プラス下層に位置するシャンヴァラーラは、【箱庭】と呼ばれる多様な世界が石鹸の泡の如く無数に寄り集まって出来ています。【箱庭】=空間的に特殊な成り立ちの国家もしくは集落の集合体、と考えていただいて問題ないでしょう。
シャンヴァラーラは、夜の女神ドミナ・ノクスを主神とし、その伴侶である太陽神ウィル・ソールとともに生み出されたとされます。

この世界において【箱庭】同士の行き来は容易く、【箱庭】同士を接合しひとつにすることも、別【箱庭】間による移住や住民同士の婚姻も可能です。これは、元々すべての【箱庭】はひとつだったからなのですが、世界が何故このように分かたれてしまったのかは判っていません。

様々な種族、多様な人種、雑多な生命の蔓延る【箱庭】には、それぞれに神と呼ばれる存在が複数おり、各【箱庭】を守護もしくは支配しています。神はドミナ・ノクスとウィル・ソールの子と呼ばれますが彼らと同一の存在ではなく、実質的には壱番世界の伝承における精霊や天使などといった力と役割を担っています。
近年、強大な力を有する神をいただいた強権的な国家が、各【箱庭】の神を取り込み従わせることで自らの【箱庭】を拡大し始めており、シャンヴァラーラ全体に乱れが拡大しつつあるようです。

また、現在では《異神理(ベリタス)》もしくはトコヨの棘と呼ばれる正体不明の悪意の存在が確認されています。
すべての【箱庭】に存在し、いつの間にか根を張り、『発芽』によって世界を壊すこの《異神理》こそが、シャンヴァラーラの分裂や帝国の台頭などすべての原因であると目されていますが、詳しいことはまだ判っていません。

■シャンヴァラーラが内包する【箱庭】たち

*至厳帝国ムンドゥス・ア・ノービレ
壱番世界のヨーロッパを髣髴とさせる文化を持つ【箱庭】です。
住民のほとんどは白色人種を髣髴とさせる所謂『普通』の人間で、太陽神ウィル・ソールの長男と称される光神ルーメン・オ・アダマースを主神として崇め、皇帝はルーメンの直系の子孫を標榜しています。

最高指導者である皇帝クルクス・オ・アダマースの命により、他【箱庭】をすべて光神に従わせ世界をひとつにすべく侵攻が開始されました。帝国は以後二十年に渡って、各【箱庭】の神々を光神に捧げ、ルーメンの力と【箱庭】とを増強・拡大し続けています。
科学が非常に発達しており、その能力は壱番世界のそれをはるかに凌ぎます。様々な近未来的技術が存在するほか、光神に捧げられた神の『残りかす』を素質のある人間に注入し、対【箱庭】間戦略兵器として有効活用する技術が確立しており、身を守る特殊能力を持たぬ【箱庭】は次々とこの兵器の前に屈服しているようです。
現在、シャンヴァラーラ内の【箱庭】のおよそ半数を吸収合併し、残りの【箱庭】もすべて支配下におくべく容赦のない侵攻と反抗勢力への激しい弾圧を行っていますが、従うものへは手厚い庇護を与え平等に扱うクルクスの姿勢から、進んで傘下に入る【箱庭】も増えてきているようです。

しかしながら、そもそも何故クルクスが唐突に侵略を開始したのか、本当の理由は誰も知りません。

*連成世界群『華望月(ハナモチヅキ)』
壱番世界におけるアジア・日本を髣髴とさせる文化を持つ【箱庭】が同盟を結ぶことで成り立っている、対帝国用相互間協力機構です。
代表は江戸時代的な文化を持つヒノモト、唐を思わせるティエンラン、アラビア風のエル・アララトなど。その他、数百の小規模【箱庭】が華望月に所属し、帝国への抗戦を続けています。

科学はあまりポピュラーではなく、文化・技術も壱番世界の1700~1800年代でしかありませんが、鬼や妖怪、仙人や妖精、魔族や幻獣などといった人間以外の種族が数多く存在しており、科学以外の能力や技術が非常に発達しています。
更にヒノモトにはヤオヨロズ、ティエンランには神獣、エル・アララトにはジンなどと呼ばれる数多くの神が存在し、人々はその力を借り、また住民同士で協力しあって帝国との戦いを続けていますが、戦局はあまり思わしくないようです。

*電脳の夢『電気羊の欠伸』
帝国と華望月の狭間にある特異な【箱庭】です。
ここの神は『羊』と呼ばれる電脳の精霊たちで、彼らの観る『夢』によって【箱庭】は成り立っています。遠未来を髣髴とさせ、帝国をはるかに凌駕する技術を持つ【箱庭】ですが、『羊』たちの夢に強烈に影響されるこの【箱庭】だけは、帝国も華望月もおいそれと手を出すことが出来ません。
鉱物主体の大地に、無機物から発生した不思議な生命たちと、強力無比な力を持つ物騒な守り手の住まう奇妙な【箱庭】ではありますが、非常に穏やかで居心地のいい場所でもあるようです。

*竜棲の古森『竜涯郷』
豊かな、広大な自然によってかたちづくられた、竜のみが棲む【箱庭】です。
ここには、小さいものは人間の手のひらに乗る小型から、大きなものでは数キロメートル以上にもなる超大型まで、姿も性質も多種多様な竜たちが無数に生息しています。

シャンヴァラーラ中の、竜に関するものごとはすべてこの【箱庭】に集約されていて、この竜涯郷を訪れ、生涯の友として連れ帰る他【箱庭】の住民も少なくないとか。強大な力を有する竜が数多く存在するここは、『電気羊の欠伸』と同じく、帝国がおいそれと手を出すことのできない【箱庭】です。

千年以上生きた竜を『龍』、一万年以上生きた竜を『古龍』と呼んで区別します。

■シャンヴァラーラでの冒険
実をいうと、夜の女神ドミナ・ノクスは元ロストナンバーです。

彼女たちは世界の乱れに心を痛めていますが、あまりにも強大な力ゆえに自らが行動することは出来ません。そのため、世界図書館を知る彼女や、彼女とともにシャンヴァラーラへ帰属した元ロストナンバーたちを通して、様々な【箱庭】での多種多様な事件が託されることになるでしょう。

そこには、ほのぼのとした日常的なものから、激しい戦いや魂を試される幻想的な出来事、そしてこのシャンヴァラーラの行く末を左右する重大な事件まで、さまざまな冒険が含まれます。

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螺旋特急ロストレイル

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