イラスト/久保川

エヴァ・ベイフルック

ターミナルに集う旅人のみなさん。

先般の世界樹調査隊の成果として、『流転機関』の入手に成功しました。
年明けにはロストレイル13号の出発が予定されています。

すべての世界群の果てにあるという「ワールズエンドステーション」への道が開けたことで
わたしたちの未来には大きな変化の兆しがあります。

そこで。
この機会に、今後の0世界のあり方についての意見を公募することにしました。

わたしたち世界図書館は、200年の長きに渡り、ロストナンバーたちを迎え入れ、
世界間鉄道による冒険旅行を基礎とした現体制をつくり、維持してきました。

ですが、背景を異にする大勢のロストナンバーが集うことから起こる軋轢や、
異世界に対して否応なく生じてしまう過干渉、
そしてなにより、為政者の任を預かるわたしたち自身に内在する不徳などが、
さまざま問題を呼び起こしていることも事実です。

そうした問題への対策や改善の提案などを募集したいと思います。

提言には一切のタブーはありません。
世界図書館の解体なども選択肢に入ってくるでしょう。

みなさんのお考えを、聞かせてください。

ご案内

0世界の今後について、どのようなあり方を理想とするか、ロストナンバーたちから意見が求められています。

このイベントはフリーシナリオ形式で行われます。

→フリーシナリオとは?
フリーシナリオはイベント時などに募集される特別なシナリオです。無料で参加できますが、登場できるかどうかはプレイングの内容次第です。

■参加方法
(プレイング受付は終了しました)

テーマ一覧

【1】0世界の治安維持
まったく環境の異なる世界からやってきたロストナンバーが集うため、0世界ではロストナンバー同士のトラブルが起きたり、集団に溶け込めずに孤立するケースがあります。ターミナルでは統一的な法規の整備が行われない一方、著しく秩序を乱した場合は恣意的な処罰があるなど、適切な法治が行われているとは言えません。先般、そうした問題を改善するため、有志の自警団が設立されましたが、賛否の声もあるようです。ロストナンバーが安心して暮らせる町を、どのようにつくっていけばいいのでしょうか?

【2】世界図書館と旧世界樹旅団の関係
イグシスト「世界樹」のもと、世界群を侵略していた「世界樹旅団」。かれらは世界樹が休眠し、拠点である移動世界ナラゴニアが0世界と融合したことで、組織体としては崩壊しました。現在、旧旅団のロストナンバーは難民として0世界に属し、暫定的に自治政府が立ち上げられていますが、自治政府の足並みも揃っていないようです。今後、世界図書館と旧旅団は徐々に融和・統合していく方針ですが、また別の方針へ転換する道もあるでしょう。自治政府に対する提言などもあれば歓迎されます。

【3】世界図書館理事会について
200年に渡り、世界図書館を運営してきたベイフルック家とエルトダウン家。かれら「ファミリー」も多くの問題を抱えていました。考え方の違いから出奔、または追放されたヘンリー・ベイフルックとエドマンド・エルトダウン。多数のロストナンバーを犠牲に陰謀をめぐらせていたダイアナ・ベイフルック。悪意を伝染させる能力でターミナルを脅かしたルイス・エルトダウン。私情により暴走し、理事会を脱退したロバート・エルトダウン。そういったすべての事情を知りながらいまだ理事会を支配しているエヴァ・ベイフルック。ファミリーの所業を考えると、このままかれらに理事会を任せておくべきではないという意見も正当なものです。

【4】異世界への関わり方
世界図書館は、異世界に対しての過干渉を否定してきましたが、それでも結果としてロストナンバーの行動が、異世界に大きな変化をもたらしてしまうことがありました。一方で、それにより現地の人々が大勢救われてきたことも事実です。今後、次に掲げるイグシストの問題への対処や、ロストナンバーの故郷への送還が中心的な職務となれば、それ以外の異世界への干渉は全面的に禁止すべきかもしれません。

【5】イグシストについて
世界図書館の存在の基盤となっている「チャイ=ブレ」。世界樹旅団を率いていた「世界樹」。かれらは現在、休眠状態にありますが、不滅の存在とされるイグシストはいつまた活性化しないとも限りません。そうなれば、再び世界群に危機が及ぶでしょう。ロストナンバーはかれらイグシストに「存在の保証」を得ることで消失の運命から免れていますが、そうした体制が異世界への干渉の背景にあります。かれらが休眠中の今のうちに、イグシストの支配から脱する方法を模索すべきではないでしょうか? ただし、それはすべてのロストナンバーを危険に晒す試みでもあります。

ノベル

■0世界の治安維持

「まず、全体としては、法の整備は推進したいという向きが多いです」
「現在の図書館規定を拡大していくということね」
「図書館規定の柔軟な運用による法治は、非常に恣意的な……私法のようなものでしたから。古部 利政さんがこんな案をあげてくれていますよ」

『0世界の住人であるロストメモリー、同じ世界図書館に所属する旅人を殺害してはならない』
『他者の所有物を盗んではならない』
『対象者の意思に反し、監禁などで他者の行動の自由を侵害してはならない。対象者自身が正常な判断を下せない場合は除く』
『他者の心体を無闇に傷つけてはならない。これは戦闘訓練等を除く同意のない暴力行為、相手の許可を得ない精神干渉を意味する』

「……いいと思うけど」
「私たちが聞けばね。でもね、アリッサ。この程度のことは図書館規定にだって書いてあることなの。正確には、こういったことを裁くような世界司書の運用が規定されているということだけど。……問題は、こうした、一見、私たちが常識だと思うような観念さえ、さまざまな世界群の中では相対的にならざるをえないということ。鍛丸さん、坂上健さん、NADさんの指摘はそういうことよ。これに対する具体的な対案は今回の提案でも出てこなかったので、今後の検討が必要です」
「ワイテ・マーセイレさんの『感性が似た者同士で居住区に分かれる』というのは、意外といい解法なんじゃないかと思うの」
「現在のターミナルもほぼそのような状況にあるので、根本的な解決にはならないのと、区別が差別に転化するおそれがあります。でもチェンバーの利用が、ひとつの解決になる場合はたしかにあるでしょうね」

  *

「それで、自警団についてですけれど、今のところ自警団を処分せよという提議はありません。体制が変わって結局自警団がなくなる可能性はあったとしてもね。ですから、そのことは今問題にしません。また、新しい司法の体制が決まるまでは、自警団を存続させて任をもってもらってはという、西迫舞人さんの意見があります」
「私は賛成したいけどな。……代行ってどういうこと?」
「いずれは、自警団に変わる、公的な司法機構――簡単に言えば、ターミナルにも警察をつくるべきだという考えです。ニコル・メイブさんや、フェリックス・ノイアルベールさんの提案などがそれです」
「警察ができたら自警団は解散させちゃうの?」
「ウーヴェ・ギルマンさんのアイデアは、自警団はもっと生活に密着した日常的なもめ事の相談などの役目を担ってはというものです」
「なるほど。それはもともとの設立趣旨に近いからいいかも。……『警察』のほうは、公的に、強い権限を持つということ?」
「そうなるでしょうが、法規の整備とセットになるでしょうね。ちなみに由良久秀さんからは、『黄昏のチェンバー』などで捜査の訓練をするなどして、質の高い警察をつくりたいという希望がありました」
「探偵学校ね!」

  *

「法があり、司法があれば、裁きがあり、処罰があるということになります」
「メアリベルさんはターミナルにも極刑があればいいという意見。NADさんはパスホルダーの剥奪をもってそれにかえるという考えね。……飛天 鴉刃さんのアイデアは? 皆の投票で処罰を決める方式」
「一案ですが、慎重に運用したいやり方ね。ただ、納得感はあります」

  *

「……で。いかがですか、館長」
「じゃあ、私のアイデアを言うね。……図書館ないし今後のターミナル市政を担う機関からは独立した司法組織と、法律をつくりましょう。自警団はひきつづき、公認して、新組織とは異なる役割をもってターミナルのみんなのために活動してほしいです。……このことは、今後、公開の討議を重ねるとして、ベースは古部さんの草案を使います」


■世界図書館と旧世界樹旅団の関係

「次に旧旅団との関係についてですが」
「現状では、ナラゴニアは自治に任せながら、必要に応じて援助などを行い、徐々に融和・統合の方向へという考えよね。これはナラゴニア側の希望にもかなっている」
「今のところは」
「その方針は継続したとしても、自治政府にどこまで口出ししていいかってことよね? リオードル公を危険視する意見が目立つわ。東野楽園さんにティリクティアさん。ほかにも、名指しはしないけど同様と思われる声が」
「館長は?」
「私も同じ印象かな……」
「人狼公の暴走抑止を口実に図書館が介入し、ナラゴニアへの影響力を強めるという案もありますよ」
「そんな意見出てきてないよね!? それレディ・カリスの意見でしょ!?」
「……」
「今、舌打ちしなかった!?」
「旅団を滅ぼしてはどうかという意見もありましたが、私は戦争にはメリットは感じません。また、ナラゴニアも図書館が統治してはという意見も、少なくとも現状ではそれどころではないでしょう。なら、基本的には現状を維持しつつ、ナラゴニアが安定している必要があります。私は、そのためには、まさしくリオードル公をうまく操るのが肝要と考えます。さいわい扱いやすい人物ですから」
「そうかなあ……」
「ナラゴニアと、市民レベルでの交流や、理解を深めていこうという方針は今までどおりでいいですね」
「うん、私はそうしたいと思うわ」


■世界図書館理事会について

「理事会とは別に、議会をつくってはどうかという案があります。フィミア・イームズさんの提案では、政治は議会が似ない、われわれは一種の象徴王的な存在であってはどうかと」
「なるほど」
「一方、理事会は解体し、新たにつくられる議会に、私たちも編入するという案もあります。意見の数としてはこちらの方向性が多かったといえます。詳細はそれぞれ異なりますけれども……ふさふささんや鍛丸さんの案などが具体的です」
「議会をつくるという案は一二 千志さんのアイデアもそうね」
「一二さんは、議会はロストメモリーを重視すべきだと。ロストナンバーはいつかターミナルを去る可能性があり、この世界に留まるロストメモリーの意向が、0世界の統治では尊重されるべきという意見です」
「それは一理あるわ」

  *

「理事会を維持すべきという声もあるのですよ」
「でもポジティブな理由ではないでしょ?」
「そうですね。ローナさんの意見は、突然、変更すれば混乱があること、特に実務的な面での滞りを心配するものです。虎部隆さんは、チャイ=ブレがあるかぎり、理事会を変えてそのありようは変わらないのでは、と」
「たしかに、チャイ=ブレの司祭としての私たちの仕事は他の人には譲れないのですものね。でも逆を言えば、私たちの権限が一切失われても、その役目だけ果たすことができれば、理事会が解散しても問題ないのだわ」
「ほかに、おもに責任追及の観点で、解散は解決にならないという見方があります」
「気持ちの問題としてってことね」
「それから体制としては現在のまま、理事会の新しいメンバーをロストナンバーから募るという案もありました。ハクア・クロスフォードさんの案です」
「現実的だわ。でももし、そうするとしたら――」
「タイムさんの言うように『選挙』を行うことになります」

  *

「ジョヴァンニ・コルレオーネさんも選挙案ね。ジョヴァンニさんは、『ファミリー』の是非を問うことも含めて選挙をしてはという意見だわ。私は、この方法がいちばん正当だと思う。これからの私たちのリーダーを決める選挙。それでもし、なおも私たちに期待をしてくれる人がいるなら、頑張ればいいのよ…………おもにエヴァおばさまが」
「……。ロストレイル13号がエドマンドを救出できたら、彼にも復帰してもらいますよ」
「あら、理事会は選挙で選ぶんじゃなかった?」
「彼もあらためて選出の場に加わってもらうということです。その頃のターミナルを担っているはずの新生理事会の考え次第ではありますが……」


■異世界への関わり方

「異世界への渡航について、すべてを禁止してしまうことは現実的ではないという意見が大勢でした。帰属もできないし、世界探索や、なによりチャイ=ブレの覚醒を招くおそれがある、と」
「しだりさんが言うように、ディラックの落とし子による世界群侵食への対応の必要性もあるわ」
「また、過去に異世界で起きた深刻な事件は、おもに世界樹旅団に原因があったのであって、従来の世界図書館の旅行規定にそう不備はないという指摘もあります」
「それを言うなら、今後、世界樹旅団のような、新たなロストナンバー集団が存在しないとも限らないものね」
「私は、異世界への関り方についても、今後、立法される新法に含めていくべきではないかと考えます」
「はーい、反対はしないです」


■イグシストについて

『チャイ=ブレの殺害方法としては、ディラックの発言から殺し続けろという答えが出ています。 不滅には不滅をぶつけて、殺し合いさせ続ければ、どちらも殺したことになるのではないでしょうか?』

「……冷泉 律さんの言うとおり。事実、今現在、チャイ=ブレと世界樹が休眠しているのは、まさしくその状態にあると考えられます。問題は、その均衡がいつ崩れるかということです」
「いずれはチャイ=ブレを滅ぼすべきという提案は、相沢優さんや、チェガル フランチェスカさん……ほかにも。でも不安に思う気持ちを表明してくれてるみんなの気持ちもわかるの。フォッカーさんや福増 在利さんの。私たちは『存在の保証』という人質をとられているのですものね……」
「マスカダイン・F・羽空の意見は、こう言っては不謹慎かもしれませんが、面白いわ。チャイ=ブレと共存できないか、と」
「チャイ=ブレがこのまま眠り続けていれば、ある意味で共存と言えるかもしれないけどね。……虎部さんや鹿毛 ヒナタさんはギベオンでのフランさんの研究に期待をしている。シーアルシーゼロさんはワールズエンドステーションでの発見がカギになるんじゃないか、って。そしてヴェンニフ 隆樹さんの……世界樹の果実の力がなにか使えるのじゃないかというアイデア」
「医務室でのチェックをはじめ、今のところかれらの健康状況や体質に異常はみられないけれど……一理あるかもしれません」

  *

「ところで冷泉 律さんが、カンダータの技術を使えば、イグシストによらない存在の保証を得られるのじゃないか、って」
「残念ながら、あれは人為的にロストナンバーをつくり出すだけです。すでにロストナンバーになっているものには使えません。……でも、冷泉さんの着想は鋭いと思います。カンダータ軍は、『イグシストの存在保証を受けていないが消失の運命にさらされていないロストナンバー』なのですから。今度は、かれらに0世界の傭兵となってもらい、イグシストと戦ってもらうという道はあるかもしれませんよ」
「そ、そんな方法が……!?」
「本当に可能かどうかはわかりませんが、可能性はあると思います。

  *

「……だいたい整理できた?」
「提案内容としては。……では、ムジカさんと由良さんを呼びますよ」
「お腹空いたー。さっきも言ったけど、ムジカさんたち来るなら、お寿司の出前とろーよー?」
「私費ならいいですよ」
「えー」


ご参加ありがとうございました。1月中旬頃、今回の提案をもとに、行動を起こすシナリオが運営される予定です。なお、ノベルで触れられた内容はレディ・カリスとアリッサの解釈によるため、いただいた提案の全文はこちらに手を加えずにご紹介しておきます。すごく長いのと、ちょっとわんぱくな意見もあるので、ご覧になるときはお心を強くもったうえで、自己責任でご覧ください。

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