オープニング

「わたしの力なら、ルイスさんの所へ飛んで行けると思います」
 ミルカ・アハティアラは言った。

 0世界のどこかに潜伏しているはずの『鉄仮面の囚人』ことルイス・エルトダウン。
 その捜索が行われている中、ミルカがそのような提案をしてきた。
 名前がわかっている相手であれば、そのものに届けものをするため、当該人物のいる場所に転移できるのがサンタクロースとしてのミルカの能力だ。

「でも、ひとりでいくのはさすがにちょっと怖いですので! 付いてきて下さる方がいると心強いです」
 ミルカはそうも言った。
 もっともだ。どんな危険が待ち受けているかまったくわからないのだから……。

ご案内

ミルカ・アハティアラ(cefr6795)さんの能力を利用して、鉄仮面の居所をつきとめられるかもしれません。

このOPはミルカ・アハティアラ(cefr6795)さんにのみ、おしらせしています。結果のノベルが全体に公開されるかどうかは結果の状況によります(参加者の方には結果はお知らせします)。

このパーソナルイベントには、参加者(ミルカさん)からこのパーソナルイベントのことを教えられた方も参加することができます。

参加者はミルカさんとともに「ルイス・エルトダウンのいる場所」に瞬間移動することになります。そこが何処なのか、何が待ち受けているのかはわかりません。

!注意!
こちらは下記のみなさんが遭遇したパーソナルイベントです。

●パーソナルイベントとは?
シナリオやイベント掲示板内で、「特定の条件にかなった場合」、そのキャラクターおよび周辺に発生することがある特別な状況です。パーソナルイベント下での行動が、新たな展開のきっかけになるかもしれません。もちろん、誰にも知られることなく、ひっそりと日常や他の冒険に埋もれてゆくことも……。
※このパーソナルイベントの参加者
・ミルカ・アハティアラ(cefr6795)
・上記参加者からこのパーソナルイベントのことを教えられた人
※このパーソナルイベントの発生条件
イベント『鉄仮面の行方』のプレイングによる

■参加方法
(プレイング受付は終了しました)

ノベル

「お届け先は――ルイス・エルトダウンさんから南に500メートル」
 ミルカ・アハティアラは、あえて目の前でなく、少し距離をとって転移をこころみた。
 突然、彼自身の間近に転移するのは危険度が高い、と判断したのである。
 しかしそれは危険と好機の表裏一体でもあった。
 目の前に転移すれば不意をつくことができたかもしれない。反面、近くに転移するだけでは、そのわずかな時間に、相手が迎撃の用意を整えるのを許してしまうかもしれないのだ。
 ミルカとともに行くことを決めたのは一一 一、マスカダイン・F・ 羽空、シーアールシー ゼロ、そしてフェリックス・ノイアルベールの4人だった。
 ミルカ合わせて5人のロストナンバーが、ルイスのもとへと――、飛んだ。





 生ぬるい、湿った空気がかれらを包み込んだ。
「……ぎゃっ!?」
 一が足をとられて滑った。
 ざぶん!と水の中に倒れる。いや……水ではない、ぬるま湯の温度の、ぬるぬるする粘液が足元に溜まっている。その足元も、不気味にやわらかいのだ。
「なんだ……これは」
 あたりは非常に薄暗くわずかな燐光が、でこぼこした洞窟のような壁と天井を照らしているだけだった。フェリックスが魔法の灯火で照らすと、浮かび上がったのは奇怪きわまりない光景である。
 ぬめぬめとぬれている壁はまだらな色合い。じくじくと、粘液が沁み出してきているようだ。さらには、ところどころ脈打ち、うごめいている箇所さえある。
 フェリックスは全員に防御の魔法を施していた。不意打ちで攻撃を受けても防ぐことができる。
「魔法が……侵食されていく」
 その魔法の効果が、急速に失われていこうとするのを、フェリックスは感じていた。
「これはもしかするともしかするのです」
 と、ゼロ。
 彼女は、どこからともなく謎の光弾を射出した。
 それが閃光を炸裂させると、瞬間、周囲のものは動きを止めたようである。
「い、いまのは?」
「無限ヴォイニッチキャノンなのです。1立方ミリメートル内に五百千万億那由他阿僧祇バイトの無意味な情報を高密度に圧縮したものなのです。でも……急速に吸収されていっているのです」
「だが魔法の侵食は停止しているようだ」
「ヴォイニッチキャノンの情報を消化すればまたはじまると思うのです」
「え? え? 情報を……消化するって……まさか――まさか」
 一がその可能性に思い至り、顔色を失った。
 ゼロがこくん、と頷く。
「ここはチャイ=ブレの体内だと思うのです」

「ブラヴォー」
 乾いた、拍手。

「よくぞここまで私を追ってきた」
 瞬間!
 周囲の地面が、壁が、天井が、激しいく揺れ動いた。
 それは瞬時に形を変え、5つの肉色の狭い鳥籠のようになって5人をそれぞれ閉じ込める。そのまま、粘液の海の上に吊り下げられるような恰好になった。
 一方、床面の一部が盛り上がり、椅子とテーブルに姿を変えた。それまで、肉質のものだったのに、今はあきらかな人工物である。
 『鉄仮面』の男は、悠然と、そこに腰掛ける。
「きみには驚かされるね、ヒメ」
「どこまでも追いかけるって、約束しましたよね」
 きっ、と、一はルイスを睨みつけた。
「勇敢なお嬢さん。助けを呼んでいるのかね」
「っ!」
 ミルカは、ノートを後ろでに隠した。
「構わぬよ。呼びたまえ。だが……果たしてここまで助けにくることができるかな?」
 くくく、と笑いが漏れた。
「貴方は――」
 マスカダインだ。
「伝えようとしているのね。そうでしょ」
 マスカダインは呼びかける。
「自ら『悪意』そのものになって……呼び掛け演じることで。人よ、忘れないでくれ、闘ってくれと――そして滅してくれ、と」
「きみはそう解釈するのかね」
「貴方に必要なのは断罪じゃなく告解。違う? ねぇ、語るべきは真実じゃないかい。鉄仮面ではなくルイスの――」
 マスカダインの鳥籠が、ざぶん、と粘液の海に沈んだ。
「やめろ!」
 フェリックスの魔法が籠を包み込み、マスカダインを守る。
 再び浮上してくる籠へ向かって、『鉄仮面』の男は冷ややかに言った。
「私を理解しようなどとは思うな」

 そして全員を見渡し、宣言するように言うのだった。
「この場所が見つかってしまった以上、私の計画は狂いを生じざるをえまい。だがまだ勝敗は決していない。諸君らは最終幕の観客となるがよかろう。このターミナルに、希望はあるか否か。私を滅ぼし、この茶番を続けるか否か。その選択を見届けるがいい」
 男ごと、椅子とテーブルが、肉壁に呑まれて、消えていった。

 ミルカの転移能力、そしてフェリックスが用意してきた帰還のためのマジックアイテムは効果を発揮しなかった。ここが「チャイ=ブレの体内」だからなのか、別の理由があるのかは定かではない。
 ミルカはノートでSOSを送った。
 ルイスの所在をあきらかにできたことは大きな成果だ。
 フェリックスの魔法とゼロのヴォイニッチキャノンを使用し続けることで、消化吸収は遅らせることができる。
 それも永久に、というわけにはいかないが、最後の手段としては、ここでゼロが巨大化するという手もあるだろう。チャイ=ブレの中で巨大化するという所業が、いったいどのようなことになるのかわからないにせよ。
 やがて、すぐに救出の算段をするので気を確かにもつように、という返信があった。
 今はひとまず、それを待つことだ……。


※企画シナリオ『【0世界自警団】鉄仮面を追え』のノベルも合わせてご確認下さい。

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螺旋特急ロストレイル

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