<オープニング>
春は、桜の季節だ。
銀幕市では、巨大な桜が出現し、市民たちは花見を楽しんだ。一部、物騒な出来事もあったようだが、銀幕市ではそれもスパイスだ。
巨大な桜が消え、桜が盛りを過ぎた頃――
このところ平和だ、と誰かが言った。
別の誰かは、嵐の前の静けさでは?と、冗談まじりに言った。
そしてその言葉は、真実を言い当てていたのである。あまりにも言葉通りに。
ごう――
銀幕市に、砂嵐が吹き荒れた。
春は、砂嵐の季節だった。……中近東での話だが。
エジプトではハムシーンと呼ばれる、砂まじりの大風が、日本の地方都市である銀幕市を襲い、人々はマスクとサングラスやゴーグルなしには外出できない一日があった。
さいわい、それはたった一日だけのムービーハザードだった。
翌日、人々は砂まみれの道や自宅を掃除しながら、苦笑し、ぼやいたのだが……、町はずれのある地区では、あんぐりと口をあけて言葉を失っているものたちがいた。
やがて、『対策課』に、その情報がもたらされた。
すなわち、銀幕市に、砂漠とピラミッドが出現した、と。
「砂漠のエリアは直径1キロほどですが、空間に割り込む形で出現しています。ほぼ中央に位置するのがこのピラミッド……。特徴からみて『ハムシーン〜ナイル秘宝伝説』からあらわれたとみて間違いないでしょう」
「ワオ、あの映画、ボク大好きだ」
植村の説明に、ロイ・スパークランドが口を挟んだ。
「たしか、ピラミッドの中には、財宝がざくざく……じゃなかったっけ?」
「映画では、そうなのですが……」
「クール! 探検隊を結成したらどう?」
ロイの発現は、あまりにも能天気に過ぎるものではあったけれど、実際、このピラミッドをどう扱うべきか、『対策課』としても考えはまとまっていなかった。映画の設定では、砂嵐とともに地上に出現したこのピラミッドは、やがて姿を消すことになっている。ならばなおさら、消えてしまう前に探検して財宝があるなら見つけるべきというのがロイや銀幕ジャーナルの意見であり、いずれにせよ、害がないかどうか調査はしたほうがよいというマルパスの言葉に押される形で、『対策課』はピラミッド内部の探検を敢行することになったのである。
「探検隊参加の受付はこっちでいいの、マルパスさん?」
「きみも行くのかね?」
マルパスは、軍帽の鍔の下から、金色の瞳で、嶋さくらの姿を見つめ返した。
ピラミッドのふもとに、仮設テントでつくられた、探検隊のベースキャンプである。かつての茂霧山探索部隊を彷彿とさせるが、今回は、目立った危険がまだ報告されていないし、リオネの予知にも何もあらわれていないため、参加者たちはずっとリラックスしている。
「ええ、もちろん。私、海外旅行はしたことないけど、行きたい外国ナンバーワンはエジプトだったの。ちょうどいい機会だわ」
「そうか。……内部はかなり広いようだが、通路自体は狭い箇所もあり、複雑に入り組んでいる。よって、探検は小隊をいくつもつくり、送り込むという方法をとることにした」
「あら、面白そう。中には財宝があるんでしょ? チーム対抗で争奪戦ってわけね」
「そういう意味では……」
「RPGみたいでわくわくしちゃう。私、ダンジョン攻略ゲームも得意なのよね〜」
そう言ってさくらは、適当なパーティーを組むために、集まったものたちのあいだへと歩み入ってゆくのだった。
<ピラミッド探検隊>
銀幕市にピラミッドが出現しました! 探検隊が組織され、ピラミッド内部でさまざまな冒険が繰り広げられました。
→ピラミッド探検隊ベースキャンプ(過去ログ)
ピラミッド探検に関して、パーティーを結成したり、相談したりするために運営されたイベント掲示板の記録です。
→ハムシーンのピラミッド(過去ログ)
ピラミッド内部で行われた探検の記録です。
<ピラミッドアタック>
ハプニングをまじえながらも、探検はひとまず終了しました。しかし、その後、探検隊に参加していた嶋さくらがミイラたちに拉致されるという事件が発生。救出に向かったメンバーは、ピラミッド内で、以前から銀幕市で活動していたヴィランズ・怪盗ナイトファントムと遭遇します。
さらには、ピラミッドから邪悪なパワーが解き放たれたためか、銀幕市全域で関連した事件が起こりました。
→特別シナリオ『【ピラミッドアタック】死の翼、星の鼠』
→関連シナリオ『【ピラミッドアタック】ファントム・ハンディング』
→その他の事件の記録を探す
その他の事件については、『雑誌社』でキーワード【ピラミッドアタック】で検索できます。
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