おとめ座に搭乗した旅人たちは、戦闘の心構えなど、していなかった。 なんとなれば、それは、レディ・カリスが改めて主催した、トレインウォーなどとは無縁なお茶会を経て、北欧の古城で待つロバート卿とディナーをともにするという――顔ぶれこそ華やかだけれども、きわめて穏当でささやかな小旅行となるはずだったからである。 † † † ドバイへの招待に応じた人々が帰還してまもないころ、レディ・カリスのもとにロバート卿からのメッセージが届いた。 暑いドバイから一転、ロバート卿は現在、別荘のひとつとして所有する北欧の古城で避暑中であるらしい。 ――親愛なるレディ・カリスへ。 よろしければ久しぶりに、ディナーなどご一緒しませんか? ロストナンバーの皆さんを是非、お誘いください。小さな城なので、あまり大勢のかたの席をご用意できないのが心苦しいのですが……。 カリスへの招待の形を取ってはいるが、要はロストナンバーといっそう親睦を深めたいという下心があるようだ。それを察したうえで、カリスはその誘いに応じることにした。 「レディ・カリスから、お茶会の招待状をお預かりしました。会場は、壱番世界のスウェーデンへ向かう、ロストレイル6号の食堂車です」 リベルは、去るトレインウォーのときと同様の言い回しを使ったが、その表情は落ち着いていた。 このお茶会は、ロバート卿の別荘へ到着するまでの、いわばエレガントな時間つぶしであること、おとめ座車両本来の優雅さを楽しんでもらうため、レディ・カリスも、同行するフットマンも、ギアは不携帯であることなどを聞いていたからである。「前回は錯綜した事象があったため、列車の中では行き届いたおもてなしができなかったので、主催者として再度の機会を設けたいとのご意向です。なお、ロストレイル6号は、トレインウォー発動時に損傷した部分の修理は完了していますが、カリスさまの指示により、武器の発射口の機能回復はあえて行っておりません。ですが招待客である皆さんはお気遣いなく、通常の冒険旅行同様にギアをお持ちくださればと思います」 武装解除した乙女のもとで、剣を持たぬ女王からのもてなしを―― 招待客はその趣向を珍しがり、薔薇で満たされた食堂車で、カリスを囲み、演劇談義などに華を咲かせた。 世界樹旅団の脅威が迫っていることなど、知る由もなく。 † † † 薔薇で満たされた食堂車で、ゆったりと格調高く進行していたお茶会は、突然の衝撃で中断された。 車体が大きく揺らぐ。 ――敵、来襲。 緊迫したアナウンスが響いた。 窓の外を見た招待客たちは、ディラックの空に、空飛ぶ円盤をみとめた。 不規則な動きをした後、円盤はいったん見えなくなる。しかし消えたわけではなかった。 よりによって、ロストレイル6号の上に着陸したのだ。 ――そして。 いとも巨大なウミヘビ型ワームが、車両全体に巻きついている。 頭全体を口としたワームは、鋼鉄をも噛み砕きそうな歯を見せて咆哮を上げた。触手を思わせる長い尾でロストレイルを締め上げ、火のように赤い舌で、その装甲を舐めはじめる。 まるで、捕らえた獲物を弄ぶように。 連結部分がぎりりと軋む。おとめ座号は、抵抗にともなう悲鳴に似た、鋭い音を放った。 食堂車のシャンデリアがちぎれ飛んだ。繊細なレースのテーブルクロスが滑り落ちる。 20世紀の最高傑作といわれるアンティーク・ウエッジウッドの「フェアリーランド」、月明かりと妖精が金彩で描かれたティーポットとティーカップが、粉々に砕け散る。 飛び散った破片のひとつが、カリスの白い腕をかすめた。 陶磁器のような肌に血の線が走った瞬間、破られた天井から闖入者が数名、現れた。「お下がり、無礼者!」 カリスは女王然とした態度を崩さない。 通常であれば、自身のギア――その称号の由来となった聖杯(カリス)の剣で迎え打つところだが、それもかなわないまま、暴漢たちを見据える。「恥を知りなさい。無抵抗な乙女を傷ものにし、お茶会の邪魔をした野暮。わたしの招待客の貴重な時間を費やす狼藉。たとえ這いつくばって詫びようとも、ゆるしません」 敵のひとりが、酷薄に笑った。湾曲した白刃が、カリスの首を横なぎに払おうとする。 その一閃を、両腕を交差させて、蛙のフットマンが受け止めた。 別のひとりが長槍でカリスの足首を狙う。それは身を挺した魚のフットマンのふくらはぎに、深々と突き刺さる。 血しぶきが飛ぶ。 骨と関節が砕ける、にぶい音がした。 「大事ありませんか、カリスさま」「お怪我のお手当をしなければ」「ありがとう。大したことはないわ」 いつもの丁重な物腰でフットマンたちは問い、いつもの優雅なあるじのいらえに満足げに頷くと、どさり、どさりと、交互に床にくずおれた。 外にはワーム、中には敵。ロストレイルの武器は使えない。 絶体絶命と思われた、そのときだった。「カリスさま。射手座が……。ロストレイル9号がこちらに……」「うわぁぁ、つっこんできたぞ!」 こちらに突入してきた射手座車両は、少し上に逸れた。 天板の上を、激しい勢いでこすっている。 爆音が、いや、ずしん……、と、重い衝撃が響いた。 車体全体で、ワームに体当たりしたのだ。 ウミヘビはキシャアアアと叫ぶ。 車両の拘束がゆるみ、巨大ワームはおとめ座号から引き剥がされた。 射手座はワームを引っかけたまま、連れ去ってくれた。「助かった……。ありがとうな。……けど、おい!」 射手座に乗ったロストナンバーたちが、こちらの難をみとめ、救いの手を差し伸べてくれたらしいのだが。 しかし―― 難を脱したのはこちらだけで、ワームにとっては標的を変更しただけだ。 今度はその大きな口を、射手座めがけて獰猛に開けている。 射手座車両とて、すでに追いつめられているようなのに。「……頼んでもいないのに、無謀なことを」 謝意の代わりにそういって、カリスは敵を振り返る。 まだこちらが不利であるのに、あたかも圧倒的優位にあるような、高慢な目線と物腰で。「あなたたちの神に祈るのなら、今のうちですよ。覚悟なさい」========!注意!イベントシナリオ群『ロストレイル襲撃』は、内容の性質上、ひとりのキャラクターは1つのシナリオのみのご参加および抽選エントリーをお願いします。誤ってご参加された場合、参加が取り消されることがあります。また、このシナリオの参加キャラクターは、車両が制圧されるなどの状況により、本人のプレイングなどに落ち度がなくても、重傷・拘束等なんらかのステイタス異常に陥る可能性があります。ステイタス異常となったキャラクターは新たなシナリオ参加や掲示板での発言ができなくなりますので、あらかじめご了承下さい。========
PROLOGUE■VS The Enemy 「上から目線の女なんて、大キライ。みっともなく死んじゃえばいい。華やかなものは、キライよ」 少女は、黒い靴のかかとで、足元に落ちた青い薔薇を踏みにじる。 ――そう。 可憐な容姿に不似合いな、大振りの白刃を操っていたのは、まだほんの少女だった。 細身の身体に黒のラバースーツを身につけ、動きは軽快で敏捷である。戦闘に慣れているらしく、身のこなしに迷いがない。 愛らしい口元を憎々しげに歪め、またも容赦なくカリスを狙ってくる。 今度は首ではなく、四肢を。 「右手、右足、左手、左足。順番にバラバラにしてあげる。血の海で泣きわめくがいいわ。首を切るのはその後よ」 しかしその一閃は、再び阻まれた。少女に勝るとも劣らない俊敏な所作で、白刃が受け止められる。耳障りな高音が、きん、と、響き渡り、青い火花が飛んだ。 「……だめ」 銀の風のような長い髪が、さらさらと流れる。ディーナ・ティモネンだった。 ほっそりとした両腕が支えているトラベルギアは、少女の武器よりもはるかに小ぶりな――サバイバルナイフ。 「カリスさまを、傷つけないで」 「驚いた。こんなちっぽけなナイフで……」 少女の青い瞳が、意外そうに見開かれた。 白刃の直撃をぶつけられてなお、ディーナのサバイバルナイフは折れも欠けもしない。それどころか、少女の武器のほうが刃こぼれしているではないか。 「ふぅん。やるじゃない。邪魔すると、あんたも無事じゃすまないんだけど?」 この武器、気に入ってたのになぁ、と言いながら、少女は惜しげもなく白刃を投げ捨てた。その代わりとでもいうように、腰の短剣を抜き放つ。 ゆるく波打つ銀色の髪に、淡い色のくちびる。少女の面差しはディーナによく似ていた。向かい合うと姉妹のようにも見える。 「遊ぶな、ディア。殺るんなら一撃で仕留めろ。でなければ、こいつらを外に放り出せ。目的はあくまでも車両の奪取だ」 フットマンのふくらはぎから長槍を乱暴に引き抜いたのは、ぞっとするほど美しいアルビノの青年だった。白い前髪ごしに、赤い瞳が鋭く光る。 魚の意匠のフットマンは、激痛にうめき声を上げた。 「ちょ、魚さん、大丈夫? ……なわけないか」 フットマンに視線を落とし、ファーヴニールはため息をつく。 「あのさぁ。俺たち、優雅にお茶してたところだったんだよねぇ。アトラクションにしちゃ、ちょっと不細工なんじゃない?」 「黙れ」 アルビノの青年は、長槍の柄を浅く持ち替え、大きく後ろに引いた。血まみれの切っ先をファーヴニールの喉に向ける。 そのまま、力をこめて突き刺そうとしたが。 ……キィィィン。 金属音が響き、槍先は弾かれた。 喉部分にのみ、竜変化を行ったのだ。鋼のように硬化した鱗には、どんな刃物も貫通しない。 「竜に変化できる能力者か。……俺と同じだな。面白い」 見れば青年の両腕も、いつの間にか純白の鱗に覆われている。ファーヴニールに匹敵する、竜の鱗だ。 「やだなぁ、ニィルまで。遊んでないで、さっさと終わらせて帰ろうよ」 憮然として言ったのは、ボロボロの剣道着に地下足袋を履いた少年だ。これまたボロボロの竹刀を持っているが、殺傷能力のほどはまだわからない。 「てめぇらこそもう帰れ。何なんだよ畜生!」 不機嫌そうな顔で、木乃咲進が毒づいた。 「北欧の古城でフルコースディナーな予定を台無しにしやがって。せっかくタダで茶が飲めて飯まで食えて、うまくすりゃ2食も浮くイベントだってのに、ああもう」 名残惜しそうに床を見下ろし、残骸と成り果てたアフタヌーンティーセットのゆくえを嘆く。 「あれ? もしかして君も、強力な貧乏の呪いにかかってるのかな?」 少年は小首を傾げた。 「ぼく、貧乏神に祝福された一族出身なんだ。そんな祝福いらないんだけどね。すぐお腹すいちゃうし面倒くさいからホントは戦いとかイヤなんだけど、世界樹旅団の依頼受けたら報酬でるんで」 「そうか、同じだな……、って、全然うれしくねぇ!」 進は、ぽりり、と頭を掻き、超然としたままのカリスを見やった。 「なぁ、女王様。なんでそこまで強気なんだ? 俺たちを信頼してるってことか? それとも単に馬鹿なのか?」 「お利口なひとなんて、ロストナンバーにはひとりもいないのではないかしら。知られざる<真理>に気づいてしまうことの方が、愚かしいのではなくて?」 「なら、世界樹旅団の連中も、俺たち同様の馬鹿ばっかってことか。そう考えると余裕もでるな」 進は肩をすくめた。 「だねぇ。招待状なしで押しかけて、口上もなしで斬りかかるとはねー。礼儀がなってないよ」 ハギノが腰を屈め、フットマンの傷口を検分する。治療環境がないのはいたしかたないとしても、出血を止めないと命に関わる。 「いざ尋常に勝負……、もいいんだけど、その前にこのひとたちの手当、よろしい? 男前な射手座の皆さんに負けたくないしね」 ガラスが砕けた窓越しに、ウミヘビ型ワームを連れたロストレイル9号が、ハギノの視界に入った。 弓なりにしなったワームの胴体は、いまわしい蔓と化し、射手座車両を絡めとっている。 くわ、と、闇を内包した顎が開くのが、遠目にもわかる。呪われた剣を逆さに並べたようなウミヘビの牙は、先頭車両に獰猛な楔を打ち込んでいた。 ――瞬間。 空気を引っ掻くような、不快な音がした。ハギノの頬をかすめ、赤い手裏剣が飛んできたのだ。手裏剣は深々と、床をえぐる。 ハギノと同年代と思われる「くの一」だった。今まで気配を殺し、窓枠に腰掛けていたようだ。ポニーテール状に結んだしなやかな金髪には、緋牡丹のかんざしが一輪。豊かな胸を、白いさらしできつく締め付けているさまが痛々しい。 「弱いものが死ぬ。それだけだ。放っておけ」 「……そうもいかないっつーの」 くの一のほうを見もせずに、ハギノはテーブルクロスを器用に引き裂いて、即席の包帯を作る。 「カリスさま。何か、消毒薬とか、止血薬とかは……?」 カリスは無言で首を横に振った。 「薬関係の持ち込みはないにしても、せめて、代用になるものは……」 「厨房に行きゃ、フレッシュハーブがあるんじゃないですかね? ミントとかラベンダーとかカモミールとかレモンバームとかカレンデュラとか。何がどこまで効くんだかわかんねぇけど」 鹿毛ヒナタは、もったいねぇ、と、つぶやいて、アンティーク・ウエッジウッドのティーポットの欠片を見下ろす。 先ほどまで、この中には、香り高いハーブティーが入っていたのだ。もっとも、ヒナタが惜しんでいたのはお茶ではなくて、美術品としての食器だったのだが。 「そっか。薄荷(ミント)類は鎮痛作用と抗菌効果があるし、金盞花(カレンデュラ)は、損傷を受けた皮膚を修復する効果があったっけ」 ハギノは大きく頷く。 同時にヒナタは、お茶会の間は外していたサングラスを装着した。 ――影が、伸びて広がる。薄く強固な、鋼鉄のバリヤのように。 防御壁を展開したのだった。 重傷者の応急手当に動こうとするハギノの援護と、そして丸腰のカリスのために。 ハギノは素早く駆ける。 やはり目を覆うばかりの惨状となっていた厨房から、それでも、ありったけのフレッシュハーブを抱え、戻ってきた。 ハーブの束から選び出したペパーミントとカレンデュラを、フットマンたちの傷口に括りつける。 「気休め程度だけどね。何もしないよりいいっしょ。……え?」 「うわ」 ハギノが、包帯を巻き終わったときだった。 色彩の洪水があふれ―― 轟音とともに、散弾銃に似たものが連射され―― ヒナタの防御壁が、破られた。 BATTLE.1■Albrecht Dürer Rose 色の坩堝が、かたちを取る。あるいはかたちを崩す。 藍。瑠璃色。浅葱色。葡萄色。臙脂色。朱色。紅蓮。山吹色。萌黄。翡翠色。若竹色。そして、玉虫色。 「やれやれ。私と似たような力を持つ青年がいようとはね」 洗いざらしのシャツにジーンズ。黒髪に黒い瞳。ヒナタの通う美術専門学校の講師にでもいそうな風貌の男が、よっこらしょ、と、腰を上げた。 今まで彼の姿が見えなかったのは、椅子の背の裏にしゃがんでいたかららしい。 「……マジかよ」 男は平筆を持っていた。それが彼の武器なのだろう。「色」を生み出して重ね、自由自在に変化させて攻撃と防御を行う、影を駆使するヒナタとは同等にして相反する力。 だから今、彼の「色」の弾丸が「影」の防御を穴だらけにすることができたのだ。 (厄介だなぁ) 防御壁を展開するかたわら、ヒナタは敵勢に気づかれぬよう、食堂車の壁全体に添って影を這わせていた。幸か不幸かシャンデリアは落ちており、車内は薄暗い。様子を見て一気に迫り上げ、影を鋼糸質の鋭いネットに変えて一網打尽、のつもりだったのだが。 (こいつには通用しないってか。くそう) まずは、この男の動きを封じる必要がある。ヒナタは、根元部分だけを防御用に残し、すべての影を束ねることにした。 大木のように太く、鞭のようにしなる荒縄ができあがる。 ぴしり、と、男を打ち据えようとした影の鞭は、しかし、色彩の剣で切り裂かれてしまった。 (ちっ) ……何度、同じ鞭を作り直しても同じだ。 堂々巡りだ。どうしてくれよう。ヒナタはじりじりと後退していく。しかし男の口調はどこか呑気だった。 「お手やわらかに頼むよ。私は、荒事は苦手でねぇ」 「ビビリかよ! じゃあ、なんでここに居んだよ?」 「きみこそ、なぜ、ここにいるのだね?」 「ま、成り行きで」 「この襲撃、私はあまり気が進まなかったんだよ。それでも、ディアやニィルの後方で援護するだけなら怪我もしないだろうしと」 「ええと、あんた、戦闘訓練とか、武術の心得とか」 「私の本業は絵描きだよ。そんなものがあってたまるか。殴り合う喧嘩だってしたくない」 「……なんつーか、俺とおんなじ? 人殺すのなんて絶対無理だし、怪我すんのも怖いし辛いし」 絵描きは手が命だ、好んで傷物にするもんか。男とヒナタは、異口同音に叫ぶ。 (なるー。メンタル的なものも近いのか。てことは……) 「命のやりとりとかって、重いよね。つかめんどくせ」 「まったくだ。殺し合いなど、したい連中だけですればいい」 「椅子の後ろに隠れてたのって、だからだよね。いいじゃん、攻撃は他の人にまかせてこっちは適当にやってれば、そのうち決着つけてくれそうじゃね?」 ヒナタは後退を続けるふりをしながら、脱力系の会話を仕掛けた。ある意図があったからである。 「絵描きつったけど、やっぱ色使いとか、巧いんだ?」 「抽象画専門でね。色彩感覚は天才的と言われている」 「あっそー」 「しかし、デッサン力がいまひとつなんだ」 「は?」 「人物画なんか関節が複雑骨折しているし、建物を描いても迷路館か斜め屋敷にしかならない。素描力の欠如を塗りでごまかす辛さが、きみにわかるかね?」 「正反対の意味でなら、わかる」 その点は心の底から同情するが、それはそれとして―― 「今だ、舟! こいつに懐けぇーーー!」 ヒナタはオウルフォームのセクタンに命じた。舟はぱたぱたと飛び、男の顔にダイブする。 ふわもこのフクロウにすりすりされ、男は目を白黒させている。 ヒナタの読みは当たった。やはり動物との接触が苦手なのだ。自分同様に。 固まった隙に、テープ状にした影で男の目を覆い、身体全体をぐるぐる巻きにして拘束する。 「よっし、これで筆は使えないよな。間違って誰か殺したら嫌だろうし。下手に動いたら絞めっぞ」 再び、カリスとフットマンたちの周囲に防御壁を作りながら、ヒナタはふと、足元の薔薇を拾い上げた。 それは、ヒナタの席にテーブルフラワーとして置かれたものだった。 ――アルブレヒト・デューラー・ローズ。 縁はピンク。中心はオレンジ。裏はクリーム色。 ルネッサンス時代のドイツ絵画の巨匠にちなんだ、個性的な薔薇である。 「カリスさまぁ。これ、俺用に用意したのって何かの嫌みっすか?」 「あなたは素描だけなら、デューラーに匹敵するのでしょう?」 「なにそれ、どこ情報ッ!?」 BATTLE.2■Spirit of Freedom イングリッシュローズの名花、スピリット・オブ・フリーダム。 進の席に飾られていたライラックピンクの薔薇は、かろうじてまだ、テーブルに残っていた。ガラスの器は割れ、薔薇は放り出されていたけれども。 それを尻目に、進は軽く指を鳴らした。 「そんじゃま、そこの貧乏神。俺たちもちょっと、時間つぶしといくか」 「略さないでよね。貧乏神の祝福を受けた一族だよ。ちなみにぼくは、由緒正しい旧家の134代目」 「旧家で貧乏って、ありがち過ぎて涙が出るな。名前、何てんだ?」 「歩(あゆむ)」 「俺は進だ。よろしく……、って、友達にはなれねぇけどな」 軽口を叩きながら、進は剣道着の少年を観察した。 飄々としているが、隙がない。 同じように進の力を見定める視線を送ってから、ゆっくりと竹刀を構え――そのまま、ひたと、動かない。 進のギア【虚刻】は、切れ味の良い13本のナイフだ。これを駆使して攻撃することも、可能ではある。 だが進はそうしなかった。 合気道の構えを取り、少年をひたと見据える。 しばらく、睨み合いが続いた。 進の戦法は、この状態を維持したまま、ひたすら待ち続けることだった。 何となれば―― おとめ座を急襲した5名は、皆、さほど年もいっておらず、連携も取れていない。おそらくは打ち合わせもなしに急遽結成されたメンバーなのだろう。 それは、招待に応じて偶然に遭遇することになった自分たちとて、同じことではある。 ひとつ違いがあるとすれば、彼らは、あまり横のつながりを意識していない、誰かを助けようとは考えていない、と、いうことくらいだろうか。ただ、与えられたミッションに赴き、思い思いの行動を取っているだけという印象を受ける。 彼らは、ここにいる全員を倒さない限り、列車の制圧は完了しない。もちろん進を含めてだ。 進を倒すには、歩は攻撃を仕掛けないといけない。 だが、合気道はそもそも攻撃を『流す』為の技だ。竹刀では崩せない。 もしかしたら歩も、空間をループさせる能力を持っている可能性もある。進と同じ、力を。 (たとえ、そうだったとしても) 少年が空間転移を使い、遠距離から攻撃したとする。しかし、進もまた空間遣いなのだ。それは即座に無効化できる。 しかも、足場は悪い。 つまり――、攻めに出るには最悪の状況なのだ。 ゆえに、待つ。ひたすら待ち続ける。 そうすれば、敵を倒し終わった誰かの増援も見込めるだろうし、最悪、そのときに隙を付いて攻めに反転してもいいだろう。 この状態にしびれを切らし、功を焦って攻めてきてくれれば、それこそこちらの思うつぼだ。 (こいつが他のやつらの応援に向かうとは思えんし、……そうだったとしても、背を向けた敵を討つくらいは楽勝だ) 反対に、誰かを倒した敵がこちらに来る可能性は低いにしても、なくはない。 だが、そこは、ロストナンバーの底力を信じるとしよう。 (結局、今も昔も、俺は一人じゃ何にもできねえ) 進は皮肉めいた笑みを浮かべた。 (……せいぜい、もう一人の俺という、中二的な馬鹿を足止めするので精一杯だ) BATTLE.3■Lavender Pinocchio 好戦的であったり戦闘回避を望んだりなど、個々それぞれに考え方は違うようだが、おとめ座を襲ったメンバーが全体的に士気が低いことを――作戦行動における矜持に欠け、責任感もさほどでないことをハギノは感じ取っていた。 何しろ12台のうち、制圧の楽そうな非武装車両を選び、丸腰の女性に問答無用で斬りかかったりしたのだから。 金髪のくの一に、ハギノは、散りかけの薔薇を投げる。 ハギノの席にあったラベンダー・ピノキオだ。茶を帯びたラベンダー色の、クラシカルな花である。 反射的に受け取って、くの一は怪訝そうに眉を寄せた。 「弱いやつは放っておけ、っていったよね?」 「……それがどうした」 「じゃあ僕も、くの一さんを放っておいたほうがいいのかなぁ」 「どういう意味だ」 「だってさぁ、弱いんでしょ? くの一さんは世界樹旅団に言われて従っているけれど、割り切れてないんじゃないの?」 「そんなことはない」 「主の命であれば全てを『是』とし、どんな手段を使っても遂行するのが忍び。そう教えられて生きてきたけど、本心はそうじゃないんだよね」 「……違う」 「卑劣な手はとりたくない。殺すのも好きじゃない。こんな弱さは捨てなきゃいけない。でもそれもできない」 「違う!」 赤い手裏剣が乱舞する。 滅茶苦茶に、ハギノを狙う。 ふだんのハギノであれば、他者を巻き込まないように大きく離れて動くところだ。しかしハギノは、攻撃を敏捷に避けながらも、あえて付かず離れず、くの一との距離を保った。 そのために、彼女を挑発したのだ。 彼女にぶつけた言葉は、そのまま自分の弱さでもあると知りながら。 座席。 壁。 天井。 そして車外。 ハギノは、目にも留まらぬ三次元的な動きと術で相手を撹乱し、移動する。 ――と、見せかけて。 実は移動しているのは、車外に飛び出すと見せかけて作り上げた、分身だった。 本体であるハギノは車内に留まり、椅子の影に隠れて様子を見ていた。 くの一も車外に出、車両の上を駆けていたが、やがてまた、分身を追いかけて車内に戻ってきた。 (今だ) 進と歩が間合いを取り続けているのを背に、分身は立ち止まる。 それを位置取りの失敗と、くの一は看做した。 進が、後ろにいる。 ハギノが避ければ、赤い手裏剣は進を直撃する。 この失策を見逃すはずもない。くの一は満身の攻撃を放った。 連打される手裏剣。 どす、どす、と、肉を刺す鈍い音。 血を流し、忍者は倒れ伏す。 攻撃を避けずに、味方を庇いながら。 「何……?」 くの一の唇が、驚愕で開かれる。いや、彼女とて、この結末はわかっていたはずだ。 わかっていて、攻撃した。 だけど……。 自責に囚われ、くの一は肩を落とす。 その背にハギノは手刀を放ち―― 不意を突かれ、くの一は気を失った。 彼女が冷静であれば、ハギノが分身であることに気づいただろう。 弱さを突いた作戦を取ったのはハギノの判断ではあった。しかし……。 この気の滅入りようは、なんとしたことか。 「あーあ、あほらし。やってらんねーっつーの」 男相手だったら、手刀ではなく刺していた。たぶん急所は外して。 そう考えてしまうのも、うんざりするような自分の弱さだ。 ……けれど。 この弱さを超えた先には、いったい何があるというのだろう。 何もないのか。 あるいは、もっと恐ろしいものが待っているのだろうか。 BATTLE.4■Acropolis Romantica アクロポリス・ロマンティカは、ブーケのような房咲きの薔薇だ。白地に明るいピンクで、裏弁にはかすかにグレーとグリーンを帯びた、非常に独特な花色である。 まだ型くずれしていないその薔薇を、ファーブニールは散らさないようにテーブルの真ん中に置き直す。 「……さって、と。か弱い女の子を泣かせるような悪い男は、お仕置きしないとね」 「女の子だと?」 「このロストレイルのことだよ。おとめ座なんだ。可愛いでしょ」 「くだらん」 ニィルと呼ばれたアルビノの青年は、長槍をくるりと一回転させる。 ……と。その形態が変化した。拳銃に短刀がついた形態のコンパクトな銃剣――ファーブニールのトラベルギア、エンヴィアイと同系統の武器に。 「そこまで似た者同士なんだね」 ファーヴニールは臆することもなく、エンヴィアイを構える。 通常は深い紫の銃身を持つ彼のギアは、今は展開され、銀色の長剣となっていた。 射撃は使用しないつもりだった。流れ弾が味方に当たることを防ぐためである。 「甘いな」 ニィルはにやりと笑い、ファーヴニールの額を狙って銃弾を放つ。 間髪おかず、竜の鱗で額を覆う。 鋭く弾き返された弾丸は、同じ衝撃でニィルの胸に跳ね返った。しかし、弾は胸にめりこむこともなく、ぽろりと床に落ちる。どうやら彼も、服の下を純白の鱗で覆っているらしい。 ファーヴニールが長剣で喉を狙う。ニィルがかわす。 ニィルが短刀を突き出す。ファーヴニールが長剣の柄で受け止める。 足元にニィルが銃弾を打ち込めば、ファーヴニールの長剣もその腕に斬撃を与える。 竜変化した腕の鋭い爪を、ファーヴニールは一閃させる。 ニィルもまた相手を切り裂きべく白竜の手を発現し、振り上げる。 「キリがないな。あきらめてとどめを刺させろ」 短刀を胸に突きつけ、酷薄にニィルは笑う。 「君の弱点って、なんだと思う?」 その刀を経由して電撃を与えながら、ファーヴニールは笑い返す。 「そんなこと、教えられるか」 「スバリ冷却かな。死にはしないけど動くの厳しいよね。鱗っていわば金属だし」 「それはおまえも同じだろう」 「まぁね。でも、答えてもらわなくても、わかってるよ」 一番の弱点は「心」だ。 力に対しての覚悟のなさかな。 生きる為に殺して、恨みの為に狩って。 俺は絶対無敵なんだと、そんな錯覚に沈んでいた。 その驕りが間違いを産んで、彼女を殺して――今、ここにいる。 「世界図書館のある世界ってさぁ、楽しいんだよ。いろんなことが起こって、仲間もいて」 「……?」 「でも、それに頼って甘えてちゃ、いけないんだよね」 ――だから、負けられない。 皆の強さと優しさに。 それに驕る、自分自身にも。 自分の弱さをわかっているから、それを見せたくないから、負けたくはない。 それは永遠に続く、終わりのない戦いだ。今、この瞬間も。 ファーブニールは、エネルギーを光学回路で全身に走らせた。 ドラグレット戦争を経て取得した技、「竜の心」の発動である。 短距離電磁加速、そして、神速の斬撃―― 「俺は負けないよ。自分自身に。……だけど、君はどうかな?」 BATTLE.5■Applause 薔薇には、青色色素を作る能力がない。だからこそ青い薔薇の花言葉は「不可能」だったわけだが、壱番世界のバイオテクノロジーはそれを可能にした。 14年の歳月を費やして作られた壱番世界初の青薔薇、アプローズ。花言葉は「夢、かなう」。 ディーナの席に用意されていたのは、その薔薇だった。そして、床に落ち、ディアに踏みしだかれてしまった薔薇も。 (この子の戦い方、私に似てる) サバイバルナイフと短刀でお互いの急所を狙いながら、ディーナとディアはずっと戦い続けていた。 姉妹のようによく似たふたりは、スタミナも対術も、まったくの互角だった。 ずっと1対多数の戦いを重ねてきたディーナには、相手の心理や行動が、手に取るようにわかる。 多人数を相手にしての戦いは、囲まれたら終わりだ。 スタミナが切れても、それは同じこと。 しかし人間には、ひと突きで死に至らしめることができる部位がある。移動中の視野には死角もある。 だから、ディーナはいつも、無力化できない相手には死角を利用して殺してきた。 ――たった一撃で。 だが、それが可能な部位は限られている。単調な攻撃にもなりがちで、動きも読まれやすい。 それでも、相手が思いもよらない方向から、思いもよらない手段で攻撃するという基本は変わらない。 ディアは腕を隠し、死角を作り、体術を織り交ぜたトリッキーな動きを仕掛けてくる。 頚動脈。 心臓。 太腿の大動脈。 肋骨の隙間をぬっての、腎臓、肝臓。 急所しか、狙って来ない。 (十分戦いを楽しんだから、さっさと私を殺して、他の人の所へ行きたいんだ……) ディーナは少しずつ、ほんの少しずつ、対応スピードを鈍くしていく。 スタミナが切れた振りをしたのだ。 息切れしながらナイフを弾き続けるディーナの様子に、ディアはしてやったりと微笑を浮かべる。 そうね、私なら……、私だって、弱った相手の隙は逃さない。 足がもつれてたふりをして、ディーナは大きな隙を作った。 ディアが距離を詰め、短剣をかざす。 作戦成功。 これで私のナイフも届く。 だが……! (……あれ?) 視界が、ぶれた。 なぜ? どうして? ほんの1㎝だけ致命傷を避けて、ディアの頚動脈を掻き切った筈なのに? 急速に、視野が狭くなる。 (そっか。……毒だ) ディナは短剣の切っ先に毒を塗っていたのだ。 不覚だった。確かに、この方が確実に殺せる。 「ごめんね、みんな……。手伝えなく、なっちゃった」 死ぬのって案外、簡単かも。 全身の力が抜けた。ディーナはぐったりと、床に倒れこむ。 EPILOGUE■William Shakespeare 2000 Speak, hands, for me! (この腕で思い知れ!) ――ウィリアム・シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』第三幕第一場より † † † 「あたしの勝ちね!」 とどめを刺そうと、ディアは短剣を振り上げる。 しかし。 「そりゃあどうかな」 その手首は、竜変化したファーヴニールの手によってねじり上げられた。 「くっ!」 悔しげに、ディアは唇を噛んだ。 「……残念ながら撤収だ、ディア」 血まみれになったニィルが、足を引きずりながら吐き捨てる。 気を失ったくの一に肩を貸し、歩はさっさと円盤に引き上げて行く。 その後に、脱力した絵描きが続いた。 「あいつら、傷害と器物破損と列車損壊の補償も弁償もなしに帰っちまうぜ? 這いつくばって詫びをいれなさい、とか言わなくていいのか? 女王様?」 進は腕組みをする。 カリスは、つ、と、手を伸ばし、ティーカップの欠片でふたつに裂けた紅薔薇をつまみあげた。 無残なすがたになってもなお、素晴らしい芳香を放つオールドローズ。品種名は、ウィリアム・シェイクスピア2000。 「敵がいかに卑劣で横暴で礼儀知らずであったとしても、こちらまで相手に合わせることはないのよ」 † † † 「気を確かに、ディーナさん。あきらめたらダメですよ」 毒を受けたディーナに応急手当をするべく、ハギノは、フレッシュハーブの束から、適切なものを探している。 † † † 「……何てこった」 おとめ座と並走している、ロストレイルの車両がある。 それが、ゼリー・ワームに浸食された射手座の車両であることに気づいたのは進だった。 ひしゃげた車両の内部で機械系統が爆ぜている音が、ここまで聞こえてくる。 あのウミヘビのすがたはない。 おそらくは彼らが倒したのだ。倒してくれたのだ。いったいどんな方法を使ったのかは知る由もないが。 破壊された窓から身を乗り出し、男がひとり、こちらに合図をしている。 「鰍さんだ。うわ、ボッロボロ」 ファーヴニールが、扉に駆け寄る。 「あのまま乗ってちゃヤバいっすよ。移ってもらいましょ」 2台のロストレイルが同位置になるタイミングを見計らい、ヒナタが扉を開けたのだが。 「あれ? なんかモメてる?」 ――おまえ、あたしをなめてんのか!? ――うっせぇ、若いお前には未来があんだろ! ――そういうのはおっさんのセリフだー! 移動するしないで、鰍とペルレ・トラオムは争っていた。 しかし、鰍は強引にペルレの腕をつかみ、こちらへと投げ渡す。 「よっし、ナイスキャッチ!」 「……うー」 おとめ座車両に回収されても、ペルレは不満げだ。 先ほどまでバトルフィールと化していた、食器とガラスの破片が散乱した食堂車に、 「食い物、ない……」 と、さらに頬を膨らます。 床を見たペルレは、それでも、潰れたキャンディのようになった色とりどりの薔薇がいくつも落ちているのを見つけた。 ぱくり。ぱくり。 ペルレは薔薇の残骸を口に放り込む。 今しがたまでそこにいた射手座車両を睨みつけ、 「何だよ、おっさんのクセに!」 ……そう、言いながら。 「次は鰍さんだね。早くこっちへ!」 ファーヴニールの呼びかけはあっさりと却下された。 「そーも行かねぇだろ」 鰍の背で、力なくゼリー・ワームを押さえているのは、僅かに残った鎖の結界だ。 黒いゼリーは、すぐにでもこちらへ飛び移ろうとしていた。 略奪しつくした射手座車両に飽きたかのように、新たな獲物のいるおとめ座へ。 ――限界が、近いらしい。 何かを決意した鰍は、扉を離れ、操縦レバーへと近づく。 「待って、ちょっと待って。何するつもり?」 「俺まで飛び移ったら、このゼリーまでそっちについてくだろが」 「そうだけどさ。……何だよそれ? かっこよすぎるんじゃない?」 「こういう時の犠牲はな。より少なくするもんだ。だろう?」 折れたレバーを前に倒す。 エンジンの唸りが、車体を揺らし始めた。 「……大丈夫だ。そこらへんに小竹ってやつもいるはずだし、そいつを助けてそのうち戻るから、な」 「えっ、オタケンがどうしたって!? まさか、オタケンも……」 漆黒の矢が一筋、射線を延ばす。 鰍は、どこまでも行くつもりなのだろう。 遠くへ。遠くへと。 その結界が持つ限り。その命が持つ限り。 動力部分だけのロストレイル9号が、ディラックの空の彼方へと消え去るさまを、一同は見送った。 † † † それがどれほどに危機的な状況であるのか、十分に承知している。 ……それでも。 ヒナタは、進は、ファーヴニールは、そしてペルレは、射手座の消えた方向に放つ声に、悲壮感など持たせはしない。 「あー、道中お気をつけてー」 「まぁ、達者でな」 「生きててよー!?」 「おっさんのクセにぃーーー!!!」 余裕を失わないことが、きっと力になる。 世界の真理などというものに気づいてしまった、愚かしいロストナンバーたちの――、 それが、心意気だ。
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