突撃! モフモフピクニック
オープニング
「どうも、僕は世界司書のバナンといいます」
狐を擬人化したような男が尻尾を揺らしながら頭を下げる。
「皆さんを<駅>のある世界へご案内したいと思いますが‥‥モフトピアってところへ行って見ません?」
バナンはこくりと首を傾げた。
「モフトピアはアニモフというぬいぐるみみたいな生き物がいる世界なんです。そこでの不思議な現象観察をしてきてもらいたいんですよ」
尻尾をフリフリしながら後押ししながら、ロストナンバー達をバナンはモフトピアへと誘う。
「派手な冒険がしたいという方は他にいかれたほうがいいですが、この世界は安心、安全、安穏の3安が売りなんですよー」
興味をもったロストナンバー達に相変わらず尻尾を振ってバナンはモフトピアを説明した。
「今日はーそうです、そうです。モフトピアにある浮遊島の一つのプリン山へのピクニックがあるんですよ。雲に乗って移動して頂上でお弁当を食べる企画なので皆さんも何か作ってもっていくといいかもしれませんよ?」
導きの書をめくりながらバナンはイベントの一つを見つけて付けたす。
雲に乗ってプリンで出来た山へピクニックという言葉の魅力は大きかった。
「今一度聞きますけど、モフトピアってところへ行ってみません? 調査といっても先ほどいいましたようにイベントに参加してくる形ですから危険とは無縁ですよ?」
首をこくーりと傾げながらバナンはロストナンバー達を見つめ直す。
期待のまなざしを受けて、ロストナンバー達はモフトピアへの出発を決めたのだった。
管理番号 | b33 |
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担当ライター | 橘真斗 |
ライターコメント |
二本目です。 モフトピアでのゆるーい冒険です。 プリン山は食べれるかもしれませんが食べちゃいけません‥‥たぶん。 お弁当のおかず交換なんかをアニモフや一緒に行くメンバーとしてみてはいかがでしょうか? |
参加者一覧 | ルフス・ティルギット(cvnr5747) | ハーヴェイ・イングラム(crmv5133) | 氷山 悠治(crwh9150) | 佐藤 壱(cxna9382) |
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ノベル
~出発前~
『えー、モフトピア行きのロストレイルが発車いたします。ご乗車の方はチケット及びパスの確認のもとご乗車ください』
0世界の<駅>にアナウンスが響く。
12台のロストレイルが出入りする最も大きな<駅>がターミナルには存在していた。
「もうすぐ出発かぁ‥‥モフトピアってどんなろころだろうなぁ? 博物誌の資料を見たけど楽しそうなところみたいだよね」
ルフス・ティルキッドは4人用の客席の一つに座り窓から外を眺め、これから先の未知なる世界への思いを馳せる。
「よぉ! 席空いているかい?」
外を眺めるルフスを首に青いバンダナを巻いた青年が声をかけてきた。
「どうぞ、手荷物はお弁当ですか?」
「あー、まーそうなんだが‥‥中身はここじゃみせれねぇな」
厳重に封印された手荷物を突っ込まれるも青年は視線をそらした誤魔化す。
「同じ依頼の人ですよね? どうも、はじめまして佐藤壱っていいます。相席いいですか?」
「ああいいぜ‥‥って、俺がいうことじゃねぇな。俺の名前は氷山・悠治だ」
「別に構いませんよー。ほら、旅は道ずれといいますからねぇ。俺はルフス・ティルキッドだよぉ」
ルフスの隣に氷山が座り、ルフスの前には壱が座りつつ互いに自己紹介をすませた。
カンカンカンと発車のためにベルがなった。
「ちょっと待ったぁ! その列車には俺も乗るっ!」
大きな叫び声と共にバスケットを持った男が列車に向かって走る。
ロストレイルが走りだし、男との距離が開いた。
「待てこのッ! 出遅れるかぁぁぁっっ!」
男は腰の剣をガチャガチャ鳴らしながら全力で走りルフス達の座る客車の手すりへジャンプして捕まる。
「すごいなぁ‥‥あの兄さん乗ってるよ」
「俺はハーヴェイ・イングラムだ。よろしくな!」
ハーヴェイが挨拶をしていると列車は0世界を抜けて<ディラックの空>と呼ばれる空間へと入り込んだ。
夢と希望を乗せたロストレイルの旅が始まる‥‥。
~モフトピアへようこそ~
「ルフスと悠治も一緒だと何かと心強いな」
「こちらも気が楽ですよぉー」
「右に同じ‥‥けど、あれだ。俺たち浮いてねぇ?」
ファンシーといっても過言ではないモフトピアに降り立ったのは4人の男。
ぬいぐるみだらけの世界にはちょっと場違いな気がしなくもない。
「いいんだ、可愛いは正義だ。アニモフを愛でるのに男も女も関係ねぇ!」
「‥‥あ、あれがピクニックの集団かな‥‥?」
佐藤の指先からは熊や犬、猫、兎などのぬいぐるみが幾つも歩いてきた。
彼らがこの世界の住人の『アニモフ』である。
「やべぇ。アニモフ超可愛いぞ‥‥永住してぇ」
ぴょこぴょこという音が聞こえてきそうな足取りでやってきたアニモフ達に悠治は先ほどの疑問などすっ飛ばして和む。
『キミ達どこから来たんでゴザル?』
リュックサックを背負った猫アニモフが悠治を見上げながら首をかしげた。
口調は置いておいても可愛い。
「ああ、一緒にピクニックしたくてきたんだぜ‥‥で、こういうのってどうだ?」
おもむろに懐から猫じゃらしを取り出した悠治は猫アニモフの前で振り出した。
円らな瞳が猫じゃらしの先を追いかけ、猫パンチを繰り出す。
「可愛い‥‥マジ、これ正義だ」
「本当にもふっとしたくなる外見だよねー」
悠治が愛らしさに感動しているとルフスもしゃがみ込んでアニモフたちと握手をした。
ルフスの指一本の両手で握手をする姿は可愛い。
お持ち帰りしたいと思うが、ロストレイルの利用規約では生物をもっていくことも持って帰ることも違反していた。
「このまま和んでいたいけど、ピクニックにいくんだよな?」
緊張がほぐれたためか敬語の抜けた佐藤が兎のアニモフに確認をとると兎アニモフは耳を折り曲げながら頷く。
『今から雲に乗ってプリン山にいくノン。楽しみなノン』
「雲って待っているとくるのか?」
ハーヴェイが首を傾けて疑問に思っていると大きな雲が丁度端っこにやってきて、分裂しだした。
別れた雲の上にアニモフ達はぴょんとジャンプして乗っていく。
「こんな経験ツーリストにならなきゃできなかったんだろうな」
ルフスが楽しそうに呟き見習って飛び乗った。
「今度も出遅れるわけにはいかないな。相席よろしく」
熊アニモフの雲にハーヴェイは乗り込み、膝の上に乗せる。
『のんびり流されるゾナー』
熊アニモフはハーヴェイの膝の上で脱力しながら風に身を任せた。
雲はゆっくりと流れプリン山へとゆっくりのんびりと飛び始める‥‥。
~お弁当交換会~
「山頂に到着‥‥。それじゃあ、お弁当を食べよう‥‥」
佐藤はプルプルしたプリン山の頂上の平地に腰を下ろすと荷物を広げる。
カバン一つという手荷物制限のため大量のお菓子が持ってこれなかったのは残念だが、その分料理には手をかけていた。
佐藤のお弁当は和食中心で、胡麻和え、煮物に俵握り。アジフライもあり豪勢なできである。
「おぉ、美味そうじゃないか。珍しい食べ物ばかりだなぁ‥‥俺のサンドイッチと何か交換してくれないか?」
ハーヴェイがバスケットから取り出したのはトーストしたパンにベーコンやチキンを炙ったものやチーズ、目玉焼きやレタスなどをふんだんに挟んだサンドイッチである。
騎士団の野営時に作るものなので、ワイルドな仕上がりなのは否めなかった。
「サンドイッチは被っているねー。俺はおかずの方がメインかな? スパゲティサラダにハンバーグ、鶏肉と野菜の炒め物。ああ、デザートのフルーツもあるよ~」
ルフスが広げたのは洋食メニューで、佐藤のものに負けないほど美味しそうに仕上がっている。
『美味しそうだノン』
『おれっちとも交換して欲しいゾナー』
3人の広げたお弁当にアニモフ達が集まりジーっと眺めた。
「皆で交換しようぜ、俺もアニモフ達の食べ物に興味あるしな」
「オレもいいぜぇ。甘いものがあるなら優先的に受け付けるぜぇ!」
ハーヴェイと佐藤は口元に手を当ててジーっと眺めるアニモフにキュンキュンしながら互いの弁当を分け与えたりしている。
『キミはお弁当忘れたでゴザル?』
一歩離れて様子をみていた悠治に猫アニモフが声をかけてきた。
「いやー、忘れたわけじゃねーんだけどな」
厳重に封印(?)された『兵器』とも呼ばれたお弁当箱を悠治があけるとドライアイスのような白い煙が湧き出てくる。
『け、煙が出ているでゴザル!』
「こ‥‥これはだな! 俺の世界では一般家庭の代表的な食べ物で‥‥!」
煙の出て来るお弁当箱に猫アニモフはびっくりして距離をとった。
弁解するように悠治が説明をするが信じてもらえるかどうか微妙である。
「ま、まぁ‥‥食べてみるか?」
ゴム手袋をつけて中から”何か”を悠治は取り出した。
ごぼごぽと泡が立つような不気味なスープが出る‥‥はずだった。
見た目綺麗なコーンポタージュが姿を見せる。
「あ、あれ? これがモフトピアパワー?」
『危険』なことが起きないモフトピアという世界では悠治の兵器と呼ばれる料理も普通になってしまうようだ。
逆をいえば、それだけ『危険』なのだが今は深く突っ込むは控えよう。
『美味しそうなスープでゴザル。貰ってよいでゴザル?』
首をかしげてねだる猫アニモフに悠治は機嫌をよくして何度も頷いた。
器を掴んでごくごくと猫アニモフはスープを飲み干すとご機嫌に鳴く。
「ああ、可愛い! マジ可愛い、この世界の中心で叫びたい!」
悠治は今まで似ないほどの感動を得て、葛藤をして我慢していた『撫で』を猫アニモフに行った。
ふかふかの毛並みが心地よい。
「あなたも可愛いのが好きでしたか。アニモフって玉子焼きとかも好きだし、甘いものも持っているからいいですよね」
甘党な佐藤はアニモフのお弁当にあった苺と生クリームのシュークリームやクリームパンなどを交換してもらい満足だった。
「あー‥‥いやー‥‥これはそのー‥‥俺の世界では一般的な挨拶としてだな!」
「照れなくてもいいじゃねぇかよ。好きにモフらないとそんするぜ?」
「まったくですよー」
佐藤に見られた悠治がいい訳をするも、気づけば全員に見られており自分がトリップしていたことに気づく。
「そうだ、食後の運動ってことで何かしたいが遊び道具は荷物制限にひっかかってもってこれなかったんだよなぁ」
ハーヴェイはお弁当によって持ってこれなくなった遊び道具のことを思い返し肩を落とした。
『キャッチボールなら、ボールあるゾナー』
「ナイスだ、熊さん。じゃあ、やろうぜ!」
悠治が照れ隠しのために率先してキャッチボール企画に乗っかる。
熊アニモフがもってきていたボールを使ったキャッチボールをハーヴェイ達は楽しむのだった。
~デザート・タイム~
「遊んだ遊んだー」
ルフスが座り込んで休憩をしながら、プリン山からの景色に目を移す。
大きな島から小さな島まで幾つも浮いて雲と共に流れていた。
見ているだけでも何か心が軽くなるような‥‥そんな景色である。
「雲の上からとはやっぱり違うね~。風が気持ちいいー」
思わず伸びをしたくなるような平和なひと時‥‥落ち着いてくると甘いものが食べたくなった。
自分が座っているのはプリンである。
食べたくないといえば嘘だ。
「ねー、この山のプリンって食べれないの?」
「オレも‥‥それ気になってたんだ‥‥どうなの?」
アニモフに大してはラフなスタイルを崩さない佐藤が自分の足元にあるプルプルなものへの好奇心を押さえきれずに聞く。
『お祈りしてから食べるのが習慣だノン』
『そうだゾナー』
『お祈りするでゴザル』
共にきたアニモフ達はぺたんと地面に座ると両手を合わせた。
佐藤をはじめルフスやハーヴェイ、悠治もアニモフ達の裏で同じように手を合わせて様子を見る。
『やめられぬ 一口だけと 今二回』
パンパンと拍手を打つと一例をして、アニモフ達はスプーンで一口プリン山を削って食べた。
「面白い習慣だなぁ‥‥じゃあ、遠慮なく頂きますか」
「いっただきぃっ! うっめぇぇっ!」
一口食べた悠治は大きな声をあげてプリン山のアジに感動する。
「これ‥‥美味しい‥‥うん、美味しい」
佐藤は一口をじっくりと味わった。
『一口食べたら帰るゾナー』
熊アニモフの先導にそって帰り支度をはじめる。
モフトピアでのモフモフな一日が終わろうとしていた‥‥。
クリエイターコメント |
橘真斗です。 遅くなって申し訳ありません、完成です。 男4人ですが皆さん甘い物好きかつ可愛い物好きということで草食男子ってこういう人たちなのかなと思ったしだいです。 モフトピアの生き物は和み要素が一杯なので、何か疲れたときはこういうシナリオを遊びたいなーと思いました。 それでは運命の交錯するときまで、ごきげんよう。 |
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