~ある日のターミナル~「司書だって海とか行きたいわ。だって、ここ最近プールも混みっぱなしよ? やんなるわ……」 事務仕事を済ませながら飛鳥 黎子は愚痴を零していた。 そのどうでもいい呟きをアリッサ・ベイフルックが偶然聞いてしまう。「そうよね、司書さんはターミナルから動けないから大変よね。わかったわ、私がなんとかしてあげる。いい考えがあるもの」 ぱちんと両手を打つとアリッサは世界図書館の方へと日傘を差して小走りに駆け出していった。~青い空広い海、そして白い砂浜~「ねぇねぇ、飛鳥さん。ちょっとこっちにきて?」「何なのよ、アリッサ。私は忙しいのよ‥‥」 翌日の世界図書館ではアリッサが飛鳥の手を引いて世界図書館の一角へとつれてくる。「この扉を開けてみて?」「また変なイタズラとかじゃないわよね?」 にこにこと笑顔を崩さないアリッサを見て飛鳥は不安を覚えながらもその扉をゆっくりと開いた。 隙間から光と共に潮の香りが漂ってくる。 扉を全開にすると、青い空と広い海、そして白い砂浜があった。「え……こんなチェンバー私、知らないわよ?」 目の前に広がる光景が信じられないとばかりに飛鳥は目を開いて周囲を見回すが埃くさい図書館とは違う香りに満ちている。「いつもがんばってくれている司書さんたちへ私からのプレゼントよ。他の人たちにも宣伝して使ってね?」「わかったわ、任せなさい。独占するような狭い心じゃないもの」 アリッサがにこにこといつもの笑顔を向けると飛鳥は無い胸を張って答えるのだった。~水着で遊ぼう~「……というわけで、ここで遊ぶ、わよ」 もじもじとしながら飛鳥は集めてきたロストナンバー達に経緯を説明する。「ちょっと! これは私の趣味じゃないからね。リリィに頼んだからこんなの作ってきたのよ!」 視線に耐えれなくなったのか飛鳥は良く分からない言い訳をはじめた。 仕方あるまい、彼女の着ている水着はスクール水着とよばれる壱番世界の学生が着るものなのだから……。「何をして遊ぶかは自由だけどいいわね?」 胸の辺りを押さえて見回すが反対意見はないようだ。「遊び道具も各自で用意しているし、いくわよ!」 こうして、浜辺のチェンバーでの思い出作りがはじまったのである。 !注意!パーティシナリオでは、プレイング内容によっては描写がごくわずかになるか、ノベルに登場できない場合があります。ご参加の方はあらかじめご了承のうえ、趣旨に沿ったプレイングをお願いします。
~海の家『竜の巣』~ 「皆が遊びやすいよう、私は休憩所でも用意しておこう」 言うと同時にデュネイオリスはビーチパラソルを立て、テーブルやチェアを配置していく。 チェンバーで作られた場所は別次元のため、外の気候とは大きく違うこともあった。 この暑さでは倒れるものもあるだろうと休憩できるスペースを先に用意する。 しかしながら、遊びよりもこうした裏方に回るのはデュンのいいところでもあり、損をしている部分でもある。 冷たい飲み物やちょっとした食べ物、自分の店でも出すような洋菓子やアイスを用意する手際は良かった。 ビーチパラソルを各テーブルにさし、調理などをするための場所の確保も終わってデュンは一息つく。 「……さしずめ、簡易、海の家と行ったところか」 思わず苦笑い。暖簾でも出してみようかなどとデュンは思う。 「デュンさん、店の一角借りていいですか? 焼き物やろうと思ってるんですけど」 ファーヴニールが「必勝」とかかれた鉢巻、「××をぶちまけろ」とかかれたシャツに水着という姿で両手に荷物を抱えて近づいてきた。 手に持っているのは鉄板と焼きそばの材料である、 「私の方はかまわないぞ。結構な人数もいるから作り手は多い方がいい」 「それじゃあ、だしましょ。暖簾」 「そうだな、海の家【竜の巣】臨時開店だ」 デュンとファヴニールはお互いの目を合わせて笑いあい、暖簾の準備をはじめる。 夏の日差しが眩しいチェンバーでひと時の思い出作りが始まった。 ~波乱の超人水球大会~ 「ロストレ超人水球大会~!」 盛り上がる歓声と鳴り物を藤枝 竜は制して高い岩場上に立つ。 「今からルールを説明するよー。この私特性の象が踏んでも溶岩におとしても壊れないスーパーボールでチームゴトにラリーをします」 「能力の使用はOK、チームは私がリーダーのAチームと、華城 水炎がリーダーのBチームですよ」 「ちょっと、私超人プレイなんてできないんだけどさ~」 「本当よ、私の顔に傷がついたらどうするのよ。あんた達酷いわよ?」 水炎と飛鳥は説明を続ける竜に向かって抗議の姿勢を見せた。 チームがぞろぞろっと分かれてるなか、最初の第一球が用意される。 「最後のルール、取れる球をパスすること! では、いきますよー。ひぃぃぃさつ! 火の魔球です!」 竜が口から吐いた炎をボールに纏わせて軽いパスを飛ばした。 取れることが一番ということで弱めのにしたはずなのだが‥‥。 「フハハハッ! この程度の球など我輩は打ち返してくれるわ!」 ガルバリュート・ブロンデリング・フォン・ウォーロードがブーストジャンプをして追いつきアームの出力を上げて凄まじいアタックをした。 ドヒュンと空をきり、砂埃を上げて加速したボールの先は飛鳥・黎子で‥‥。 「……え?」 ボールの方を振り向くとボールはブーメランのように形を歪ませながらゴウゴウと音を上げて迫ってきた。 「飛鳥さんあぶなーいっ!」 飛び出した竜が顔面でそのボールを受け止めるが、そのまま背中から飛鳥を巻き込んで吹っ飛ぶ。 ボールは上空へ勢いよく上がって見えなくなった。 「ないすぷれーっ。……さっきのアタックは、空豆の皮を押してプルンと実が飛び出す勢いでした……ね? 解説の八甲田さん」 いつの間に作ったのか実況席には青梅 棗とセクタンの『八甲田山』がいる。 無論、棗が何をいっても八甲田山はアンニュイな表情で頷くだけだった。 「あー、これ医者が必要じゃない? ちょっとヤバイって」 ボールとは反対に砂に埋もれた竜と飛鳥を引きずだしながら水炎は汗をたらす。 「ぷっはぁー! 危ないってば! 返せる球でっていったじゃないですかー!」 「ハッハッハッ、我輩の世界ではこの程度をかせなければ宇宙の戦士になれませんぞ!」 自分で行ったことに反省のないガルバーは際どいビキニ姿でポージングを続けていた。 「飛鳥さーん、生きてます? 飛鳥さーん」 顔面でボールを受けた竜は頑丈なせいか大丈夫だったが、竜の下敷きになっていた飛鳥はピクリとも動こうとしない。 「肉だるま‥‥あとで覚えてらっしゃ‥‥い」 引っ張り出された飛鳥は気絶する前に一言告げるのだった。 ~お嬢様参入~ 「ちょっと出遅れちゃったかな?」 氷で冷やしたお茶の入った水筒を持ってきながら砂浜の上をコレット・ネロはワンピース姿であるく。 歩くたびシャリシャリと音がして足跡を残していく姿は普段あるいていると中々味わえないものだ。 「む、コレット。ここで普段着と言うのは暑いだろう。ほら、日傘だ」 「アインスさん、ありがとう」 日陰ができたことに少しは驚いたものの見上げた先にいる青い髪の男をみつけるとにこりと微笑む。 「皆さんはあちらでがんばっているみたいですね?」 視線を前に向けると人が集まりボールを上に飛ばしあっていた。 「麗しい女性が多いからな、レディ達のひと夏の思い出のため私も警戒中のところだ」 黒のサーフパンツ水着のアインスは誇らしげに胸をはる。 「でも、アインスさんも楽しまないといけないよ?」 小首を傾げて見つめてくるコレットの目をアインスは見つめ返すことができなかった。 「おーい、コレット! 一緒に寝ないかい?」 止まりかけた時間をルゼ・ハーベルソンがビニールボートの上に寝そべりながら手を振って壊してくる。 歯がきらりと光るハンサムガイではあるが、タイミングが悪かった。 「さっそくナンパをするか、いいだろう。私が責任をもって砂浜に埋めてやろう!」 日傘をコレットに渡したアインスはルゼの方へ駆け出していく。 ルゼの方はアインスがつれたことに驚いて逃げるビニールボートに乗りながら逃げ出した。 「アインスさんも楽しそうでよかった」 くすりとコレットが笑っていると、ボールがころころと足元に転がってくる。 「ごめんなさーい、おねえちゃんも一緒にあそびませんか?」 ボールを追いかけてきたリオン・L・C・ポンダンスはコレットの姿を見つけると微笑みかけた。 「そうね、一緒に遊びましょう」 コレットも笑顔を返してボールをとって青空高くトスをする。 再びラリーが始まった。 ~自由人ズ~ 『チェンバーの海って、生き物は居るんですかネ? 面白い珍獣が棲んでたりしないかナー』 アルジャーノは高速艇に擬態してひたすら沖へと飛んでいた。 海面すれすれから中を眺めれば魚の姿がうっすら見える。 興味と好奇心で動く液体生命体のアルジャーノにとってチェンバーというものは非常に興味深いものだった。 どこまでつながっているのか、広さにさはあるのか? そこに生物はいるのか? とりわけ珍獣にかんしては興味が尽きず、アルジャーノはひたすら追いかけていた。 海だけが続き、水平線の広がっているのが分かる。 しばらく飛んでいくと、砂浜がみえたので着陸し、にゅるんと人間の姿に戻って砂を拾い上げた。 「アレ、おかしいですネ? まっすぐ飛んでいったはずガー」 砂の成分を解析すると飛び立った場所と同じだった。 「ナルホド‥‥ループしているのかナ? ですガ、他のチェンバーに比べると広そうですネ」 「イケメン、イケメンウォッチング~。‥‥あ、イケメン発見!」 あごに手を当てて考えているアルジャーノに日和坂綾はビット指をさして叫ぶ。 スクール水着にパーカーはよいとしても双眼鏡にクーラーボックス、カキ氷製造機まで持っている姿はアンバランスだった。 「”イケメン” ですカ?」 指を指されても何のことか分からないアルジャーノは首を傾げるだけだった。 ~腹ごなし~ 「ビーチバレー怖い‥‥」 コレットの後ろに隠れながらカナンはトスの様子を眺める。 「皆のものがんばるとよいぞ、フハハハ!」 酷い現況を起こした張本人のガルバーは顔を覗かした形で砂に埋められて喜んでいた。 世界は広いものである。 ポーンポーンとボールが飛び交っていると、デュンが声をかけてくる。 「一生懸命になるのもいいが、適度に休憩を取らないと倒れるぞ。食事の用意があるから休んでいったらどうだ?」 「さぁーて焼けたぞー! 皆ー、休憩がてら飯でもどうだーい?」 ラリーは一時中断して海の家【竜の巣】での休憩時間が訪れた。 「じゃあ、焼きそばもらっていいか? 大盛りで!」 相沢優はヒーローショーから梯子で超人水球大会に参加していてためか、ファブニールから大盛りの焼きそばを貰うと勢いよく食べ始める。 「水炎さんスイカ持って来たの? 私もチェンバーからカキ氷セット持ってきたんだ。イチゴ、レモン、メロン、ブルーハワイ、オレンジ、抹茶、みぞれで7色シロップがあるから、レインボー作れるよ?」 綾がテーブルの一つに荷物を置くとカキ氷を作りはじめる。 「ああ、スイカはな‥‥たべきれねーから持ってきたからきっちまうか」 人数を数えながら水炎はスイカを切っていた。 「ああ、足りないようでしたら一つ、差し上げますよ」 ブーメランパンツにアロハ、更にサングラスという異様な姿のハッター・ブランドンがスイカをトランクから出しておく。 「ハッターさん、相変わらず……相変わらずだね」 目の前で起きたことに苦笑しながら、綾はカキ氷を削り続けた。 「そういえばさ、イケメンウォッチングの成果はどうだったの?」 「こっちには着てないけどあっちにさ結構良い人いたんだ」 水炎は双眼鏡を綾から借りて覗くと、その先にはアルジャーノが再び変身を始めている。 「イケメンがイカスメカに大変身!」 「何いってるの? 私が見たのはイケメンだってばー」 「いやだって、戦闘機というかなんか‥‥」 双眼鏡を下ろした水炎はなんともいえない顔だった。 「ん‥‥ここは?」 竜の巣の奥では気絶していた飛鳥が目を覚ました。 ひんやりと冷たいタオルが頭にあり、横には知らない人物がいる。 「気が付いたかの? ほれ、目覚めのチョコシェイクじゃ」 ワンピースの水着を着たジュリエッタ・凛・アヴェルリーノは首を傾げながら飛鳥を見下ろしていた。 「こういうチラリズムといったかの、水着も良いもんじゃのう。別に見せても減るまいし恥ずかしくはないわ」 「いや、水着そのものに文句はないのよ。うん」 起き上がりながら飛鳥はチョコシェイクをちゅるると飲み始める。 目の前のジュリエッタの体をみて警戒心をといたようだ。 「黎子殿、元気は出たかのう。ボールは無理に追わず、自分の所に来た際思いっきり狙いを定めば良い」 「いわれなくても分かっているわよ。あの脳筋肉だるまのせいだし、普通にやれば私だって上手なのよ」 無い胸を張りながら飛鳥はチョコシェイクを飲み干す。 「よし、その意気じゃな。ほら、わたくしも手伝うから行ってこようぞ!」 「し、しかたないわね。別にあんたの言葉が嬉しかったわけじゃないんだからね!」 笑顔を浮かべるジュリエッタから手を差し伸べられると飛鳥はその手を取って立ち上がった。 パラソルの日陰から、輝くの日の下へ。 まだ、日は沈まないのだ‥‥。 ~二回戦開始~ 「ん~、砂に埋まりながらでもローアングルからみるというのもいいものだね」 「ハハハ、おぬしも中々通であるな」 首だけを砂浜の上から出しているルゼとガルバーは笑いながらラリーの様子を眺めている。 反省の色は見えない。 「ようし、そーれっ!」 「よっと、これくらいなら!」 優がぽーんと高くボールを飛ばすと、水炎が返した。 「こっちこっちー。えーいっ!」 水炎が上げたボールをリオンがじっくりと取れる範囲まで落ちてきたものをはじく。 「これくらいなら私でも‥‥」 「そうじゃぞ、狙いを定めていくのじゃ!」 ゆっくりと落ちてくるボールに身構える飛鳥にジュリエッタが声を出して応援をした。 「い、いちいちいわなくたってわかるわよっ! そ、それ!」 ぽーんと上手くトスされたボールは太陽を隠すほどに高くあがる。 「これぞ友情と愛情のツープラトンですね。みなさんのトスが優しいことも私には分かりますよ、八甲田さん」 八甲田さんは頷きだけで答えるが、どことなくその表情は喜んでいるようだった。 「よーし、俺もいくぞー。そーれっ!」 昼間の店も終えて手の空いたファーヴニールも混ざってトスリレーに参加する。 いつまで続くか、いつまでも続けるかとばかりにリレーは続いた。 「不埒なものもいなくなったようですからな、それっと」 アインスもファーヴニールから渡されたボールをぽんと返す。 「男はこっちくるなー、女子を見せろー。特にコレットはスカートだから‥‥」 「ハハハハ、おぬしも悪よのう」 「だまらっしゃい生首ども!」 ゲシゲシとルゼとガルバーの頭を蹴り飛ばした。 「ちょ、ちょっとくらい付き合ってやるんだからなっ! 別に、元々怖いわけじゃなかったんだから!」 飛鳥が二人を蹴っている間にカナンがファーヴニールからパスされたボールを上に上げる。 チームが分かれながらも楽しいラリーは日が暮れるまで続いたのだった。 ●一日の終り 「あはっ、つめたーい!」 波打ち際を歩くコレットは冷たさに思わず目を閉じる。 水平線に太陽が沈み、赤ともオレンジともいえる色合いに空と共に色づいていた。 「不思議な光景ですネ」 「星が丸いとこうなるんですよ。昔の人はテーブルみたいになっていて、あの先は奈落に落ちているとかいってましたけど‥‥本格的なチェンバーですね!」 「ナルホド、世界は広イのですネ」 いつからいたのかアルジャーノが呟くと竜が得意げに地学知識を披露する。 「やー、本当に楽しかったー! デュンさんの料理も美味しかったし」 「口にあったのなら幸いだな」 両手を広げて大の字に寝転び、優は満足そうに笑っていた。 「埋められもしたけど、楽しかったには楽しかったな。目の保養になったし、うんうん」 ルゼは今日の思い出を胸に閉まって頷く。 誰もかれも今日の一日を楽しんだようだ。 「黎子様もこれを機に体を鍛えてみてはいかがかな?」 掘り出されたガルバーはトロピカルプロテインジュースを飛鳥に差し出す。 「肉だるまのコーチだけは嫌よ。体がいくつあっても足りやしない‥‥」 疲れた顔でジュースを飲みつつ飛鳥はため息をもらすのだった。
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