オープニング

 モフトピアにも、新たな年が訪れた。
 ウサギ型アニモフたちは、餅をつき、雑煮やお汁粉などを振舞う。
 クマ型アニモフたちは、書初めの準備を、着々と進めている。
 イヌ型アニモフたちは、凧揚げの用意をしている。凧から作る、本格的な仕様だ。
 文字の凧にしたい場合は、クマ型アニモフとの共同作業も可能だ。
 ネコ型アニモフたちは巨大テントを張り、中に炬燵を用意している。食べ物を持ち込んだり、ちょっとした休憩をしたり、炬燵の上に点在するミカンをつまんだり。とにかくまったりできるようにしている。
「今年は、目一杯遊ぶのー!」
 正月のために結成された「正月遊び隊」の隊長アニモフが叫ぶと、隊員たちが「おおおおお!」と返した。
 皆を迎える準備は、万端なのだ!

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●特別ルール
この世界に対して「帰属の兆候」があらわれている人は、このパーティシナリオをもって帰属することが可能です。希望する場合はプレイングに【帰属する】と記入して下さい(【 】も必要です)。
帰属するとどうなるかなどは、企画シナリオのプラン「帰属への道」を参考にして下さい。なお、状況により帰属できない場合もあります。
http://tsukumogami.net/rasen/plan/plan10.html

!注意!
パーティシナリオでは、プレイング内容によっては描写がごくわずかになるか、ノベルに登場できない場合があります。ご参加の方はあらかじめご了承のうえ、趣旨に沿ったプレイングをお願いします。
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品目パーティシナリオ 管理番号3098
クリエイター霜月玲守(wsba2220)
クリエイターコメント新年を、モフトピアで過ごしませんか?
OP内にあるものでも良いですし、ただひたすらにアニモフたちと戯れても構いません。
ほのぼの、まったり、楽しく、お正月を過ごしてくださいませ。

※プレイング日数が、短めに設定されておりますので、ご注意ください。

参加者
吉備 サクラ(cnxm1610)コンダクター 女 18歳 服飾デザイナー志望
ユーウォン(cxtf9831)ツーリスト 男 40歳 運び屋(お届け屋)
橡(cnmz5314)コンダクター 男 30歳 引きこもり侍

ノベル

 ロストレイルが到着すると、アニモフ達は手を叩いて出迎えた。
「みんな、お客様なのー!」
 隊長アニモフが叫ぶと、アニモフ達は嬉しそうに「おおお」と叫び返す。
 そして、降りてきた人々を正月遊び会場へと誘ってゆく。会場に近づいていくと、徐々にいい匂いが漂ってくる。
 ウサギ型アニモフ達による、雑煮やお汁粉の香りだ。ぺったん、ぺったん、とお餅をつく音も聞こえてくる。
「よいしょーよいしょー」
 アニモフ達は、ぽふぽふと手を叩きながら、餅つきを応援する。真っ白なお餅が、臼から伸びる。
「今年のお餅も、上手にできてるのー」
「次は誰がつくのー?」
「自分なのー」
「あと十回で交代なのー」
 きゃっきゃっとはしゃぎながら、ウサギ型アニモフ達は餅をつく。ついた餅は、素早く手で分けられ、もまれ、ずらっと並べられている。
 よく見ると、薄紅色の餅や丸形、ウサギ型なんてものまである。
「餡子も入れるのー」
「中にイチゴも入れるのー」

――しゃっしゃっ。

 餅をもむアニモフ達の声に交じり、何かの音が響く。
「あれ、今何かの音がしたのー」
「何の音なのー?」
「分からないのー」
「分からないなら、仕方ないのー」
 そっか、と納得したように言い合うと、再びアニモフ達は作業に戻るのだった。


 クマ型アニモフ達が半紙を並べていると、ユーウォンがひょっこりと顔を出した。
「ここが書初めするところ?」
「あ、あけましておめでとうなのー」
「よろしくなのー」
 ユーウォンの顔を見て、嬉しそうにアニモフ達が次々に挨拶をする。
「この紙に、この筆で、この墨を使って、書くのー」
「へぇ、何を書くの?」
「今年の抱負とかー、好きなものとかー」
「書きたいことなら、何でもいいのー」
「それって、字じゃないとダメ?」
 きょと、と小首を傾げるユーウォンに、アニモフ達は口々に「そんなことないのー!」と告げる。
「絵でもいいのー」
「数字でもいいのー」
「記号でもいいのー」
「顔でも足でも手でも」
「なるほど、自由なんだな」
 あははは、とユーウォンは笑う。
「お正月って、正月さんを迎えるためのお祭りなんだろ?」
「うん、そうなの」
「じゃあ、モフトピアの正月は、楽しいの大好きに違いないよ!」
 ユーウォンはそう言うと、半紙をじっと見つめる。
「これに、いろんなものを書いて、色を足して、凧にしちゃったらどうかな?」
 ユーウォンの提案に、クマ型アニモフ達が「おお」と声を上げる。
「じゃあ、準備するのー」
「たくさん書くのー」
「凧係に連絡するのー」
 きゃっきゃっとはしゃぎながら、アニモフ達は準備に取り掛かる。ユーウォンもにこにこと笑いながら、半紙を前に筆を手に取るのだった。


 イヌ型アニモフ達は、凧作りの準備を進めていた。ついでに、見本となる凧もいくつか制作し、風に乗せてみている。
「この世界の空もいいなぁ」
 橡はそういって、空を見上げる。青く高い空に、ひらひらと凧が泳いでいる。
「一緒にするのー」
 橡の姿を見つけ、イヌ型アニモフ達が集まる。あっという間に取り囲まれた橡は、驚きつつもアニモフ達の頭をなでていく。
 人ごみは苦手だが、アニモフ達ならば大丈夫だ。むしろ、どんと来いと大きく構えていられもする。
「どれ、一緒にやってみるか」
 橡はそう言いながら、アニモフ達から受け取った凧糸を、巧みに操る。橡の操る凧は、あっという間に青空の中で泳ぎだす。
「うわあ、上手なのー」
 ぱちぱち、とアニモフ達はこぞって拍手を送る。そんな中、アニモフの一人がしょんぼりしたように、ぽて、と凧を落とす。
「ぼく、うまく飛ばせないの」
 悲しそうに言うアニモフに、橡は「大丈夫だ」と言って笑いながら頭をなでる。
「ほら、凧を持っててやるから、一気に走るんだ」
「走るの?」
「ああ、めいっぱい走るんだ。後ろは振り返らずに、だぞ」
 橡の言葉に、こく、と真顔でアニモフは頷く。そして、きゅっと凧糸を持ったままくるりと踵を返す。
「じゃあ、行くの!」
「おう、走れ!」
 橡の合図とともに、アニモフは走り出す。その速度に合わせ、橡も走り出す。すると、ふわ、と凧が気流に乗って空へと泳ぎだした。
「もっともっとだ、走れ!」
 すでに橡の手を離れ、凧は大空へと駆け上がってゆく。そこでようやく、橡はにっこりと笑いながら「もういいぞ」と声をかけてやる。
「うわああああ!」
 アニモフは歓喜の声を上げる。さっきまで、空へと昇ることのなかった凧が、今や空の中で泳ぎまわっている。
「ぼくも教えてほしいのー」
「ぼくもぼくもー」
「よしよし、順番順番」
 橡がいうと、アニモフの一人が「みてみてー」と言う。手には独楽を持っている。
「お、独楽じゃないか。それもやるかい?」
「やるのー」
 きゃっきゃっとはしゃいでいると、クマ型アニモフ達が「おーい」と手を振りながらやってきた。
「あとで、凧作りを手伝ってほしいの」
「大きい凧を作るのー」
 クマ型アニモフ達の中に、ユーウォンの姿もある。
「凧作り、なかなか難しそうだなあ」
「大丈夫なのー」
「ぼくらも頑張るのー」
「そうだよね、うん。がんばろうね、みんな!」
「なんなら、凧作りを手伝うぞ」
 橡がいうと、ユーウォンは「うん」と嬉しそうにうなずく。
 クマ型アニモフ達が持ってきた、たくさんの半紙をつなぎ合わせつつ、イヌ型アニモフ達が凧を作っていく。
「なかなか面白い模様だなぁ」
 橡が感心したように言うと、ユーウォンが「ね」と言って笑う。
 最終的に、巨大な凧が完成し、アニモフ達から大きな拍手が沸き上がった。
「凧揚げ凧揚げー! 飛ぶもののことなら、おれに任せとけ!」
 おおお、とアニモフ達が再び拍手する。
「ふむ、飛ばそうにもなかなか難しそうだな」
 橡が完成した凧を見ながら言う。する、ユーウォンは「そうだね」と言ってうなずく。
「大きすぎるからかな? だったら、強い風を捕まえようよ! 高い雲の上からなら、いけそうだよ!」
 ユーウォンはいうが早いか、巨大な凧をもって地を蹴って空へと飛ぶ。すると、空の上の強い風が、巨大な凧を簡単にゆらゆらと飛ばし始める。
「よしっ!」
 気流に乗ったのを確認し、ユーウォンは凧から手を放して地上へと降りる。地上では、凧の糸をアニモフ達が交代で手繰っている。
「おお、すごいなぁ」
 橡が言うと、アニモフ達も「すごいのー」とうっとりしたように口々に言う。
「みんなー、お雑煮を炬燵で食べるのー」
 ウサギ型アニモフ達と、ネコ型アニモフ達が皆を呼びに来る。
「あ、そういえば、ぜんざいとかもあるのー」
「おお、そりゃうまそうだ」
「凧は、交代で見ておくのー」
 アニモフ達の言葉に、橡とユーウォンは「じゃあ」と言って、ほかのアニモフ達と一緒に炬燵へと向かうのだった。


 吉備 サクラは、ふう、と一息つく。
 セクタン、ゆりりんのミネルヴァの目で、島の全景を見ながらスケッチを行っていたのだ。
「モフちゃんたち、楽しそうね」
 小さく笑みを携え、サクラは呟く。
 姿を厳格で消しているため、誰の目にも触れられてはいない。会話もしていない。自分がモフトピアにいるということは、誰も知らないのだ。
「これが、最後のモフトピア見学ね」
 ぽつりと呟き、手の中のスケッチを見つめる。
 楽しそうに準備をし、正月行事に興じるアニモフ達の姿が描かれている。そのスケッチに書かれたアニモフ達は、誰もが笑顔でいっぱいだ。
 幸せな様子を眺め、写し取る。
 それが、今回のサクラの目的だった。
 あたりを見回し、誰もいないことを確認する。そうして、樹の葉を一枚、口に含んだ。
(ここは、楽園。私の居場所はないけれど、楽園)
 それがいい、とサクラは思う。
 泣いている子や、寂しそうな子がいたら、きっと余計なことをしてしまう。
 そんな子がいなくてよかった、とサクラは改めて思う。
「ここが、永遠の楽園でありますように」
 心からの言葉を吐き出し、サクラは空を見上げた。
 色とりどりの、なんて書いてあるかもわからぬ、巨大な凧が飛んでいた。
 ゆらゆらと揺れるその姿は、モフトピア全体を見下ろしているかのようであった。


<それぞれの正月は過ぎてゆき・了>

クリエイターコメント明けましておめでとうございます。
今年も皆様にとって素敵な年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

この度は「アニモフと遊ぼう」にご参加いただきまして、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
それでは、またお会いできるその時まで。
公開日時2014-01-14(火) 22:20

 

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