オープニング

 空――異郷の、空。
 思えば、なんという遠くまできたのだろう。

 世界の摂理を離れ、ターミナルに連れてゆかれ、ロストナンバーとしての暮らしがはじまって。
 いかなる運命の変転によってか、世界樹旅団のもとに渡り、そして……。

(逃げるさ。俺は生き延びる)

 そう言い捨てて、炎に包まれるナラゴニアから飛び立ったあの日のことを、グレイズ・トッドは回想した。

 グレイズが駆るナレンシフは、ロストレイルとワーム群、ナレンシフ群が激しく交戦する0世界の空をかいくぐり、ディラックの空へと。
 目指す先は壱番世界だ。
 園丁たちからなかば脅すようにして入手した世界樹の苗を積んでいる。
 なんとしても……どうしてでも生き延びなくては。

 どれくらい、虚無の空間を飛行したのか。
 ふいに、飛行中のナレンシフがその全機能を停止した。グレイズを乗せたまま、銀の円盤は虚無へ吸い込まれるように落下してゆく――。

 意識を取り戻すまで、どれくらいの時が経っていたのかはわからなかった。
 ナレンシフのハッチを開けると、湿った風が頬をなで、潮の匂いを感じた。どこかの砂浜に、ナレンシフは不時着したようだった。
 どこをどうしても、ナレンシフは動き出さなかった。それどころか、ウッドパッドも機能を停止している。
 しかし虎の子の世界樹の苗には変化がなかった。

 「訪問者」は、その夜にやってきた。

 にゃあう。猫の声に顔をあげ、グレイズは闇を見つめた。
 猫たちはみな黒く、なかば透けているため、目を凝らさねば輪郭をとらえられない。かろうじて、眼の輝きだけが見てとれた。
 無数の猫たちを随身のようにともなって、しずしずと、老婦人が姿をあらわす。

「会うのは初めてでしょうか、グレイズ・トッド」
「誰だ」
「わたくしはダイアナ・ベイフルック」
「……」
「端的に言いましょう。取引をしませんか」

 老婦人は微笑んだ。
「世界樹旅団は瓦解しました。あなたは0世界へは戻れないでしょう。いずれは図書館の追手がきますよ。……それはわたくしも同じこと。けれどあなたは『世界樹の苗』を持っていますね。わたくしの魔術が、イグシストの気配をとらえていますから。そしてわたくしは、『チャイ=ブレの細胞』を持っているのですよ」
 グレイズは無言だ。
「チャイ=ブレは0世界でまた眠りについてしまったようです。そこで、万一のために用意しておいたこの『細胞』を育てあげ、チャイ=ブレそのものとは言わないまでも、それに近いものを生み出すのです。ただ、それには何百年かかることか。ですが、『世界樹の苗』があれば、加速度的にそれを早めることができます」
「……なんのために」
「この壱番世界を捧げるために、ですよ! 第2のチャイ=ブレがそれを成し遂げなくとも、壱番世界が食われはじめればチャイ=ブレ本体は必ず目覚めるから同じこと。壱番世界がチャイ=ブレに吸収され、新たな0世界となる。そして次なる数千年は、壱番世界の真なる王である方が治めます。……その『苗』を渡してくれれば、壱番世界が滅びたあと、あなたには望みのものを与えましょう。好きな世界を支配するなり、なんなりと。もといた世界を探したければ、全力で協力しますよ」
「もし断ったら?」
「『苗』は必要です。平和裏には終わりません」

 ふん、とグレイズは笑った。
 夜の海の、波が寄せ返す音――。ダイアナの申し出に、グレイズは答を返した。

ご案内

大変、お待たせいたしました。グレイズ・トッドさんのその後について、再び運命の分岐点を迎えたようです。

マキシマム・トレインウォーの直後、グレイズさんは『世界樹の苗』を持ち、壱番世界にたどりつきました。そこへダイアナ・ベイフルックが接触してきます。

・彼女に苗を渡すかどうか
・そして、彼女に協力するかどうか

によって、グレイズさんのその後が変わります。
まずは、決断をお聞かせ下さい。

●苗を渡し、協力する場合
その後、グレイズさんはダイアナと行動をともにすることになります。彼女の陰謀は、壱番世界においてその後ひと月をかけて進行していきます。

●苗を渡すが、協力はしない場合
ダイアナは苗を持って姿を消します。陰謀は進行しますが、それはグレイズさんとは関係ないことです。この選択をした場合、その後のグレイズさんの行動をお聞かせ下さい。

●苗を渡さない
苗を渡さなければ、(たとえ協力の意志は見せたとしても)ダイアナは強行手段に出ます。その後「1か月に渡る、壱番世界の逃避行」がはじまります。この選択をした場合、「1か月後にグレイズさんがいる場所」(壱番世界のどこかです)をお聞かせ下さい。


!注意!
こちらは下記のみなさんが遭遇したパーソナルイベントです。

●パーソナルイベントとは?
シナリオやイベント掲示板内で、「特定の条件にかなった場合」、そのキャラクターおよび周辺に発生することがある特別な状況です。パーソナルイベント下での行動が、新たな展開のきっかけになるかもしれません。もちろん、誰にも知られることなく、ひっそりと日常や他の冒険に埋もれてゆくことも……。
※このパーソナルイベントの参加者
・グレイズ・トッド(ched8919)
※このパーソナルイベントの発生条件
イベント『マキシマム・トレインウォー』の結果による

このパーソナルイベントにおけるグレイズさんの選択およびプレイングをもとに、なんらかのシナリオまたはイベントが準備されます。

なお、期限までにプレイングがなかった場合、「【3】を選択し、自分の生命を守ることを優先的に、状況に応じてできる限りの行動をした」ものとします。

■参加方法
プレイングの受付は終了しました。

結果

→→→異郷にて~承前

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螺旋特急ロストレイル

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