オープニング

 開店前のクリスタル・パレスに、いくつかの人影が動く。温かな木漏れ日が差し込む窓辺では大きな赤い猫、灯緒が適度な力加減のブラッシングにごろごろと喉を鳴らし体を伸ばしている。サッサッと手際よくブラシを扱う無名の司書も鼻歌交じりでにっこにこの笑顔だ。彼女の膝の上では赤い熊の縫いぐるみと白いフェレット、アドが並んで置かれ、ぷすーという寝息が聞こえる。
 ふわりと食欲をそそる香りが鼻をくすぐり、無名の司書が視線をそちらに向けると、四人の美男子が談笑しながら朝食の準備をしていた。背中に羽をもつ青髪のイケメンと武人の様な凛とした佇まいのイケメンが新年に相応しい朝食を、儚げな雰囲気を纏う銀髪のイケメンとがっしりとした体躯に褐色の肌が健康的な男らしさを思わせるイケメンが朝食に相応しいお茶の葉を選び、淹れる。
 見目麗しい、揃いもそろって180越えの美男子~美壮年に給仕され、ふわもこ司書を存分にもふる無名の司書の顔は幸せいっぱいだ。
「あ~~。新年から良いことばっかりだわ~」
「さぁ、朝食にしますよ。アドも起きてください」
 無名の司書の膝の上から声が聞こえ、ヴァン・A・ルルーがもふもふの手でアドを揺さぶり起こしていた。
 運動会からクリスマス、そして年越し特別便2012というベントが続きこれから怒涛の書類整理もある。お疲れ様と今後も頑張ろうという労いも込めて、営業終了後のクリスタル・パレスを借りて司書の新年会を昨夜、行った。集まれる司書だけとはいえこうやって集まる事があまり無かったせいか大いに盛り上がり、今日の仕事が特にない司書は夜遅くまで話に花が咲き、気がつけば泊り込んでしまったのが、今ここに残っている司書達だ。
 家主であるラファエルに無名の司書を始めとする世界司書達、贖ノ森 火城、モリーオ・ノルド、灯緒、ヴァン・A・ルルー、アドがそれぞれテーブルに着席すると楽しい朝食パーティが始まるが、少しして無名の司書は腕を組み考え込んでしまう。
「どうかしたのかい? 難しい顔をして」
 穏やかな声色でモリーオが囁きかけると、皆の視線が無名の司書へと向けられた。
「いえね、こんな幸せ、お裾分けしないとバチがあたるわよね。うんうんって思いまして、ねぇてんちょー、今日って通常営業?」
「そうですよ、いつもどおりシオン達が来たら店を元通りに……あぁ、まだ時間はありますから、朝食はゆっくりで結構ですよ」
 ラファエルがそういうと、無名の司書はまたうーん、と考えながら店内を見渡す。昨夜の新年会でテーブルや椅子が何箇所かにまとめられ、広いスペースができている。
「新年会の続きでもしたいのですか?」
「もっと人を呼んで大人数でか? 食材足りるだろうか」
「壱番世界にサトガエリをしてるんじゃないのか? ハツモウデをするんだろ?」
 ルルーの言葉に火城と灯緒が続けて言うと、無名の司書がぱん、と手を叩く。
「それそれ! 初詣! 里帰り! 新年会はもうやったから、そういったのしましょうよー! ほら、なんか歌にもいろいろあるじゃないですか、凧揚げとかこま回しとか」
『あー、羽つき、双六、福笑い、書き初め、ひ……』
 すぱーんとルルーが看板を叩くと、アドの看板はくるくると回転した。
「そうそうそんなの! ねーねー店長! どうせならテーブル戻す前にイベントやろうよー」
「今から準備して、ですか?」
「いいんじゃないかな。楽しそうだよ」
「流石に羽つきや凧揚げなら外でやることになるな」
「副笑いならつくれそうだ」
「世界図書館にも何かあるでしょうし、なんとかなるんじゃないですか?」
『なんだったら持ち寄りでもいいんじゃねぇの』
 気がつけば、司書達も巻き込んだクリスタル・パレス新年初イベントとなっていた。


   ※  ※  ※



 沢山のみかん箱に囲まれたアドがいつもの赤いベストを半纏に変え、ペット用の小さなコタツでぬくぬくし、みかんをもきゅもきゅと食べている。
『これも伝統的なんだろ? 見てわかるとおも……』
 しゃげぇぇぇえ、という場違いな咆哮が聞こえ、その場にいた面々は揃って声のした方に顔を動かすのだが、皆、「何も見なかった」と言いたそうに辺りに並んでいる道具へと視線を向けた。
 白く長い半紙と大小様々な筆、たっぷりの墨汁が入った硯と一緒に白いお椀に入った蜜柑汁が置かれている。
『ここは書き初めをする場所だぜ。一部の地域では書き初めを燃やして、空に舞い上がるように燃えたら字が上手くなる、っていうのもあるらしい。そこで、せっかくだから運だめしも付けてみた』

 1:普通に願掛け。願い事や目標、克服したい事等を書く。

 2:墨汁で書いたものを燃やし、空に舞い上がるように燃えたら、願いが叶うかも?

 3:蜜柑汁で炙り出し。綺麗に浮かび出たら願いが叶うかも?

『ま、上手くいったら良い事あるかもな、っていうお遊びだ。気軽に書いていけよ。書き終わったら雑煮でもできてんじゃねぇかな』



!注意!
【新春遊戯会】は、同じ時系列の出来事を扱っています。同一のキャラクターによる【新春遊戯会】シナリオへの複数参加はご遠慮下さい。

品目シナリオ 管理番号1641
クリエイター桐原 千尋(wcnu9722)
クリエイターコメント こんにちは、桐原です。
新年一発目のコラボでございます。今回はいつも構ってくれる神無月WRと高槻WRに加え、黒洲カラWR、玉響WR、リッキー2号WRもご一緒です。
 コラボではありますが、ノベル内容がリンクする可能性は無い、と思ってください。たぶん、無理です。
 
 御覧のとおり、書き初めです。新年にふさわしく、今後の抱負や克服したい事を書いてください。
 プレイングには書く文字の他、文字に込めた思いや心境をお願いいたします。
 他にも蜜柑食べたり、遠くの戦闘や他の遊戯を眺めたり、クリスタルパレスのお客様としてのんびりお茶を飲みながら書き初め風景を眺める、でもかまいません。
 自分では書かないけど見ていたい方も、墨をつけながらでも一生懸命書くでも、ご自由に。
 

 それでは、ご参加、お待ちしております。

参加者
シーアールシー ゼロ(czzf6499)ツーリスト 女 8歳 まどろむこと
ゼシカ・ホーエンハイム(cahu8675)コンダクター 女 5歳 迷子
旧校舎のアイドル・ススムくん(cepw2062)ロストメモリー その他 100歳 学校の精霊・旧校舎のアイドル
シュマイト・ハーケズヤ(cute5512)ツーリスト 女 19歳 発明家
レナ・フォルトゥス(cawr1092)ツーリスト 女 19歳 大魔導師
タリス(cxvm7259)ツーリスト その他 4歳 元管理AI
リニア・RX−F91(czun8655)ツーリスト 女 14歳 新人アイドル(ロボット)
祇十(csnd8512)ツーリスト 男 25歳 書道師
理星(cmwz5682)ツーリスト 男 28歳 太刀使い、不遇の混血児
医龍・KSC/AW-05S(ctdh1944)ツーリスト その他 5歳 軍用人工生命体(試験体)
ティリクティア(curp9866)ツーリスト 女 10歳 巫女姫
ガン・ミー(cpta5727)ロストメモリー その他 13歳 職業とは何なのだー?
一一 一(cexe9619)ツーリスト 女 15歳 学生
鹿毛 ヒナタ(chuw8442)コンダクター 男 20歳 美術系専門学生
宮ノ下 杏子(cfwm3880)コンダクター 女 18歳 司書補
アルウィン・ランズウィック(ccnt8867)ツーリスト 女 5歳 騎士(自称)
飛天 鴉刃(cyfa4789)ツーリスト 女 23歳 龍人のアサシン
雀(chhw8947)ツーリスト 男 34歳 剣客
水鏡 晶介(cxsa9541)ツーリスト 男 20歳 魔道研究者
あれっ 一人多いぞ(cmvm6882)ツーリスト その他 100歳 あれっ一人多いぞ

ノベル

 喪血ノ王の雄叫びに惹かれクリスタルパレスへと足を踏み入れた雀はかぶり傘を指先でついと持ち上げ、白い塊を見上げる。遠巻きに見学する人たちの話から、チート級の特性をもつ特殊な餅らしい。何人かが悲鳴を上げて食われるが所詮は餅だ。ちょっとしたトラウマは持つだろうが命に別状はない。とはいえこのままでは危険だ、という事で数名が喪血ノ王を餅にするため奮闘している。天井まで届きそうな白い塊はさぞ斬りがいがあるのだろうが、餅は餅だ。刀で斬る事には向いていないだろうと、雀は踵を返し歩き出す。
 喪血ノ王以外にも催し物が行われているらしくあちらこちらに人だかりができている祭りのような賑わいと騒々しさの中、人のいない方へ進むと、ふいに開けた場所へとたどり着き、雀は足を止める。喫茶店の中で何故か目の前に小さなこたつが現れた。典型的なこたつのイメージそのままに籠に山盛りのみかんも常備されており、白い猫耳と尻尾をはやしたゼロがアドを抱え暖をとっており他にもテーブルの上にはゼロのアニモフ化ドリンクと半分ほどみかん汁が入った碗が置いてある。こたつにみかんと猫(?)というワンセットに一瞬驚いたものの、喪血ノ王がいる喫茶店なら別段おかしくないかと雀が結論をだすと、かさかさという紙の音が雀の足元を通りすぎ、こたつへ駆け寄っていった。
「ねむねむさんフェレットさんみてみて、ゼシ、お願い事書けたの」
「むむ、真っ白なのです。炙り出しなのです」
『うんじゃ、こたつの中に置いてみな』
「ちゃんと出るかなぁ? あ」
 振り返ったゼシカが雀に気がつくとサッとこたつの影に隠れてしまう。こたつに隠れたゼシカがひょっこりと顔だけ出し
「こ、こんにちは」
「こんにちはなのですー」
 小さな挨拶にゼロも続けて言うと、雀は小さく会釈をし、ゼシカの紙へと視線を下ろす。
「書初めしてるのですよー」
 ゼロの言葉に雀は無言で首を動かし辺りを見渡す。こたつの隣には数枚の畳が敷かれ、長めの半紙と筆が置いてある。その隣には床に直接並べられた書道セットがあり、さらに奥にはテーブルの上にも書道セットが置かれており、多くのロストナンバーが各々書きやすい場所で筆をとっていた。
「今ね、ゼシも書いてきたの。えっと、傘さんもお願い事、書いてきたら?」
 んしょんしょとゼシカがこたつに潜り込む。
「ゼロも後で炙り出しするのですー。でも、今はアドさんをもふもふするのです。アニモフジュースとふわもこ堪能してからなのですー。うん?」
 何故か、抱えているアドとは別の場所からふわもこの感触がしてゼロが不思議そうな声をあげ、アドを抱えたまま両腕を少し上げるとゼロの体をするすると登るイタチが二匹いた。
「ふわもこが増えたのですー! ふわふわのもこもこなのですー!」
「私の使い魔でフォルテとピアノというの。仲良くしてやてね」
 凛とした女性の声が聞こえ、皆が顔を上げるとレナが手をひらひらとさせている。
「書初めする前にこの不思議な結界の事を聞きたくてね」
「結界、です?」
 首をかしげたゼロが雀を見るが、雀は静かに首を横に振る。ぷは、とこたつから顔をだしてきたゼシカはきょとん、とした顔だ。
「あぁ、ごめんなさいね。別に害はないのよ。ちょっと見た事のない、珍しいものだったから気になって」
『墨汁を弾くヤツだからそりゃ、見たことないろうぜ。炎軽減と雷無効とかそういうのあるだろ? それをちょっと応用して墨汁が飛び散っても大丈夫なようにしただけだぜ』
「へぇ、面白い事するわね」
『掃除が面倒なんだよ、墨汁。どんだけ飛び散らせてもいいから、よかったら書いていけよ』
 そう看板に文字がで終わると、ゼロの頭の上でアドに狙いを定めていたフォルテがアドに飛びかかる。ゼロの体の上を舞台に追いかけっこが始まり、それに気がついたピアノも加わって追いかけっこが始まると、舞台はゼロの体に加えゼシカの体へと広がり出す。ゼロとゼシカは体の上を走り回るこそばゆさと楽しさにきゃっきゃと声を上げる。
 楽しそうにしている姿を微笑ましく見たレナが書初めをしてくるわねと一声かけて歩き出すと、少し間を置いて雀も動き出す。
 神仏への祈願に興味はなく、願を掛けるとしたら己と己が愛刀・紅葛へだ。ならば何を願い、なんと書くか。己と愛刀に相応しい言葉を探し出すべく、雀は誰も使っていない場所を見つけると床に座り込み、真白い半紙を眺め続けた。


 小さな運動会に疲れきったアドがぜーぜーと息を吐き、こたつ布団の上で大の字になって寝転ぶと、その周りをフォルテとピアノがどこか心配そうにをうろうろとする。仲良しさんだね、と楽しそうに笑いゼロとゼシカがみかんをもきゅもきゅと食べていると、ゼシカの足に何かがふれた。
「あれ? アシュレー?」
 セクタンの名を呼びゼシカがこたつ布団をめくりあげると暖かい空気がふわりと漏れる。中を覗き込むと自分の書初め側でアシュレーが誰かの足にちょっとだけ踏まれているのが見える。
「あ、アシュレー踏ん付けちゃダメ!」
 ゼシカがもそもそと潜り込みアシュレーを助けると、お返しに足の裏をこちょこちょとくすぐりだした。ゼシカの手よりも大きい、大人の足がくすぐったさにわきわきと指を動かしひゅっとこたつから出て行くと、ゼシカもアシュレーを抱えてこたつから出てくる。こたつの中よりも格段に冷えた空気を吸い込み、ゼシカが振り返るとゼロしかいない。
「あれ? あれ?」
 自分が出てきた形のままぽっこりとあいた穴を覗きこみこたつの中を見るが、あるのは自分の書初めと小さなゼロの足だけだ。アシュレーをギュッと抱きかかえ、ゼシカがあれぇ?と首をかしげていると、楽しそうに声をかけられた。
「ゼシカー! こんにちは!」
「こんにちはなのだ!」
「わーい、ゼシカだー!」
 赤い着物を来たティリクティアの挨拶に続き、アルウィンが元気よく言うと、ゼシカにタリスが飛びつき、すりすりとじゃれついた。歳の近い顔見知りと出会い、ゼシカも明るい笑顔を向ける。
「偶然ね! 会えて嬉しいわ! タリスとアルウィンもそこであったの。 ゼシカはもう書初めしたの?」
「うん、炙り出し、今はおこたの中に入れてるの」
「ぼく、ぼくもね、書初めしにきたの! ティアとゼシカが見せてくれたせかい、もっと見たいから! でもね、字、書けなくて、みんなの見たりメニュー見て覚えようとしてたら、ティアとアルウィンと会ったの!」
「ね! ゼシカも、よかったらゼロも一緒に書初めしにいきましょ」
「う? ゼロも一緒にいいのですー?」
「もちろん! みんなでやったほうが楽しいわ」
 にこにこの笑顔でティクティリアが言うと、ゼロもにっこりと笑顔を返し、
「嬉しいのです。ではご一緒するのですー」
 と、こたつから出てきた。
「猫耳、しっぽ。ぼくと一緒?」
「これはアニモフ化ドリンクの効果なのです。いつものゼロは猫耳も尻尾もないのです」
「面白いドリンクがあるんだな~。 みかんの美味しそうな匂いがいっぱい……」
 五人がこたつをみていると白衣を着た医龍がすっとこたつへ立ち寄る。ごく自然な動きでテーブルに置いてある碗を持ち上げ、医龍は碗を口元に運び傾けた。
「誠に美味しゅう御座います。……おかわりを御願いしても宜しいでしょうか?」
 予想もしていなかった出来事にぽかん、と顔を向けていると医龍がおや?と首を傾げる。
「み、みかん汁は炙り出しの汁だ! 飲んじゃだめ、だめ?」
 拳を上げて文句を言ったものの、ダメなんだよねと不安になったアルウィンが皆を振り返ると、皆もうーん、と困った顔をしている。
「た、多分、だめだとおもうわ?」
「えっとね、ゼシね、飲んじゃだめだとおもう。フェレットさんががんばって用意したんだもの」
「これは、申し訳御座いません。大変良い香りがしていましたし、てっきりお店のドリンクかと……」
「もう飲まなければ問題ないのです。大丈夫なのです。みかんは食べていいのですー」
「そうね! 皆でみかん食べてお手伝いしたらいいんだわ。みかんはたくさんあるんだしね」
 ティクティリアの言葉に皆が頷くと、アルウィンがこたつの上にあるみかんに手を伸ばす。
「あ! みかん、うごいた!?」
 アルウィンがそう叫ぶと、山盛りのみかんが崩れころころと転がる。そのうちの一つがもぞもぞと動き、姿を変えた。
「なに? なに? みかんじゃない? ぼくよりちいさい、ぼくとおなじ?」
「われはみかんどらごんのガン・ミーなのだー! 同じじゃないのだー」
 身長63センチのタリスの半分程の大きさの彼はこたつのうえでえっへんと胸を張る。よくよくみると東洋龍のような姿だが、体はオレンジ色をしている。
「おー、人がいっぱいなのだー。む、ドラゴンっぽい人もいるのだな。変わったドラゴンもいるのだー?」
 ガン・ミーが見上げるのに釣られ、五人が後ろを振り返ると、医龍が驚いた様子で自分を指差した。
「ワタクシでございますか? 正確に言えばワタクシはドランゴではないのです。外見は西洋の飛龍を模してますのでそう言えなくもないのですが、そもそも……」
「むむ、違うのだー?」
「うー、アルウィン、難しいの、わかんない」
「ハッ、これは、また失礼をしました。どうにも、集中するといけませんね」
「えっとね、白衣さんもみかんさんも、ゼシのおともだち」
「お友達なのです! みんなでみかんを食べるのですー!」
「みかんを食べるのだー? じゃぁこのみかんどらごんがもっと美味しくするのだー!」
 ガン・ミーが持ち上げたみかんは大層甘くなり、だれもが一口食べると美味しさに満面の笑みを浮かべる。美味しいみかんと新しい友達にテンションがあがり、幾つかのみかんを抱え皆で書初めに行こうと誰かが言った。それぞれが食べる分だけのみかんを持ち、7人はそろって歩き出すが、ティクティリアがふと背後を振り返る。
「うーーん?」
 首をかしげたまま、ティクティリアは友達と一緒に書初めへ向かった。


 新年らしく振り袖姿の杏子はカフェのあちこちで行われている催し物をちょっとずつ見学していた。過去に思いを馳せる札取りと死活問題に関わる札取りを遠巻きに眺め、同じような札取りでも沢山の本があったなぁと今まで読んだ本を思い出し、ふふっ、と小さく笑う。遠くから聞こえるあんぎゃおえぇぇという咆哮に最初こそ驚いたものの、だんだと聞こえる事に慣れてきた。探偵双六は、遠巻きとはいえ見ている事で推理の邪魔になってはいけないな、と一人で頷き、歩き出す。新年を迎えたせいか、いつもより華やかな衣装の人が多く見えるカフェはどこもかしこも美形とふわもこに満ちた空間だ。杏子が目を輝かせあちこちをきょろきょろと見て歩いていると、視界に一本の太い線が見える。両手でメガネを支えよく見てみると、それが枝葉を綺麗に削ぎ落とされた丸太だと気がつく。
「あっちは確か書初めが…… キャッ!」
 遠くの丸太に目を奪われたまま、杏子が一歩前に踏み出すと人にぶつかってしまう。
「わわ、ごめんなさい! 大丈夫でぇっ!」
 ぶつかった少女、一が杏子に謝りながら振り返ると体がおかしな方向へと傾いた。無理に体をひねった反動で足をもつれさせた一が転びそうになり二人が驚いた顔を見合わせるが、すっと伸びてきた黒い腕に抱きとめられる。
「無事か?」
 短く問いかける鴉刃の姿を見て瞬きを数回、なかなか返事を貰えない鴉刃が二人を交互に見ていると一と杏子ははっとした顔になり、やっと、鴉刃に助けられ転ばなかった事に気がつく。
「あ、あたしは大丈夫です。ごめんなさい、ぶつかっちゃって」
「私も大丈夫です! こっちこそすいません。助けてくださってありがとうございます。おかげでたんこぶ作らなくてすいみました。あ! 着物! お二人とも着物汚してません!? 大丈夫です!?」
「そんなに慌てずとも大丈夫だ」
「あはは、そそっかしいもんでして。あっちもこっちも楽しいものばかりでワクワクしちゃってて前が見えてませんでした」
 照れたように笑う一に鴉刃と杏子も小さく笑う。
「あたしもよ、あの丸太がなんなのか気になっちゃって」
「丸太?」
 あれです、と杏子が指差す方向へ鴉刃が顔を向けると、確かに一本の丸太が立っている。
「あぁ、あれでしたら、書初め燃やすのに用意されたらしいですよ。なんでも書初めを燃やして、空に舞い上がるようになったら願いが叶うとかなんとか。まぁ願掛けですね」
「ほう、それで先程から薪を運んでいる店員がいたのか。あれだけの大木を燃やすのならさぞ大きな炎になるであろうな」
「はぁぁ!」
「ど、どうした」
 杏子が急に大きな声を上げ、一がびくりと体を跳ねさせる。さすがに鴉刃も驚いたのか、戸惑いがちに問いただすと、杏子は目をキラキラさせて指差した。
「ぺ、ペンギンさんです! 奇跡です! いつも厨房からでてこないペンギンさんが店内にいますぅぅうぅ!」
「おぉ! あれがクリスタルパレスのレア店員の一人ですか。いやぁ、新年から縁起がいいですねぇ!」
「レア?」
「そうですそうなんです! あのペンギンさんは厨房から殆ど出てこない裏方店員さんなんです! クリスタルパレスは美男美女でお話を聴くのもするのも上手な店員さんばかりが店内にいまして皆さん厨房のお仕事もされるらしいのですがあのペンギンさんは自分は綺麗じゃないし若くもないしなによりお話するのが苦手だからと裏方専門を選んでいて」
「では話しかけてきたらいいであろう?」
「えぇ!?」
 呼吸を忘れたかのように話す杏子のマシンガントークを鴉刃があっさりと止めてしまうと、何故か聞き入っていた一が驚きの声をあげる。一度は話しかけてみたいと憧れてはいるものの、実際目の前にすると乙女の恥じらいが顔を覗かせ声をかけていいのかどうかと迷うのがファン心理というものだが、残念ながら鴉刃にその微妙で複雑な心境はわからないようだ。
「すまないそこの、あー、ペンギン店員」
 鴉刃が声をかけると、声をかけられると思っていなかったペンギンと、本当に声かけちゃった!という気持ちを飲み込んだ一と杏子の体がびくんッ!と飛び上がる。ペンギンが恐る恐る振り返り薪の束を抱えたままの手先で自分を指差すと、鴉刃はこっくりと頷く。間違いなく自分が呼ばれたとわかったペンギンが急ぎ辺りを見渡す。他の店員に引き継ごうとしているのだろうが、あいにく見える場所には誰もいない。目に見えて焦りおろおろとするペンギンを見て一と杏子をはじめ、見守っていた人たちもはらはらし始める。
「どうした、話せばよかろう?」
「……え、えぇ!? あ、あたしですか!? あ、そう、そうえすが、えぇと、えぇ!?」
 急に話を振られた杏子が言葉を詰まらせ、おろおろそわそわと焦る気持ちが伝染してしまい、誰もが頭の中が真っ白になっていた。もちろん、鴉刃以外。わたわたとしていた空気をばっさりと変えたのは、一だ。
「さ、三人です! 席をお願いします! 書初め! 書初め待ちなので書初めしてるとこの近くで!」
「そうです! できたらふわもこさんとか見える場所で!」
 握りこぶしを作る一に続き杏子も両手を握って叫んぶと、声に驚いたペンギンの体がカキンと固まる。ぐっと呼吸を止めたような緊張感が走る中、ペンギンがぎこちなく動きだす。手先をちょいちょいとしてついてこいという意思表示をすると一と杏子は揃ってうんうん、と大きく頷き、鴉刃を振り返る。自分も数に入っていると察した鴉刃も交え、三人がペンギンの後をついていくとこたつの隣にある席に通された。礼を言って席に座り、ペンギンが丸太の方へ歩いて行くのを見送った後、一と杏子は大きな溜息をつきながら脱力した。
「び、びっくりしたよぉぉぉ」
「心臓が、とまるかとおもいました……! 機転ありがとうございましたぁぁぁ」
「いえいえ! こっちこそあんなのしか思いつかなくてしませんでした。なし崩し的にご一緒させちゃって」
「なに、書初めに興味もあったから問題ない。しかし、あれでいいのか? もう少し話をしてみたらよかったのではないか?」
「こ、心の準備が必要で、でしてね。あ、申し遅れました、私一一一です。せっかくなので何か頼みましょうか、メニューどうぞ。今日のケーキはなんですかねぇ」
「ありがとうございます~。あたしは宮ノ下杏子です。そうそう。何話そうかとか考えるのも楽しいですけど、いざとなるとなんか尻込みしちゃいますよね。和菓子とお抹茶のセットがいいんですが、今日はやってます?」
「ありますあります。和菓子いいですねぇ……あ、後で雑煮が出るらしいですよ」
「ふむ、そういうものか。あぁ、私は飛天鴉刃だ。……酒はなさそう、か。では純水がいいのだが」
「お雑煮あるならあまり食べない方がいいですかね~、一さん半分こしません? 鴉刃さん甘いものお嫌いです?」
「食べられるがそう、好きというわけではないな」
「半分こいいですね! では和菓子半分こ、鴉刃さんも気になったらお裾分けで、えーと……」
 一がメニューから顔を上げると、こたつ付近でもそもそとしていたペンギンと目が合う。オーダーが決まったのだと気がついたペンギンはこたつから何かを抱え、一たちの方へと歩み寄ってきた。大丈夫だろうか、と一が少々不安に思っているとペンギンはテーブルの上に何個かみかんを置き右手には『ご注文がお決まりですか』と書かれた看板を、左手にはでろんと体を伸ばしきったアドを持っていた。
「あ、ハイ。えぇと和菓子と抹茶のセットとこのソーダ単品と、お酒はまだです?」
「夜なのだろう? 純水でいいぞ」
 オーダーを聞いたペンギンが少し間を置いて頷くと、一はメニューを片付けながらお願いします~と言う。ペンギンは『みかん、足りなかったら向こうからとってきていいよ』と書かれた看板を持ち上げると、アドをじっと見ていた杏子に看板ごと差し出した。
「え? あ、いいんですか?」
 半ば押し付けられるようにアドを受け取った杏子は、ぐったりしているアドを太ももの上にのせ毛並みを楽しみ、 一はきゃっきゃと話しながらみかんを食べる。ボフン、と少し大きな音が聞こえ鴉刃が遠くに見える白い塊へと視線をむけるが、友人が参戦していることもあって余り危険視していない。
 話をしていると時間が過ぎるのは早いもので、てっきり違う店員が持ってくると思った商品を持ちペンギンが歩み寄ってくる。テーブルには手書きで内緒と書かれたメモと共に、少し多い和菓子と小瓶の日本酒2本置かれた。



 文字を書いた半紙をくるくると丸めるシュマイトはまだ火のついていない薪に目をやるとぽん、と掌に半紙を軽く叩きつけた。
「この薪組みなら上昇気流もおきやすい。後は風向きと風力と火の温度を元に計算し、入れる角度や勢いを決めれば、きれいに空へと舞い上がって燃えるわけだが」
 薪は組みあがっているものの、辺りを見渡してもまだ火をつける様子が無い。まだ時間があるようならもう少し何か書いておこうかと思ったとき、少し離れた場所でシュボッと炎が上がった。見てみると自分で炎を出せる人たちが空に向けて書初めを燃やしていた。シュマイトが自分を見ている事に気がついたレナは、彼女が書初めを持っているのを見て声をかける。
「あら、あなたのも一緒に燃やす?」
「ありがとう。せっかくだが、この丸太の炎でやってみたくてね」
「空高く舞い上がったら願いが叶う、っていうあれ?」
「どちらかというと、実際の効果云々よりそこに至る方法、風向き等を元に計算をしたいというのが本音だ。式を立てる創造性と数値を入れて解く達成感は実に心が躍る」
「なるほど。ちょっと待っててね、火をつけていいか聞いてくるわ。なんか、こう、もっと壮大に燃やしてみたくなったの」
「ありがとう」
 ひらひらと手を振り、レナが歩いていくのを見送ったシュマイトは周囲から聞こえる声に小さく溜息をつく。
「それにしても、先程から一文字あまりだなんだと悔しがっている声が多いように感じるのだが……」
「ややっ、シュマイトの旦那! 旦那も書初めでやんすか?」
顔や手に墨汁をつけ、四苦八苦しながらも書初めを楽しんでいる辺りをシュマイトが見渡していると、羽織袴姿のススムが声をかけてきた。
「ススムか。まだ火がついていないのでもう少し書こうとおもったところだ。君も願い事があったんだな」
「わっち個人の望みは特にないでやんすよ。魔力充電装置があればいいなぁと思いやしたが、無くても左程困りやせんし……はっ! チェンバーオーナーにはなってみたいでやんすね。でも世界征服セーラー服なんてぇ言葉を聞いたこともありやすが、やっぱりここは世界平和と書くべきでやんすかねぇ?」
「なんだ、ちゃんとあるじゃないか。君が書きたいように書くといい」
「そのようでやんす、いやー、話してみるもんでやんすねーそうと決まれば早速……」
 ゴゥ!と音がし、一瞬にして薪や丸太に火がつくとススムとシュマイトの体を炎が赤く照らした。
「お、火が付いたようだな。ありがとう、これだけ勢いが強ければ……おや?」
「……はっ?!わっちも燃えているでやんす!?」
「あらやだ、炎が強すぎた? 待ってね、すぐ消すわ」
「大丈夫でやんすよ。わっちは痛覚がありやせんし群体で木製でやんすから。ついこの前も70名ほどどんど焼きで燃えやしたし、心配無用でやんすよ」
 え、と不思議そうな顔をするレナの目の前で、ススムはどんどん燃えていく。
「おっと、このままここで燃えるのはまずいでやんすな。わっちはこのまま薪になるとして、お片付け要員が足りなくなるんでチェンバーから仲間を呼ぶとしやしょうか」
 そう言うと、ぱちぱちと塗料を鳴らしたススムは組み上げられた丸太の隙間から炎の奥へと消えていった。
「い、いいのかしら?」
「気にする事はない、すぐにススムがやってくる。さて、炙り出しも試してみたいのだが、みかん汁はどこかな」
 シュマイトの言葉に首を傾げていたレナだったが、彼女とみかん汁のある場所へ向かうと、たった今燃えたはずのススムが見知らぬ人と自分の内蔵を使った福笑いをしているのを見かけ
「あぁ、そういう存在なのね」
 と、何かに納得したように呟いた。



 リニアは機界、という住人や生物の殆どが機械でできた世界出身だ。新人アイドルだという彼女の体も機械でできており歩くたびにピョコ、ピョコと可愛らしい音を鳴らすが、中身はいたって普通の女の子だ。いつもはツインテールのように下がっている機械部分はお団子のように丸まり、外装も白いチャイナ風の装いだがあちこちに飛び跳ねた墨が付いている。使い慣れない筆を走らせ歪ながらも文字を書いていき、あと一文字、というところでくしゃりと半紙が音を立てる。
「ああーん、もうっ! あとちょっとだったのに! こーなったら!」
 筆を置き、一瞬体を発光させると機械音を発しリニアの外見が変化していく。解けたお団子はロングストレートのようにまっすぐ下がっているが、毛先の部分に三枚羽の水中モーターがある。白かった外装は紺色に色づき、まるでスクール水着のようだ。
「これでちょっとくらい汚れても大丈夫ですよ! 今度こそ綺麗に書いてみせ……みせ……」
 勢い良く持ち上げた筆先から墨汁がぽたん、と落ちると、リニアの動きが止まる。リニアの周りにくしゃくしゃの半紙がいくつか転がっている。一生懸命挑戦したがミスをしてしまった、途中まで書いて文字が入りきらなかったり、先程の様に筆に引っ張られてぐしゃっとなってしまった物だ。書かれた文字は滲みや掠れが酷く、お世辞にも綺麗に書けているとは言い難い。改めて自分が書いた物を見たリニアはうーん、と首をひねり辺りを見渡す。
「これは、誰か上手な人にレッスンを頼んだ方が良さそうですわね。そうと決まれば、どなたか綺麗な字を書いてる方を見つけて、ご教授願わなくては!」
 筆を元に戻し、書き損じを抱えるとリニアは足早に歩き出した。
 ピョコピョコと音を鳴らし行くリニアとすれ違ったヒナタは、サングラスをずらして彼女を目で追う。
「懐かしい音させてんなー。なんの音だっけか?」
 サングラスをかけ直し、うーんと唸っていると頭の中に黄色やピンクの幼児用サンダルを思い出し、一人手を叩いて納得した。
「別の世界でも似たような物や音ってのは、結構あるもんだなー。あれ、こたつにアドいねぇじゃん。どこに行って……」
 書初めに立ち寄ったヒナタは書道に必要な道具が並ぶ机で自分の手に馴染みそうな物を探していた。いろんなサイズの筆や半紙に加え、書きやすいようにと厚手の紙を見つけたものの、墨だけが見つからない。店員に聞いても道具はアドが揃えたからアドに聞いてくれと言われ、こたつまで来たのだが、飲みかけのドリンクとみかんがころがっているだけでこたつには誰もいない。試しにこたつ布団を持ち上げたり、みかん箱のなかを覗いてみたが、白毛らしきものはまったく見当たらなかった。
「あ、ヒナタさんじゃないですか、ヤッホー!」
「よぉ、久しぶり。なんだ、アドはそっちにいたのか」
 一に声をかけられ、ヒナタが飲み物と和菓子の乗ったテーブルに歩み寄る。一が運動会の時にヴォロスの演舞でご一緒したんですーと話すのを聞きながら、鴉刃と首にアドを巻きつけた杏子が日向に顔を向けお互いに軽く挨拶を交わす。
「あ、アドさんもふりますか?」
「いや、聞きたいことがあるだけだからいいよ。あのさ、墨ない? 墨汁じゃなくて墨。筆も半紙じゃない紙はあったんだけど、墨汁とみかん汁しか見当たらなくてさ」
「墨と墨汁は別の物なのか?」
「あぁ、墨汁ってのは墨の液じゃなくてカーボン液。あーー、似たような感じに作った別の物なんだよね。安いのでいいんだけど、ある?」
『墨かー。墨は用意してねぇなぁ』
「スミなら持ってるけど、使う?」
 声をかけられ嬉々としてヒナタが振り返ると、ニコニコ笑顔で香水瓶の様な容器をふる晶介が立っていた。ちゃぷん、と揺れる中身を見たヒナタの顔が徐々に引きつる。
「すっごい聞きたくないんだけど一応聞いておく。それは、なんのスミだい、晶介クンや」
「ハハハ、何を言っているんだいヒナタクン。君も一緒に戦ったじゃないか」
 敢えてカタコトっぽい口調でヒナタが問いかけると、晶介も同じ様な口調で返す。
「やっぱりあのイカスミかぁぁぁ! トラウマ幻覚見るスミなんか使いたくありませんですことよバカじゃねぇの! 何が嫌って間違って落としても大丈夫なように少量なのがリアルすぎて一番嫌だ!!」
「丁寧なお断りと暴言と説明を交えたツッコミをありがとう! まだ家に残してきてるから安心して使い切ってくれてもいいんだヨ」
 いらねぇよとキツめの口調で突っ込みつつもヒナタと晶介が楽しそうに笑い合っている。
「仲良しさんなんですねぇ」
 のんびりとした口調で杏子がつぶやきアドを撫でると、アドは思い出した様に動き看板を持ち上げた。
『祇十が持ってるんじゃねぇかな。墨』
「お、まっとうな墨を持ってそうな人いる?」
 まっとうな、という発言に晶介が小さくツッコミをいれると、小さな笑いが起きる。
『書道師って職業だったから、多分ヒナタの欲しい墨も持ってるだろ。多分、向こうの畳んとこにいるぜ』
「聞くからに書初めのプロって感じですね! 私たちも一緒に行きませんか? そろそろ場所も開いているでしょうし」
「俺も一緒にいいかい? このスミと墨がどう違うのか興味がある」
 一の提案に頷いた杏子と鴉刃が席を立ち、ヒナタと晶介も交え願い事や何を書こうかと話しながら歩き出す。広く開けられた通路の両脇には床に膝を着き書初めする人たちが多く見受けられる。一人で真剣に書く者や、友人と談笑して楽しんでいる者が譲り合い、初めて会う人とも会話を楽しみ、ヒナタたちの様に願い事や書き方について語ってはテーブルへと移動していく。あまり見ることのない畳に興味を持ちおっかなびっくり触れたり端にちょこんと座る人はいるが畳の上で書初めを書く人が少なく、祇十は直ぐにみつかった。
 背筋を伸ばし静かに墨を擦る祇十を見つけると、その姿を静かに眺める理星の姿があった。ヒナタたちが理星の隣に立ち同じ様に祇十の書初めを見守っていると次第に通りがかりの人たちが足を止めていく。上手な人が書いているみたい、しゃべっちゃいけないのかなとヒソヒソ耳打ちする声に誘われ興味を持ったシュマイトとレナが、書き方を習いたいリニアやティクティリア達が自然と集まっていた。
 硯にたっぷりの墨が溜まり祇十は大筆を浸すと、静かに体を動かし真っ白な半紙に筆を置いた。大きく生き生きとした動きでありながら、流れるように走る筆の動きは、清流のようだ。半紙に大きく美しい一文字と名が書かれると祇十は大筆を置き、名の下に印を押す。両拳を太もも上に置き、静かに息を吐き作品を眺めると、満足そうな笑みを浮かべた。
 願掛け用の作品を完成させた祇十が顔を上げると、畳を境に沢山の人が並んでいることに驚き、体を引かせた。知っている顔や知らない顔が並ぶ中にアドを見つけた祇十はばたばたと駆け寄ってくる。
「な、なんでぃなんでぃ? こんなに集まってなんかあったのかい」
『こいつが墨が欲しいんだと。ちょいとわけてくれねぇか?』
「墨?」
「悪いね、墨汁じゃなくて墨で書きたいんだよ」
 ヒナタがそういうと祇十の顔がぱっと明るくなる。
「へぇ! 墨汁と墨の違いを知ってる奴がいるたぁ、嬉しいじゃねぇか。いいぜ、何種類かあるから色々試して気に入ったの使いな」
「いやいや! 欠片になったのとか安い奴でいいよ?」
「なぁにケチ癖ぇ事言ってやがんだ。わざわざ墨を取りに来るってぇくらいだ、墨汁じゃ筆の運びが気に入らねぇって事だろ? 書初めする事なんざ滅多にねぇんだ、気の済むまで使って気に入ったの見つけろい!」
「そんじゃ、お言葉に甘えるかな。筆も色々あるし、試し書きできる紙もたっぷりある。あ~、新年早々最高だ」
 ヒナタがスニーカーを脱ぎ畳に上がろうとすると、隣にいた理星が声をかけてきた
「な、な、あんたすごいな! 線だけなのにこんな綺麗な文字、初めて見た!  良かったら俺に書き方教えてくれないか?」
「ぼくも! ぼくも!」
「あ、あたしもお願いします~!」
 人ごみを掻き分け、足元からひょっこりと顔をだしたタリスがそう言うと、元気良く手を挙げたリニアがピョコピョコと音を鳴らし飛び跳ね、教えるのを見てもいいかと杏子が控えめに問いかける。一瞬目を丸くした祇十だったが、直ぐに笑顔を浮かべ
「おう、かまわねぇぜ!」
 聞いていて気持ち良い返事を返す。嬉しそうな声があがり、次々と靴を脱いで畳に上がる。祇十はタリスの後ろに膝を着くと背後から腕を伸ばし、タリスの手を握って筆の持ち方や書き方を教える。相談しあい筆の練習する様を見ていると祇十はふと懐かしさを覚えた。
 実家には門下生が集まり、城では沢山の書道師達が腕を競っていた。町でも寺や書道師の先生のところでも誰もが書いていて墨の香りがしない時はなかった。あの日々と同じように沢山の人が書道しているのを見て、
「たまには他のヤツらと賑やかに書くのもいいもんだ。ここじゃ滅多にねぇことだしよ」
 祇十は頬の彫物を撫でた。
「墨をするってたのしーな、いいにおいだし」
 羽や服に墨をつけた理星は子供のような笑顔で言うと、ふと思い立ち、額の角を折り取って墨と一緒に擦り混ぜてみた。僅かだが墨の色が変わった様に見え、試しに文字を書いてみるとちょっとだけ輝いて見える。
「わぁ、綺麗な色ですね」
「よかったら使う?」
「いいの? ありがとう!」
 僅かな輝きでも真っ黒な墨より気に入ったのか、理星の墨を借りたリニアとティクティリアは真剣な面持ちで願い事を書く。何どか練習したせいか、最初よりは綺麗に書ける事に喜びを感じ、誰もが笑顔を見せる中タリスの耳がしょんぼりと項垂れている。
「あら、どうかしました?」
 猫耳ごと頭ををもふもふと撫で杏子が声をかけると、
「みゃー、「字」が書けない」
 祇十に書き方を習ったタリスは使い慣れた自前の絵筆に持ち替え、何枚もの紙に沢山かいた。黒パーカーにいろんな色を飛び散らすほど本能のまま筆を動かし出来上がったものは抽象的な絵であり、タリスにもなんと書いてあるのか、いったいなにを描いていたのかわからない。
「とっても個性的で素敵な「字」だと思いますよ?」
「すてき?? よめないのに?」
「えぇ、文字は書く人によって違う、とっても素敵なものです。それに、ホラ」
 杏子が指差した先では医龍と晶介、そしてシュマイトが顔を付き合わせ沢山の数式を書いていた。覗き込むように見ているレナも数式こそ書いていないが、それぞれの研究についてや物質の反応、融合について等難しい単語や言葉を交わしている。
「あれ私には読めますけどわかりませんし、こっちも」
 杏子がレナたちから指を動かした先には真剣な顔で「絵」を描いているヒナタがいた。鼠を咥えたアドにボディビルダーのポーズを決めたゴンザレス、大きく口を開け崖縁で咆哮する灯緒と麻呂風のブランと動物系の人たちを干支に見立て見事な水墨画を描いていた。
「い、いやこれは手が勝手に! そう、試し描きで! ……うん。ごめん。だってさー、俺は絵描きだものー。紙と筆あったら絵描いちゃうよー。というわけで、好きに書くのが一番よ~。」
 ヒナタはそう言うと、また「絵」を描き始める。トカゲに似た尻尾をぺちぺちと揺らし、興味津々で見るタリスに杏子はこう続けた。
「ね、楽しく書いたら、いいんです。あなたの字は、あなただけの文字なんですから」
「にゃ!」
 嬉しそうに笑い、タリスはまた絵筆を動かし始めた。



 片手に巻いた半紙を握り締め、片手を腰にあて炎の前に立つ一の姿は、彼女のイメージでは行く手を遮る猛将、といったところだろうか。半紙の始まりをしっかりと掴み、丸めた半紙を勢い良く放り投げると熱風に煽られふわふわと舞い、ゆっくりと床に落ちていく。一見すると何も書かれていないように見えた長い半紙は熱に反応しじわりじわりと文字が浮き出てきた。
 長い半紙を引き寄せ、一は両端を持つと横断幕のように胸元で広げ、浮き出た文字を皆に披露する。みかん汁で文字を書く場合、きちんと書けているかを判断するのは難しいのだが、一の広げた半紙には彼女の思惑通り「HIRO」の四文字が現れている。
 ドヤァ、という効果音が聞こえてきそうな程の決め顔をする一にゼシカやティクティリアを始めとする幼い面々に加え、大人と言っても過言ではない筈の理星と杏子までがすごいすごいと褒めちぎり拍手を贈る。
 彼女の憧れる英雄という意味でならH〝E〟ROが正しいとか、書初めなのに横文字かよとかいうつっこみをしてくれそうな人は自分の事に没頭してて存在せず、純粋な心の持ち主たちの賛美の声に一は気恥しさを覚え照れ笑いをするしかない。
 その横で、静かに筆を取る雀がいる。会話に必要性を感じず、誰かに思いや意思を伝えるという事すら放棄してきた雀は知っている言葉そのものが少ない。必然的意味を乗せた言葉も文章に組み立てる事も不得手だ。クリスタルパレスに入店し、書道に興味を持ってから今の今まで白い半紙を見つめ続け、己の知る数少ない言葉から自分の思いを、それを表すのに相応しい言葉を探していた。
 何かに望みを託し、願掛けをするような願い事は見つからなかったが、この先も愛刀と共に行く事を、天も地も時空も全てを紅葛で斬り伏せる事こそが己の望みと改めて思い、その思いを半紙に載せる。手に持っているのは筆だというのに、一切の迷いのない筆捌きはまるで刀で敵を切り伏せたかの様な錯覚を覚えさせた。
 筆をおき、雀が半紙を持ち上げるとススムが声をかける。
「お、旦那も書き終わりでやんすね? ナイスタイミングってやつでやんすな。ささ、わっちと燃やしにいきやしょう。1人より楽しいでやんすよ?」
 願掛けもだが、書初めを燃やした結果による運試しにも別段興味のない雀だが、書を持ち帰っても置き場所に困る事に気がつき、ススムに誘われるまま燃え盛る炎の傍へと歩き出した。
 時を同じくして、皆が賑やかに過ごす畳より少し離れた場所で鴉刃も筆を手にとっていた。皆の願い事や書き方を見聞きし、熟語や四字熟語で纏めた願い事を書きはじめるが、慣れない筆に手間取っていた。少々歪な漢字四文字が半紙に書かれた瞬間、鴉刃は素早く半紙を丸めて炎へと投げ入れた。いつも通り無表情の鴉刃なのだが、どこか動揺している様に見える。
 一呼吸おき、鴉刃はもう一度筆を手にとった。今度は漢字二文字の一般的な単語を書いたのだが、こちらはもっと素早く丸め炎へ投げ込んだ。目に見えて動揺し、バキッ、と筆を折ってしまう鴉刃の背後で、投げ込まれた二つの半紙は地を這うように転がっている事を知る者は誰もいない。 炎に包まれた半紙はころころ、ころころと転がり、ススムの足にぶつかって止まった。痛覚を持たないススムは自分の足が燃えている事に気がつかず、大きな炎が燃えている為ススムが燃えている匂いも紛れ、隠れてしまう。自分が燃えている事に気がつかないまま、ススムはいそいそと半紙を燃やし
「そぉれ、お空高くに燃え上がれでや~んす!」
 高らかに声を上げた。雀は半紙をぽいと投げ入れ、燃えるのを確認する前に振り返る。、薪に背を向けたにも関わらず視界の端に大きな火が見え、雀が視線を落とすと、ススムも右足が膝まで燃えていた。じっと視線を落としていた雀はとんとん、とススムの肩を指先でつつき、ススムが振り返るとそのまま指先を下に向ける。
「……ファイヤー! なんと、わっちがまた燃えているでやんす! 教えてくれて助かったでやんすよ。やれやれ、痛覚もないと気がつくのが遅くていけないでやんすなぁ」
 雀が見守る中、ススムはよいしょ、と言いながら燃え盛る薪に足をかける。
「あ、大丈夫でやんすよ。わっちが燃えても第二第三のわっちがいるでやんすから」
 意味不明な事を言われた雀は特に問いただす事もせず、ススムが組み上げられた丸太の隙間に体を滑り込ませるのを無言で眺めていた。
「とぉう! 三人目のわっち、参上! でやんす。いやー、さすがわっち、良く燃えているでやんすねー。薪も燃え尽きてきてて火の勢いが落ちてやすし、もっと薪をくべた方がいいんじゃないでやすんすかね?」
 急に隣に現れそんな事を言うススムにも無反応だった雀は、ぱちんと軽い、弾ける様な音が聞こえ炎に視線を戻す。カタタン、と組み上げた木々が崩れる音が聞こえ、丸太と丸太の隙間からじっとこちらを向くススムと目があった。
 軽い心霊現象と向きあった雀は反応らしい反応が皆無だが、後ろから教育的指導だの精神衛生上よろしくないだのトラウマになるだのと必死に叫ぶ声が聞こえる。畳の上ではヒナタと一、杏子の三人が己の体を壁にして純粋な人たちの視界からススムの有様を隠していた。
「「申し訳ありません! 申し訳ありませんお客様方! どいてくださいませぇぇぇ!!!」」
 二重に重なった可愛らしい悲鳴が聞こえると皆が声の方を振り返る。どこからともなくススムを見てびっくりしたか?という声が発せられるが、悲鳴の主を見つけると皆ぽかんと口を開け目を丸くした。背丈や髪型のそっくりな二人の鳥店員が手を取り合い、もにゅもにゅと蠢く白い塊から逃げている。客を気遣ってか、ぱたぱたと必死に羽を動かし空を飛び逃げているものの小柄なせいか、そう高い位置にはおらず速度も早くない。
「「いやぁぁん! どうして私たちを追いかけるのでございますかぁぁ! こないでくださいませぇぇ!」」
 大きな目からぽろぽろと涙を零しながら叫ぶ二人を見た理星は背中の羽をばさりと広げ飛び立った。白い塊がもにゅぅんと歪み体の一部が鞭の様になると、鳥店員へと伸ばされる。捕まるかと思われたが間一髪の所で理星が二人を魔の手から救った。二人を両脇に抱え飛び去る理星に向け、白い塊は鞭状の物を何度も伸ばすが、理星が上に上に逃げていくとぴたりとその行動が止まる。
 ばさりばさりと羽を動かし理星がその場に留まるが、白い塊の鞭はそこまで届かないらしい。
「伸びる距離が有限であり、空は飛べないようですね」
 数式を書いていた手を停めたまま医龍がそう呟く。もにゅん、もにゅんと体を上下に動かす白い塊は、辺の様子を伺っている様に見える。
「あれ、小さいけど向こうの餅じゃねぇの? なんでこっちきたんだ?」
「えぇぇ、親玉から離れて独立するんですかー。喪血ノ王の子供……さしずめ喪血ノ王子ってとこですね!」
「いいセンスだ」
「やっほう! お褒めに預かり光栄です!」
「え?」
「え?」
 ヒナタと一は顔を見合わせ、くるりと首を回し畳の上にいる人たちを確認する。緊張した面持ちで喪血ノ王子を見ている杏子はガン・ミーを、ゼロはアドを胸元で抱きしめ、その隣には祈るように両手を重ね合うタリスとリニアがいる。人の姿のまま四つん這いになり臨戦態勢をとっているアルウィンの後ろには怯えているゼシカを抱きしめているティクティリア。どう見ても今のノリ会話に混ざりそうな人が、いない。
「「え?」」
 不思議そうに呟く声を合わせた二人は、無言で目を合わせ頷き合う。
 気がつかなかった事にしよう、と。
「攻撃の意思あり、ですわね。焼き餅にでもしてあげますわ」
「待ちたまえ。あの喪血ノ王とやら、たしか魔法攻撃は禁止じゃなかったか?」
「あら、そうなんですの?」
 シュマイトが杖を構えたレナを止めると、他の催し物をちょこちょこと見学に行っていたアルウィンが答える。
「アルウィン聞いた! あいつ、魔法ダメ! 斬るダメ! せーれーもダメ! 叩くしかないって言ってた!」
「アルウィンったら、どおりで時々いなくなってるとおもったわ」
「えへへ、ちゃんとしーってしてたぞ? アルウィン、あっちの子じゃないからな」
 ティクティリアの言葉にアルウィンは頭を低くしたまま両手で口元を隠し言う。

「物理のみですかぁ……」
 困ったような声を漏らした杏子はゼシカにガン・ミーを託し、ギアを取り出す。杏子が一歩前に進みアルウィンの横に立つと、アルウィンを挟んだ反対側にヒナタが立っていた。
「大丈夫だいじょぶ、遠近含めて武芸に達者な人もいるし、、魔法使える人もいるし、頭脳派だって揃ってるんだ、ここまでこないさ」
 ヒナタはサングラスのブリッジを指で上げると、横目で杏子を見てにっと笑う。笑いかけられ、杏子の肩の力がすっと抜ける。
 周りにいる戦える人たちを考えると負ける事はないだろうが、万が一を考えるにこした事はない。杏子の考えに賛同したからこそ戦うのは得意じゃないと言うヒナタも前に出てきたのだろう。援護する、と伝えるかのように炎の側にいる雀が静かに刀の柄を握る。 
「物は試しだ。物理ならいいんだろう?」
 晶介はそういうと魔法で風を巻き起こし、燃えていない薪を浮かび上がらせ喪血ノ王子に向けて落とした。最初の数発は見事、喪血ノ王子に当たり悲鳴があがるが次第に攻撃が当たらなくなる。
「魔法で持ち上げても物理判定のようですけど、流石に落とすだけの攻撃では避けるのも楽ですわよねぇ」
「かといってあまり近づけると反撃範囲に入りそうだし、多くを落とせば周りが危ない、か」
「向こうに比べまだ小さな餅ですし、何か容器にでも入れれたらいいのですが」
「臼もないし、大人しく入ってくれるかしら?」
「わっちの内蔵外してお腹にでもいれやすかい?」
 ススムが羽織袴の前をはだけさせて言うが、皆無言でいるあたりできれば避けたい手段なのだろう。
「ねぇ、あの餅、墨を避けているわ」
 ティクティリアの言葉に反応し、ぴぃぃいしぎゃぁぁぁぁというヤる気満々な喪血ノ王子の咆哮が響く。
「お餅さん、食べ物だから汚れるの嫌なのかな?」
「汚れる? 汚れたら、食べられない?」
「あぁ、そうですね、汚れたら食べて貰えなくなりますから、食品としてそれは避けたいという事でしょうか」
 ゼシカとタリスの疑問を引き継ぎリニアが答えを導き出すと、喪血ノ王子は上体らしき部分をぐっと後ろに伸ばした。反動をつけて突っ込んでくるな、と誰もが行動を先読みしさてどうするかと皆が目配せを交わし合う。最初にうごいたのは祇十だ。叩くように半紙を畳の上に置き筆を走らせる。臼の一文字が書かれた半紙は祇十が強く念じると本物の臼へと変化した。それに気がついたのか、喪血ノ王子は頭部らしき部分の向きを変え、全く別の方向へと跳び上がった。
「逃げたのだー!」
 ガン・ミーが叫び、皆が揃って顔を上げ喪血ノ王子の姿を目で追うと数人がホッとした様な、安心した様な笑みを浮かべる。喪血ノ王子の進む先には臼を抱えた鴉刃がいた。
「臼は苦手か?」
 ドンッ、という重い音をたて、喪血ノ王子は自ら臼の中へ飛び込んで行った。その衝撃も物理攻撃にカウントされたのか、喪血ノ王子は臼の中でぴくぴくと痙攣する。鴉刃が臼を抱え降り立ってくると、二人の店員を抱えた理星も戻ってきた。
「「ありがとうございますぅ。お客様のお手を煩わせてしまって申し訳ございませぇん」」
「なに、気にするな。コレはどうするのだ?」
 鴉刃が話している間も喪血ノ王子がのっそりと臼から逃げ出そうとするが、ゴッゴッと鴉刃の尻尾が喪血ノ王子を殴りつけ、脱走の隙を与えない。どこからか1HIT、2HIT、とコンボをカウントする声が聞こえた。
「「お餅になった様ですし、これからお雑煮に致します。よろしければ皆様召し上がりませんか?」」
「いいのかしら?」
「「はぁい。向こうの大きいのも後からお配りしますので問題ございません~」」
「あ、じゃぁ俺は澄まし汁の雑煮で、具は餅と三つ葉、椎茸人参里芋かまぼこ鶏肉な」
 ヒナタが雑煮の注文を言い、店員がメモを取っていると祇十が俺もそれで、と口を挟む。
「お雑煮っていろいろあるのです?」
「「はぁい。壱番世界の日本では地域によってお雑煮が違うとのことでしたので、お客様のお好みに合うよう、 澄まし汁、赤味噌、白味噌、あずき汁と四種類のお汁をご用意させていただきました~」」
「あずき汁って甘いのかしら? 甘味に近いお雑煮は食べてみたいわ」
「んー、いまいち味が想像できないわね。おすすめはあるかしら」
 あれやこれやと皆の好みを聞き、人数分のオーダーを聞いた店員は喪血ノ王子が入った臼を二人で持ち上げ厨房へと向かっていく。雑煮の話をしつつ、皆がそれぞれの場所へと移動する中、リニアはじっと店員の後ろ姿を眺めていた
 お互いをダーリンハニーと呼び合う、コムクドリのつがい店員はオーダーを聞いている間も臼を抱えていても手は繋がれたままで、その姿は仲睦まじく……いや、とってもリア充だった。
「はぁ、いいなぁ~」
 ラブラブな二人を見つめ、リニアはいつか自分もあんな風に誰かと手を繋げるだろうかと思いを馳せるが、諦めた様なため息をつく。いろんな世界のロストナンバーがいる0世界でも、自分と同じような機械の身体を持つ人に出会った事はない。いつかあんな風に誰かと手を繋げるだろうか、そんな儚い思いを抱き自分の手を見下ろすと、あちこちに墨がついていた。手のひらや指に伸び、乾ききっている墨を見て、リニアはバッと後ろを振り返り頬に粋の一文字を彫り込んだ男を見つける。
 そういえば、筆の使い方を習った時、彼は背後から自分を抱きしめ、この手を握ってくれていたではないか。
 そう思いだした瞬間、リニアの心臓部がきゅりゅきゅりゅと音を立て、リニアの記憶回路に次々と映像が映される。背筋の伸びた姿勢は背中が広く見え、筆を扱う姿は美しかった。かと思えば子供の様な笑顔で笑い、皆に筆を教える優しさもある。きゅきゅきゅと心臓部の回転がさらに早くなった様に感じ、リニアは頬を両手で包み込む。
「これは……これは……」
「恋ですか?」
「恋バナですか?」
「ひゃぁぁぁ!」
 両サイドから同じ様な言葉がかけられリニアが悲鳴とともに飛び跳ねる。ピョコと音を鳴らし、リニアが振り返ると一と杏子がにんまりと笑ってる。
「ち、違いますよそんなー、まさかそんな、きゃーきゃー!」
「いやいや、そうおっしゃらずに! ささ、乙女の恋を思う存分に語ってください!」
「そうですそうです! 秘密の花園とまいりましょう! さぁさぁ、皆さん素敵な方ばかりですが、どなたです?」
「やだやだ、だからそんなんじゃありませんってばぁ! でも……んふふ」
 ぱたぱたと両手を動かしたリニアが口元を隠しほくそ笑むと、三人は子猫の様にじゃれあう。顔をつきあわせコソコソと話していると思えば、小さな悲鳴をきゃーきゃーとあげてばたばたと体を悶えさせる。恋に恋する女の子達の行動を見ていた鴉刃は
「……わからん」
 短く言葉を漏らした。



 たった今できあがった一本のペンを手に取ると、レナはまじまじとそれを見る。形は筆そっくりだが持ち手も毛先も向こう側が見える程透き通った透明だ。ガラスペンと似ているが、レナの持つペンは軽くガラスのような冷たさは感じないし、何よりこのペンはインクをつける必要が無い。
 医龍がまっさらな紙を差し出すと、レナはペン先を置き自分の名前を書いてみる。さらさらとペンを走らせたが文字は書かれておらず、ペン先からインクが出たようにも見えないが、うっすらと残った筆圧が光を反射させ、ぼんやりと色が付き始めた。
 まるで見えないペンが文字を書いているかのように、レナ・フォルトゥスの名が現れると、わっと歓声があがった。
「すごいわ! 炎に近づけなくても色付きの文字がでるなんて!」
「どうやら、うまくいったようだな。いくつか作ったから、皆で使ってみてくれ。ペンは数本だが、液は結構ある」
 シュマイトがそう言うと皆ペンや液を分け合い、不思議な発明品を試し出す。
 炙り出しを見たシュマイトがその表現方法を気に入り、みかん汁がなくても書ける炙り出し専用のインクやペンができないものか考えていたところ、医龍と晶介もその研究に興味を持った。レナは研究よりもどうやって新しものを作り出すのかに興味を持ち見学していたのだが、時折はさまれたレナの疑問や質問により新しい発見に繋がる事も幾度かあった。様々な魔法や機械技術に加え、練成術、医術、薬学、特性ドリンク等研究内容や得意分野の違いからくる考え方や着眼点の差異は各々の発想や知識に深く刺激し合い、この短い時間でペンの完成にまでたどり着いたのだ。
 ススムが燃えた事もあり、炎を扱わずとも綺麗に文字が浮かぶ事を第一に考えた。次に、可能な限り多色になる様に追い求め、結果、ペンを握る人の手の暖かさによって文字の色が変わる様になった。液だけを使う場合、掌を当てて温めるだけで文字は浮かび上がり、熱が引くとまた消えていく。
 ペンを順番に使い、誰が何色を出すか想像したり手を握り合って予想しあう。祇十が筆で書いた文字が浮かび上がるのを待てず指に直接付けて書くと、アルウィンとタリス、ガン・ミーが揃って手形肉球や龍拓内蔵拓をやりだし、一枚の紙に何人も一緒になって文字や絵を描いている。
 ヒナタは自分の描いた水墨画とは別に半紙に描かれた鳥絵を見つける。細かい書き込みはなくとも特徴を捉えた絵を描いたのが雀だとわかり驚いた。
「今年最初の発明が共同作業とはな」
 もはや書初めではなくなってしまったが、皆が楽しそうにする姿を見ながら、シュマイトが満足そうに言うと大量の図式が書かれた半紙を抱えた医龍も頷く。
「えぇ、新しい発見も多く大変楽しゅうございまいした。新薬の開発が上手くいく様、この図式も燃やしてみるといたしましょう」
「いいね、手伝うよ。今回の様に、上手くいかないときに良い案が浮かぶよう、願掛けだね」
「今年も更にがんばらないと、ですわね」
 ワゴンを押した数人の店員達がお餅ですよ~と言いながら、歩み寄ってくる。ほかほかの蒸しタオルを渡され、墨や液でいっぱいの手を拭うが汚れがなかなか落ちなくて皆必死に手をこすっている。
「……おてて真っ赤になっちゃった」
 しゅんとした様子でゼシカが言う。改めて見ると手や顔を含め洋服にも意外と飛び散っていた。
「気がついたら真っ黒なのですー。この汚れは落ちないのです?」
「おもち、たべちゃだめ?」
「全部落ちなくても箸やスプーンで食べれば問題ない、んですけど」
「なに、そんなにしょげる事はないさ」
 湯気の立つお椀を両手で持ち、シュマイトはこう続ける。
「墨や液を落とす物を発明すればいい。そうだろう?」
「シュマイトの旦那かっこいいーでやんすー! よ! 天才発明家!」
 ススムがそう言うと場に笑いが溢れる。汚れを完全に落とすのは後にし、出来立てを美味しくいただこう。皆で喪血ノ王子の雑煮と一緒に親玉、喪血ノ王から作られた餅料理を頬張った。



 気が付けばゼロは一人でそこに立っていた。当たりを見渡してもまるで綿菓子の中に閉じ込められたようにぼんやりとした空間だ。
「うーん? 確かゼロは書初めをしていたのです。皆でお雑煮やお餅を食べたのです。それから……」
 指を顎にあて考え込むと、自分の体がいつもと違うことに気がつき、ゼロはと驚きの声をあげる。真っ白な毛並みと鋭い爪のある手足、背後をみれば長い尻尾がゆらゆらとゆれている。
「そうなのです、確か残っていたアニモフ化ドリンクを飲だら、アドさんそっくりになったのです。きっとアドさんが目の前にいるからなのです。お揃いなのです」
 美味しいものをお腹いっぱい食べ、沢山遊んで疲れたので、ゼシカ、ティクティリア、タリス、アルウィン、ガン・ミーと一緒に少し遅いお昼寝をこたつでとっていた事を思い出す。
「ということは、ここは微睡み、夢のなかです? どうしてゼロだけこんなところにいるのです?」
 首を傾げ考えいると、暖かな風が足元から吹き上げ、風に乗って沢山の丸いシャボン玉の様な物が浮き上がってきた。もそもそと小さく話し声が聞こえ、ゼロが目の前にあるシャボン玉を見るとゼシカがいた。牧師さんのような大人の男の人に駆け寄ったゼシカはその人に飛びつく。男性にたかいたかいをされ、満面の笑顔で笑うゼシカがいるが、何故か、ゼロに彼の顔は見えなかった。首を動かし、他のシャボン玉を見ると、同じように顔の見えない人と話すティクティリアが、顔のない人たちに挨拶をするアルウィンが、こたつの上で丸まっているガン・ミーとロストレイルに乗っているタリスがいた。
「何がきっかけでここに来たのかわからないのです。でもここは微睡みの中なのです。つまり、あれは皆の夢なのです。大事な大事な初夢なのです。覗き見はだめだめなのです」
 ゼロはその場にしゃがみこむと両手で目を覆い隠す。
 誰かの悪戯か願掛けの効果なのか、はたまた、本当に偶然おこってしまったのか。どんな理由にせよ、人の大事な思い出や夢を見てしまうのは許されない。でも、ちょっとだけ見てしまった皆の夢はどれも楽しそうで…………。
 がしゃんがらがらぱりんぐわんぐわんぐわわんぐわわわんぐわわわわわわわわわわん
 強烈な音が聞こえシャボン玉がぱちんぱちんと弾け飛ぶ音がした。 



 遊び疲れた子供達が小さなこたつに身を寄せ合い眠っている。双六とカルタ、あお組とみどり組の勝負に喪血ノ王との決戦、殆どの遊戯は既に終わり、クリスタルパレスにいる人も疎らだ。カフェのメニューも夜間用に切り替わり、大人たちは酒を片手に話している。書いて燃やすだけの書初めだけ、炎が燃え尽きるまで規模を縮小して行なっている。
 追加注文のついでに食器を厨房まで届けに行った理星と一は炎の傍に佇むアドを見つけた。殆どの薪が燃え尽きた火は篝火程の大きさしかないが、元々小さなアドと比べてみると大きな炎のように見える。真っ白い体をオレンジ色に染め、燃える炎を見上げるアドに理星が近寄り声をかける。
「今日はありがとうな」
『……? 何が?』
 首を傾げ、看板を見せるアドを理星はひょいと持ち上げる。
「書初めをやってくれた事に決まってんじゃん。もといた世界じゃ、俺が使っていい紙も筆もなかったから、あんなに文字や絵を書いたの、沢山の人と遊んだのも初めてだったんだ。すっげぇ楽しかった!」
『そうか、そりゃよかった』
「だからさ、ありがとな! あんたがやってくれたから、俺は今日、良い事いっぱいあったんだ。俺、俺さ、絶対出来ねぇ、無理だって思ってたことも試してみようかなって、思ったよ。俺が強くなったら、誰か助かるかなって」
 ひゅっと音を鳴らして息を飲み、理星は言葉を振り絞る。
「俺に幸せをくれる人たちや、あんたみたいに、俺も誰かになにか、できるかな」
『書初め、燃やしたか?』
「え? あ、あぁ」
『なんだ、じゃぁ、もうできてるじゃねぇか』
 理星はきょとんとした顔でアドを見る。
『書初めを書いて燃やしたってこたぁ、俺の準備が無駄じゃなかった、って事だ。だから俺は嬉しい。理星が参加してくれたから嬉しい気持ちになった。それに、皆と遊んで楽しかったんだろ? 理星が楽しかったってこたぁ、皆も楽しかったんだよ。楽しいってのは一人じゃできねぇ事なんだぜ』
「……そ、そう、なのか?」
『なんだよ、んじゃ、今度は俺を幸せな気分にでもさせてみるか?』
「へ?」
『ちなみに俺は寝るのが好きだ』
「なんだ、それ」
 くすくすと楽しそうに笑う理星を見て、一はゆっくりと後ろに下がり距離を取る。理星の話を聞き心の奥底に押し込めたツーリスト特有の思いが滲み出して来た。くしゃ、と紙を踏んだ音がし、一は慌てて足を上げ床を見る。一の靴あとがついた何も書かれていない半紙と、すぐ書けるよう準備されたまま何も書かれていない半紙と、誰かが書いたままほったらかしにされた、誰かの思いがおいてけぼりにされていた。
「願掛け、か……」
 膝を抱えてしゃがみこみ、置いてかれた思いを回収すると何も書かれていない半紙が眩しく見え、一は目を細める。 一個だけ置かれた半紙をしばし眺め、一は筆を取ると正直な気持ちを書いた。それは、一つしかない半紙に相反する二つの願い。いつかきっと、どちらかを選ばなくてはならない。それがいつかはわからず、最悪の場合、今、この瞬間に訪れるかもしれない事。
「書き初めじゃないなぁ、これ」
 苦笑してそうつぶやくと一は半紙をくしゃり、と丸め足早に炎へ向かうと置いてかれた、もしかしたら捨てられたのかもしれない思いに火をつける。
――0世界故郷は遠くロストレイル
 書かれた文字を見せつけるよう半紙は広がり、ゆっくりと燃え上がり、一の手握られた半紙にも引火した
「……うぉあっつぅ!」
 暑さに驚き、手放した勢いで一の願いが書かれた半紙は美しく燃え上がり、空へ舞い上がる。くしゃくしゃに丸めていた半紙がどうして空にあがるのか、そもそも二つ書いたのにどっちが叶うんだと、空を見上げながら苦笑した。
「えーい、今年も頑張るぞー!」
 決意新たに拳を空に突き上げると、勢いをつけすぎた体のバランスが崩れる。
「あ、え? わ、わ、わ、と、とぉ!?」
 ほんの少し動かした足元に、偶然置いてあった硯を踏み、一はぱしゃんと墨を跳ねさせながら、転ばないようによたよたと歩く。視界にテーブルが見え、体を支えようと手をつこうとした時
「危ない!」
 アドを抱えた理星が叫びながら一の元へ駆け寄ってくる。しかし、時すでに遅し。一の手はテーブルに置かれ、全体重がかけられる。よりにもよって、墨汁や墨の入った硯、みかん汁や炙り出し液等を集めたテーブルに。
 がしゃんがらがらぱりんぐわんぐわんぐわわんぐわわわんぐわわわわわわわわわわん
 盛大な音を立てテーブルがひっくり返ると上に置いてあった全ての液体を頭から被った。床に座り込み、前髪から滴る液体を呆然と見る一の口から声にならない声が漏れている。
「い、い、いきゃーーー! ごめんなさいごめんなさい! よりにもよって真っ白な人に墨ぶっかけとかぁぁぁ! 水ですかね!? それともお湯!? あ、まずはタオルで拭うのがいいんですかねいやタオルも染まっちゃいます!?
 ……あれ?」
 音にびっくりして寝ていた子供たちも起き、皆が何事かと集まってくる。墨をかぶり真っ黒く染まるアドと理星の羽は次第に墨の色が薄れ、真珠のようにうっすらと光るカラフルなまだら染まりに変わっていった。そこにあった全ての液体が混ざりまったく別の効果をもたらす液体に変化したようだ。アドと理星の体は、まるでイルミネーションの様に色がかわり、現れ、消えていく。
 しんとした静寂の中、ぷっ、と吹き出し理星が笑いだすと、アドも体を震わせ、笑っているようだった。二人の様子を見て、次第に笑いが広がると何人か混ざると言い出し、自分から液体の中にダイブしてきた。
 白黒だけで構成されるはずの書初めは、とてもカラフルな幕引きとなった。




 勝負に負け運悪く地獄コーヒーを飲むことになったラファエルはほんのちょっと舐めただけだというのに体調を崩し、ぐったりとテーブルに伏せている。とはいえ、意識を手放す事にならなかったのを幸いだと思うべきだろうか。 
 墨汁以外が沢山広がってしまった書初めスペースの掃除を終わらせたアドと手伝いをしたヴァン・A・ルルー。がラファエルの元にやってくる。
 開店前に思いついた遊びが思いのほか大事になってしまい、企画主となった司書たちと店主は閉店時間がとっくに過ぎたカフェに居残り掃除だ。大きな窓はカーテンに塞がれ、外からは見えないようになっている。店が空いていると勘違いされないよう、店内の照明はほとんど消され、ラファエルのそばで間接照明が一つついているだけだ。
 疲れきった彼らに火城とモリーオがお疲れ様のねぎらいを込めて喪血ノ王の雑煮やおせちの残り、気分がすっきりするハーブティをテーブルに置くと、畳をおいてきた灯緒と無名の司書が戻ってくる。ふと顔をあげた無名の司書がぱぁっと顔を明るくし、駆け出した。

 後日、閉店したクリスタルパレスの一角に面白い光景が見れる時がある、と小さな噂が流れる。なんでも閉店後のクリスタルパレスで秘密のお茶会が開かれているという話で、その光景を見た人はこう続ける。
 カーテンにテーブルに伏せる人の影が映っていた。そこに二人の影が増え、一人、また一人と人が集まり、談笑しているふうだった。カーテンに少し小柄な、女性のような影と大きな獣の影が入り込み、女性が足早に駆け寄った瞬間、その影はふっと消え、少ししてがしゃん、と何かが倒れる音が聞こえたらしい。
 この話の不思議なところはこれだけはっきりとした内容を、そう少なくはない人数がこの話を誰かから聞いているというのに、誰もが、誰から聞いたのかはっきりと覚えていない、という事だ。

 またいつか、そんな光景が見れる日が訪れ、次はあなたがそれを目撃する、かもれない。

クリエイターコメント こんにちは、桐原です。この度はご参加ありがとうございました。

 迷ったのですが、皆様の書初めで書いた文字はあえて、書かない方向にさせていただきました。皆様の思いが詰まった書初めは、ノベル内ではっきりと明記されてなくてもちゃんと書いています。燃やす事を希望された方のはきちんと、燃やしてます。

 一部は願掛けの結果は書いてますが、概ね、望み通りになったと思っていただいて、大丈夫です。



 はじめて大人数やりましたが、書くのがとぉっても楽しかったです!皆様も楽しんでいただければ、嬉しいです。


 よろしければまた、お会いいたしましょう。
 ご参加、ありがとうございました。
公開日時2012-02-08(水) 23:00

 

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