「年越し特別便<アニモフともふもふ羽根つき>ご一行さまは、こちらでーす」 はたはたと案内旗を振って、獣耳司書ミミシロは集まったロストナンバー達に呼びかけた。 今年も出発するという年越し特別便、ミミシロが案内する担当は、もちろんモフトピア行きだ。「ええっと、ご存じかもしれませんが、も一度ご説明しますねー?」 人数が集まった頃合いを見計らって、にこにこのんびりとした口調で話し始めた。 以前、壱番世界の正月に遊ばれる『羽根つき』をアニモフに教えたコンダクターがいたそうだ。 だが、年に1度のその遊びを、アニモフが正確に覚えているわけがなく。『互いに打ち合って、落とした方が罰ゲームを受ける』というルールはそのままに、アニモフらしく変わっていったのだという。「確か羽根は、ハリネズモフが丸まってボール代わりになっていてですねー」「・・・・はりねずもふ?」「ハリネズミのアニモフですよー。あ、ハリは痛くないそーなので安心して下さいねー。 で、羽子板役は、どんなアニモフでもいいってことになっているらしいですー」「羽子板・・・役?」「はいー。皆さんが、羽子板役のアニモフを選んであげて下さいねっ」 小熊や子犬や子狸や子狐や、とにかく沢山の種類のアニモフがよりどりみどりなんだそうだ。「つまり――アニモフの羽根を、アニモフの羽子板で打ち合う、と?」「はいー。アニモフの羽根を、アニモフの羽子板で打ち合う、アニモフの羽根つきなんですー」 にこにこっと楽しそうにミミシロは言い切った。「あ、それと、罰ゲームはアニモフからの悪戯書きになるので、描かれてもいいお洋服で来て下さいねー」●ご案内こちらは特別企画「イラスト付きSS(ショートストーリー)」です。参加者のプレイングにもとづいて、ソロシナリオ相当のごく短いノベルと、参加者全員が描かれたピンナップが作成されます。ピンナップは納品時に、このページの看板画像としてレイアウトされます。「イラスト付きSS(ショートストーリー)」は便宜上、シナリオとして扱われていますが、それぞれ、特定の担当ライターと、担当イラストレーターのペアになっています。希望のライター/イラストレーターのSSに参加して下さい。希望者多数の場合は抽選となります。《注意事項》(1)「イラスト付きSS」は、イラストを作成する都合上、バストショットかフルショットがすでに完成しているキャラクターしか参加できません。ご了承下さい。(2)システム上、文章商品として扱われるため、完成作品はキャラクターのイラスト一覧や画廊の新着、イラストレーターの納品履歴には並びません(キャラクターのシナリオ参加履歴、冒険旅行の新着、WR側の納品履歴に並びます)。(3)ひとりのキャラクターが複数の「イラスト付きSS」に参加することは特に制限されません。(4)制作上の都合によりノベルとイラスト内容、複数の違うSS、イベント掲示板上の発言などの間に矛盾が生じることがありますが、ご容赦下さい。(5)イラストについては、プレイングをもとにイラストレーターが独自の発想で作品を制作します。プレイヤーの方がお考えになるキャラクターのビジュアルイメージを、完璧に再現することを目的にはしていません。イメージの齟齬が生じることもございますが、あらかじめ、ご理解の上、ご参加いただけますようお願いいたします。また、イラスト完成後、描写内容の修正の依頼などはお受付致しかねます。(6)SSによって、参加料金が違う場合があります。ご確認下さい。
「何故かしら、引率者の気分がするわ……」 トド姿の北斗と、色違いの四枚羽を持つもっふり竜・フラーダを見遣り、金髪のバーテンダー・シレーナは呟いた。 「羽子板役を選ぶもふー」 案内に来たアニモフに促され、3人はそれぞれのパートナーを選ぶ。 シレーナは、イヌモフを。 「ピンと立って、可愛いお耳ね」 北斗は、クマモフを。 『よろしくお願いするんですよ』(彼は口からは喋れないので、テレパシーで伝えた) フラーダは、ウサモフを。 「ここ一年調子が良かったし、この調子で羽根突きも勝つんだからねっ!」 ペアが決まれば、さあ、羽根つきのはじまりはじまり。 ●1戦目:シレーナVS北斗 「へぇ~、ホントに柔らかいのね」 つんつんとつつくシレーナに、ハリネズモフは問いたげな表情で首をかしげた後、くるんとまた丸まった。可愛らしくて思わず笑んでしまう。 「用意は良い? 北斗くん」 見上げて宣言すると、羽子板娘のようなイヌモフに、羽根ハリネズモフを渡す。 羽根は、ふんわりと投げ上げられた。飾りリボンが空を舞う。 一方北斗は、牙で傷つけないよう、弁慶なクマモフを口で加えて構えていた。 『とりあえず、いきますよ』 食肉目鰭脚亜目アシカ科のトドは体格上、陸上の移動にあまり適していない。反重力の超能力でホバーのように浮いて羽根を追う。 『あれ? こっち??』 落下地点に上手く滑り込むも、自身の頭に当たって羽根が跳ねる。 ぶら下がったクマモフが手を伸ばすも、ゆらゆら揺れて上手くキャッチ出来ずに落としてしまった。 『あれぇー……』 勝利したシレーナ、約束だからね、とクレヨンを手に取る。 『おてやわらかにおねがいしますんですよ』 北斗の背中に、ハートがひとつ。 ●2戦目:北斗VSフラーダ 「うきゅ! 羽根突きー! 羽子板ない、フラーダ、できる!」 待ちきれなかったフラーダ、自分で羽根つきをするつもりで飛び出してきた。 「きゅ、羽根役、よろしく!」と、ハリネズモフにぺこり。 「それとそっち、よろしく!」と、羽子板役ウサモフにも、ぺこり。つられてお辞儀を返した白ウサモフの頭から、みかん色の帽子がずり落ちそうになる。鏡餅を模した衣装らしい。 ダブルスのようにウサモフと並んだフラーダ、ウォーミングアップとばかり左右に飛び跳ね、やる気満々だ。 先ほどの敗北から考え込んでいた北斗は、クマモフの持ち方を、ショーの時のように頭に乗せてみることにした。周りのアニモフから歓声が上がる。ひょいとクマモフをジャンプさせてみた。拍手が追加され、やんやと声がする。ボールとは勝手が違うが、上手く出来そうだ。 『これでどうですかね。今度は勝ちたいんですけどね』 器用にバランスを取る北斗を見て、フラーダはウサモフと目を合わせた。 「フラーダ、負ける気ない! 勝つー!」 ウサモフを背に乗せて、フラーダが跳び上がる。ウサモフの手が間に合わない時は、自分の鼻先や前足で打ち上げて援護した。それでも届かないなら、風を巻き起こして北斗の頭上高くまで吹き飛ばす。 『だいぶ慣れてきましたよ』 2戦目の北斗は余裕のある様子で、大きな身体を前後左右に滑らせ、柔らかい首の動きで羽根を追う。ちょこまかぴょんぴょんと跳ね回るフラーダの一方で、倍以上の身長差のある北斗の動きは、流れるように優美に、どこかのんびりとして見えた。 そして。 何往復かのリレーの後、ひときわ高く遠くへと飛んでいった羽根にフラーダが追いつけず、北斗の勝利となった。 クレヨンを持てない北斗の代わりにと、クマモフが落書きしに近付くと、フラーダは不安そうな顔でペン先を見た。 「きゅぅ……。書く? クレヨン? 後で落ちるー?」 「雲でこしこしすれば落ちるもふよー」『……だ、そうですよ』 それを聞いて安心したのか、大人しくばってんを描かれるフラーダ。 「むきゅー! 今度、フラーダ、お返しする!」 ●3戦目:シレーナVSフラーダ 落書きされて俄然やる気になったフラーダを見て、次の相手であるシレーナはこっそりと思う。 (フラーダちゃんに、勝たせてあげたい、けど) 手を抜いたらそれはそれで、楽しんでもらえないような気がする。ならせめて。 フラーダの瞳が緑一色になる。小さな竜巻が羽根ハリネズモフを取り込む。ぐるぐるとリボンごと周りながら、シレーナの右上方へ飛んでいく。 シレーナは両腕を精一杯伸ばして、イヌモフを持ち上げた。ジャンプすれば届く距離と目算する。ハイジャンプ。イヌモフの右手が羽根に当たる。跳ね返る。 すぐさまフラーダが駆け出す。落下地点に辿り着くと、羽根を目で追うウサモフの「右もふー左もふー」の声に合わせてあちらにこちらに。うっかりとウサモフが取り落とした羽根を器用に前足サーブ。 ひょろろと打ち上がった羽根に向かって、イヌモフを差し出すシレーナ。ぽよんと羽根を打ち返すと同時に、持ち上げて勢いをつける。 息ぴったりなリレーに、そちこちで羽根つきをしていたアニモフが観戦に集まってきた。 結局、十数回もの羽根つきの挙げ句、転びそうになったフラーダを目の端に捉えたシレーナの、ちょっとした落ち度によって、フラーダの勝利となった。 「うきゅ! 書くー!」 嬉しそうにクレヨンを咥えたフラーダが、シレーナに走り寄る。 「どこ書く? そこー?」 「……えーと。顔だけはやめてね?」 目線を合わせてしゃがんだシレーナは、フラーダがぐりぐりとチュニックに描いているのを感じながら、くすぐったいのをぐっと我慢した。 ●休憩? そして再戦 対戦がぐるりと一巡したので、シレーナは持参したビスコッティとパネトーネを広げて周りのアニモフを休憩に誘った。 「たくさん作ってきちゃったのよ。いっぱい食べてね?」 カフェ・ラテをカップに注いで手渡してゆく。もちろんフラーダにも北斗にも。 ドライフルーツの入ったパネトーネの方が、好評のようだ。ビスコッティにがじがじと齧り付いているアニモフを見かねて、少しアドバイス。 「ラテに浸して食べるといいわよ?」 「もふ?」「もふ!」「おいしーもふー」「もふー」 頭上に花を咲かせたアニモフの、ほんわかと和んだお茶会の片隅で、罰ゲーム用のクレヨンで悪戯を始める一匹のアニモフがいた。身体中カラフルに落書きされているのを見ると、ことに多く負けた様子。皆がお菓子に夢中になっているのを良いことに、近くのアニモフへ勝手に悪戯書きを始めている。 といって、それで怒るアニモフは一匹もいなかった。気付いて、笑って、楽しんで――当然お返しとばかりにまた違うアニモフにどんどん書き込んでいくのが、アニモフのアニモフたるところで。 気付けば、シレーナも北斗もフラーダも、知らぬうちに巻き込まれていた。背に、足に、腕に、増えていく悪戯書きに、笑ったりやり返したり。 お茶を飲み終わる頃には、見事に全員が全員、カラフルな悪戯書き満載となっていた。 互いに互いを見返して、可笑しくなって吹き出して。 関係ないのに悪戯書きされてしまったハリネズモフを見て、北斗は思う。 『もう一度、やってみたいですね』 思ったつもりで、テレパシーになっていた。ぴょいとフラーダ跳び上がる。 「きゅ! また羽根つきやるー! 今度は勝つー」 色とりどりの落書きを増やしながら、もふもふ羽根つきはまだまだ続く。
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