イラスト/ピエール

インヤンガイ(陰陽街)は密集した都市によって構成された世界です。高層から地下深くまで、無秩序に増改築を繰り返された建築物が複雑な構造を形作っており、迷路のような街並みがどこまでも続いているのです。

この世界は、生物を存在させている根源であるエネルギー「霊力」を操る技術によって文明を発達させました。インヤンガイの機械は、いずれも霊力を動力として動いています。それは呪術と科学が混然一体となった奇妙で神秘的な技術体系です。

インヤンガイはひとつの政府によって管理されていますが、不正や腐敗が横行し、実質的には機能していません。犯罪や暴力も蔓延していて、およそ平和な世界とは呼べません。善良な人々は犯罪組織同士の抗争に怯えながら暮らしており、社会には非常な格差が生まれています。貧しい人々は文字通り社会の底辺である地下都市で、危険で不衛生な暮らしをし、上流の人々は都市の高層階でマネーゲームに明け暮れています。

さらに、インヤンガイには、その文明を支えている霊力科学体系がもたらす災厄や危険もあります。制御されない霊力が暴走して、超常現象を引き起こすのです。それは「暴霊」と呼ばれる存在で、生き物の死体にとりついて人間を襲ったり、特定の地域を怪奇現象の集中する「暴霊域」と呼ばれる異空間のような場所に変えてしまうこともあります。

■インヤンガイの住人
インヤンガイの人間は、壱番世界の人類と変わりないようです。インヤンガイの文化・風俗は、現代の壱番世界に比較的近く、特にアジア圏のそれに似ています。雑然と建築物が折り重なったインヤンガイの猥雑な風景は、たしかに香港などを彷彿とさせます。

■インヤンガイで行う冒険
国家権力が機能を失っているインヤンガイでは、問題解決を生業とする「探偵」という職業の人々がいて、日々の平穏を守っています。探偵たちは商売がら、さまざまな情報を収集しており、世界図書館がインヤンガイの放棄された地下鉄の廃墟に<駅>を設置し、旅人を送り込んでいることも、噂として把握しています。怪事件が後を絶たないインヤンガイの探偵は、異世界からの旅人という荒唐無稽な話も受け入れ、むしろその力を利用しようとします。

かくして、インヤンガイでは、探偵たちが、日々、持ち込まれる事件解決の依頼を、異世界からの旅人と協力して遂行するというゆるやかな盟約のようなものができあがりつつあるのです。どのみち、旅人は複雑なインヤンガイの世界を旅するにはナビゲーターが不可欠です。探偵の導きにより、危険な暴霊退治や暴霊域の探索、あるいは犯罪組織との対立といった冒険が、旅人を待ち受けているでしょう。

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螺旋特急ロストレイル

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