オープニング


 海は様々な顔を持つ。穏やかで陽気な顔を持てば、嵐に荒れる怒りの顔を持つ。
 人は知る。海には様々な顔があるのだと。
 だが、人は知っているのだろうか。人が見ているのは海の表面だと。陸から海を眺めてもそれは全てを知っていることにはならないのだと。
 航海をする人だって海の中を知っているわけではない。海の上を行こうとも、海の中に潜っているわけではないのだ。
 その海の中で、大きな影が高速で駆け抜ける。自らを止めるものなど何もないのだと威風堂々と泳ぎいく。身をくねらせて海を蹂躙する。大胆に、されど静かな挙動だ。
 それは巨大な海蛇。竜のような頭を持ち、長い手を器用に折りたたみ抵抗を減らしている。
 シーサーペント。そう呼ばれる化け物がそれに一番近いだろう。
 そいつはある物を見つける。水の上を行く船の底。ただ無軌道に海を蹂躙していた体をくねらせ上を目指す。
 そいつは知っている。それは自分の餌がたくさん詰まっていると。
 餌を求めて海の上を目指す。速く速く、人の見ている海の顔へと。

「皆、よく集まってくれた。感謝する」
 シド・ビスタークはまずそう礼を述べて『導きの書』を開く。
「お前たちにはブルーインブルーの世界に行き、交易船を守ってもらいたい。暖かく気持ちのいい世界だが、のんびりとした航海ではないから注意してくれ。なんといっても海魔との戦いなのだから」
 シーサーペントという魔物を知っているだろうか。大海蛇とも呼ばれたりもする魔物だ。その名の通りに巨大な蛇であり、船を襲う存在である。
「どうやらそれに近い海魔が交易船を襲うようだ。航海中に船の底に張り付き船の動きを止め、船の中から表に船員が出てきた所を食らってくる」
 船を沈めこそしないものの、巨大な体で船を止めるなど簡単にできる。船に巻きつきその体で船の上までのし上がってくる。船の中に隠れようにもその気になれば穴を開けることだってできる。それをしないのは沈めて獲物を取る手間を増やさないため。
 強暴だが知能はそれなりに高く、厄介な存在である。
「もっとも凶暴である故に単純な面もある。お前たちが戦っているうちは穴を開けようなどはしないだろう。目の前の獲物を優先してくる」
 だからこそ全力でそいつを倒すことだけ考えていていい。
 攻撃は長い腕と巻きつけた体の先、つまりは尻尾。尻尾は船の外から不意をついて繰り出せるために注意しなければならない。竜のような頭にある口には鋭い牙が並んでおりこれも注意が必要だ。
 その大きさが巨大なだけに力も強くけして侮っていい敵ではない。蛇は生命力が強いだけに、この海魔も生命力が並ではない。
「遭遇時間は分からないが、船が原因なく停止してたら間違いなくそいつが現れるだろう。船は大きく、デッキならお前たちが戦うに十分な広さだ。デッキに固まっていれば姿を現してくれる」
 現れればあとは戦うのみ。自分が狙った獲物がどれだけ手強く、自らが獲物だと刻み込んでやればいい。
「航海の無事はお前たちの腕にかかっている。……頼んだぞ」
 人数分のチケットを取り出しロストナンバーたちを送り出した。

管理番号 b26
担当ライター 琴月
ライターコメント  はじめまして、戦闘大好き琴月といいます。
 色々と書きますが、今回は戦闘大好きさんらしくその方面で頑張らせていただきます。
 純戦闘ものです。遭遇してからは皆さんの技を存分に奮ってください。体力もあり力も強い強敵ですので遠慮は要りません。

参加者一覧
霧崎 氷河(cyhc6585)
日奈香美 有栖(ccea2734)
ミルフィ・マーガレット(csww2094)
ファニー・フェアリリィ(cyut8811)

ノベル


 浮かぶ太陽は機嫌よく陽光を降らせている。
 海はその陽光を映し、美しく輝いている。海も今は機嫌のよい顔を覗かせている。
 そんな海を見て楽しげにはしゃぐミルフィ・マーガレット。美しい水面に心を奪われているようだ。
「ふふ、綺麗な海ですわねお嬢様。水着に着替えてひと泳ぎしましょうか……?」
「ミルフィってば……遊びに来たわけではありませんよ」
 楽しげに誘うミルフィを笑顔で軽く窘めるのは主人の日奈香美 有栖だ。主従の関係である2人だが、その姿は仲の良い姉妹のようにも見える。
 デッキで楽しげに過ごす2人を船員たちは遠巻きに窺っている。それも無理はないことだろう。ミルフィも有栖も美しく、男ならば誰しも目を奪われるだろう。
 有栖はお嬢様然とした容姿をしており、金色のロングヘアが目を引く。金色の髪が陽光を弾き、美しい輝きをしている。そのいかにも儚げなお嬢様という風貌は誰しもが憧れを感じてしまう姿であった。
 ミルフィは長い髪をツインテールにまとめ、メイド服を着ている。可愛らしいメイド服であるが、機能性と優美さが損なわれることなく同居している。一流のメイドとしてのプライドが感じられる少女だ。
 普段は女気の一つもない場所に咲いた花である。それは誰もが見てしまうだろう。男たちに罪は無いのである。
 そんな船員に混じって2人を眺めるのは霧崎 氷河だ。戦闘が始まるまでは暇であるために、特にすることもなくぼんやりしていた次第である。自身の世界にいた海龍という存在と今回のターゲットを重ねて気合を入れたりもしたが、やはり時間は余ってしまう。
「興味は尽きないが、いずれにしろ油断はできない相手だ」
 そう結論付けてしまえば、あとはどうせやるだけなのだから。
 2人に声をかけようとも思ったが、ついつい眺めるだけになってしまっていた。
「あれ、そういえばもう1人いたよな」
 最初に言葉を交わしたときにはピンク色の髪をした女の子がいたはずだ。金色に銀色、そしてピンク。間違えるはずがない。どこにいったのかなと益体もなく考え、ぼんやりと空を見上げるのだった。
 ピンク色の髪の女の子。ミルフィと同じメイド服を着て、同じ様にツインテールにした髪を持つ少女、ファニー・フェアリリィ。彼女は自身が持ち込んだ巨大戦闘車両ハートキャッスルで船の横につきシーサーペントの襲来に備えていた。
「早く来てくれないかしらね。姫お嬢様にミルフィも待ちくたびれてないかしら」
 デッキで待機しているであろう2人のことを考える。きっと問題はないだろう。彼女たちならば目的を忘れはしないだろう。
 うんうんと頷き、のんびりとシーサーペントの襲来に備えるのだった。

 航海は続く。港を出港してから快晴が続いていたが、少しずつ雲がかかり始めていた。雨雲ではないが厚い雲だ。
「やな天気だ。嫌な予感がするな……そろそろ、か」
 雲を見上げて氷河は呟く。魔術的な何かをしたわけではない。しかし、魔術師としての自分に何かが告げている。
 そしてその予感は当たることとなる。水中で警戒をしていたファニーが船に高速で近づく影をキャッチする。
「姫お嬢様、ミルフィ、大海蛇を見つけたわよ、もうすぐこっちに来るわ、戦闘準備しといてね……って、早い!」
 そして、大きい。遠隔操縦して水中を探索して見つけた影は凄まじい速度で交易船に絡みついた。
 その瞬間、がくんと交易船はその動きを止めることとなる。巨大な体が船を締め付け、その動きを縛り獲物を引き出していく。
 だが、今回は待つまでもなかった。既に外にいる人間の気配を感じ取っている。長い体を船の周囲に巻き付け、それでも余る体を伸ばしデッキへとその身を晒す。
 海蛇の体を持ち、龍の頭。そして、長き腕を持つその異形の存在。シーサーペント。腕だけでロストナンバーたち以上の質量を誇るそいつは、威風堂々と威嚇の叫びをあげる。否、歓喜の叫びか。自らの腹を満たす獲物へ、圧倒的な威圧を込めて叫びをあげる。
 嗚呼、だが知るといい海の覇者よ。海の顔の底に潜む王者よ。海の外には貴様の想像を超える存在がいるのだと。
「来ましたか。流石はファニーですね、ぴったりです」
「ええ、本当に。後で褒めてあげてくださいね?」 
 ニコリと笑い、有栖とミルフィは互いの得物を構える。有栖は日傘型のトラベルギアフリル・キャロルを、ミルフィは双剣のトラベルギアアースノルンを。
 あまりにのんびりした空気。目の前の存在など瑣末なことだと、2人の態度が告げる。そして、それは実力に裏打ちされたが故の自信なのだから。
「覚悟なさい。大海蛇……あなたはここで終わりです」
 その言葉と同時に2人は動く。有栖がフリル・キャロルから能力弾を速射で撃ち込む。その挙動は何の前触れもなく行われ、撃たれるまでのラグはほぼ無い。その攻撃をかわす手段など持ちえるはずもなく、シーサーペントはその直撃を受けることとなる。
 自らの腹に収まるだけのはずの獲物からの反撃に絶叫を上げる。それは先程の叫びとは違う、怒りの雄叫び。怒りの矛先は有栖へと向かう。雄叫びをあげたまま腕を振り上げ襲いかかってくる。その長い腕による薙ぎ払いは、強大な筋力と質量からなる強力な一撃。当たった瞬間にその衝撃は全てを打ち砕くだろう。
「当たれば……ですわ」
 有栖はその身を緩やかに動かすだけで、凶悪なる一撃を回避する。回避した瞬間に雷の魔法を手に生み出し、シーサーペントへと叩き込む。痛みを無視して振り回される腕。しかし、そんなもの有栖にはかすりさえしない。フリル・キャロルと魔法を組み合わせて叩き込みながら軽やかに戦場を駆け巡る。
「流石はお嬢様。これは負けていられませんね」
 シーサーペントに向けて走る二本の剣線。それは腕の付け根部分に突き刺さり、表面を裂き開いていく。有栖へと怒りの全てを向けている間に接近し、アースノルンによる斬撃を刻みこんだのだ。
 その痛みに、またも響く怒りの雄叫び。有栖だけではなくミルフィにもその腕を振るうが、怒り任せの攻撃は単調なもので避けれぬ道理などない。回避と同時に、迫る腕に斬撃を加えていく。
 有栖とミルフィのコンビネーションはシーサーペントを惑わし、翻弄する。圧倒的に有利に進む戦闘。だが、そこに油断が存在した。
 ゆらりと、2人の死角に浮かぶ鋭い刃。それはシーサーペントの尾。船に巻いた先の尾が2人へとその矛先を向けた。狙うは一撃必殺。一撃で2人同時に貫くよう狙いを定める。無音で疾駆する必殺の刃。その刃は無慈悲に美しい2人の身を貫き――
「おっと、不意打ちとは無粋だな」
 バギンと、尾の先にある刃が撃ち抜かれる。その音により、背後に気付く有栖とミルフィ。目を向ければそちらにはニヤリと不敵な笑みを浮かべた氷河がいた。
「まぁ、不意打ちは読めたからな。お前の尻尾は通さない」
 有栖たちが知り合いであると知っていた氷河は、自らはフォローに回ることにしたのだ。彼女たちが戦う間に、自己強化の魔術を使いつつ、戦場の把握を行っていた。一見有利な展開だったが、最初に比べシーサーペントの動きが冷静になったことに気づいたのだ。これは、何かがあると確信し行動を予測した。 
 だが、シーサーペントは諦めない。撃ち抜かれた衝撃に尾は動きを鈍らせるも、刃ではなくその大質量によって押しつぶそうとうねりを上げる。
「尻尾は通さないって言っただろう」
 氷河のトラベルギアは二丁拳銃のネメシスとアマルテア。自己強化をせねば使えぬほどの威力を持つ二丁。その二丁が同時に発射された。弾丸は尻尾に着弾し、その破壊力をまき散らす。撃ち抜くつもりで撃ったのだが、シーサーペントの表面は厚い皮膚と鱗で守られているためにその軌道を大きく逸らすしかできなかった。だが、その衝撃は中を貫いた。表面で分散しきれない衝撃が着弾点の筋肉をマヒさせた。すぐに尻尾を動かすことができず、無事な部分を動かし海中へと引き戻される。
「よし、この調子でいくぞ!」
 油断なく二丁を構え、一歩前に踏み出す。戦況の把握は完了した。あとは、やるだけだ。
 必殺の機会を邪魔され、苛立ちのこもった唸りを上げるシーサーペント。こんな小さな生き物3匹程度に何をてこずるのか。今度こそとその腕を振るうが、その途中で自らの体を襲う痛みに全て邪魔されることとなった。
 交易船に巻かれた胴体。そのあらゆる部分に衝撃が走ったのだ。海の中の安全な場所に襲いかかる衝撃はシーサーペントにとってあり得ないもの。今まで受けた痛みなど無視できるだけの衝撃だった。
「全弾命中! 流石は私だわ。船には被弾なしね」
 ファニーはシーサーペントの接近を感知した後に、ハートキャッスルで海の中からシーサーペントに狙いを定めていたのだ。船の上の戦闘ということもあり、下手な衝撃を与えてはいけない。それゆえに確実に命中させられるタイミングを計っていたのだ。氷河が撃ち込んだ弾丸により生まれた一拍の間の隙をついた見事な攻撃だった。
 詰み込んでいたミサイルによる攻撃は致命傷には至らなかったが、十分な衝撃を生みだした。巻きついていた部分は緩み、場所によっては千切れかけている。
 シーサーペントの様子から、ファニーの攻撃が上手く行ったのだと悟る有栖。この瞬間こそ好機。
「チェンジ・アリス! 大海蛇、貴方の相手は……この私ですっ!」
 自身を童話の主人公である少女に変身させ、先程まで以上のスピードでシーサーペントへ挑む。怒りと痛みで目に映るものすべてが敵に見えるシーサーペントにとって、その速さと華やかさで目立つ彼女はどう映っただろうか。怒りのままに繰り出される高速の薙ぎ払いと突き。怒りは速さと力を生みだし、凶悪な威力を持って襲いかかる。
 だが、有栖はその攻撃さえ回避し、あしらってしまう。生みだされる薙ぎ払いと鋭い突き。両方とも彼女に傷一つとしてつけることはできない。
「む、お嬢様も本気ですか……。では私も本気ですね」
 チェンジ・アリスによって姿を変えた有栖に触発されたようにミルフィも自身の武器を使う。英雄を召喚し、その助力を得るエインフェリルを発動。
 呼び出されるのはネレイドの英雄。ロングでウェーブのかかった、蒼い髪をした人魚が現れる。その手にはトライデントが握られ、異様な威圧感を放っている。
「はぁ~い、それじゃあお手伝いいたしますねぇ~」
 ネレイドの英雄がトライデントを振ると、シーサーペントの周囲の水が荒れ、その身の動きを無理やり抑え込む。さらに潮の流れを変え、海の中の動きさえも限定させてしまう。
 有栖、ミルフィがそのような活躍をしては黙っていられないのがファニーだ。上の様子を確認すると、自身もこの戦いに更なる一石を投じるべく切り札を発動させる。
「ハートキャッスルの本当の力、見せてあげる!」
 瞬間、ハートキャッスルが海から飛び出しその形を変えていく。戦車のような形状をしていたハートキャッスルが、巨大な鎧の騎士のようにその姿を変えていく。大きさこそシーサーペントに届かぬものの、その大きさは十分すぎるほどに巨大である。
「いくわよ大海蛇……! クィーン、大海蛇にパンチよ!!」
 繰り出される拳。長い腕を振り迎撃しようとするが、ミルフィの呼びだしたネレイドの英雄が水の壁を生みだし腕を通さない。拳は大海蛇の顎を討ち抜きその意識を一瞬刈り取る。
「あら、チャンス。……ちょっと、くすぐったいですわよ♪」
 ネレイドの英雄の腕を掴む。その瞬間、英雄は姿を変えていく。ミルフィは巨大特殊武具として英雄を変化させることができる。そして、この英雄の形状は巨大なトライデント。
 トライデントを構え、槍投げの要領で一気に撃ちだした。撃ちだされたトライデントは狙い通りに、海から出ていた胴を貫く。貫かれた瞬間、大きく揺らぐシーサーペントの体。度重なる攻撃で千切れかけている腕で、トライデントを抜こうとするが力などほとんど残っていないのか抜くことはできない。
 だが、その目は死んでいない。シーサーペントは、これが最後だと言わんばかりに千切れかけの腕を無理やり駆動させ、左右同時に突き出してくる。その打撃は鋭く、満身創痍の身から繰り出されるとは思えないほどだ。
「……惜しいが、もう終わりだよ」
 氷河は残念そうに呟き、ネメシスとアマルテアを撃ち込む。狙うは二本の腕の付け根。ミルフィに切り裂かれ、有栖にいなされ続けた腕。その腕に、最大火力の二発が襲いかかる。寸分違わずに命中した二発により、腕は根元から吹き飛ばされた。
 腕を吹き飛ばされ、がら空きになったシーサーペントの前に立ちはだかるハートキャッスル。狙うは胸に突き刺さった巨大なトライデント。拳をその柄に叩き込み、トライデントが衝撃にシーサーペンとを貫いた。
 腕を吹き飛ばされ胴に風穴をあけられたシーサーペント。大きな口を広げて大きな咆哮を響かせ、空気を振るわせる。その叫びは怒りによる雄叫びか、それとも悲哀による悲鳴だったのか。
 だが、何だったにせよ関係のないことだ。この海魔は人の命を食らう存在。自分たちは、人を守る側なのだから。
「今よ、姫お嬢様っ! 大海蛇に必殺技を……!!」
 ファニーの声を聞く前から、有栖は飛び出していた。
「この一太刀で、大海蛇を倒しますっ……!」
 振るうのは剣形態へと変えたフリル・キャロル。最大出力で能力の刀身を構成。巨大な刃がシーサーペントへと迫る。
「俺も、決めさせてもらうぞ……!!」
 響く叫びは魔術の起動呪文。戦う間に、少しずつ構築していた魔術を展開する。氷河が準備した大規模術式は雷を生みだすもの。有栖の剣線に合わせるように起動しシーサーペントを飲み込む。
 轟音が鳴り響き世界が閃光に包まれる。生みだされた雷が鱗を焼き肉も骨も溶かす。更に、時空ごと切り裂くように振るわれる有栖のフリル・キャロル。二つの巨大な攻撃に飲み込まれ、全てが無へと葬られたのだった。

 有栖と氷河による攻撃は互いに干渉し、その衝撃を全てシーサーペントだけに叩き込むこととなった。だが、その余波は厚い雲を吹き飛ばし、混じりけのない青い空が広がっていた。
「やれやれ……無駄に大きい奴だったな」
 へたりとその場に座り込み、安堵の溜息を吐く。自身の世界にいた海龍もこれくらいだったのだろうか。いやはや本当に、世界は興味が尽きないと氷河は楽しげに笑うのだった。
「最後は少し疲れてしまいました……」
 同じようにペタリと座り込む有栖。その横にはミルフィとファニーがともにあり、戦いの興奮冷めやらぬように楽しく笑い話し合っている。怪我らしい怪我もなく無事に終わった。それは何よりも重要で、大切なこと。
 大きな戦いだった。巨大すぎる体を持つシーサーペント。その強大な敵を倒すことができたのは全員が持つ力を、惜しみなく発揮したが故に得た結果。
 澄み渡るその空の色のごとく、全員の心には透き通った達成感が広がっていた。

(了)

クリエイターコメント  お待たせいたしました、「忍び寄る巨大な影」をお届けいたします。
 戦闘メインということですが、それぞれの参加者の方の気持ちを出し切れていたら幸いです。
 それでは皆さんご参加ありがとうございました。

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螺旋特急ロストレイル

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