オープニング

「よう、暇ならちょっと話を聞いてくれ」
 そう言って呼び止めたのは、うさぎ面に人間の体、仰々しい衣装に身を包んだ貴族風のロストナンバー、ブラン=カスターシェンだった。
 ターミナルの中は壱番世界のクリスマスのイベントが行われ、ハローズのテディベアイベントは盛況を迎えている。
 緑と赤を基調にした彼の服は、なるほど、それなりにクリスマスに相応しい。
 ハローズのテディベアのイベントも一段落したようで、彼はどこからともなく取り出したハンカチで額を吹く。
 白い毛皮に吸われた汗がハンカチで拭けるかどうか、はよくわからない。
 ともあれ、話を聞いてくれるロストナンバーがまた増えたと微笑んだ彼は、呼びとめに応じたロストナンバーにしばらく待つようにと言い含め、次の相手を呼びとめに向かった。


 この酒場では有志による出し物をウリにしたクリスマスパーティが予定されており、多数の観客を収容できるステージが用意されている。
 クリスマスに因んだ企画は数多く催されており、ハンドベルや聖歌、奇術ショーから落語まで様々な出し物が演じられていた。
 その演芸ホールと化した酒場の前、そこを通りがかったロストナンバーに、ブランは手当たり次第に声をかけ呼びとめている。
 人通りの多さも手伝ってか、選りによってクリスマスに「暇か?」という失礼な勧誘でも、ものの十分ほどで五人の足を止める事に成功した。

 ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ。

 二回、手袋に覆われた指で呼びとめたメンバーを数えると、ブランはこほんと咳ばらいをした。
「諸君に依頼したいのは、バンドだ。知っているか? 軽音楽。ロックでも、メタルでも、ポップでも構わない。吾輩も高貴なクラシックではない大衆音楽の違いはよくわからないんだが」
 と、人間大のうさぎ貴族が一枚のチラシを差し出してきた。
 チラシにはこの演芸ホールの進行表が書かれているらしく、演目と出演者の名前がちらちらと見受けられる。
 中には見知った顔もあるようだ。

 なんとなく眺めていると、ピンクの蛍光ペンでマーキングされた一節が気になった。
 それは「クリスマス・スペシャル。ロストナンバー・バンド」という文字列。
 詳細を見ると、バンド名は決まっていないが、要するにギターやドラム、ベースにキーボードという御馴染みの楽器を使って、じゃんじゃんじゃかじゃかと賑やかなクリスマス・ソングを数曲やるという内容だった。
 そのテキトーな内容に輪をかけて酷いのは、各項目の欄が×だらけで消されている点。
 たとえばボーカルの欄にアリッサの名前が書かれてはいるが、二重線で消されている。
 忙しいからとあっさり断られたそうだ。
 ギターにベース、ドラムにキーボード。
 それらの担当者の欄は空白のままである。
 つまり、ボーカル不在のバンドは演奏者が全くいないものだった。


「実はな」
 ブランの耳がぺたりと垂れた。
 なんとなく鼻まわりも元気がなさそうだ。
「吾輩がメンバーを集める担当だったのだが、それをすっかり忘れていたのだ。はっはっはっ、さっきから吾輩も超頑張っているのだが、事ここにいたって練習時間がほとんどない……というと、皆、なんだか急用を思い出すらしくてな。……そこで吾輩は貴君らならやりとげてくれると信じたのだ」
 鷹揚に。
 かつ、余裕たっぷりに話してはいるものの、ブランの赤い瞳からは「助けて」というメッセージが溢れている。

「客層はロストナンバーだ。老若男女、なんでもいるから客層にあわせた音楽ではなく、おまえらの好きな音楽をやってくれればいいぞ。楽器はこちらで用意しよう……と言っても楽器決めはそれだけで時間がかかるからな。公平にクジで決めよう。ここに五枚のカードがある」

 そう言ってブランが手の中で広げたのは絵柄のついたカードだった。

 ひとつは、竜の"卵"のイラスト
 ひとつは、ヴォロスの"月"の写真
 ひとつは、歌舞伎役者の"プロマイド"
 ひとつは、バナナの"樹"の写生画
 ひとつは、群青色に染まった夜のブルーインブルー

「ここにあるカードでとりあえずの楽器分けをしよう。何、深く考えないでくれ。それではカードを引いたら、みんなでどんな音楽をやるのか考えようか」

=====
!注意!
このイラスト付きSSは、イベント掲示板と連動して行われます。イベント掲示板内に対応したスレッドが設けられていますので、ご確認下さい。掲示板への参加は義務ではなく、掲示板に参加していないキャラクターでもSSには参加できます。

●ご案内
こちらは特別企画「イラスト付きSS(ショートストーリー)」です。
参加者のプレイングにもとづいて、ソロシナリオ相当のごく短いノベルと、参加者全員が描かれたピンナップが作成されます。ピンナップは納品時に、このページの看板画像としてレイアウトされます。
「イラスト付きSS(ショートストーリー)」は便宜上、シナリオとして扱われていますが、それぞれ、特定の担当ライターと、担当イラストレーターのペアになっています。希望のライター/イラストレーターのSSに参加して下さい。希望者多数の場合は抽選となります。

《注意事項》
(1)「イラスト付きSS」は、イラストを作成する都合上、バストショットかフルショットがすでに完成しているキャラクターしか参加できません。ご了承下さい。
(2)システム上、文章商品として扱われるため、完成作品はキャラクターのイラスト一覧や画廊の新着、イラストレーターの納品履歴には並びません(キャラクターのシナリオ参加履歴、冒険旅行の新着、WR側の納品履歴に並びます)。
(3)ひとりのキャラクターが複数の「イラスト付きSS」に参加することは特に制限されません。
(4)制作上の都合によりノベルとイラスト内容、複数の違うSS、イベント掲示板上の発言などの間に矛盾が生じることがありますが、ご容赦下さい。
(5)イラストについては、プレイングをもとにイラストレーターが独自の発想で作品を制作します。プレイヤーの方がお考えになるキャラクターのビジュアルイメージを、完璧に再現することを目的にはしていません。イメージの齟齬が生じることもございますが、あらかじめ、ご理解の上、ご参加いただけますようお願いいたします。また、イラスト完成後、描写内容の修正の依頼などはお受付致しかねます。
(6)SSによって、参加料金が違う場合があります。ご確認下さい。

品目イラスト付きSS 管理番号1110
クリエイター近江(wrbx5113)
クリエイターコメント近「Jack。さんって、Jackが名字で「。」が名前だったんですね。で、なんで全角なんですか」
J「実はフォントでアイムジャパニーズと地味無駄にアピールしております次第です」
近「ってことで、皆様、こんにちは、近江です」
J「そして御晩でございます。この度、近江様とタッグを組んでイラストを担当します、Jack=。=ロドリゲスです」
近「…二人合わせて」
J「近江ロドリゲ……スって、そんな打ち合わせしてました?」
近「いえ、唐突に無茶ぶりがしたくなっただけです」
J「無茶というより無謀です」
近「顔文字みたいですよ、この部分(=。= 」
J「Σ(・。・ くわわわわっ!」
近「目が開いた!? でもまぁ、それはさておき今回の舞台の説明です。このイベントはイベント掲示板と連動しています。参加者確定後に「ターミナルのクリスマス」の掲示板に関連掲示板が出現します」
J「ですので、掲示板に顔を出せる方、推奨です。あ、でも2~3回ほど発言出来る方なら無問題かと存じます」
近「具体的にはまずイベント掲示板でカードを引きます。これは22日の24:00までにお願いします。カードは早いもの勝ちです」
J「その後、カードを引き終わった後、遅くても23日中までにブランさんがプレイヤー様のひいたカードから担当パートを発表しますので、その楽器を担当したプレイングをご提出くださいませ」
近「プレイングは衣装や行動の指示が中心になるんじゃないかと思います。必要な事はプレイングでお願いします。なるべくイベント掲示板は見ますが取捨選択はWRが勝手にやります」
J「ILも第三の目で見ます。なお、WRもILも頻繁に大暴走かます事をお忘れ無く。約束だぞっ☆……それでは、ここからは皆様が気になる質問コーナーに参りましょう。近江様、どなたかがイベント掲示板で「おならぷぅ」とか言い出したらどうするおつもりで?」
近「もちろん、そんなファンキーな事件があれば全力で拾います…が、舞台に組み込めなかったら捨てます」
J「全力でノベルに「おならぷぅ」な可能性がある、けれど全力で捨てられる可能性もある、と。知人に会う度に「あ、おならぷぅだw しかも拾われてなかったぷぅ~ww」と挨拶代わりに言われない事を祈るばかりですね。えー、次の質問は楽器の事です。担当の楽器は、掲示板内でひくカードのクジで決まるのですか?」
近「はい、カードのクジで基本的な担当が決まります。キャラクター様はその楽器を担当する義務があります。が、プレイヤー様にはありません」
J「と、申しますと?」
近「張り切ってギター抱えて登場したけど『実はカスタネットしかできない』のでギターを肩にかけたままカスタネット叩きますとか、『ドラムだって聞いてたのに、舞台にあるのはどう見てもトライアングルなんですが…』なトラブルが起きているかも知れませんね」
J「つまり。何かしらのトラブルがあって、やむをえず別の楽器に…という事もありえるのですか?」
近「プレイングに書いてあったら起きるんでしょう。やむをえない事件が」
J「やむをえず「手品しながらボイパします!(ぶんちゃかぶんちゃか)」で鳩がバッサァー!!…も、あり得る事だったりしちゃったりするのかも知れない、と。これは何という朗報で、何という混沌でしょう。これで鍵盤ハーモニカにも光明が見えてきましたね。ノベル部分はどんなシーンが描写されるのでしょう?」
近「実はそんなに字数に余裕がありません。「一曲目の終わり→メンバー紹介→二曲目スタート」までの期間が、ノベルの内容になります」
J「では……『メンバー紹介!on guiter! 近ー江ー!』」
近「いぇーい!(じゃかじゃかじゃかじゃか)……みんなー!元気ー!?」
J「いぇ~い!元気ー!……みたいなコトをやる、というプレイングを書いて頂ければいいという訳ですね。あ、ちなみに紹介順はお気になさらず、近江様渾身の投げっぱなしジャーマンを決められて頂ければ幸いです。…えぇと、では。プレイング内で『舞台が終わってからビールで打ち上げ』とあったら?」
近「五人まとめてそういうプレイングだったら舞台が移動しますが、そうでなかったら、そういうコトをしたいとMCで語るんでしょう」
J「なるほど。どこまでもプレイヤー様に丸投…もとい。皆々様の発言・プレイング次第、という事ですね?…ところで近江様。クリスマスは暇ですか?」
近「ええ、暇ですよ」
J「ふぅん」
近「……」
J「……」
近「……えっ」
J「えっ?…あ?え?えーと、ひ…暇同士でぇー全力投球できますねーって。……ねーっ??」
近「え、ええ、まぁ。え、そういうコト? ええと、では、まとめます」
J「はい、まと…あっ、その! そういえばロドリゲスは? その辺は完全スルーですか!?」


[掲示板でやること]
・22日までにイベント掲示板で、OPにあるカードのうち一枚を引いてください。早い者勝ちです。
・カードを皆様が引き終わった段階で、23日までに楽器分けをブランが発表しますので、それに合わせたプレイングを書いてください。
・「どんな曲をやるか」は掲示板で話し合ってください。これは歌を決めるものではなく、「ロックやる」「バラードやる」の方向性で構いません。(既存の曲を指定するのはご勘弁ください)
・カード引き以外の相談発言については、義務ではありません。
[プレイングの指針]
・プレイングは「衣装や行動」つまり、イラスト発注の部分をメインにしてください。
 楽器の指定は細かいと助かりますが丸投げでも良いです。あまり深く考えないでください。
・ノベルは「一曲目終了時点~メンバー紹介~二曲目開始まで」の予定です。
・SS部分は「メンバー紹介の時に自分が何やるか」がメインのプレイングを推奨します。
「楽器をならして、パフォーマンスしたりトークをしたりする」のが基本になります。応用は是非ご自由にお考えください。
・ネタです。ネタじゃなくてもいいですが、他の人のネタを許容できる方、お願いします。
・推奨や予定は所詮、未定です。あまり縛られないで面白いコト考えてください。
 できる限り頑張ります。……が、外れすぎていたら拾いきれない事もあります。すみません。

近&J「そんなわけで、IL&WR、二人して妙に意気投合しておりますが、これが吉と出るか凶と出るか。そこらへんがよくわかんないテンションでお送りいたします『Emperor of X'mas music』です。よろしくお願いいたします!!!!」
近「……あ、タイトルを決める相談するの忘れてた」

参加者
ナオト・K・エルロット(cwdt7275)ツーリスト 男 20歳 ゴーストバスター
ファーヴニール(ctpu9437)ツーリスト 男 21歳 大学生/竜/戦士
秋吉 亮(ccrb2375)コンダクター 男 23歳 サラリーマン
ジャック・ハート(cbzs7269)ツーリスト 男 24歳 ハートのジャック
エドガー・ウォレス(cuxp2379)コンダクター 男 39歳 医師

ノベル

 飾り立てられた酒場にアップテンポのクリスマスソングが流れる。
 メドレーの最後のリズムが刻まれ、じゃんっ! と、ドラムと共に照明が暗転し、小さな拍手はキャーキャーと黄色い声援に変わり、口笛交じりの盛大な拍手へと変わる。

 ――思ったよりうまくいった。
 最初のメドレーを演奏し終え、メンバーはそれぞれに安堵のため息をついた。

 だかだかだか、じゃんっ! と、ドラムロールが鳴り、灯ったスポットライトはボーカルのナオトへと向けられる。
「めりーくりすまーっす!」
 ナオトの振り上げた腕にあわせ、観客から一斉に「「「メリー・クリスマス!」」」と返答が飛ぶ。
 予想以上のノリの良さに、音頭を取ったナオトの方が僅かにたじろぐ。
「お、俺なんかがこんな目立っちゃっていいのかな」
 どっ、と、会場から笑い声。
「でもまぁ、うん。みんなが楽しんでるならいいよね! それじゃあ、メンバー紹介! まずはー、ベース! リョー・アキヨシ!!」

 スポットライトは亮へと移る。
 予定ではこの合図と共にベースのソロプレイに入るはずだった亮が、それより先にマイクを手にとり「それ。トオルって読みます」と呟くと、観客から笑いが起きた。
「……ああ!? ごめん。やっちゃった!」
 あたふたするナオトに手を振ると、改めてベースを鳴らし始める。
 ボンボンと腹に響く低音の旋律は力強く鼓動をかきたてた。
 大観衆の視線を一気に引き受けると、さすがに緊張が引き立てられる。
「おおー、うまいうまいっ!」
「練習したからね。でも一人で練習したわけじゃないんだよ」

 ぼん、ぼん、ぼぼんぼん。

 太い弦が打ち鳴らされ重低音のリズムが加速を極める。
 と、同時に、亮の周囲に炎がひとつ、ふたつ、みっつ。
 中央に赤い帽子をかぶったセクタン(狐)のコン太が踊っていた。
 やがてクライマックスのコードを引き終えると、亮はふぅとため息をつく。
 満場、拍手の雨が降り注ぐ。
「ありがとう。それじゃ、次のメンバー。ギター担当はエドガー・ウォレスさん! ……コン太はまだ出番が欲しいみたいだから、エドガーさんの出番にもお邪魔します」

 紹介を受け、エドガーがギターをかき鳴らす。
 にこにこと楽しそうな笑顔を浮かべ、やがてギター単独で童謡定番のクリスマスソングを弾き語る。
 からんからんとハンドベルを手にクリスマスリースに身を委ねたセクタンが飛び回っていた。
 会場の子供たちから、手拍子を受けて歌い終わると「ありがとう」と手を振って応える。
「紹介させてくれるかな。ステージの上の……あそこにいるセクタン。ハンドベル担当はビリケンさん」
 わー! とこちらは子供からの拍手と歓声が大きい。
 当のビリケンさんは慣れない拍手に戸惑っているようだったが、それさえも「カワイー」と声援が飛ぶ。いつのまにか先ほどのコン太がそれに並び、えへんぷいと胸を張っていた。
「と、その横は、亮さんのセクタン、コン太」
 いぇーいと二匹は腕をあげてぴょこぴょこと踊り始めた。
 そこでライトはエドガーへと戻る。
 ギターの音色に、はじめはゆっくりと、しかし気がつくとギターよりも激しい音でドラムが鳴り響いていた。
 リズムの数は三重奏。三つ以上のドラムが同時に打ち鳴らされている。
「OK、それでは次のメンバー。オン・ドラム。スポットライトあててごらん。ちょっと面白いよ。ミスター・ファーヴニール!」

 がんがんがんがん!!
 どどっ! どどど、どどどど!!!!
「オーライッ! 本日はお集まりありがとぉーっ!!」
 本の腕が激しくスティックを振り回すが、時折、激しい鼓動を打つシンバルは彼の臀部から伸びた尻尾が担当している。
 腕が一本増えたように器用なもので、やがてリズムはスピードと激しさを否応なく増し続けた。
 ばちばちっ、と火花が飛ぶ。電撃が光る。
 やがて照明が落とされ闇夜となったステージ上でファーブニールの叩くドラムセットから飛び散る火花が、花火のように弾け飛んだ。
「どうもファーヴニールでーす! えー、この前、俺んちのポストに山芋流し込んだ人!」
 どかんと爆笑が巻き起こり、絶妙のタイミングでスポットライトを受けたナオトが咄嗟にマイクの電源をいれる。
「うん、つっこむところだよね! でも、オレにライトあてるトコなの、これ!? ちょっと待ってよ。それってどんな恨みを買ってるのさ!? っていうか、特殊過ぎない!? そもそもステージの上で言うこと!?」
「お兄ちゃん怒らないから出てきなさーい」
「怒ろうよ!? 手紙がにゅるにゅるだよ。手の甲についたらすっごいかゆくなっちゃうし!?」
「尻尾がかゆくてさ」
「どんな取り方を!?」

 ファーヴニールはドラムから降りると舞台中央へと歩み出る。
 やっほー! と声をあげると会場から元気な声が帰り、彼は満足そうに頷いた。
「クリスマスだぞー! 聖夜だぞー! ホテル取ってるかー!?」
「「「「いぇーい!」」」」
「取ってるのか。取ってるんだな! そんなヤツは爆発しろー!!!」
 おー! と笑い混じりの咆哮と共に、ステージを笑い声が包む。
 それは、ファーブニールへの合図でもあった。
「OK、爆発しろって言っても本当に爆発させたやつはいないよね! でも、彼が爆発させちゃうかも知れないぞ!」
 スポットライトが消え、舞台が闇に包まれる。

 五角形に配置されたキーボードの中心。
 ばちばちばちっと火花をあげて、彼は自ら光りだす。
 ドラムを鳴らし、次のメンバーの名前を呼ぶ。
『キーボード! ジャック・ハート!!』
「ギャハハハッッ! ヒャハハハ!!!」
 大きな笑い声に包まれ、彼を取り囲む五つのキーボードが同時になりだした。
 てんでばらばらなクリスマスソングだが、全てのメロディは禍々しい呪詛のような音素を持っている。
 思わず観客から感嘆のため息。
「俺サマはエレキ=テックだぞ! こんなちゃちい機材なんぞ何十だって操れるに決まってンだろォが! 曲なんざ1度聞きゃァ充分なンだよ。いッくらでもアレンジしてやるゼ」
 盛り上がっている観客のうち、幾人かの精神をダイレクトに除き、望むままのメロディを奏ではじめる。
 脳をスキャンされた対象の脳を撫で回されたような嫌な感触は、熱気とリズムでかき消す。
 キーボードのみで構成される楽曲はメロディアスなものになりやすい。
 悪魔を讃える賛美歌のような荘厳なキーボード五重奏に、彼の笑い声が響き渡る。
「よっしゃぁっ、ノってきたぜ。うひゃひゃひゃ。おい、次の曲行くぜ!」

 再びスポットライトはナオトにあたる。
「メンバー紹介でした。えと、俺、ボーカルとか初めてで、ちゃんと歌えてるか不安だけど……少しでも見にきてくれたみんなと楽しい時間を過ごせたら嬉しいな! じゃ次の曲。――聞いて下さい」
 マイクの横に顔を出したのは亮。
 にこっと微笑むと、彼はナオトより早くマイクに声を入れる。
『あいあむつりー』
「曲名違うよ!」
 どかん、と客が笑ったのを切欠にファーヴニールと亮がリズムを刻む。
 仕込んでおいた雪が舞う。
 エドガーが苦笑交じりにリズムを入れ、ジャックは「けっ」と悪態をつきつつ演奏を開始した。
「もう、どうしろっていうのさ!?」と困惑し、ナオトはアドリブで歌い始め、挫折して。プログラム通りの曲へと戻す。
 それがわりとウケているようで。
 そんな、クリスマスのステージに、白い雪が舞い始めた。

クリエイターコメント 。「Jack。です」
近「近江です」
。「二人合わせて」
近「ネオロドリゲスツーダッシュターボアクセルネクストジェネレーションタイムC’で す」
。「NRDTANJTC’………んろどたんじたく……」
近「略された!? しかも、とりあえず略して読んでたらちょっと格好良くない?な空気出してどーすんですかっ!?」
。「えと、いやはや。もーいくつも寝ないうちに節分でございますねぇ」
近「時が経つのは早いものです」
。「めりくりまして鬼は外ー!で良いと思います、この時期の時候の挨拶的なもの。あ、そうだ、あの。千葉では落花生をバラ肉で巻いて撒くって本当ですか?北海道の一部地域でも落花…」
近「ああ、落花生をマトンで巻いて焼くのですね」
。「マトン?いいえ、ラム肉です。 ※注意)このクリエイターコメントは嘘が混じっています」
近「今、※ってどうやって発音したんですか」
。「えっ?…こ、コメ?的な??」
近「※)ただしイケメンに限る。を正確に発音してみてください」
。「こめっこ! ばっと いけめん おんりー」
近「コメ、カッコ…で、こめっこ…ですか。いくら何でもそれは無理あるでしょう」
。「げふげふげっふん!!それもこれも全てにおいて真夜中の魔法ですと言い張ります。 …えー、さてさて。大変長らくお待たせいたしました。本日、イラスト付SSをお送りいたします」
近「字数の壁が!」
。「5000字も書いちゃうからですよ。一次原稿ですら3300字ですし。驚き桃の木山椒の木でござますよ」
近「古っ!? それはともかく本当にゴメンナサイ。でも、3000字に削るのは心苦しくて……」
。「それはよーく解りますけれども、他のを削ってまでネタ…」
近「いいと信じます。さて、イラストの方のネタですが。描いててどーでした?」
。「アレもコレも、と。ワタクシ実に優柔不断なので、ギリギリ限界までみっしりみっちりでした。そりゃあ阿鼻叫喚なカンジでどこをどう描いて良いのか、さっぱりぷぅ!で、指輪を違う指に描いちゃったり、左手を2本描いちゃったり、楽器をダブって描いてたのに全く気付かなかったり、顔を間違えたり、眉毛が二股になったり、眉毛が無くなったり、ワタクシの頭が吹っ飛んだり…」
近「頭を吹っ飛ばしても右手だけは死守してください。ギリギリになって、『やっぱりやり直す!』とか言い出すわ…。『ぷぅ』なんてその年齢で開き直って言い出してたら本末転倒なんですからね?わかります?」
。「うぎゅっ…!本当に申し訳なく…。楽しくなっちゃって。ついつい…えへえへ」
近「ってコトでイラストでした。ちなみに。ついつい笑って誤魔化して物事が片付いたらチャイ=ブレいらないですよねー。ねー?」
。「ちょっ!皆様に訴えかけるの禁止ー!しかもチャイ=ブレまで出しちゃう?今ので出しちゃう!?…ならばワタクシだって!ちょっと聞いてくださいよ皆様!イラスト、ほぼ丸投げなのでするよ!?」
近「くっ、バラされた!? …いやいやいや。何も見せてもらってない状態でこのコメント書いておりますので!? 丸投げにする言い訳ができ…もといお任せするしかないじゃないですか!」
。「きゃー!それバラしちゃいやっはん☆………ところで。ワタクシの名前、なんでJから。に変わってるのですか?」
近「Jack。さんを探す時、イラストレーター検索で「。」で検索したら出てきたんです」
。「マ ジ で す か!!……衝撃の事実! 「。」地味にすごい…」
近「ちなみに「J」でも大丈夫でした。でも半角だと別のIL様が出てきます」
。「…え?…じゃあ、別にJでも良かったのではございませぬか」
近「と、いうわけで、楽しいタッグでした。皆様、プラノベも始まりまして、まだまだ盛り上がるロストレイル。これからもよろしくお願いします。さて、次のJack。さんの発言でシメです。打ち合わせ段階で「好きにシメてください」と書いてJack。さんに丸投げしました。さぁ、どうなるか。お楽しみにー!」
。「お楽しみにーって何その投げっぱなしジャーマン!シメとか、その、スリーパーホールド的な締め技ならともかくシメとか改めて言われると!えぇっと、えぇっとおおおお!?!?」
近「巻き入りまーす」
。「あ、はい!ゴメンナサイ。…イラスト付SS第2弾【ターミナルのクリスマス】Emperor of X'mas music、如何だったでしょうか?見て楽しく、読んで楽しんで頂けましたなら、わいわい…もとい、幸いです。そしてこの度、タッグを組んだ近江様、描かせてくださった皆様、掲示板やSSへご参加希望してくださった皆様、ここまで見てくださった皆々様。本当に有難う御座いました。みんな大 好 き だー!!という訳で、これからもロストレイルを何卒よろしくお願いいたします、ていうか次のお楽しみは複数人ピンナップ。か、な。……わがんねども!!……って、そうだ。そういえば結局ロドリゲスの謎は最後ま(※都合により省略されました」
近「だから(※)はどうやって…」
。「でーはではでは!次回のイベントへ、レッツらゴーでござますよー!」
公開日時2011-01-31(月) 21:00

 

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