「……ねえイム。メムたち、これからどうしたらいいのかな」 ざわつくナラゴニアの街を眺めながら、メムはぽつりと呟く。顔の動きと共に、ウサギのような帽子の耳も少し、前へと垂れ下がった。「どうって……」 イムは言いかけ、口ごもる。 先日行われた『ナラゴニア会談』により、旅団のツーリストには『難民パス』が発行され、さらに希望者には、世界図書館の旅客身分が与えられることになったという。 図書館のことを悪く思っているわけではない。今回だって、身動き出来ずにいた二人を、図書館の友達は探し出し、助けてくれた。それは素直に嬉しかった。 でも、かつて元の世界を見失って迷子になった二人を救ってくれたのは、世界樹旅団だ。未だ図書館を敵視している旅団員だっている。「おじさん、元気かな」 ジルヴァは図書館の捕虜になったと噂で聞いた。それから先の戦いがあり、生きているのかどうかも定かではない。生きているのなら、彼ももう、図書館の人間になったのだろうか。彼を知る人にそれとなく聞いてみても、ナラゴニアで見かけたという話は出なかった。「メムたちのことも、もうどうでもいいのかも」「そんなことないって! トシだから、ちょっと忘れちゃってるかもしれないけどさ!」 イムがそう言って笑っても、メムの表情は晴れない。 イムも笑うのをやめ、街の方を見た。彼女の気持ちは痛いほどわかる。 信じたいという気持ちと、このまま信じて良いのだろうかという気持ち。 ずっとその間で揺れながら、二人で肩を寄せ合って生きてきたのだから。 街が見渡せる丘の上からも、揺らめく人々の心が見えるかのようだった。 ◇ ◇ ◇「くそっ……ポンコツめ」 ジルヴァは舌打ちをし、上手く動かない自らの足に毒づいた。 遠くで鳥のようにも猿のようにも聞こえる怪しげな鳴き声がしている。 ナラゴニアと0世界が衝突したあの日、彼の頭に真っ先に浮かんだのは、奇妙な帽子を被った子供たちのことだった。 今までとて、決して安全だったわけではない。けれども、ナラゴニアも戦禍に直接巻き込まれる状況とは訳が違う。それに、あの二人の能力は、大規模な戦闘には不向きだ。 周囲の者に心を開きたがらない子供たちは、きっと自分たちだけで切り抜けようとするだろう。 だから彼も、何とかナラゴニアへと向かえないかと戦場を駆けた。しかし、それを許してくれるほど、状況は甘くはなかった。 彼の作る『人形』には、核となる材料が要る。世界樹の苗を植え付けに行った時も、それは当然、大量に所持していた。しかし戦いの後、捕虜の身となり、隠し持っていた材料も、戦場の混乱の中で失われた。 高度な戦闘に耐えうるほどの人形を作るためには、その世界でそれなりの儀式を行わなければいけない彼の能力は、突発的に起こる事態には対処しにくい。 爆発に巻き込まれながらも夢中で走り、そのうち気が遠くなって、再び意識を取り戻した時には、このジャングルのような場所に居た。 何度か大声で叫んではみたが、誰かにそれが届いた気配もない。 救いだったのは、どうにか動ける範囲に小川が流れ、地面に食べられる木の実も落ちていたことだ。それで、飢えは少しだけ凌げた。 だが、足が動くようになるまでに、果たしてそれが持つのかどうか。「情けねぇな」 ジルヴァはそう呟き、少しでも体力を回復させようと目を閉じた。
ジューンは会談の後、構造物サーチと生体サーチを起動し、ナラゴニアの崩壊箇所に怪我人が取り残されていないかを探索していた。 建物が崩れ、木々が倒れた場所で蹲り、途方に暮れたような顔をする人々、喜び、そして悲しみの再会に涙する人々、新たな未来に思いを馳せるように前を向く人々――様々な人の姿がそこにはあった。 ほとんどの怪我人は救出されていたようだったが、やはり見落とされている場所もある。ジューンがそれを指摘すると、周囲の人々が集まってきて救出を手伝ってくれた。 無事取り残されていた人が救出され、それを抱き合って喜ぶ様は、向こうもこちらも変わらない。 ジューンはゆっくりその場を後にし、ふと向けた視線の先の丘を見た。上から見れば、また違ったことに気づけるかもしれない。 丘の上からは、ナラゴニアの様子が良く見えた。 豊かな緑の中、身を寄せ合うように『庭園』が点在している。そこから立ち上る煙や、行き交う人の姿も確認することが出来た。 視線を動かして行くと、ふと、同じ丘の上に立つ木が気になり、ズームしてみる。こちらからは陰になったところに、緑とピンクの突起が見えた。 ジューンがそちらへとゆっくりと近づと、草が踏まれる音に、緑のカエルとピンクのウサギは、はっとこちらを向く。 だがジューンは慌てることなく穏やかに微笑み、そのまま自然に近づく。その雰囲気に呑まれたかのように、二人はその場を動かずに、こちらを眺めていた。 「こんにちは」 ジューンは二人の近くまで行くとしゃがみ、目線を合わせてから挨拶をする。 「素敵なお帽子ですね。私はナニーのジューンと言います」 「ナニーってなに?」 カエル帽子の男の子がそう言ってから、ふと何かに気づいたように手をぶんぶんと振った。 「――ち、ちがうからな!? そういう意味じゃないからな!?」 「またまたー。ギャグがスベッたからって、そうやってごまかすんでしょ!? おじさんのオヤジくささがうつっちゃったんじゃない?」 ウサギ帽子の女の子は、そう言って笑ったが、笑顔は急にしぼみ、さらに男の子までおとなしくなってしまう。 「どうかなさいましたか? お二人とも、哀しそうなお顔をしてますよ?」 ジューンはしゃがんだ姿勢のまま、優しく問う。 「良かったらお話を聞かせて貰えませんか? お二人が悲しい顔をしなくて済むようなお手伝いができるかもしれません。そういうことも、ナニーの仕事です」 二人とも顔を見合わせ、それから黙ってこちらに視線を戻す。知らない人ということで、警戒しているようだった。 「あんた、図書館の人だろ?」 やがて、カエル帽子の男の子の方が尋ねてきた。ジューンは頷く。 「じゃあ、メムのトモダチのトモダチなの?」 今度は、女の子の方がそう言った。 「図書館に、お友達がいらっしゃるんですか?」 彼女は、こくりと頷く。 「もしかしたら、そうかもしれません。お友達のお名前は?」 聞かれ、女の子が言おうかどうか迷っている時、ジューンの背後から声がかかった。 「やぁ。メム、イム」 振り向くと、そこには男性が立っていた。さらさらしたストレートの金髪を後ろで結んでいる。 ジューンは直接関わったことはないが、その人物を知っていた。 「貴方は確か孤児院の……初めまして、ジューンと申します。職業柄いつかそちらにお伺いしたいと思い、一方的に存じ上げておりました。貴方がお二人のお友達ですか?」 男性――マルチェロ・キルシュは一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、こういう出会いも珍しいことではない。やがて、静かに頷く。 写真記憶により、ジューンには一緒にいたゼシカ・ホーエンハイム、シーアールシー ゼロのことも把握できた。 「はいっ、飴あげる!」 その隣に立っていたピンクのツインテールの少女が、人懐っこい笑みを浮かべてジューンに飴を渡す。ジューンが礼を言うと、嬉しそうにしてから、彼女――スイート・ピーは男の子と女の子に向かって言った。 「メムちゃんイムちゃん無事だったんだね! スイートすっごく心配してたの。二人とも心細い思いしてたのに、お迎えいけなくてごめんね」 「お久しぶりなのです」 ゼロもぺこりとお辞儀をしてから言う。 「戦いは終わったので、後はみんなが仲良くなるだけなのですー」 混乱の中にあっても、お互い無事であり、そして再会できたこと。それはとても喜ばしいことだ。 隣のゼシカは、少し恥ずかしそうに笑み、そして挨拶をした。 「帽子さん達はメムとイムっていうのね。ゼシはゼシっていうの。よろしくね」 突然人に囲まれて、メムとイムは身を硬くする。 初めて会う者もいたからということだけではない。何かあったのではないかと思ったからだ。 「今日は皆で二人に会いに来たんだが、少し頼みたいこともあるんだ」 その緊張を感じ取り、どう伝えたものかと迷ったが、ロキはまず、そう切り出した。 「世界図書館は困っているロストナンバーを助けるのも仕事なんだが、手伝ってくれないか? ……運動会の時に二人と一緒に居たおじさんが、行方不明らしくて」 続く言葉に、二人の顔色が変わる。 「おじさんが? どうして!?」 「どっかふらふら遊びに行ったとかじゃないのか?」 「ターミナルは大混乱だったし、ホワイトタワーは崩壊したのです。中の人たちは全て脱出できたそうなので、近くの何処かで怪我して動けなくなったりしているのかもなのです」 「ホワイトタワーって?」 「ジルヴァさんもいた場所なのです。ゼロたちも一緒に探すので、ジルヴァさんを捜しに行きましょうなのですー」 事情が飲み込めたジューンも、二人に言う。 「イムさん、メムさん、私たちと一緒に世界図書館へ、その方を探しに行きませんか? イムさんとメムさんがそんなにも想っている方ですもの、その方もきっとイムさんとメムさんのことを想っていらっしゃる筈です」 二人の瞳の中の動揺を鎮めるように、ジューンは言葉を慎重に選びながら続けた。 「あちらでも多数の負傷者が出て、お医者様たちが一生懸命皆の手当てをなさっています。だから私は、こちらで怪我をして取り残されている方が居ないか探しに来たのです。その方も治療中でイムさんとメムさんを探しに来られないのかもしれません。一緒にその方を探しに行きましょう?」 「行きそうな場所とか、心当たりないかな?」 ロキの問いに、二人は顔を見合わせる。 「おじさん、好きな場所とかあったかな?」 「おさけは好きっていってたと思うから、おさけが飲めるところは? ……メムたちの前では飲まなかったし、よくわかんないけど」 「あ! そういや、どっか連れてってくれるって言ってたじゃん!」 「毎回メムたちが追いかえしてたから、けっきょくいかなかったじゃん」 「そっか……運動会がはじめてだったもんな。リベンジしようって、ついてったんだ」 それ以上、どちらからも言葉は出なくなり、二人は肩を落とした。ジルヴァのことを知っているつもりだったけれども、何も知らないのだということに改めて気づかされる。 メムは俯いたまま、重そうに口を開いた。 「……ロキは、メムたちのこと探しに来て、見つけてくれたし、トモダチのみんなも、図書館のみんなもすごいから、きっとおじさんのこと見つけてくれるって信じてるよ」 「でも、オレたちだってさがしに行かなきゃ!」 イムの言葉にも、彼女は首を振る。 「いいの。きっとおじさん、メムたちのこと忘れちゃってると思うし」 そのさみしげな呟きに、ゼシカはぶんぶんと首を振った。 「親代わりのジルヴァさんがあなたたちを忘れちゃうなんて絶対ない。だって、みんな家族でしょ?」 そのはっきりとした言葉に、メムもイムも驚いたような顔を向ける。 「家族……?」 今まで、そのように考えたことは全くなかったからだ。 肩を寄せ合って生きていた二人の隣に、気がついたらジルヴァはいて、気がつけば三人でいることが多くなっていった。 「二人はジルヴァさんが大好きなんでしょ? 大好きなら諦めちゃだめだよ。スイートもママが大好きだから、諦めない!」 スイートも両手を握り締めて力説する。 いつもの二人なら「好きなんかじゃない」と否定していたかもしれない。でも、そうは言わなかった。 「だったらさがさなきゃ。きっとどこかで迷子になってるのよ。おむかえいってあげましょ。家族が離れ離れなんてダメよ、そんなの寂しいもの。大切なら一緒にいなきゃいけないの」 ゼシカはそこで言葉を切り、世界樹を見た。その青々とした葉に、あの日の記憶が映る。 「あのね、ゼシのパパ今回の戦争でいなくなっちゃったの。おうちに帰る前にやることがあるからって……でも、いつ帰ってくるかわからないの。ひょっとしたら帰ってこないかもしれなくて……」 ゼシカは、ぐっと唇を噛み、続ける。 「同じ思いをあなたたちにさせたくない。今追いかけなかったら、きっとずっと後悔する。ジルヴァさんだって絶対会いたがってるはずよ。ゼシのパパ、ゼシをだっこしてぼろぼろ泣いてたもの。大人の癖におかしいわよね」 そしてまた、彼女はメムとイムを真っ直ぐに見た。 「だからね、掴んだ手は離しちゃいけないの。ゼシもあの時、転んでも泣いても追いかければよかったって思ってるの」 今は、ゼシカは泣かない。今度は両手をぎゅっと握って、地面を両足でしっかりと踏みしめる。 それから、少しだけ強張った笑顔を見せた。 「ゼシも手伝ってあげる。だから、一緒にさがしましょ」 自分たちよりも幼く見える女の子が、そうやって精一杯訴えかけてくる姿に、二人は少なからず衝撃を受けていた。いつも陽気なスイートも、真剣な表情で二人を見ている。 ロキも、ジューンも、ゼロも、二人の答えを焦らず待った。 「メム、行こう。――行かなきゃ」 やがてイムは立ち上がり、メムに向かって手を差し出す。 メムも頷き、その手をとった。 ◆ ◆ ◆ 「これで準備万端ですぅ☆」 川原 撫子は、炊き出しで作ったおむすびとお茶を、リュックに山のように詰め込み、軍手を両手にしっかりとはめると、それを背負い、両手にダウジングロッドを持って立ち上がる。 それだけのボリュームがありながら、彼女はよろけることもない。 意気揚々と歩き始める彼女の後を、ロボットフォームセクタンの壱号が、てくてくとついていった。 彼女はダウジングロッドの動きを注意深く観察しながら歩く。 彼女が進むのは、ターミナルの中でも比較的崩壊度合いが大きく、人の手がまだ回っていないエリアだ。リュックの中には背負子や救急箱も入っている。怪我人を発見した場合、とりあえずの処置をし、近くの安全な場所まで運ぶのには十分だろう。 「そう言えばぁ、ホワイトタワーから退去した方でも行方不明になってる方、何人かいらっしゃったような気がしますぅ☆ 難民パスも発行されてぇ、出てきても大丈夫だよってアナウンスしてあげるのが親切かもですぅ☆」 彼女はリュックにぶら下がっていた拡声器を手に取り、スイッチを入れると、大きく息を吸い込んだ。 ◆ 「ヘンな私」 ニコル・メイブはそう呟き、ターミナルの空を見る。 一度は戦った相手を助けに行くという自分が、何だか不思議だった。 「でも……ああ言って連れ帰った手前放っとけない、か」 ジルヴァの身動きを銃で封じ、捕虜として連れ帰ったのは彼女だ。その後ジルヴァはホワイトタワーへと収監され、今の事態へと至る。 「ジャングルのチェンバーってドードーのとこかな? だとしたらヘンな物食べてなきゃいいけど……」 「それならば、そういう話が事前にあるやもしれぬが」 彼女の言葉に、天摯は街の様子に目を向けながら答えた。彼も独自に怪我人や行方不明者の救助を目的とし、人気のないチェンバーの捜索に当たっている途中、ニコルと出会い、ジルヴァが消えたという話を聞いた。 彼もまた、ジルヴァと一戦交えた身であるし、行動を共にする事にしたのだ。 「他の皆にも聞いてみようか」 そう言ってニコルはトラベラーズノートを取り出すと、メムとイムの元へと向かった仲間へとエアメールを送る。 しばらくすると、ゼロから返信があった。 『どうやら、ドードーさんのチェンバーではないようなのです』 彼女は世界司書に、今回の件に関係しそうな予言や情報が入ったら教えてくれるように頼んだとのことだったが、その際に、チェンバーはオーナーが不在の場所だろうという話を聞いたらしい。 「じゃあ、一つ一つ当たるしかないか」 それは骨の折れる作業ではあるが、仕方がない。 その時背後から、やたらと大きい声が聞こえてきた。 「怪我人さんいらっしゃいますかぁ☆ 搬送のお手伝いしますぅ☆ 腹減りさんにはおむすびありますぅ☆ 旅団員さーん、隠れなくてももう大丈夫ですよぅ☆」 撫子である。 彼女は片手に拡声器、もう片方の手には横に寝かせたロボットフォームのセクタンの腕を掴んでいた。 「何してるんだろう?」 「わし達と目的は似たようなものじゃと思うが……何とも面妖な姿じゃな」 二人の話を聞きつけたのか、撫子の顔がこちらへと向く。 「ロボタンでダウジングして、怪我人さんを探してるんですぅ☆」 「そんなので見つかるの?」 「さっき一人見つけましたぁ☆ ――あっ、こっちにも反応がありますぅ」 手の上でセクタンは大きく揺れ始め、撫子が歩くにつれて、ぐるぐると回り始める。やがて駆け出した彼女の後を、二人も思わず追いかけていた。 進む路地は段々と狭くなり、人の姿もなくなってくる。 「もう近くみたいですぅ☆」 そう言って角を曲がった彼女に、天摯とニコルも続いた。曲がった途端にその背中が止まったので、二人もすぐに足を止める。 路地の先には、濃い緑が広がっている場所があった。 何かの攻撃を受けたのだろう。その場所を閉じていた木の扉や建物の一部が崩れている。 「樹海ですかねぇ? まだチェンバー見て回ってないですしぃ、行ってみませんかぁ?」 「ほんとにチェンバー出てきたけど、どうする?」 ニコルが天摯に意見を求めると、彼は目の前のチェンバーを見、それから背後を振り返った。 「わしもここはまだ探しておらん。それに、ホワイトタワーから闇雲に走った場合、この辺りに迷い込む事もあるやも知れぬな」 土地勘がなければ自分が今どこにいるのかもわからないだろうし、攻撃を避けるためにチェンバーの中へと入ったか、もしくは、爆風に巻き込まれて吹き飛ばされたか。 「……と言うか今ならあちこちのチェンバー内緒で探検し放題かもですぅ☆ もしかしたらチャイ=ブレへの秘密の道も見つかるかもですぅ☆」 考える二人をよそに、撫子はさっさとチェンバーの中へと入ってしまう。 二人も慌ててその後を追った。 ◇ ◇ ◇ 「あのね、よかったら旅団に拾われるまでのこと、ジルヴァさんと出会うまでのこと、出会ってからのこと教えて?」 スイートは右手でメムと、左手でイムと手をつなぎながら、ターミナルを歩く。 その後を、スケッチブックとクレヨンを持ったゼシカが、そして皆を見守るようにロキとジューンが続いた。 少し考えるようにしていたメムは、イムの方をちらと見てから、やがて語り始める。 「……メムたちはね、『できそこない』だったんだよ」 彼女の言葉に、イムも続けた。 「オレたちの世界では、早いヤツは赤ん坊のころに能力が目覚めるんだ。その能力を上手く育てて、社会のために役立てなきゃいけない」 「でも、メムたちはぜんぜんダメだったの」 「本当は一人になるはずだったけど、なんかのミスで、二人に分裂しちゃったって言ってたから、そのせいもあるんだと思う。いろんな能力開発プログラムとかやらされたけど、どれもダメだった」 「パパもママも、メムたちのこと、どうでもよくなったみたい。いつの間にかメムたち、シセツにいたんだよ」 皆、淡々と話される二人の生い立ちを、黙って聞いていた。 思い出し、語るのもきっと辛いことだろう。 でも、頑なに心を開こうとしなかった二人が、今、変わろうとしている。 「施設のやつらってみんな落ちこぼれだし、めちゃくちゃがんばんないと、上にはいけないんだ。みんなつまんねーカオしてっからさ、もっと楽しく出来たらいいなって思ったら、急に今の能力が目覚めたんだよな!」 「うん、みんなといっしょに、ゲームしたんだよ! みんなすごくよろこんでくれて、うれしかった!」 「楽しかったよな! それがだんだん評判になって、施設とは関係ないやつらも遊びにきて」 ゲームをするとみんな笑顔になったんだと、二人は興奮気味に語った。 「でも、それがゲンインで、街を追いだされちゃった。みんなをダラクさせたからなんだって」 彼らの世界は、子供が大人に守られ、子供らしく過ごせる世界ではなかった。大人の都合で子供は作り出され、役に立たないと判断されれば排除される。 沢山出来たはずの友達は、一瞬にして皆いなくなった。酷い言葉をぶつけられたりもした。 「街の外が、あんな何もないところだなんて知らなかったよな。歩いても歩いても、どこまでも砂しかなくて……」 「のどもかわいて、おなかもすいて……ぼーっとしてきて、もう死んじゃうんだなって思った。そしたら、ナラゴニアにいたの」 「そのときにはもう、おじさんがいたんだよな。でもぜんぜん知らないおじさんだし、大丈夫かって言われたって、気持ちわりーだけだし」 「おじさんだけだったよ。あんなにしつこくメムたちのところにくるの」 「だから、追い返すのもめんどくさくなったんだ」 そこで、言葉が途切れる。 突然、メムが泣き出した。 「おじさん、しんじゃってたらどうしよう――!」 「ヘンなこと言うなよな! そんなこと、ぜったいないって!」 イムも言いながら涙をこぼし、二人はそのまま立ちつくしてしまう。 ジューンはメムを優しく抱き寄せ、ロキはイムの肩にそっと手を置いた。メムとイムはこらえきれなくなったかのように二人へとしがみつき、大声で泣く。 「大丈夫だよ! ジルヴァさんきっと見つかるから! スイート、花火作りも得意なんだよ! こないだ遊園地で見たでしょ? 二人からのメッセージ、ジルヴァさんに伝えるから!」 言うが早いか、スイートの手が閃くと、きらびやかなキャンディーが一つ、宙へと浮かぶ。それは不思議な軌道を描いて加速しながら空高く上り、弾けた。 『ジルヴァさん大好き! メム&イム』 大きな音と共に、ターミナルの空にモコモコとした、大きなピンク色の文字が浮かぶ。 「ゼシも、似顔絵描いたのよ」 ゼシカもそう言って、スケッチブックを見せる。ジルヴァのことを知っている皆に特徴を聞いて描いた似顔絵は完成していた。 「こんなに沢山人がいるんだもの、誰か知ってるかもしれないわ」 「そうなのです」 そこに、医務室へと立ち寄ってきたゼロが戻ってきた。職員にジルヴァのことを尋ねてみたのだが、それらしい人物の情報は得られなかった。 しかし、何かあれば知らせてもらえることになったし、他にもホワイトタワー崩壊時に現場に居た者を探し出して尋ねたり、ホワイトタワー周辺の建物、チェンバーで人が居ないところを一つ一つ捜索するなど、やれることはまだまだある。 大変な作業ではあるが、ゼシカの言うように、誰かジルヴァのことを知っている者が現れるかもしれない。 皆に励まされ、やがてメムとイムの表情も和らいできた。ナラゴニアの片隅にいた自分たちのことだって見つけてくれたのだから、同じターミナルにいるジルヴァのことを見つけるのだってきっと出来るはずだ。 そう思うと、なくなったと思った気力が湧き出してくる。 二人はまた自分の足で立つと、声を揃え、まずスイートに言った。 「あのメッセージ、はずかしいからやめてよね!」 「あのメッセージ、はずかしいからやめろよな!」 ◆ ◆ ◆ 「ロボタンのダウジングで捜索ですぅ☆」 鬱蒼と木々が茂るジャングルの中を、撫子はセクタンが強く揺れる方向へとどんどん進んでいく。 ここがただのジャングルだったとしても、何があるかはわからない。天摯とニコルも周囲に注意を払いながら歩みを進めた。 チェンバーに紛れ込んでから、ジルヴァがどのくらい走ったのかはわからないが、ここから見える範囲でも、大きな段差になっているところもあるようだ。穴が空いているところなどもあるかもしれない。もしそこへと落ちたら、上がってくるのが困難になるだろう。 ニコルは小川がどこかに見えないか、水音が聞こえないかに注意を払っていた。天摯はジルヴァの声がしないか、耳を傾ける。 その時、ニコルのトラベラーズノートに、ゼロからのエアメールが届いた。 『ホワイトタワー崩壊時に、ジルヴァさんらしき人を見たという人がいたのです』 混乱した状況であったし、自信はないとのことだったが、必死で走る男の姿を見たという。 「やっぱり、ここにいるかもしれない」 目撃情報の内容からして、このチェンバーである可能性はかなり高まった。確定ではなかったとしても、全くの手探りで進めるよりはずっと気が楽になる。 「疑って悪かった。なかなかの性能だったね」 その間にも、撫子はセクタンを片手に、進む勢いを増している。その姿は危なっかしくもあり、ニコルと天摯もいつでもフォロー出来るように彼女に続いた。 やがて、水の流れる音が聞こえてくる。 「小川だ」 ニコルは周囲を注視する。すると、葉っぱに混じって、何かが流れてくるのが見えた。 「……木の実」 手で掬い上げ、よく見てみる。 それは、木の実の殻だった。落ちて割れたのではなく、明らかに割った形跡がある。 「上流へ向かおう」 天摯もそれを確認し、三人は小川に沿って先を急ぐ。 「……あれ? 行き倒れさんですかぁ? 生きてますぅ?」 撫子が、最初に声を上げた。 大きな木の幹に寄りかかるようにして座り、その声に眩しそうに、細く目を開けた男。 ニコルと天摯にはわかった。――間違いなく、ジルヴァだ。 ニコルは抜いた銃口を向けながら接近し、声をかける。 「何やってるの?」 ジルヴァは一瞬驚いたような表情をしたが、抵抗する素振りは見せなかった。 ニコルは静かに銃を下げる。 「チェンバーで遭難とは、なかなかに器用な男じゃな」 天摯も素早く近づき、まずは懐からラム酒の入った小瓶を取り出し、ジルヴァの口もとに当てた。彼はそれを少し口に含み、それから喉へと下す。ぼんやりとしていた目の焦点は、少しはっきりとしてきた。 足に触れれば、ジルヴァは苦悶の表情を浮かべる。恐らく、片足は折れているだろう。 天摯は周囲のエレメントに働きかけ、刃のない小刀を錬成し、それを添木の代わりにした。他の二人も処置を手伝う。 ニコルは、自らがあの時撃った場所を少し見た。そして、そっと指先で触れる。 謝罪をするつもりはない。無意味だからだ。 でももし、あの時の傷が原因でこのようなことになったのであれば、自分が助けるのが筋だと思ったから、ここへ来た。 応急処置が終わると、天摯は栄養補給のためにとチョコレートを渡す。ニコルも無言で干し肉を差し出した。ジルヴァは黙ってそれを一口食べると、堪えきれなくなったかのようにまた一口、一口と食べ続ける。 「おむすびもお茶もありますぅ☆」 それから、撫子がリュックから取り出したおむすびも夢中で頬張り、お茶をがぶがぶと飲み干すと、大きく溜息をつく。 その頃には大分顔色も良くなっていた。 「戦いは、終わったよ」 ニコルが、終戦と結果を伝える。 ジルヴァが悪党ではないということは、最初から判っている。だから全部終わった今、いがみ合う理由などはないはずだ。 それは、口には出さなかったけれど。 「……また、お得意の博愛主義ってやつか」 元気が出てきた途端、憎まれ口を叩くジルヴァに、ニコルは思わず、くすりと笑みをこぼす。 「そうよ、悪い? あなたの処遇を決めるのは私じゃなくてあなた自身。……ほら、行くよ。何がしたいのか知らないけど、大事な事なんでしょ? ならさ、立たなきゃ」 手を差し伸べて肩を貸し、支えようとしたが、足が上手く動かないジルヴァの体は、思ったよりもずっと重い。天摯も反対側に回り、手を貸してくれた。 「ぬしとは一度会うたきりの仲じゃが、この0世界においてはそれも縁であろうよ」 0世界で出会った青年たちと家族のような生活を営んでいる天摯にとっては、何気ない出会いも貴いものだということが理解できる。 ジルヴァも行きたいところ、やりたいことがあり、会いたい人がいたからこそ、このような場所まで来てしまったのだろう。 彼の体に合わせ、ゆっくりと歩みを進めながら、天摯は続ける。 「故郷でのわしは、敵対者といえばことごとく殲滅するしかあるまいと思うておった」 しかしこの世界に来て、様々な状況や人々に触れ、考えは少しずつ変わっていった。 命のやりとりだけがすべてではないのだ。今や、攻撃性は慈悲と護る意志に変わりつつある。 「わしは、出来ることならばぬしらと判り合いたい。世界から放たれて出会うた奇縁じゃ、それをむざと潰えさせるのは惜しい」 せっかく言葉が交わせるのだから、傷つけあうよりももっと、出来ることは沢山ある。 「ぬしの大切なもののことを教えてくれ。わしの大切なもののことも話そう。この稀有な邂逅を、言葉によってつなごう」 ジルヴァはしばらく黙っていたが、やがてぽつりと言った。 「……可愛げのねぇガキどもが居てさ」 「ぬしの子か?」 聞かれて、ジルヴァは笑った。 「違ぇよ。ナラゴニアで倒れてるのを見つけた。すぐに病院に運んだが、体が良くなっても、しばらくは生きるのを諦めたみてぇに過ごしてたんだ」 子供の姿をしているのに、まるで抜け殻のようだったと、彼は語る。 「だから、助けてやんなきゃって思った。向こうは俺のこと、鬱陶しいみてぇだがな」 「……相変わらず不器用だね。手先は器用なんだろうに」 ニコルはそう言って笑った。だが、彼のそういうところは嫌いではない。 「ほっとけ」 「ほっといたら死んでたかもよ」 「それにはまぁ……感謝してる。それから」 ジルヴァは口の中でもごもごと言った。 不思議そうな顔をしているニコルに、今度ははっきり伝える。 「……俺の足だよ。お前に撃たれたからじゃねぇ。すっかり治ってたんだが、逃げてる時に攻撃に巻き込まれちまっただけだ」 彼女が足の傷を気にしているのに気づいていたようだ。こちらに視線も向けず、不貞腐れたように言うジルヴァにまた、ニコルは思わず吹き出してしまう。 そして彼女は再びトラベラーズノートを取り出すと、仲間たちにエアメールを送信した。 『ジルヴァを発見、保護』 ようやく四人がチェンバーを出たその時、どん、と大きな音がして、前方の空が明るくなった。 そして現れる、モコモコとしたピンク色の文字。――スイートが上げた花火だった。 「大好きだと言っておるぞ」 天摯も穏やかに笑み、言った。 「では、会いに行くとするかの。可愛げのないという子らに」 ◇ ◆ ◇ その後、巨大化したゼロが四人へと近づいてきて、彼女の手により、ジルヴァはコロッセオ併設の医務室へと運ばれた。 スタッフによる処置が迅速に行われ、ひと段落してから面会が許される。 「おじさん!」 ドアが開くと同時に、メムとイムが、ベッドの上のジルヴァへと駆け寄った。ジルヴァは無言で、メムとイムを抱きしめる。 二人は、彼の胸に顔を埋めて泣いた。 「悪かったな。迎えに行こうと思ったんだが、失敗しちまってな」 「そんなの、いつものことじゃん!」 「そうだよ!」 そう言って笑う三人は、もう普段どおりだった。 「本当に、よかった……」 その様子を見て、ジューンはほっと胸を撫で下ろす。 「感動のご対面が出来てよかったですぅ☆」 「もう父の顔じゃな」 「可愛い子たちじゃん。素直じゃないね」 「うるせぇよ」 ギャラリーに色々と言われ、苦笑いを浮かべているジルヴァに スイートは近づき、ピンク、緑、青の包みの飴を、それぞれ一つずつ渡す。 「ジルヴァさん、これ、お友達のしるし!」 そして戸惑っている彼に、スイートは明るい笑みを向けた。 「メムちゃんイムちゃんの事、たくさん愛してあげてね。スイートからのお願い!」 そこから逃げるように視線を逸らした彼が小さく頷いたのを、スイートは見逃していない。 「子供時代っていうのは、通り過ぎると取り戻すのは大変だからな」 だが、今の三人であれば、もう大丈夫だろう。 ロキは、彼らに尋ねる。 「三人は、これからどうするんだ?」 旅客登録するのを強制するつもりはない。けれども難民パスでは、ロストレイルに乗車することは出来ない。 モフトピアで行われた運動会で、メムもイムも、楽しそうにしていた。ああいった危険度の低そうな旅先で、また一緒に遊ぶことをしたいという気持ちが彼にもある。 それが叶わなかったとしても、ターミナルで遊んだり、食べ歩きをしたり、子供らしい体験をしてくれれば嬉しいと思う。 時折ナラゴニアに行って世話を焼く程度なら自分にもできるし、進んでやるつもりだった。 今回のように許可は必要になるだろうが、それは大したことではない。 大人の適切な管理のもとで、無邪気に子供らしく遊ぶという体験を、二人にはさせてあげたかった。 子供が子供らしく過ごす……そんな当たり前の世界に、自分も憧れていたから。 ジルヴァは何も答えない。恐らく、子供たち自身に、自らの意思で選ばせたいからだろう。彼は、その結果を受け入れるつもりなのではないだろうか。 彼もまた、ずっと子供たちを見守ってきた大人だ。 「もう戦うために力を使う必要は無いのですから、こんどは人々を楽しませるためにアミューズメントスペースを作ればいいと思うのです。ジルヴァさんのお人形が従業員なのです。ターミナルには少し前に『ゲームセンター』もできたそうなので、近くとか隣とか中とかに作れば、きっとみんなが楽しくなれるのですー」 今度はゼロがそう言って微笑む。 二人が故郷の友人のためにゲームをしたことを話している時の顔は、とても輝いていた。 彼らの世界では求められなかった能力かもしれない。けれどもこの世界でならば、大勢の人が喜び、楽しんでくれるはずだ。 「でも、ナラゴニアに作るのもいいかもなのです。その気があるのならゼロたちもお手伝いするのです」 居る場所が違ったとしても、友情を育むことや、楽しく遊ぶことは出来るだろう。 「……うん、無理に図書館の子にならなくてもいいのよ。旅団がおうちなら旅団の子のままでもいいの」 ゼシカもおずおずと口を開いた。 「でもね、ゼシはあなた達やジルヴァさんとお友達になれて、一緒に遊べたらとってもステキだと思うわ。もしそれができたら……もう少しだけ、パパの帰りを待っていられると思うの」 そうして寂しげな笑みを浮かべる彼女の横顔を、ロキは見る。 彼が孤児院の職員になったのは、当時職員だった彼女の父親の失踪がきっかけだった。ゼシカはもう、父がどうなったのか、薄々わかっているのではないだろうか。 その結末と正面から向き合うことになった時、その辛さを、友人という存在がきっと和らげてくれるはずだ。それは、メムやイムにとっても同様だろう。 「大好きな人が大好きでいてくれる場所、そこがおうちだよ。旅団も図書館も関係ない」 スイートもそう言って笑う。 大事なのは人と人の絆だから。 「お前らは、どうしたい? 大人の都合は関係ねぇ。お前らがしたいようにしろ」 ジルヴァに言われ、イムはメムを見た。 メムは、その視線を受けて悟った。決断は、自分に委ねられているのだ。 いつだってそうだった。イムはなんだかんだ言っても、メムのことをいつも気にかけてくれている。そして、ジルヴァはそんな自分たちを見守っていてくれた。 ずっと一緒にいるのだから、イムがどうしたいかということだってわかっていた。ジルヴァだって、それを受け入れてくれるだろう。 「メム、みんながトモダチって言ってくれて、トモダチになれてうれしかったよ」 自分だって、ずっと前に進むのが恐くて、足を踏み出せなかっただけだ。 「バラバラになっても、ロキがメムたちを見つけてくれて、ほんとうにうれしかった」 そこで、メムの言葉がぴたりと止まる。 「スイート?」 スイートは虚空を見つめ、ぽろぽろと涙をこぼしていた。 彼女は誰に向けてでもなく、ぽつりと言う。 「……スイートね、ほんとはちょっと思い出したの」 それは、ずっとずっと、心の奥底に閉じ込めていた記憶。 ママが、スイートのことを愛していなかったこと。 お仕事がいやだって泣くたびに、痛いお仕置きをされたこと。 だから、スイートは、ママを――。 「でもね……スイートはそれでもママが大好きだった。大好きって気持ちに嘘は吐けないの」 堰を切ったように出てくる涙は、一向に止まってくれない。 「スイートのおうちはどこだろ……? 元の世界に帰ってもママがいないなら、スイートはどこに帰ったらいいの?」 泣きじゃくるスイートの手を、小さな手がそっと握った。 「メムちゃん……」 顔を上げると、メムがこちらを優しく見ている。 「メムも図書館の子になるから、スイートも、ここをおうちにすればいいよ」 そして、彼女は明るい笑みを見せた。 「イムも、おじさんもいるし、スイートにもトモダチたくさんいるでしょ?」 周囲には、優しく見守る仲間たちの姿がある。 「ダイスキな人たちが、ダイスキでいてくれるなら、そこがおうちだよね? みんなのおうち」 「勝手に決めるなよな!」 イムはそう言ったが、旅客登録をしないとは言わなかった。隠しているつもりだろうが、顔がにやけている。 ジルヴァは、それでいいと頷いた。 色々あったけれど、今は、大人たちに見守られ、友達も出来て、一緒に遊ぶことが出来る。 だからメムとイムは、心から笑うことを、またしてみようと思えたのだ。
このライターへメールを送る