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<オープニング>
カンカン照りの真夏日に。 一般的な日本家屋の庭園にて。 「わしゃ、もう一度見てみたいんじゃよ」 小さいが力のこもった声で、ロッキングチェアの老人はつぶやいた。その目は、遠いどこかに向けられている。 老人の目はいったい何を映しているのだろう。迫り来る死への恐れか、はたまた過去の栄光か。 どちらにしろ、若者にはとうてい理解できない代物だ。 だから佐野原冬季(さのはら とうき)は単刀直入に仕事の話を切り出した。 「要はこの銀幕市でかくし芸大会を開催すればよいのですね?」 老人は無言でうなずいた。 あまりに極端な動作だったので、ポックリ逝ってしまったのではないかと冬季は疑ったが、ゆっくりと首が元に戻ったところを見ると杞憂だったようだ。 「わかりました。それで、報酬の方は……」 冬季がポケットから一枚の紙切れを取り出す。 「これくらいでどうでしょう? もちろん必要経費は別途ご請求させていただきます」 老人は面倒くさそうな一瞥を紙片に投げかけ、「夢に値段は付けられん。好きに請求するがいい」とすぐにまた遠くを見つめた。日差しが眩しいのか目を細めている。 冬季の整った顔に会心の笑みが浮かんだ。 この手の老人は扱いやすい。自分が稼いだ金を他人に残そうとも、あの世へ持っていけるとも考えていないタイプだ。 もう一押しできる。そう考え、冬季が続けて提案する。 「かくし芸大会を成功させるためには、参加者を集めなければなりません。それにはそれ相応の対価というものが必要でしょう」 「賞品か?」 「ええ」 「好きにしろ」 小躍りしたい気持ちを抑えるため、冬季はひとつ咳払いをした。 「で、参加人数の上限は……」 「多いほうがいいに決まっておる」 遠くを見たまま、老人がロッキングチェアから身を乗り出した。表情も変わる。真剣そのものに。その目つきは、獲物を狙う猛禽類のものだ。 「わしゃ、もう一度見たいんじゃよ。真の勝利者が誕生する瞬間をな」 「わかりました」 老人の目が映しているのは過去の栄光だったようだ。 ふと、冬季があることに気づいてつぶやいた。 「このオープニング、ロードレースのときとほとんど同じですね」 「そうじゃな。なにせコピペじゃからの」 老人が楽しそうに笑う。 なにが楽しいのだろうか。手抜きがバレて作者は冷や汗ものだ。 「では、オチも同じですか?」 いらんことを言わんでいい。 「じゃろうな」 いらんことを答えんでいい。 「同じオチなら省略してしまいましょうか?」 え? 「メンドクサイからの」 おいおい…… 「では、オープニングのオチは『銀幕ロードレース2007』を参照ということで。では、さっそく準備に入りますので。失礼いたします」 「ふむ、頼んだぞ」 かくして、あやしい老人の発案とあやしい計画者の立案で、銀幕かくし芸大会が開催されるはこびとなった。
種別名 | パーティシナリオ |
管理番号 | 655 |
クリエイター | 西向く侍(wref9746) |
クリエイターコメント | というわけで(?)、西向く侍がお贈りする初のパーティーシナリオです。
昨年、銀幕ロードレースを開催した(暇な)老人が、またもや微妙なイベントを企画したようです。 銀幕かくし芸大会2008――新春かくし芸大会を思い出していただければ、それで充分です。PCのみなさんには、紅組・白組に分かれて、なにかしらの芸を披露していただきます。 プレゼンターは、ロードレースのときと同じく佐野原冬季です。審査員は、老人ひとりとなります。
以下、用量・用法上の注意をご確認のうえ、ふるってご参加ください。
▽本シナリオはギャグです。どれほど真面目にかくし芸を披露しても、必ずオチがつきます。あらかじめご了承ください。
▽また、ライターの性格上、PCのキャラが崩壊するおそれがあります。「うちの子は、たとえシャンプーハットアフロを頭にかぶせられることになっても、ぜんっぜんOK!」というくらいの剛毅な気概をお持ちの参加者をお待ちしております。
▽紅組・白組の組み分けですが、こちらでランダムに決めさせていただきます。
▽プレイングに関しましては、「○○の格好で××をやる」とかくし芸として実行する内容を書くだけでもかまいませんし、「○○をやって、最後には××になってしまう」とオチまで記入していただいてもかまいません。 前者の場合は、こちらでオチを考えます。 また、プレイングを合わせて、コンビやグループでかくし芸を披露することも可能です。その旨をプレイングに明記してください。
▽最後に、あまりにもギャグとはかけ離れたプレイングの場合、申し訳ありませんがボツになる可能性もあります。なるべくなら、そうならないように善処しますが。 |
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