゃん達のチャイナ服見たかったな」 旱がそんな軽口を叩くが、すぐに話を戻す。 「そんじゃまあ、行くか? 洞窟」 「行こう!」 一同はしっかりと頷き合うと、洞窟へ向かう。 ●邪龍の洞窟 「ここだな?」 洞窟の前で一度立ち止まる。入口付近が陽炎のようにゆらゆらと揺れている。 ティリクティアが恐る恐る一歩踏み出してみるが、ごんっとゆらゆらの壁にぶつかる。 「進めないよ?」 「結界?」 「おばあさんが言ってたな」 これ見よがしに横にあった龍の掘られた岩をハクアが押してみると。ゴゴゴゴという音と共に入口の揺らぎが消えた。 「入れそうだね」 六人は揃って洞窟へと向かう。レベルの差はあるものの、それぞれ助け合って進んでいく。 今までの敵よりも高レベルの敵が出そうないかにもな雰囲気である。 最前列には装備をしっかり調えて、一段とたくましくなった気がするロウと、やはり剣士を選択していた緑郎が並んで進む。 「サポートは任せてくださいね!」 ハクアに中級弓を買って貰って装備しなおしていた七夏は、後方からも辺りの様子に気を付ける。 じめっとした空気の漂う洞窟では、ナメクジのような敵や蝙蝠が沸いて出てくる。 「空を飛ぶ敵はめんどくさいな」 「蝙蝠は任せた。いくぞ!」 ロウは緑郎に目配せすると、ナメクジに斬りかかる。続いて斬りつけた緑郎も少しその感触に顔を顰めるものの、ロウがダメージを与えてくれた敵にしっかりととどめを刺していく。 「わっ!」 「大丈夫か!」 ティリクティアの首元を狙ってきた蝙蝠を旱が薙ぎ払う。すぐにティリクティアは体勢を整える。その間に素早く七夏とハクアの矢が蝙蝠に突き刺さった。 「みなさん、怪我はないですか?」 「大丈夫だよ」 「回復アイテムも十分にあるから、我慢はするな」 ハクアが麻袋を振ってみせる。重量感は全く感じられないが、ぎっしりアイテムは詰まっている。 時折回復や休憩を挟みつつも、一行は順調に道を進む。 「あれ?」 急に洞窟の雰囲気が変わる。それまでのじめじめとした洞窟から急に人の手の加えられた石のしっかり敷かれた通路になったのだ。壁も滑らかに整えられている。まるで神殿のような厳かな空気が漂っていた。 「……この先」 不意にティリクティアが手のひらで顔をおおった。彼女の持つ力が何かを感じ取ったらしい。 「広い通路、分かれ道、右へ行くと行き止まりの壁がある。みんななら行ける。人がいる」 曖昧ながらもこの先の様子がティリクティアには見えた。それを伝える。 「それは……」 「館長の行方?」 「やっぱ当たりなんじゃないか!」 ティリクティアの見た光景に従って道を進むと確かにそこは行き止まりだった。 「村にいたプレイヤーが言っていた。どうにも進めないと」 「そして声がしたんだよね?」 「聞こえる?」 「おーい! 館長ー! 邪龍ー!」 大声で叫んではみるが、洞窟に声が反響するばかり。 そう思った時だった。 ――……ぶない……ここは危険……―― 微かに聞こえた声。 しっかりとは聞き取れないが、それは男性のものだと感じられた。 「館長!」 「この先だ!」 「どうやって進むんだ?」 「壊して!」 ティリクティアがハクアに訴えた。 「……わかった」 危ないから少し後ろにと仲間達に告げると、ハクアは壁に手をついた。 「これならいけるか……」 ぷつっと指先を傷付ける。滲む血で壁に紋様を描いていく。 「あれは……魔法陣とかそういうの?」 「……行くぞ」 ハクアの呟きと同時に、皆の頬を風が撫でた。 ズンッ 火柱が一瞬立ちのぼり、目の前の壁が崩れていく。 「すごい……」 「……」 「ありがとうございます」 現実とは微妙に違う空間での力の行使には不安もあったが、なんとか思った通りの効果を壺中天内でも発揮してくれた事にハクアは安堵した。 少し疲れた様子の彼を七夏達は労る。その間にもロウは熱気と土煙の残る中、邪魔な瓦礫を蹴り飛ばして道を作る。 壁の先はとても広い空間となっていた。それまで二メートル強の高さの通路をずっと歩いてきたというのに、そこは五階建ての建物でも収まるんじゃないかという信じられない高さだ。天井からは光が零れており、壁は特殊な鉱石が使われてるらしく、光を受けるたびにその色を変える。 広間には水路も引き込まれており、その水路もやはり光を受けてキラキラと反射している。その光の真ん中に祭壇のようなものが設けられていた。 そして、そこに一人の男性が背中を向けて佇んでいた。 「館長か!?」 声に振り向くと男性は少し驚いた様子で一瞬声を詰まらせる。 「きみたちは……私を館長と呼ぶと言うことは、世界図書館のロストナンバーだな?」 やはり!と確信をもった一同は次々と話し出す。 「アリッサは館長を心配していた」 ハクアが静かに告げると、ティリクティア達が次々と続いた。 「そうだよ! どうしてアリッサちゃんに連絡しなかったの!」 「ガンダータ軍の元から離れても救助要請をするでもなく何故姿を? 世界図書館から決別するつもりなのか?」 「……私を捜してはいけないと言っていたのに」 「大人なんだから何処へ行こうと勝手ですけど、家出したら後からでも行き先くらい連絡したっていいんじゃないですか? アリッサが心配しないわけないです」 緑郎の館長を見る目はすっかり駄目な大人をみるものになっている。 皆の非難が少し堪えたようではあるが、館長はあえて弁解などはせず、そのまま話を続ける。 「仕方ない。実は困っていたので結果的にはありがたい」 どういう事だ?と一同は話の続きを促す。 「私はインヤンガイから、ある方法でもって別の世界に移動しようとしたのだが、その試みに失敗してしまった」 インヤンガイとディラックの空の狭間で、なんと運の悪い事にディラックの落とし子と遭遇してしまったという。 「私の身体はそこに捕らえられたままになっている。精神だけはこの空間に接続して自由になることができたが、八方ふさがりの状態だ。『世界の挾間』にはロストレイルでも行くことはできない」 館長の言葉にどうするんだよと緑郎は声を上げる。旱も渋い顔で顎をさすっている。ロストレイルが無理ならどう助けにいけばよいというのだろう。だが、館長の表情には明るい兆しが見えているように感じられた。 「しかし、ここを通って私をとらえている落とし子を撃破することはできるだろう」 「今まで逃げ回っていて今さら虫のいい話だが、私を助けてくれないか」 ロストレイルでは世界の狭間には行けない。 だが、館長は世界の狭間から壺中天にはやって来られたのだ。 「追っている人間に体を押さえられたら身動きが取れなくなるのにおかしいと思ったが……こういうことか」 「ロストレイルが無理と言われてどうしようかと思ったが……こっから、逆走するこたぁ十分可能ってことだな!」 「えっとつまり世界の狭間に邪龍退治ってこと? すっごいボス戦!」 「邪龍はゲームの話だが……まあそう間違ってないようだな」 「私たちだけでは落とし子の対処は大変そうですね。それでは急いで……」 「みんなで館長を助けにいこう!!」 ティリクティアが力強くえいえいおーと拳を振り上げる。皆もそれぞれ気合いが入った様子でこの事を伝えるべく走り出した。
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