■1日目■ 火と氷の国――アイスランド。外気は夏でも10℃前後。壱番世界の日本の首都東京で言えば3月か11月辺りの平均気温に近いだろうか、兎にも角にも寒いと言える道のりを、日本の真夏に毛の生えたような装いで歩き、唇を紫に変色させ全身に鳥肌を纏いガチガチと奥歯を鳴らしている壱番世界は日本男児(?)が2人。 「北半球は今夏じゃないのかっ!?」 日本では夏休みの宿題が佳境に入った頃である。 白い息を吐きながら震える肩を抱きしめるようにしてパーカー姿の男ーー坂上健は、抜けるような青空を理不尽そうに睨み上げながら絶叫した。 一応それでも北の方だし、北海道の例もあるからそれなりには上着も持ってきていたのだ。屁の突っ張りにもならなかったがな。 「なんでジョヴァンニはそんなに平気そうなの?」 寒さに強張った笑顔を納得いかなげに歪めてハーミットが傍らの男を睨みつける。 「はて?」 ハーミット同様ツーリストであるジョヴァンニは軽装なのに震えるでもなく、とぼけたように首を傾げてみせた。すると。 「あ、おれ知ってるよ」 そこにユーウォンがひょいっと顔を出す。 「何? 実はカイロでも上着の下に隠してんのか?」 アイスランドはぎりぎり北欧、同じヨーロッパ圏のジョヴァンニがこの地の事に詳しくてもおかしくない。だが。 「隠してないがのお?」 とジョヴァンニ。 「どういうことよ?」 一体何を知っているのか、と健とハーミットはユーウォンを見た。あの上品なベストは実はカシミアで出来ているから見た目より暖かいとかそんな話か、と身構える。だが、彼の口から出てきたのは予想だにしなかった単語だった。 「えっと、能動的汗腺数っていうのが違うんだよね」 好奇心旺盛なユーウォンが、最近仕入れた壱番世界に関する知識を、同意を求める、というよりは、正解を確認するような眼差しでジョヴァンニを見上げて言った。 ジョヴァンニはそれに「ふむ」と応えただけで。 「のうどうてきかんせんすう?」 漢字変換も出来ない態の健がおうむ返した。 「うん。この前読んだ壱番世界の本に載ってた、よ?」 少々不安げなユーウォンに、どんな本を読んだらそんな単語が出てくるんだろうと健は眉を寄せる。 「何ですの? それ」 レナが尋ねた。 「えぇっと、活動している汗腺の数のことで、簡単に言うと能動的汗腺数の多い日本人より少ない欧米人の方が体熱を逃がしにくい体質の人が多いんだって。だから、欧米人の方が寒さに強いって…違うの?」 ユーウォンは健を上目遣いに見た。 健は「なるほど」と内心で感嘆し大いに頷いた。それでいろいろ合点がいった。以前から不思議に思っていたのだ。アメリカの映画館の寒さとか、季節感の薄いファッションとか、発熱した子供を水風呂に放り込で熱を下げる慣習とか。ジョヴァンニがこの寒さに全く動じていないこととか。 ユーウォンはホッとしたように微笑む。 更にそれに付け加えるならば、犬の毛が冬毛から夏毛に生え変わるように、人も夏仕様、冬仕様と季節に合わせて体が変化する。現在、気温30℃を超える猛暑の日本在住の健は、体温がより放熱し易い夏仕様の体であったから、体感的には2月の東京よりも寒く感じていたのである。壱番世界にあまり寄りつくことのなかったハーミットはそういう意味ではまだマシであったかもしれない。 とにもかくにも。 「同じ壱番世界の住人でも、住む環境によって違うという事だな」 ロストナンバーになって、いろんな世界の人々を見てきたドンガッシュが感心したように呟いた。 唯一の救いは、この強風を幽太郎が羽を広げて風よけになってくれている事だろうか。 「別ニ、ボクハ、イイケド…」 ガチガチガチ。ブルブルブル。 「くっそー、変温動物の蛇だって、この寒さはダメなんじゃないのかよ」 半ば以上八つ当たり気味に健が唸った。 「なんじゃ、その蔑視発言は」 ムッとしたようにアコルが健を睨みつける。マフの頭上から。 「その辺の蛇と一緒にせんで貰おう。そもそもわしは蛇竜であって蛇ではない」 バッサと羽を広げながらアコルが主張した。確かに蛇に羽はない。 「……それをそこで言ってもあまり説得力はないと思うがな……」 胸を張るアコルにマフが小さくため息を吐く。そことはマフの頭上である。 「ふむ。モフモフで暖かいぞ」 マフの頭の上で塒を巻いたアコルが言った。ちなみにアコルの下半身はマフの首にマフラーのように巻き付いている。決してマフが暖かそうには見えなかったが、もふもふに”抱きついている”アコルは暖かそうに見えた。 「ずるい! 俺だって!」 健がまるで大型犬に抱きつくようにマフに抱きつくと。 「わたしも!」 と、ハーミットも負けじと抱きついた。 「本当だ~、あったけぇ~」 と健がもふもふ毛皮に頬摺りをする。マフが毎日懇切丁寧に手入れをしている毛皮は心地よさ抜群だ。 「脱がすな!!」 外套の中に腕をつっこまれてマフが憤然と声をあげたが、2人は聞く耳をもたない。尻尾には何故毛皮がないのか、などと逆にブーイングを受ける始末だ。 「このまま抱きしめてくれたらいいのに」 ハーミットに「背中が寒いじゃない」などと耳元で囁かれ、マフは本気で引き剥がしにかかった。ハーミットの声は如何せん彼にある人物を思い起こさせて非常によろしくない。ましてやこんな風に耳元でくすぐるように甘い声で囁かれたりすると男としていろいろ、なんというか非常に困るのである。 「歩きにくいだろーがっ!」 「モテモテだねっ」 とルオンが黄燐に同意を求めると、黄燐は「そうね」と頷いてマフを見て笑った。 「男にモテても嬉しかねぇ!」 マフの悲鳴にも似たそれに一同は顔を見合わせてまた笑う。 「アコルだけズルいじゃない」 と唇を尖らせるハーミットにマフは大きなため息を吐き出して「しょーがねーだろ」と、アコルが”ココ”にいる理由を語り始めた。 事の起こりは30分ほど前まで遡る。場所は、チェックインを済ませブルーラグーンに向かうべく待ち合わせをしていたホテルのエントランスホールだ。 壱番世界の出身ではない女性陣は初めての土地に対する下調べに余念がなかった。観光案内に関しては主催のハーミットがあれこれ準備してくれているので、彼女たちのチェックは専ら、その土地のファッションに関する事である。やっぱりオシャレしたいじゃない。 結果として、レナを筆頭に防寒対策も万全、厚手のスプリングコートもちゃっかり用意されていた。 黄燐は鮮やかなサンフラワーのスプリングコート、レナはモスグリーンの落ち着いたロングコート、ルオンはラベンダー色の優しいハーフコートを着ている。 ちなみにハーミットが女性陣に入れなかったのは、彼がガイドの方で忙しかったから…だと思われた。たぶん。 とにもかくにもホテルのロビーで彼女らを見つけたアコルは、そんな女性陣のコートの中はさぞかしあったかかろう、と思ったのだ。 そしてアコルはイヴを騙くらかしてりんごを食べさせるかの如く無害で純真な蛇を装ってその中に入れて貰おうと試みた。 「お嬢さん、お嬢さん、暖かそうなものを着ておるな。わしをその中へ入れてくれんかのぉ? 寒くて適わんのじゃ」 すると人を疑う事を知らないような素直な瞳で黄燐が「どうぞ」と両手を広げた。 だがアコルはただの(ただの?)エロジジィだった。 一瞬、アコルの口の端がだらしなくニヤけたのを見逃さなかったレナが呪文を唱える。 もし、後少しマフが割ってはいるのが遅れていたら、そこには蛇の丸焼きーーもとい、蛇竜の丸焼きが出来上がっていたに違いない。ちなみに、もしレナがアコルのニヤけた口元に気づいていなかったら、マフはもっとヒドい目に遭っていたかもしれないが。そのとき、イタズラ好きの黄燐がちょっぴり残念そうに舌を出したことを知る者はなかった。 とまぁ、そんなこともあってマフはエロジジィ担当に抜擢されたのである。 回想終わり。 「早く露天風呂行こうぜ」 こんなところで、コントをしていても埒が明かない事に気付いた健が、一同を促した。 「それもそうだな」 とドンガッシュが歩き出すと皆もそちらへ歩き出す。 露天風呂。彼らが目指しているのは、アイスランドの首都レイキャヴィークの外れにあるブルーラグーンと呼ばれる壱番世界最大の露天風呂だった。その広さは約5000平米。 壱番世界のトレインウォー『赤の王』との決戦を終え、祝勝会も兼ねてハーミットがみんなを2泊3日の旅行に誘ったのである。チケットの都合やみんなの予定で少し時期がずれてしまったが。 「それにしても、ブルーラグーン併設ホテルって聞いてたのに結構距離あるわね」 ハーミットが言った。 もちろん、アイスランドに訪れた時点でこの寒さには多少なりとも気づいていた。しかしホテルを出てすぐ露天風呂に飛び込む算段をしていたこともあって、薄着で来てしまったのである。 「あら? ホテルのパンフレットに徒歩30分って書いてあったわよ?」 と、レナ。 「ホテルのパンフレット…」 ツアーのパンフレットはちゃんと熟読したのに、とハーミットが息を吐く。アイスランドはヨーロッパ観光の中では影が薄いせいもあってか、情報も少ないのだ。そのためのジョヴァンニだったのが。 「ソウイエバ…ホテルノ前、二、送迎バス、ッテイウノ……アッタ、ヨ?」 幽太郎が言った。 何とも言い難い沈黙が辺りを包んだのは一瞬のこと。 「「「「「ぬぁっにぃぃぃ~~~~~~~~!? それを先に言えぇぇぇ~~~~~~~!!!」」」」」 観光ガイドのハーミットの補佐役に抜擢されていたジョヴァンニがしみじみとした調子で言った。 「世の中、便利になったものじゃのう」(合掌) とにもかくにもここまで来たら歩くしかない。 露天風呂からあがっているのだろう湯煙を近くに眺めながら一行はその入場ゲートを目指して歩く。 「しかし、オレは寒さとかよりもこの匂いの方が気になるぜ」 マフが鼻に皺を寄せながら呟いた。何とも言えない臭いがよく効く彼の鼻孔をこれでもかと刺激する。 「さっきから鼻がひん曲がりそうだ」 「あ、それはあたしも思ってた」 ルオンが賛同する。 「硫黄泉の匂いね。こればかりはしょうがないわ」 ハーミットが肩を竦めてみせた。火山帯の温泉といえば大抵この匂いが立ちこめているものだ。 「これ、知ってるわ。卵が腐った時の匂いよね?」 黄燐が言った。彼女は卵を腐らせたことでもあるのだろうか、と健が黄燐を見やる。 「卵が腐るとこんな匂いになるのっ?」 ルオンが尋ねる。 「ああ、卵が腐ると硫化水素が発生するからな」 健が頷いた。ちなみに硫黄は無臭である。火山などで匂うのは硫黄の化合物ーー硫化水素の臭いだ。 「今度試してみましょうか?」 レナが言いだした。 「面白そうね」 黄燐が笑う。 「何を好き好んでこんな臭いをわざわざ作るんだ?」 マフが嫌そうに顔を歪めた。 「あら、温泉気分を味わえるかもしれないじゃない」 レナが勝ち誇ったように言ってみせる。 「面白そうだなぁ。今度、露天の風呂場を作ったら、試してみようかな」 建築士の腕が鳴るのか、満更でもない感じでドンガッシュも賛同する。 「それはどうかなぁ……」 一方健はひきつった笑顔で視線をさまよわせていた。何を隠そう彼は経験者である。彼は卵を腐らせたことがあった。それはほんのちょっとの出来心と、どんな匂いがするんだろう、というほんのちょっとの好奇心から起こったことだ。狭い民家の密集する日本でそういうことをやるとどうなるのか、幼少の頃の彼にはちょっぴり現実的な想像力が足りなかった。異臭騒ぎで警察に通報されパトカーのみならず救急車まで駆けつける大事となり、ご近所様に謝り回った幼い頃の苦い思い出である。鉱物のいろいろ混じった硫黄泉の臭いと卵の腐った臭いは似て非なるもの、だと思うのだ。 とにもかくにも。 ブルーラグーンに近づくにつれ、硫黄泉の臭いは強さを増していった。 溶岩石のような黒い岩が両側に立ち並ぶ間の細い道を進むと、その先にブルーラグーンの建物が見えてくる。建物の脇から白濁とした温泉が湯気をあげているのが見えた。 ゲートを潜り受付へ進む。そこでICチップ入りリストバンドを貰った。タオルやローブはレンタルだ。疲れを癒しにきたのだからとマッサージを頼む。全員といかなかったのは、たとえば幽太郎は固すぎてマッサージ師の方が悲鳴を上げそうだったからである。それに付き合った者たちもチラホラ。 男女混浴だがさすがにロッカーまではそうはいかない。そこで二手に分かれる。 彼はどんな水着を着るのだろう……何とも言い難い視線を浴びながらハーミットは男性用ロッカーに進んだ。視線が痛すぎるが彼は水着を下に着込んできたので手間なく着替えることが出来る。しかも、水着素材のシャツを着てきたので皆に上半身を披露することなく入浴が可能だった。準備を整えながら口早に言う。 「あ、そうだったわ。ここのお湯は地下深くから汲みだした海水だからかなり塩分濃度が高いらしいの。風も強いし、コンタクトレンズとか目の中で割れることもあるぐらいらしいから気を付けてね」 言いながらハーミットは備え付けの袋をみんなに配った。それに靴を入れてロッカーに仕舞うのだ。 「ああ、それなら大丈夫だ」 袋を受け取りつつハッとしたように健は幽太郎を振り返った。何となく他の面々も彼を振り返った。 「?」 幽太郎は首を傾げ、それから得たり顔で言った。 「ダイジョウブ…ダヨ。チャント…コノヒノタメ、ニ…センヨウ、ノ…ミズギ、ツクッテ、モラッタカラ…」 ほら、とばかりに水着とやらを取り出して見せる。旅人の外套の効果もあるから現地の人間に注目される心配もない。 しかし健の心配事はそこにはない。だいたい、そういう話ならユーウォンやルオンやアコルとて同じ話だからである。確かにこの広大な湖型温泉は向こう岸も遠く霞むほどで湯気に紛れてしまえばなんとかその体型を隠せないこともないかもしれない。首から下を湯の中に浸けてしまえば、白濁温泉の中は見えなくなる。しかし、隠しきれない可能性の方が遙かに高い人気の観光スポットであった。人目が多い以上、皆、それなりの用意をしてきているのだ。 だから健の心配事は別のところにあった。海水と聞いて連想されるもの。それは錆び易いという事実である。 「ああ、でも、幽太郎…そういえばブルーインブルーには行ったことあったっよな?」 うっすら記憶を辿りながら健が言った。 「ウン」 元気よく幽太郎が答える。 「じゃぁ、大丈夫かな?」 ブルーインブルーに行ったからと言って海に浸かったというわけではないだろう、しかし潮風にずっとあたっていて平気だったなら、大丈夫だろう。ホッと息を吐いて健は着替えを終えた。 中での買い物はICチップ入りリストバンドで行い後で精算するため荷物は全部ロッカーに詰め込んで、「お先に」と一足先に飛び出したハーミットを追うように健も風呂場へと出ていった。早く寒さを凌ぎたいのだろう。 若い者は支度が早いのう、などとのんびりした口調でジョヴァンニがシャワーキャップをドンガッシュに差し出した。 「これは?」 ドンガッシュはそれを不思議そうに受け取った。 「聞いとったじゃろう? 海水じゃから髪がごわごわになるぞ」 そう言ってジョヴァンニはシャワーキャップを被ってみせる。 「なるほど」 頷いてドンガッシュもシャワーキャップを被った。筋骨逞しいガテン系。額の汗を腕で拭う姿が似合いそうなその風貌。ランニングの形にこんがり焼けた肌。とはいえランニングの中の部分も真っ白というわけではない。黒の競泳用水着が何ともよく似合うマッチョな男。その頭上にチョコンと多い被さるのはヘルメットではなくもちろん水泳帽でもなくふわふわのシャワーキャップ。 「こんな感じかな?」 「ふむ、似おうておるぞ」 笑いながらジョヴァンニはロッカーを閉じた。そして風呂場へと歩き出す。そのジョヴァンニの頭上からシャワーキャップが消えるのはこの直後のことなのだが、それにドンガッシュが気づくのはずーっと先のことであった。 ▼ 一方、女性陣。 最近流行の水着もちゃっかり用意済み。キャッキャウフフなお着替えシーンは想像力と妄想力でカバーして貰うとして、3人は着替えを終えるとロッカールームを物色し始めた。 「シャンプーとコンディショナーがあるわね」 レナが備え付けのそれらを手にとって確認するようにラベルを見ながら言った。ここブルーラグーンではスキンケアグッズのお土産が充実しているらしい。どうせ買って帰るなら、その前に自分で試してみたいと思っていたのだ。備え付けのものと、有料のものがある。さて、どちらを使おうか。 「ドライヤーもあるわ」 黄燐がドレッサーの前に並んでいるのを見つけて言った。 「ここは海水だからあがった後ちゃんと洗髪しないと髪が大変なことになるからね」 レナが言った。 「大変なこと?」 黄燐が首を傾げる。 「バッサバサのごわごわ?」 「それは嬉しくないわね」 黄燐は舌を出した。 「でも、お肌はツルツルになるみたいよ」 喋りながら3人は温泉の方へと歩き出す。 その途中、シャワールームでは備え付けソープで体と水着を洗いっこした。アイスランドの温泉は入浴前に体を洗う決まりになっているのだ。 ▼ シャワールームを出るとすぐに露天というわけではなく屋根と壁に囲まれた内湯があって、その奥に露天が広がっていた。内湯には打たせ湯などもあって温泉という感じがしたが、露天の方は温泉につかっている者たちが皆水着を着ているせいか、はたまたその広さ故か温泉というより温水プールに見えなくもない。とはいえ、そこまで深さがあるわけでもないのだろう泳ぐ者はないし監視員もなかったが。 そこへ一足遅れで健が顔を出すと。 「つ…冷たいんだけど……」 腰までつかった状態で両腕で体を抱えるようにしてハーミットが震えていた。 「はぁ?」 シャワーで多少暖まったとはいえ、芯から冷えた体はまだまだ凍えている。早く暖めたい健は「冗談だろ」とばかりに浮青色と呼ばれる白濁の湯船に飛び込んだ。 「何っ!?」 ブルーラグーンの水温はだいたい37℃前後になるよう設定されている。37℃といえば日本人の感覚ではぬるい。夏でもぬるいと感じる温度だから、冬では寒いと感じる温度である。何度も言うようだがアイスランドの外気は夏でも10℃。更に付け加えるなら5000平米もある広大な風呂の全てを37℃に維持することは不可能。当然、それよりもっと低い場所もたくさんある。 それとは逆に高い場所も……。 「そうだ! もっと暖かい場所を探せば!!」 健はざぶざぶと水をかき分けるようにして露天へと出た。アイスランドの強風が濡れた体に容赦なく吹き付ける。 「し…死ぬ」 と呟きながら彼は辺りを見渡した。目を凝らす。必ずあるはずだった。暖かい場所が。お湯の噴き出し口は60℃近いとも聞く。その近くにきっと最適スポットが。 そして見つけた。 「あそこだ!!」 そう。暖かい場所を見つけるのに温泉をあちこち歩き回る必要などない。簡単に見つける方法があった。 「急げ!」 健が水の中を半ば走りだすのに、慌ててハーミットがそれを追った。 彼が見つけたのは日本人観光客密集エリアだった。 適温41℃前後のそのエリアで漸く彼らは人心地吐いたのである。 「ふぅ~、極楽、極楽」 ▼ 2人より少し遅れて残りの6人が露天へ現れた。彼らは特に湯温に異論はない。 ただ。 最も深いところで150cmもある、という事実の方がマフにとっては大いに問題であった。何故なら彼の身長は80cmしかないからだ。うっかり進んで足が届かないなんて事になったらと思うと気が気でない。温泉に入って溺れたなどと恐ろしい黒歴史をここに刻むわけにはいかないのだ。彼は自分が魔術を使えることを若干失念していた。それぐらいには舞い上がっていたし、テンパってもいたのだろう。 「元の世界では3mはあったんだからな!」 といくら主張したところでどうしようもなかった。 「ボク、ニ…ツカマル、ト…イイヨ」 幽太郎が肩を貸す。 こうなってはアコルのお守りなどという余裕はない。 「ドンガッシュ、後を頼む」 「うむ。確かにほってはおけないな」 マフの目を盗んで温泉の底をゆっくり回遊しようとしていたアコルの尻尾をドンガッシュが掴んだ。 「何故じゃ!?」 「エロジジイを放置出来るか!」 「こんな白濁とした水中で何が見えると言うんじゃ!」 アコルの主張に「なるほど」とドンガッシュが頷く。が。 「騙されんなよ、ドンガッシュ。見えなかったんじゃ、は触ったことへの免罪符にはならねぇからな」 むしろ見えないのをいいことに、女性の胸や尻を触りまくるのではないかと心配なマフであった。 「ぐっ…お主はわしを何だと思っとるんじゃ!!」 「エロジジィ」 「ぐぐぐぐぐ……」 即答するマフにアコルが歯ぎしりしたが言い返す言葉は出てこなかった。つまり自覚はあるということか。 「チャンスは何れ巡ってくる」 アコルは誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。 しかしマフは気づいていないことが一つあった。アコルのセクハラ対象が男にも女にも向けられる可能性である。アコルに性別はない。それはつまりエロの対象は女…とは限らないということではないのか。そこにガテン系のドンガッシュをあてたことははてさて吉と出るのか、凶と出るのか。 ▼ 同じ頃、女性陣も露天へ訪れた。白濁とした湯は底が見えないというのが少々難であった。急に深くなっては、身長128cmしかない黄燐の足が届かなくなってしまうので、温泉の縁を伝って進むことに。 「確か、入口の左奥にあるって言ってたのよね…」 レナがそちらへと歩き出す。 「あるって何が?」 ルオンが尋ねた。 「あれよ」 レナが指差す先をルオンと黄燐の視線が追いかけた。その先には、顔に白い泥のようなものを塗っている人々が見えた。 「美肌パックが出来るんですって」 「面白そう!」 「あ、あった。これね、きっと」 シリカと書かれたバケツを見つけてレナが中を覗く。中には白い泥状のものが入っていた。 「これ、このまま使っていいのよね?」 なにぶん初めてのことにドキドキしながらレナは周囲を見回した。どんな風に皆が塗っているのか確認したかったのだ。お湯で伸ばしたりなどしている様子もないから、直接肌に塗るということなのだろう。 「塗ってあげるわね」 楽しそうに黄燐が泥をとってレナの左頬にこすりつけた。 「じゃぁ、私も」 レナも同様に泥を掬ってルオンの右頬に撫でつける。 「これで肌が綺麗になるのか…」 ルオンは不思議そうに手の中の泥を見た。それから黄燐の頬にベタリ。 「えいっ!」 黄燐が今度はルオンの左頬につける。大きな固まりはその重さに耐えられなかったのか、ずるりと彼女の頬を伝って落ちた。 「薄く塗らないと剥げちゃうよ」 「加減が難しいなあ」 「全身に塗ってもいいのかな?」 「塗ってる人もいるわよ」 レナが目配せした先では全身にシリカを塗ってビーチサイドとでも言おうか、そのデッキの上に寝転がっている人々の姿があった。 とはいえ、3人は今入浴を開始したばかりである。 「湯船につかっちゃったらすぐ取れちゃうし、温泉につかって暖まってからにしましょう」 それに、マッサージの時間までそんなにない。ならば、マッサージを終えてからでもいいだろう。 「そうね」 そうして3人は顔に泥パックをして温泉につかった。 「結構、深いところもあるから気を付けてね」 レナが黄燐の手を取って、すこし内側へと進む。 「あまり奥までに行かなきゃ大丈夫だと思うけど」 ちょうどいい深さの場所を見つけて腰をおろすと3人はマッサージの時間までまったりと過ごした。 「あ、そろそろマッサージの予約の時間よ」 温泉の湯で顔の泥を流しながらレナが黄燐とルオンを促す。顔はシリカを塗る前よりもツルツルになっていて3人は満足げにマッサージへと向かったのだった。 ▼ レナたちがマッサージを受けている様を日本人観光客密集エリアから遠目に見つけた健が呟いた。 「俺…マッサージする側がいいなあ…」 ぼそりと言い出す健に、何言ってるのよ、とハーミットがそちらを振り返る。 それは、健の呟きに下心がないことなど容易に伺い知れる光景だった。 「ああ…」 それはマッサージの方法にある。 マッサージされる側は、この寒風吹きすさぶ中、湯船に浮かべたウォーターマットの上に仰向けに寝ていた。そしてマッサージする側は温泉の中に立ち、体とマットの間に手を滑り込ませマッサージをしている。 「そうね…」 ハーミットが同意した。 ▼ 「気持ちいいわね」 レナが言った。ぷかぷかと浮かぶウォーターマットはまるでゆりかごのようで、優しいリズムのマッサージが全身の強ばった筋肉をほぐしていく。 「ええ。このまま寝ちゃいそうだわ」 隣でマッサージを受けている黄燐が頷く。 「そういえば、ここって夜になるとオーロラが見られるんですって」 コバルトブルーのような群青の空を見上げながらレナが言った。 「オーロラ?」 ルオンが首だけをレナの方へ向ける。 「夜の帳に波打つ光のカーテン、ってところかしら?」 「素敵ね。是非、見てみたいわ…」 黄燐も濃い青色をした空を見上げる。けれど彼女が見ているのは、夜の空に浮かぶ光のカーテンに違いあるまい。 「うんうん。あたしも見てみたい」 ルオンも空へと視線を馳せた。 「きっと、ロマンチックよね」 と、そこにレナのマッサージを担当していたマッサージ師が水を差した。 「今日は難しいかもしれませんよ」 「そうなんですの?」 レナが尋ねる。 「はい。今夜は夜から曇ると天気予報で言っていたので」 オーロラが見られる条件は5つある。晴れていること、月明かりがないこと、街明かりがないこと、太陽風が速いこと、地磁気が強いこと。 その1つ目がどうやら引っかかったらしい。ここアイスランドは比較的晴天の日が少ない地域のため、かなりの運が必要なのだ。更に付け加えるなら日照時間の長い(ほぼ白夜の)夏場は見られる確率が低く9月~3月くらいがシーズンである。 「えー、じゃぁ、見られないんですの?」 レナが思わず上体を起こしてマッサージ師に詰め寄った。 「申し訳ありません。今は新月期ですから運が良ければ見られるかと思いますが…あ! 明日も宿泊されるようなら、明日チャレンジしてみては? 明日の夜の天気は確か晴れになってましたよ」 「わかりました! 明日も来ます!」 ハーミットの観光スケジュールはどうなってただろう、と内心思わなくもなかったが、レナはそう答えてウォーターマットに再び横になった。 「え? あ、申し訳ありませんが、ブルーラグーンの営業時間は21時までですので…」 アイスランドの日没は21時頃だった。 「あ、そうか。うーん…、そこはジョヴァンニと相談してみましょう」 「そしたら見られるかなっ?」 ルオンが呟く。 「ええ、きっと見られるわよ」 レナが請け負った。万一、明日も雲が邪魔するようだったら吹き飛ばしてやる、などと思いながら。 「楽しみだわ」 「ねー」 ▼ 「次、俺たちだよな?」 と、健が言った。 「えぇ、たぶん」 ハーミットが頷いた。受付で一緒に申し込んだのだから、当然順番としてはそうなる。 「マッサージの前にサウナに入って体温めとこうぜ」 健が言った。今でも十分暖まってはいるが、気温だけでなくこの強風なのだ。濡れた体ではそう長くは保つまい。少しでも、というわけである。 「そうね」 ハーミットは大いに頷いた。かくして2人はサウナへと温泉の中を歩き出す。 「あ、そうだ」 何か思いついたように健が周囲を見渡す。 「どうしたの?」 ハーミットが首を傾げていると、健は目的のものを見つけてそちらへざぶざぶと歩き出した。なんだかよくわからないままハーミットはその後を追いかける。 「幽太郎、一緒にサウナ行かないか?」 マフの手すり係になっていた幽太郎に健が声をかけた。 「サウナ? イイヨ」 サウナが何かを知らない幽太郎が二つ返事で頷く。興味津々だ。 ところで、この場にユーウォンとジョヴァンニはいなかった。2人は内湯にある打たせ湯を楽しんでいたのだ。2人がいたら、2人とも勇んでサウナに行くと言っていただろう。閑話休題。 「なるほど、それはいい案ね」 ハーミットが健の意図を察して頷いた。 「じゃぁ、幽太郎は借りてくぜ」 とマフに声をかけてサウナへと踵を返す。 「幽太郎、サウナなんか入って大丈夫か?」 健についていこうとする幽太郎に心配げにドンガッシュが声をかけた。機械は熱に弱いイメージがあるようだ。それに幽太郎が答えるより速く。 「温泉が大丈夫なんだ、サウナくらいの温度だって大丈夫だろ」 「なるほど」 適当なことを言う健にドンガッシュが頷く。 当の本人である幽太郎は理解しているのかいないのか、よくわからないまま健とハーミットについて行くのだった。 シャワーを浴びて健とハーミットと幽太郎はサウナへ。 「コレガ…サウナ?」 幽太郎は、熱気のこもるミストサウナの中、水蒸気の向こうで朧気に腰を下ろす健に声をかけた。 「ああ、そうだ」 健が頷く。 暑いとか寒いという感覚がない幽太郎は、その溶岩をくり抜いて作られた小さな部屋の意味を理解出来ないまま落ち着かない様子できょろきょろしながらその場に座った。 ハーミットと健は汗だくだが幽太郎が汗をかくことはない。ただ、その体に熱をため込んでいく。 マッサージの予約時間5分前。健が立ち上がった。ハーミットもそれに続く。 「行くぞ」 と促されるままに幽太郎も健の後を付いていった。今度はどこへ行くのだろうとワクワクしている。 マッサージエリアに到着すると健は幽太郎を風上へと促した。 幽太郎がプールに足をつけると彼が体内にため込んだ熱で煙のような水蒸気がぶわっとあがる。 湯温があがってマッサージ師が嫌そうな顔をした。 しかし幽太郎が放つ熱気と、あがった湯温から伝ってくる熱に健とハーミットは満足げだ。その上、湖面を滑る風は彼が全て止めてくれる。 二人はウォーターマットに寝転がった。マッサージ師がマッサージを始める。 幽太郎はそれを不思議そうに見守っていた。 金属の熱伝導率は高かった。 逆に言えば保温性は皆無だった。 30分後。 ガクガクガク、ブルブルブル。 寒さに耐えられなくなった健とハーミットがウォーターマットの上で凍えていた。彼らの選択は不正解といったところか。 正解は、体が温まった後、冷水を足下だけでもかぶれば毛穴などが閉じ、熱を放出しにくくなるという、冷え性対策の裏技であったのかもしれない。 ▼ マッサージを終え、人心地吐いた女性陣はさっそく全身にシリカを塗るべくバケツの置いてある場所へ。 「みんなにも塗ってあげようよ」 ルオンの提案にレナが頷いた。 「そうね」 「よし」 ルオンはシリカの入ったバケツを手に取った。マフがいる以上その場所の深さの心配をする必要もないだろう。少し遠回りにはなるがプールサイドを伝ってそちらへ向かう。 顔に泥を塗った女性陣がこちらに向かってくるのを見つけてマフが不思議そうに眉を顰めた。 「あれはなんだ?」 フェイスペイント、にしてはお粗末だ。しかも白一色である。 「これじゃないかの?」 湖の底を徘徊していたアコルが湖の底に沈む泥を頭に乗せて顔を出した。 「なんだ、これは?」 「美肌に効果があるとか言っておったのぉ」 打たせ湯で凝り固まった肩がほどよくほぐし戻ってきていたジョヴァンニが説明した。 「これが?」 マフがアコルの頭の上の土を手に取って指でこねくり回しながらマジマジと見ている。よくわからない。 「お待たせー」 ルオンがドンと近くのプールサイドにバケツを置いた。 「みんなにも塗ってあげるわね」 黄燐が泥を手にとり手招きする。 「あ、いや、俺は…」 マフが何となく後退った。ツルツルになるような肌は毛皮や鱗で覆われているため、必要性を感じない。 「これって、毛がふわふわになったりするかしら?」 泥を掬いながらレナが首を傾げた。 「ふむ、どうじゃろう?」 と、ジョヴァンニ。 「試してみたらいいんじゃない」 黄燐の目が楽しそうに笑った。 「いやいや、おいおい…」 それを見ていたアコルがマフの前に進み出た。 「わしも頼む」 と、上半身(?)を水面に出してS字に体をくねらせてみせた。腕の代わりに羽を頭と腰にやっている。しかし断じてセクシーとはほど遠いそれに、ドンガッシュがため息を一つ。 「おれが塗ってあげるよ」 とこれまたジョヴァンニと共に戻ってきていたユーウォンがバケツの泥をとって言った。 「……」 女の子に塗って貰うことがより重要であったアコルの頭が、彼のテンションを表すかのように見る見る下がり、顔だけが水面にでる。 「アコルはいらないんじゃないか? 湖底を徘徊してる間に美肌効果が得られるだろ?」 ドンガッシュが言った。 「そっかー、残念」 とユーウォンが肩を落とす。 「湖底の泥はあまり綺麗じゃないがの」 視線をさまよわせながらアコルは水中に消えた。とはいえ、転んでただで起きる彼ではない。そのまま向こうにいる女の子のグループへと泳ぎだし、ドンガッシュに尻尾を捕まれた。 「おれでも効果があるかな?」 ユーウォンがドキワクと期待のこもった目で呟いた。 「大丈夫じゃないかの? 背中に塗ってやろう」 ジョヴァンニの言にユーウォンが「じゃぁ、おれも」と、2人で背中にシリカを塗りあった。 一方、マフは結局逃げきれず女性陣にいいように泥まみれにされて疲れたようにプールサイドに座り込んでいる。 「なんか食べ物でも買ってくるか?」 とみんなに声をかけた。 「ドリンク欲しいな。いっぱい笑ったから喉乾いちゃった」 ルオンが言うと、黄燐とレナが頷く。適当に何か飲み物を買ってきて、と。 「他は?」 とマフが振り返った先で。 「そうじゃな、わしは赤ワインをいただこうかの」 ジョヴァンニが言った。 「酒なんてあるのか?」 マフが眉間に皺を寄せる。脳内でトマトジュースと変換。 「おれも一緒に行くよ」 ユーウォンが申し出た。どう考えてもこの人数分をマフ1人で運べるとは思えなかったのだ。 「ああ、頼む。ドンガッシュは?」 「ミネラルウォーターでいいよ」 答えたドンガッシュの隣に顔を出して。 「わしはブルーハワイじゃ」 アコルが言った。 あるのか、そんなものが、と思いながらマフはユーウォンとドリンクカウンターへ。まずないだろうと思っていたアルコールの文字にマフのテンションが跳ね上がる。 「何!? ここは酒も置いているのか?」 あるからには飲むしかないだろう。マフは思った。ジョヴァンニも赤ワインを注文していたのだ。どうして自分だけ飲まないという選択があるだろうか、いやない(反語)。マフは早速アイスランドビールを注文した。紙コップなのが少々味気ない気もしたがしょうがないだろう。 ▼ 一方。 皆の元から少し離れた日本人観光客エリアでまったりしている健とハーミット…と、幽太郎。 ふと健が何かに気づいたように立ちあがった。 水面に首だけ出しているハーミットをまじまじと半眼で見つめながら暗い声でぼそぼそと何やら呟き始める。 「俺は気づいちまった。俺たち、ずっと2人で行動してるだろ。こうやって、顔だけしか出てなかったらハーミットって女の子に見えるじゃん? これってもしかしなくても、俺、傍から見たら…すげーリア充っぽく見えるんじゃね?」 「2人デ…?」 サウナからこっち幽太郎もずっと一緒なのだが健は幽太郎を忘れているとでもいうののだろうか、いや、そうではない。決して彼の存在感がどうというわけではないのだ。幽太郎の場合、傍から見るとオブジェっぽく見えてしまうような気がして何となくこの場合の数に入らなかっただけなのである。この場合とはつまり、リア充カップル。 「あら、イヤン。照れるじゃない」 ハーミットがシナを作って微笑んでみせた。どこまで本気でどこまで冗談なのか、たぶん全部冗談だと思いたいが、ハーミットは満更でもない風だ。 「うわー!! やめろー!! ここは日本じゃないから別の意味でもリア充って思われるかもしれねーじゃねーかー!!」 冗談でも勘弁して欲しい健である。 「リア充?」 幽太郎は意味を理解し損ねたようで考えるように腕を組んだ。 「そんな冷たいこと言わないでよ」 嫌がる健の首にハーミットが両腕を巻き付けてみせる。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺はっ! 俺はっ!! お姉さんの方がいいぃぃぃぃぃぃ!!」 「ひっどーい!! そんな子はこうしちゃうんだからー」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」 健は慌ててお湯をざぶざぶとかき分けるようにしながら走りだした。 それをハーミットが追いかける。 「ワー! 待ッテー!!」 更にその後を幽太郎が追いかけた。 「助けてくれー!!」 「人を強姦魔なにかみたいに言わないでよー!」 「2人、ハ…リア充、ナノ?」 ざぶざぶざぶ。 湖には深いところもあれば浅いところもある。 浅瀬を選んで健は走った。上半身はお湯から出ていたが最早気にもとまらない。いつの間にか2人はアイスランドのこの寒さにも慣れてしまっていた。ロストナンバーになると適応能力が高くなるのかもしれないし、小学校のプール開きの頃を思い出しただけかもしれない。 「何事じゃ?」 サイドデッキでのんびりワインの入った紙コップを傾けていたジョヴァンニが、追いかけっこをしている3人に声をかけた。 「はぁ…はぁ…」 と荒い息を吐いて健はジョヴァンニの隣にへたりこんだ。 「2人ハ…リア充、ナンダッテ」 健の隣にちょこんと座った幽太郎が説明する。ジョヴァンニは意味がわからない。 「このままじゃ、俺の貞操が…」 「失礼なこと言わないでよ!」 憤然とハーミットが睨みつけた。 ジョヴァンニはやれやれといった面もちだが仲裁に入るでもなく2人を見守る構えである。 健がジョヴァンニの方へと後退った。 しかしハーミットはすでに健を見ていなかった。健の向こうでくつろいでいるジョヴァンニを見ている。 「ちょっと! それ、どこにあったの!?」 それにジョバンニが顎をしゃくって目配せしてみせた。ハーミットは最早健には興味がなくなったかのように踵を返して駆けていく。 「助かった…」 健はホッとしたように息を吐いて、ジョヴァンニが紙コップを置いたテーブルの上に乗る誰のものかもわからない紙コップを掴んで喉の奥へと流し込み盛大に吹き出したのだった。 「アルコールかよ!?」 ▼ 「ドンガッシュさん立って、立って」 とルオンに促されるまま立ち上がったドンガッシュを後ろに向かせると 「さすがに背中広いわね」 とルオンと黄燐は背伸びをしながらシリカを塗っていく。三角筋から上腕一等筋、上腕二等筋、上腕三等筋、棘下筋、広背筋…。 「お絵かき出来るね」 ルオンがシリカでドンガッシュの筋骨逞しい背中にチューリップなどを描いてみせた。 「こらこらこら」 ドンガッシュが首を背中の方へ向けながら苦笑いしている。 ハーミットがやって来たのはちょうどそんな時だった。ブルーラグーンに来るとなってハーミットもシリカの泥パックはチェックしていた。それが予想外の寒さにそれどころではなくなってしまっていたのである。しかし、ジョヴァンニの泥パックを見て思い出したのだ。 「それ、どこにあるの?」 と声をかけたハーミットにレナが答えた。 「入ってすぐ左奥にあったわよ。でも、まだたくさんあるからどうぞ」 レナがシリカの入ったバケツをハーミットの方へ差し出す。バケツごともってきたのか。 「ありがとう。やってみたかったのよね、これ。どう?」 ハーミットはバケツの中のシリカを手に取りながら尋ねた。 「もう、スベスベ」 とレナが腕を伸ばしてみせる。それに気をよくしてハーミットは早速顔にシリカを塗ってみた。 首、肩、上半身と塗り始めて、マフを振り返る。 「背中に塗ってくださらない」 「……頼むから、その声でそういうのはやめろ」 「あら、いいじゃない。お・ね・が・い」 にじり寄るハーミットに、寄られたぶんだけ遠ざかるマフ。じりじりじり。 そんな2人にユーウォンが声をかけた。 「おれが塗ってあげようか?」 「そうだ、ユーウォン、おまえが塗ってやれ」 渡りに船とばかりにマフが乗る。 「ボクモ…イイ…カナ?」 幽太郎が言った。全身金属の彼にシリカがどれほどの効果を果たすのか、或いは果たさないのか、は何となく想像出来なくもなかったが。 「試してみる?」 ハーミットが言った。 「ツルピカになるかも」 ユーウォンが言った。既に充分ツルピカのような気がしなくもない。 「ドキドキ、ワクワク…」 幽太郎が自分の腕にシリカを撫でつける。 「よーし、俺が幽太郎の背中に塗ってやろう、だからハーミットの背中にはユーウォンが塗ってやれ」 マフが言った。 「えー…」 ハーミットが頬を膨らませたが、結局、そういうところで落ち着いた。 ▼ さすがにずっと温泉の外にいると寒くなって健は再び温泉の中へとまい戻った。 「寒いときはアルコールに限るぞ」 マフが言う。限るということはないが、血行がよくなり体が温まることもある。彼の紙コップの中身はアイスランドビールだ。サイドデッキに座る彼の脇には彼にとっては酒の肴なのか何なのかブルーベリーのスムージーが置いてあった。 「そうじゃなあ」 紙コップを片手にスムージーの向こうに座っていたジョヴァンニも頷く。彼の紙コップの中身は赤ワインだ。 「ここはアイスランドだから」 ハーミットが残念そうなため息を吐いた。 「ああ、そうか20歳未満はダメじゃったか?」 ジョヴァンニが思い出したように言った。 「厳密には購入(販売)が禁止されてるだけで飲酒自体が禁止されてるわけじゃないみたいなんだけどね」 一応、ここに来る前にその手のことも事前に調べておいた。自分の常識が他の国では非常識になることも多々あるからだ。 「それなら、俺が買ってきてやろうか?」 と、マフ。 「ありがとう。でも、別のものにするわ」 とハーミットが笑みを返す。暖かいココアでもあればいい。 「イタリアはいくつからOKなんだっけ?」 温泉の中からサイドデッキに頬杖をついていた健がふと疑問になって尋ねた。 「16歳じゃよ」 ジョヴァンニが答える。 「え? もう、高校生から飲めんの?」 いいなあ…とぼやく。体育祭、文化祭、合唱コンクール、etc。各種高校行事の打ち上げのたびに、飲めたらいいな、と思ったものだ。大学生になったらなったで20歳の誕生日の待ち遠しいこと甚だしい。今の健はといえば、対外的な年齢は重ねているものの、ロストナンバーとなって止まってしまった時(歳)をどうすることも出来ずにいた。 「と言うてもアルコール度が21%以上はダメじゃがの」 「21%ってどんだけ高いんだよ、って話だよな」 ビールでも5%前後しかない。おそらく大抵のアルコール飲料は飲めるんじゃないだろうか。 「日本も確か20歳だったわよね?」 レナが言った。 「ええ」 ハーミットが応える。 「お酒ってそんなに飲んでみたい?」 「美味しいものなのっ?」 ルオンと黄燐が興味深げに身を乗り出した。 「旨い!」 マフが言い切る。 「一汗かいた後の1杯は確かに至福だな」 と、ドンガッシュ。 「それは飲んでみたいわね」 「ねーっ」 「マドモアゼルたちはさすがにもう少し大きくなってからじゃのお」 ジョヴァンニは言ったが、ルオンはともかく黄燐は見た目は子供でも実年齢は見た目の30倍を軽く越えているのだが。 「そうなのっ?」 「ああはなりたくないじゃろ?」 とジョヴァンニが視線をそちらに投げる。 その先では、酒を飲み温泉に浸かり血行もよくなって酔いのまわりの速くなった連中が、気持ちよさそうに歌い、今にもどんちゃん騒ぎを始めそうな雰囲気をかもし始めていた。 「楽しそうね」 「うんっ!」 「そうじゃ、傍で見ているくらいが楽しいぞ。あっち側にいったら、あれはあれでいろいろのぉ…」 含むような物言いでジョヴァンニはのんびりと紙コップを傾ける。 それから多くの時間は必要としなかった。アイスランドの日は長い。太陽が西へと傾き始めた頃。 気持ちよくなって踊り出すくらいならまだ可愛いものだ。それがはた迷惑になり始めて慌ててハーミットが止めに入る。 アルコール組は完全に出来上がっていた。トレインウォーでの激しい戦闘を思い出したのかその時のことを手振り身振りを交えて話しているぐらいまでは良かったが、テンションもマックスで話もクライマックスにさしかかる頃には力まで開放してしまい。 ハーミットでは止めきれず、健が加わり、幽太郎がおろおろし、ジョヴァンニがやれやれと肩をすくめ、結局ドンガッシュがテキパキとちぎっては投げを繰り返して終演を迎えるまでの泥酔状態の大人たちを見て、黄燐とルオンは、酒の魔力と怖さを何となく知ったという。 「……………」 それでもきちっとシャワーを浴びて海水をシャンプーで洗い流すくらいの意識はあったようだが。 ロッカーで着替えを済ませ、泥酔している大人たちを待っている間、レナと黄燐とルオンは土産物などが置いてあるショップへと足を運ぶ。 明日、お試しで使えそうなものをいろいろ選ぶ。さすがにバスソルトなどは使えないがボディーソープなどはシャワーの時にでも使えそうだ。保湿クリームなどはこれから使えるだろう。手にとって香りを確かめていく。 「バラの香りもいいわね」 黄燐が開けた蓋に鼻を寄せる。柑橘系とはまた違った甘い濃厚な香りがする。 「あたしはこのティーツリーっていうのにしようかなっ」 テスターのオイルを手の甲に塗りながらルオンが言った。こちらは爽やかでくせのある香りだ。 「うーん…迷うなあ」 レナが、あれこれテスターの蓋を開けては閉じている。 そうこうしている内、漸く酔っぱらいと酔っぱらいを担いだ男性陣が現れた。 一同は疲労困憊の末、今度はちゃんと送迎バスを使ってホテルへ戻る。 かくて1日目の夜は更けていったのだった。 ■2日目■ この日も露天風呂日和の快晴。しかしせっかくなので一同はアイスランド観光に出ることにした。 早朝、二日酔いでぐったりしている連中を引きずるようにして、一行はレンタカーのマイクロバスでゴールデンサークルを巡る。 まずはレイキャヴィークの市街地から東にある観光地シンクヴェトリル国立公園へ。ユーラシアプレートと北アメリカプレートの割れ目があり両大陸プレートが分かれるさまを見る事が出来る唯一の場所である。 「ここは、シンクヴェトリル(議会平原)の名の通り、世界で初めて議会が開かれた場所と言われておるんじゃ」 ジョヴァンニが解説する。ヨーロッパの歴史などハーミットにはさっぱりだったので、ここからの観光案内はジョヴァンニに任せることにしていた。ちなみにこれは余談だが、厳密に言えばここでいう議会とは中世の身分制議会のことではなく近代議会のことである。この場所で憲法なるものが制定されたのだ。とはいえ、ツーリストに議会という言葉は今一つピンとこない。ただここが、壱番世界の人々が世界で初めて何かを成しえた場所なのだとしたら、その勇気と覚悟に賞賛しないこともない。 脱帽の面もちで雄大な平原を見渡し、プレートの割れ目である巨大な壁に作られたなだらかな道を歩いた。巨大な溶岩の岩の間を染み出してきた水は川とも池ともつかず深く澄んで空の青を映していた。 国立公園を後にすると更に東へと車を走らせた。 次に訪れたのはグトルフォス(黄金の滝)だ。氷河から流れた莫大な量の水が溶岩の上から流れ落ちる滝である。黒い溶岩に苔だろうか濃い緑が映え鮮やかなコントラストを醸し出している。あがる水煙と水蒸気が太陽の光を乱反射させ黄金の滝の上に大きな虹を作っていた。 「あの溶岩は時折形を変える。この滝はいつ来ても違う顔をしておるのよ」 次にまた訪れる機会を得られるかどうかはわからなかったが、一同はその姿を目に焼き付けるようにしばらくその雄壮たる絶景に見入っていた。 今度は南へと下る。 次に訪れたのはゲイシール。英語のガイザー(間欠泉)の語原でもある通り、そこには大小様々な間欠泉が存在していた。中でも最も大きいものをグレートゲイシールと呼ぶ。 「間欠泉ってなんだ?」 マフが首を傾げながらそこにある温泉をのぞき込んだ。 「さぁ? ただの温泉に見えるが…」 と、一緒になってドンガッシュものぞき込む。温泉というより巨大な水たまりのように見える。水面にアイスランドの強風が小さな波を作っていた。 「ふむ、浸かるには少々熱そうじゃが」 マフの頭の上でアコルが蜷局を巻きながら言った。 「まぁ、見ておれ」 ジョヴァンニが言う。 「何が起こるの?」 わくわくとユーウォンも傍で見ている。 「見ていたらわかる」 「チョット…ドキドキ…スル、ネ」 幽太郎が言った。 「2人はそんなところでいいの?」 離れた場所に立っているハーミットらにレナが声をかけた。 「ええ、私は見たことあるから」 と笑みを返して、どうぞ、とレナを前へ促す。 レナは「そう?」と首を傾げながら間欠泉の方へ。とはいえ、既に男どもが周囲を囲んでしまっているので、その後ろから覗く。その隣に出遅れたルオンが並んだ。 ドンガッシュが黄燐に気づいて自分の方へ呼び寄せると肩の上へ抱き上げた。 「健は見たことあるの?」 離れた場所でハーミットが隣に並ぶ健に尋ねた。 「ああ、もちろんここのは初めてだけど、大分でだったかな?」 「そう。私は諏訪湖だったかしら?」 「まだなのっ?」 ルオンが焦れたようにジョヴァンニを見た。 「うむ、そろそろかのお」 それにルオンが視線を穏やかな温泉の水面に戻す。 刹那。 中から熱湯が10mを軽く越える高さまで吹き上がった。 「ぎゃっ!?」 とマフ。なんとか熱湯の直撃を免れるが、熱湯の飛沫に悲鳴をあげた。 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」 と少し長めの悲鳴をあげたのはアコルだ。だるま落としのだるまのように、熱湯を避けたマフの頭から滑り落ちたのだ。下半身をアコルの首に巻き付けていなかったら今頃完全に茹であがっていたに違いない。 「おぉっとっと!」 とドンガッシュ。持ち前の運動神経と反射神経で慌ててさがって黄燐を守る。その肩の上で。 「凄いわね」 と落ち着いたように黄燐が間欠泉の作る両手を広げても余る太さの湯柱を見上げて言った。 「あちっ! あちっ! あちっ!!」 タイミングを逸したユーウォンが熱湯の飛沫に右へ左へ飛び跳ね回っている。 「コレガ、カンケツセン……」 全身に熱湯を浴びながら動じた風もない幽太郎は湯柱の中に佇んでいた。 「噴水みたい…」 間欠泉の周囲を囲んでいた面々の後ろにいたルオンはさほど被害を受けることなく数歩後退って呟いた。 「なるほど、それで離れて見てたわけね」 ルオン同様、後退りながらレナはわずかに視線を健とハーミットの方へ向けた。 「ふぉっふぉっふぉっ」 ジョヴァンニが楽しそうに笑っている。 「笑い事じゃないぞっ!!」 マフが眉尻をあげて怒鳴った。 「ま、こうなるよな」 「そうね」 健とハーミットは顔を見合わせ、そんな一同をカメラに収めて笑ったのだった。 間欠泉をひとしきり堪能し、溶岩原の荒野が景色の大半を占める中、緑の平原に佇む白い教会などを車窓から眺め、一同はレイキャヴィークヘと戻ってきた。 レイキャヴィークの市街地観光は明日の最終日、おみやげを選びながらすればいいということで、そのまま通り過ぎてレンタカーで再びのブルーラグーンへ。 ちょうどお昼だったので、ブルーラグーンの施設内にあるレストランでランチを楽しむことに。レストランからはブルーラグーンの温泉を一望することが出来た。 アイスランドのラム肉は絶対食べるべしといううたい文句に誘われて皆でグリルシュティクトランバフリスネイズ(グリルしたラム肉)という料理を注文する。その他、シーフードがおすすめということでサーモンのソテーなどを頼んだ。マフはといえばメイプルシロップが大量にかかったパンケーキなどを頼んでいる。彼は酒豪な上に超がつく甘党なのだった。 ランチを楽しんだ後は観光の疲れを癒すように温泉へ。 昨日のように顔にはシリカを塗りたくって人心地。 やがて陽は西の空へと傾き、東の空から夜が押し寄せてきた。マジックアワーが白い湖面を美しく彩る。その幻想的な時間を楽しんで一同はブルーラグーンを出た。 現地の人の話によればオーロラの見えやすい時間は日没~0時くらいということだ。ブルーラグーンの営業時間は21時で日没も21時なので、必然的にブルーラグーンを出てから見ることになる。 そのために、レンタカーを用意した、とも言える。 11人は暖まった体を一台のマイクロバスに押し込んで息を顰めるようにして夜空を見守った。 ブルーラグーンが営業を終了し片づけも終えたのか照明も消え、何もない溶岩原は夜の闇に姿を隠す。 降り出しそうなほどの満天の星空。 それが微かに揺らいだような気がした。 「あ…」 誰ともなく声が漏れた。 「わぁ…」 感嘆の声をあげただけでしばらく誰も何も言わなかった。 「綺麗…」 ようやくレナが呟いた。そんな言葉では言い表せないほどのそれは、それでも陳腐な言葉でしか言い表すことが出来なくて。 「素敵ね」 黄燐が言った。 「一生分の運を使い果たしちゃったかもしれないわね」 ハーミットが最後にそんなことを呟いた。 ■3日目■ 最終日。 一同はブルーラグーンに隣接したホテルをチェックアウトし、ロストレイルの迎えの時刻までをレイキャヴィークの市街地で過ごす。ちなみに、スキンケアグッズは一通りブルーラグーンで買い込んでいた。 市内で最も目についた建物へ向かう。ハットルグリムス教会だ。まるでシルエットはロケットのそれだ。一番上の鐘楼まで73mもあるらしい。日本は大阪万博で有名な太陽の塔の高さが70mであるから、それより少し高いといったところか。それでも昨日見たグトルフォスの倍以上の高さがある。鐘楼へはエレベータで途中まであがり、そこから階段を使って登ることが出来た。 そこからレイキャヴィークの町を一望する。晴れの日が少ないというアイスランドだけあって、この日は晴天とまではいかなかったが、雲に覆われた空とは裏腹にそこにはおもちゃ箱をひっくり返したような色とりどりの屋根が並び一同を明るい気持ちにしてくれた。 ハットルグリムス教会を後にし市街へ。 国会議事堂の前にある公園を集合場所と決めてお土産の買い出しに出る。アイスランドのお土産といえば、ヴァイキンググッズやニット製品だろう。 お土産に興味がない者らは、公園を散策することに。チョルトニン湖まで足を運べば白鳥やカモメなどが見られるというので早速足をのばした。餌をあげている人々を見つけて餌をわけてもらい餌やりなどを楽しんで。 かくて、アイスランドでの観光旅行は幕を閉じたのだった。 ■大団円■
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