オープニング

「シャドウ・メモリが捕虜となったか……あれの性格からして、何かしら引っかき回すだろうが、しかし、世界図書館か……あれと関わりあってから、明らかに私たちの中の数名は変わった」
 彼は己の美しい白で統一された庭園を一瞥したあと、ため息をついた。
「二度と世界園丁には関わりたくなかったが……もし、この愚かな連鎖を断ち切れる可能性があるのならば、賭けてみよう」

  ★ ★ ★

 壱番世界。
 コンダクターのラッキーとハツカネズミの姿をしたツーリストの金星は一緒に小さな公園に訪れた。
 ここでラッキーの友人であるコンダクターの遠山は旅団の罠にかかって死んだ。ラッキー自身も相当の深手を負い、傷が癒えるまでに時間がかかった。
「今日はありがとね。金星ちゃん。本当は一人でいく予定だったんだけど」
「しかたないですわ! 怪我人を一人にできませんもの……あら、花が、供えられてる」
 ラッキーの肩にいた金星は、公園の隅に添えられている白い花を見て眼を瞬かせる。ラッキーも不思議そうに眼を眇め、そこにいる人物に気がついた。
 クリーム色の紳士服に帽子、黒いステッキを携えた紳士――口元には優しげな笑みが、しかし、あれは
「猫?」
 ラッキーは混乱した。
 その紳士は銀の毛で覆われ、ぴんと尖った耳も持っていた。否、あれは口元まで覆い隠した猫マスクのせいか?
見えた口元は人のそれであったのだし……ただ、はっきりと顔が見えなかったが、壱番世界に、否、日本にいるべき人物ではないことだけは明白だ。
「君たちは、世界図書館の者だね?」
 落ちついた声で彼は尋ねた。
「……誰だ」
「ここで待っていたかいがあったよ」
 りぃん。
 鈴の音。
「? なにをしたっ!」
 一見、なにも起こっていないにうに思えたが……違和感を覚えてラッキーは周囲を見た。
「風がない? 人も、先までの音が……ここは?」
「時間を切りとり、さらには私の作った空間に移させてもらった。
 ここでの一時間は本来の世界での時間にすれば一分と経たない……こうでもしないとあいつらの目を誤魔化すことはできないからね」
「あいつら?」
「世界園丁のことだ。……私は、世界樹旅団に属する。……名は……みな、私のことを銀猫伯爵と呼んでいる」
「世界樹旅団!」
 ラッキーと金星が緊張するのに銀猫伯爵は優雅だった。
「今回、私が接近したのは君たちと戦うためではない……シャドウ・メモリの身柄引取の提案、そして私の個人な要件のためだ」
「あいつがなにをしたのかわかってるのか? アンタ」
「大体の報告は聞いている。……確かに彼がしたことは許されるものではない。処刑されたのならば、それもいたしかたないことだ。だが、まだ生きているのであれば、会わせてくれないか? ……もし君たちが彼を許せないというならば、それ相応の罰を下す、もしくは殺すために手も貸そう」
「どうやって対面を? あなたがターミナルに来ると?」
「それが君たちの要求というならば、受け入れても構わないが……断っておくが、私は捕虜としての価値はない。ずいぶんと昔に一度世界園丁とトラブルを起こして隠居という名の幽閉にある身だ。今の世界樹についての情報はほとんどもっていない。
 なにより、これからの目的のためにも君たちとの関係が知られる危険はあまりおかしたくないのが本音だ」
 銀猫伯爵は首を曲げた。
「私が個人的にここに来たのは君たち、図書館側のことが知りたいからだ。
 私は……世界樹を憎んでいる。そして、二度と関わらない方法として隠居した。だが君たちのことを聞き、仲間たちの心境に変化が見て賭けをしようと考えたんだ」
銀猫伯爵の深い緑色の瞳が輝いた。
「ただ奪うだけだった者が守る者を見て動揺し、失敗し、考えはじめた。それに……フフッ、敵として戦いながらいきなり運動会に誘われて驚いたり、そのあとイベントをしたりして笑う者もいた」
 そこで銀色の尻尾が揺れた。
 この出会いがもし偶然という名の必然ならば、何かが変わるのだろう。私たちか、君たちか……風が囁くように彼は告げる。
「身勝手な願いだが、君たちならば世界樹の呪いから逃れたい者を救えるだろう。私は逃げたい者を君たちのところへと送ることが出来ればと考えている。シャドウのように心から破壊殺戮を好む者がいることは確かだが、迷う者も、仕方な従う者もいる。ハンス君のように……彼は君らの元でどうしている? それも聞かせてくれないか?
 ……君たちの考え、生き方、ターミナルがどんなところか……愚かな提案をしよう。君たちのことを私は知りたい」
 銀猫伯爵は持っていたステッキを差し出した。
「私の武器は、この【鈍姫】だけだ。この件に関して本気である証明と信頼のためにも君たちに預けよう」
銀猫伯爵はステッキを渡したあと口元に笑みを浮かべた。
「この提案をどう判断するかの話しあいの時間が必要だろうから一週間後、再びここで私は待っている。【鈍姫】を持ってきてくれれば私が作った空間のなかに招くことが出来るので忘れないように持ってきてくれ」
 ただ、と銀猫伯爵は付けくわえた。
「面会は数名の代表者を選抜してほしい。……大人数で動けばそれだけあいつ等に見つかる可能性もあるからね。では、よい返事を期待しているよ」

ご案内

インヤンガイで捕獲に成功した世界樹旅団の一員「シャドウ・メモリ」。ホワイトタワーに収監し、尋問でいくつか情報は引き出したものの相手は不敵な態度を崩しませんでした。

そんな「シャドウ・メモリ」を引き取りたい、と申し出てきた旅団のツーリストがいます。その名は「銀猫伯爵」。彼によれば、旅団の中には旅団から離反を望んでいるものもいるというのですが……?

銀猫伯爵の申し出を受け入れ、彼の話を聞くべきかどうか、意見が募られることになりました。

※この投票はどなたでも参加できます。関連イベント・シナリオへの参加の有無は問いません。ただし、結果にきわめて重大な不審がある場合(例:登録されたばかりのキャラクターだけで大量の票が投入されるなど)は結果が調整されることがあります。

※三日月 灰人(cata9804)さん・ヌマブチ(cwem1401)さんの投票は無効とします。

■参考情報
→【世界樹旅団】シャドウ・メモリに尋問
→館報号外:『世界樹旅団』との遭遇!

ご意見募集!

■選択肢
【1】銀猫伯爵との会談に応じ、シャドウを引き渡す
銀猫伯爵の提案通り、会談の場を持ち、シャドウは引渡します。

【2】銀猫伯爵との会談に応じるが、シャドウは引き渡さない
銀猫伯爵と会談の場を持ちますが、シャドウは引渡しません(ターミナルに留置します)。この場合、銀猫伯爵が会談を中止する可能性もあるかもしれません。

【3】シャドウは引き渡すが、銀猫伯爵との会談には応じない
世界樹旅団を信用することはできないと考え、会談には応じません。ですがシャドウを収監し続けるのも手間なので、引き渡して厄介払いをします。

【4】銀猫伯爵を捕獲する
この申し出が世界樹旅団の罠である可能性があります。会談に応じると見せかけて銀猫伯爵を捕獲します。

【5】銀猫伯爵との会談に応じない
銀猫伯爵との会談には応じず、無視します。シャドウはターミナルに留置します。

■結果

投票結果は次のようになりました。

銀猫伯爵との会談に応じ、シャドウを引き渡す45
銀猫伯爵との会談に応じるが、シャドウは引き渡さない28
シャドウは引き渡すが、銀猫伯爵との会談には応じない
銀猫伯爵を捕獲する
銀猫伯爵との会談に応じない

そして、シャドウを引き渡すことを前提に、銀猫伯爵との会談の場が設けられることになったのです。

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螺旋特急ロストレイル

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