「もうすぐね、クリスマス。雪が降るなんて思わなかったわ」「そうだなー雪降るんだなー」「ケーキはどうしようかしら……普通のケーキもいいしブッシュドノエルも捨てがたいし」「ブッシュ……?」「あの切り株みたいになってるケーキよ」「あー両方いっちゃえばいいんじゃないの?」「そうね。みんなで食べるならそれもありかも……」「で、クリスマスってなに? たべられるの?」「そこへ直れ」●「というわけでさぁ……なんかよくわからんが一時間正座させられた」 知らないものを知らないと聞いただけなのに酷いよなと文句を言う真っ赤な髪のツーリストの青年はみんなに何やら招待状を手渡す。「パーティーやるんだってさ。ロズリーヌが会場おさえてる」 ターミナルでたまに小さな催し物が開かれていることのある一室だ。百人いたらぎゅうぎゅう詰めだろうが、十人や二十人の人なら十分ゆったりできるであろう一室。 元は会議用だったのかもしれない長い机をくっつけて真っ白なテーブルクロスをかけて大きな食卓にし、素っ気ない作りの椅子もロズリーヌが張り切って真っ赤なクッションを用意して座り心地の悪くないものになっているそうだ。 壁にはロズリーヌが青年に手伝わせて作った紙飾りが張り巡らされているという。 ――クリスマスにツリーもケーキもなしの人達がいるなんて許せないわ! 会場は用意するから貴方みたいな人を集めてきて!!――「……って言ってさ、ツリーの飾り付けは任せたと言われたんだけど、飾りってどんなか知ってる?」 飾り用ねと綿を渡されたんだけどさっぱりわからないと困り果てた顔の青年。その場にいた一同もそれぞれ複雑な表情だ。「もう俺だけじゃわけがわからなくって。手伝って欲しいんだよ」 ただ、パーティー用の料理とかはロズリーヌが張り切ってるから大丈夫だと彼は言う。あれはまずいものは作らないから思いっきり食べようぜと。「だいたいのとこはさー、ケーキ食べたり、プレゼントを交換したりとかみんなが楽しむもんだってのはわかるけどさ……」 でも、最近ターミナルのあちこちで明らかにやさぐれている人達も見かけるんだけどと言う声もあがる。真っ赤な服を着た人や、付けひげを用意する人がいるのはなんでと首を傾げる者や、最近いたずらっ子のコンダクターが妙に大人しいんだけど何か関係があるのだろうかという者もいる。「……クリスマスって結局どういうもん?」 青年は手のひらを天井に向けて肩をすくめる。「「「…………」」」「よし! こうしててもよくわからないし、俺達は俺達で楽しむべきだ!」 あと、クリスマスについて教えてくれるコンダクターがいたらよろしく! と彼は言うと、新たな招待客を捜して勢いよく駆けだしていった。!注意!このイラスト付きSSは、イベント掲示板と連動して行われます。イベント掲示板内に対応したスレッドが設けられていますので、ご確認下さい。掲示板への参加は義務ではなく、掲示板に参加していないキャラクターでもSSには参加できます。●ご案内こちらは特別企画「イラスト付きSS(ショートストーリー)」です。参加者のプレイングにもとづいて、ソロシナリオ相当のごく短いノベルと、参加者全員が描かれたピンナップが作成されます。ピンナップは納品時に、このページの看板画像としてレイアウトされます。「イラスト付きSS(ショートストーリー)」は便宜上、シナリオとして扱われていますが、それぞれ、特定の担当ライターと、担当イラストレーターのペアになっています。希望のライター/イラストレーターのSSに参加して下さい。希望者多数の場合は抽選となります。《注意事項》(1)「イラスト付きSS」は、イラストを作成する都合上、バストショットかフルショットがすでに完成しているキャラクターしか参加できません。ご了承下さい。(2)システム上、文章商品として扱われるため、完成作品はキャラクターのイラスト一覧や画廊の新着、イラストレーターの納品履歴には並びません(キャラクターのシナリオ参加履歴、冒険旅行の新着、WR側の納品履歴に並びます)。(3)ひとりのキャラクターが複数の「イラスト付きSS」に参加することは特に制限されません。(4)制作上の都合によりノベルとイラスト内容、複数の違うSS、イベント掲示板上の発言などの間に矛盾が生じることがありますが、ご容赦下さい。(5)イラストについては、プレイングをもとにイラストレーターが独自の発想で作品を制作します。プレイヤーの方がお考えになるキャラクターのビジュアルイメージを、完璧に再現することを目的にはしていません。イメージの齟齬が生じることもございますが、あらかじめ、ご理解の上、ご参加いただけますようお願いいたします。また、イラスト完成後、描写内容の修正の依頼などはお受付致しかねます。(6)SSによって、参加料金が違う場合があります。ご確認下さい。
ターミナルにはそれを知っている者もいたし、知らない者もいたし、知らないふりをしている者もいた。 元々は宗教的な行事だったはずのそれは、その宗教を信仰していない者にも広く浸透していた。もちろん、本来の意味通りにその日を過ごす者も多かったが、そうでない者も多い。 ましてやここはターミナル。国や世界を飛び越えて様々な人、あるいは人じゃない者が集まっている。 本当はいけないのかもしれないけれど……楽しんだ者が勝ちなんじゃないかしらとある少女は笑った。 「クリスマス? それは何なんだ?」 彼はそれを本当に知らない者だったのでへんてこなクリスマスツリーの前で首を傾げる。 Σ・F・Φ・フレームグライド。 彼の世界にはそれがなかった。 幸い、正しいクリスマスを知っていた者の手により、何故か引っかけられていた毛糸のパンツや、ちょっと間違ってしまっていた手袋などは外されていく。 少しずつ飾りつけが直されていき、段々とクリスマスツリーらしくなっていく。 しかし、「クリスマス爆発しろ」という横断幕がなかなかに立派で痛々しい。どういう気持ちで用意された物なのかあまり察したくない。 「クリスマス……それは……リア充爆発しろ!」 すこしへんてこなクリスマスツリーにへんてこな短冊を増やしながら叫ぶ者がいる。 「クリスマスって爆発するのか?」 へんてこな短冊を手に取り、なんだこれとシグマはまた首を傾げる。横断幕にも爆発しろとあった。 だが、よくわからないが何か違う感じだぜと思う。 「違う違う違う。爆発しない」 「死にそうな顔してる人はいるけどね」 「主に爆発しろとか叫んでる人達が自爆気味にね……その辺が」 「こっちみんな」 何人かが顔をそらした。彼らもどこかではわかっているはずだ。自分たちの過ちを。 「リア充って?」 それもシグマは聞いたことのない言葉だ。シグマじゃなくても知らなくてもよい言葉かもしれないが。 「えぇっと……ラブラブ?」 「クリスマスは決して恋人と楽しく過ごす日なんかじゃないんだぞ!!」 「大切な日を大切な人と過ごしたいってのは有りだと思うのだけど……」 「元々はある宗教の創造主の誕生日が……」 「宗教? おれのとこなら龍神王かな」 ホワイトドラゴンなのが、玉に瑕だがと言う彼に少女は感心したような顔だ。 ドラゴンが伝説の存在である場所もあるが、彼は彼自身がレッドドラゴンだ。 「世界によって色々あるのね。まあ同じ世界内でさえ色々違いはあるけれど……つまりはお祝いなの」 ドラゴンがいる世界もあれば、ない世界もある。 クリスマスがある世界もあれば、ない世界もある。 でも、どんな世界の者も今は一緒にお祝い出来るのだ。 「お祝いか? じゃ、これをかけるか」 そこには「2011年おめでとう」という横断幕。 それはそれでクリスマスとはちょっと違ったかもしれない。 でも、クリスマスが盛大過ぎて新年のお祝いはあっさりの地域もあるのだからいいのかもしれない。 クリスマスが終われば新しい年はあっという間だ。 少なくともネガティブな横断幕よりずっといい。 元の横断幕は奥に追いやられて新しい横断幕が掲げられる。 「とにかく、お祝いなら、お祝いだ!」 「えぇそうね!」 何だか間違ってもいるかもしれないが、その場の者達がなんだか楽しい気分になってきたのは間違いない。 パーティーはこれから。 ケーキもごちそうも、みんなの為にある。窓の外ではターミナルの特別な雪が降り積もるが、部屋の中は暖かくて気持ちよい。 リア充じゃないかどうかなんて些細な事だ。 賑やかなクリスマスの夜は更けていく。 それは朝日が昇るまで続いたとか続かないとか。 「メリークリスマス!!」 「それから……よいお年を!」
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