「モフトピアで水泳大会が催されます」 はい? なんですかそれ? 集まったロストナンバー達の訝しげな顔に、『失意の世界司書』鳴海は、慌てて『導きの書』を確認し、ほっと溜め息をついた。「ええ、間違いありません、モフトピアで水泳大会が催されます」「ブルーインブルーではなくて?」「壱番世界ではなくて?」 しつこく確認されて、もう一度『導きの書』を確認する。「えーとこれはモフトピア、はい、モフトピアですね。で、内容は『もふもふの雲の中をどんどん潜って真っ赤な宝石を探すこと』です。探したものが勝者になるというお遊びですね」「……それは水泳大会じゃなくて、宝探しって言うんだろ」「いや、水泳大会っていうより、潜水、いやいや潜雲大会って言うんじゃ」「えーとえーと…すいませんが話が進まないので進めさせて頂きます」 鳴海は半泣きになりながら、ロストナンバー達の突っ込みを退けた。「とにかく、モフトピアで『水泳大会』が催されます。個人参加、飛び入り大歓迎で、勝利は決められた雲のプールの中から赤い宝石を見つけ出してくることで決まります。ちなみに……」 鳴海は『導きの書』を読み直し、ぐ、と詰まった顔になり、そろそろと目を上げた。「そのプールには雲の水流を放出してくる『雲どらごん』だの、大口で飲み込んでくる『雲くじら』だの、小さくて群れになって体を突き回してくすぐってくる『雲ピラニア』などが放されていますが、邪魔をするだけで命に危険はありません。思い切り殴ったり蹴ったりすれば、穴が開いたり散らばったりするそうです、はい」 ただ、すぐに元に戻って襲ってくるともありますね、ええ。「いや、だからそれは『水泳大会』っていうより『秘境探検』じゃ」「むしろ、『障害物競走』っていうべきじゃ」「あのですね!」 またもや続く反論に、鳴海は涙の溜まった目できっと顔を上げた。「『水泳大会』ってあるんだから『水泳大会』なんです!」 あ、泣いちゃった。 微妙な気分で見守るロストナンバー達をぐるりと見回し、鳴海はもう一度叫んだ。「モフトピアで『水泳大会』があります! 参加して楽しんで、もとい、情報を集めて下さる方、お願いします!!」 ぺこり、と頭を下げた鳴海に、仕方ないなあもう、この半人前新人世界司書は、と諦めまじりで数人が近づいていった。
「さて、お集りのみなさま!」 モフトピアの片隅、近接して並ぶ島の間にもこもこもふもふと集まった真っ白な雲を囲むように集まった参加者に、一人のくまさんアニモフが意気揚々と両手を振り上げる。その手には、きらきら輝く掌ほどの美しい赤い宝石が光を跳ねている。 「『水泳大会』が始まります! これを今からこのプールに投げ入れるので、下から抜け落ちる前に見事拾ってきて下さい!」 わああ、と集まったアニモフ達が歓声を上げる。近くに居たものの話では前々回は誰も落ちていく宝石に追いつけず、ついに下の方から抜け落ちてどこかにいってしまったらしい。 「どうなってるんだろうな、これは」 デュネイオリスは『雲のプール』を覗き込む。 「薄い網のようなものででも雲を集めているのか?」 それにしても、長さも幅も十分にある、これなら久しぶりに竜の姿になってみるのも楽しそうだ。 「しかしまあ、本当にモフトピアはなんでもありだな」 「縦長のプール、みたいですよね」 コレットが首を傾げた。 「これなら本当に『水泳大会』というよりは、『潜水大会』の方がよさそう」 「ふふん、モフトピアでそんな細かいこと考えてちゃダメだよっ☆」 コレットの側でアルド・ヴェルクアベルが丁寧に体を伸ばして準備運動にいそしみながらにやりと笑う。 「水泳大会ってなってるから水泳大会なんだっ!」 それにさ、せっかく0世界のビーチでちょっと泳げるようになったのに「水泳大会」じゃなきゃ、泳げるようになったコト披露できないじゃん! 口を尖らせて訴えると、さっきからほれぼれとアルドの毛並みを眺めていたシーアールシー ゼロが、きょとんとする。 「でもこれは雲であって水ではないのではないでしょうか」 それに、と美少女は生真面目に続ける。 「ゼロは聞いたことがあるのです。雲の中には黄色と黒のパンツの人たちが住んでいると。電気の力を支配して、お皿のように平べったい乗り物を操り、畑に綺麗で不思議な模様を描くそうなのです」 「どこかで聞いた話だが」 デュネイオリスは苦笑した。 「それに、雲の中のお城には、空飛ぶ円盤を操る雷様たちを従える魔王大佐がいて、世界征服を目指していると聞いています。大佐は」 ゼロがなおも話を続けようとするのに、周囲のアニモフ達が両手を振り上げながら声を上げた。 「いくよ〜! いくよ〜!」 「大変、始まっちゃう!」 コレットが慌てて服装を確かめ、これでいけそう、と頷くと、アルドもぱたぱたと尻尾を動かして、 「雲の中って息できるのかな?」 とやや緊張気味にプールを覗き込む。 「出来ないならいつもの『水中呼吸』の魔法を自分にかけとくんだけど」 「いえ、でもこれは雲なので。そもそも水に入らないのでは」 「それ言っちゃダメ!」 ゼロの眼前にびしっと肉球の指を突きつけると、ゼロの目がその肉球の指先にひょいと寄った。 「あの」 「何っ」 今にも宝石をプールに投げ入れようとするアニモフの動きを横目に、ゼロは 「えっと…、毛皮に触ってもいいですか?」 「にゃっ?」 「たぶん、きちんとした報告書が、鳴海さんの精神の安寧に貢献するんだと思うんです。ですからまず、アルドさんの毛皮のさわり心地から情報収集を始めてみようかと」 真剣そのもののゼロの返答に、アルドがそれは違うんじゃないかと突っ込み返そうとしたとたん、 「そぉれぇ!」 「わあっ」 アニモフの手を離れて一旦空中高く投げ上げられた宝石は、輝きながら雲のプールに落ちていく。同時にきゃあきゃあわあわあ言いながら、周囲で見守っていたアニモフ達が次々とプールに飛び込んでいった。 「始まった! 後でね!」 アルドが宝石が落ちたあたりを見定めて一気に雲の中へ飛び込む。 「えいっ!」 コレットも勇ましい掛け声をかけてひらひらとワンピースの裾を翻らせながらプールへ体を踊らせると、誘われるようにゼロもプールへ入り込む。 「いくか」 デュネイオリスは巨躯をふわりと翻らせて飛び込み、その姿はすぐに波打つようなしなやかさで竜に変化した。 「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ」 アルドは最初こそ息を詰めていたが、そのうち呼吸は普通にできるとわかって、後はひたすら泳ぐのに専念している。平泳ぎで潜り込んでいたのを、途中で必死のバタ足に変えたのは、さっきまで見えていた赤い宝石のきらめきがどんどん遠ざかっていくからだ。 「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃっ」 雲の感触はもふもふふわふわと柔らかくて、かき分けるのに全く苦労がないばかりか、適度に体を支えてもくれるので一気に下へ落ち込んでいく恐怖はないのだが。 「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃっっ」 とにかく視界が悪い。半透明のゼリーの中を進んでいるようなものだ。視界の端を時々過る赤いきらめきを必死に追いかけて、右へ左へ、上へ下へと泳ぎ回る。そのアルドに迫る無数の影が。 「にゃにゃにゃ? にゃにゃにゃにゃにゃっっっっ!」 雲ピラニアがアルド目指して一気に寄ってきた。もったりまったり泳ぐ周囲のアニモフ達の中でばたばた激しく動き回るアルドが目立ったらしい。 「にゃにゃにゃにゃぎゃにぎゃはにゃはははっっ!」 集まったピラニア達はアルドの毛皮に興味津々、そこら中から突き回してくる。噛みついているつもりなのだろうが、元が雲なのでもふもふくにゅくにゅ感触で突かれるので、アルドはくすぐったさに暴れ回る。爪で思いっきり引っ掻いて散らばらせても、すぐに元に戻って次々と襲ってくる。 「にゃはにゃはにゃははははっっっっ!」 ダメだ、このままでは身動き取れない。既に宝石のきらめきは全く見えなくなっている。 「ええいっっ!」 アルドの瞳が煌めいた。霧魔法「闇の霧」で自分を包む雲ピラニアと、追い抜かしていくアニモフ達を一気に包む。黒い霧が白い雲プールに見る見る広がって。 「にゃぎゃぎゃぎゃっっ!」 逆効果だったかも!! より多くの雲ピラニアが集まってきて、アルドは必死に逃げ始めた。 「ふむ。これはこれで悪くない」 デュネイオリスは緩やかに密度の高い雲の中をゆったりうねって泳いでいく。 鱗の輝きを宝石と見間違えたのか、時々周囲にアニモフ達が急いで寄ってきては驚いたように離れ、時には背中あたりでもったり横になって休んでみたり、一緒に泳いでみたりと楽しんでいるようだ。 「雲であって水ではないから、顔が埋まっても呼吸は出来るのか……」 ひさしぶりにのんびり伸ばした全身をくねらせながら、ぐるり、と身を翻したり、力を抜いて漂ってみたり。雲間を抜けてくる穏やかな光、体に触れる柔らかで甘やかな感触に、つい悪戯心が動く。 「…ふむ」 雲をそっとひとかじりしてみた。うまければ、自分が経営している喫茶店の洋菓子の材料になるかもしれない。 「……うーむ」 微かに甘いような、すぐに消えてしまう淡い味わいだ。口当たりは悪くないが、いささか実体感がないので、工夫が必要かもしれない。ムース系統のかわりになるかとも考えたが。 「…取り出せるかどうかが問題だがな」 考え込んでいると、視界の端で雲のプールに真っ黒な霧が突然広がった。そして、その黒い霧から逃れるように、きらきら輝く赤い光がこちらに向かって飛んでくる。 白いムースの中を光る軌跡を描きながら流れていく紅のベリーソース。その彼方にしっとりと濡れるような輝きの黒いホイップ。 「チョコレートケーキベースもありだな」 デュネイオリスが大きく旋回して、流れていく宝石を掴みとろうとしたとたん、視界をいきなり真っ白な塊が遮った。 ば…っくん。 いつの間に近づいていたのか、雲くじらの腹に呑み込まれたらしいと気づいたのは、さっきとは数段違う雲密度と、それごと運ばれて行く感覚からくる。 「私は少々腹に悪いぞ」 苦笑しながら体を軽く捻って、進行方向と直角に体を伸ばして突き破る。 ばあっと散った雲くじらは巨大な布団のように広がって、デュネイオリスはまたまったりとその上を漂い始めた。 「きゃっ」 コレットはふいに視界を覆った黒い霧に戸惑って、慌てて目を擦る。 「何? どうしたの?」 今の今まで周囲のアニモフ達と一緒に、少し先を流れ落ちていく宝石を追いかけていたのに、広がってきた黒い霧に巻き込まれてしまった。 「これは何?」 アニモフ達は知らない、と首を振る。ひょっとすると、誰かが魔法を使ったのかも、と答えたアニモフに、アルドかもしれない、と思いついた。 「何かに襲われたのかしら、雲くじらさんとか、雲ピラニアさんとか」 残念ながら、コレットは今のところ、雲くじらにも雲ピラニアにも会えていない。もし、雲くじらに会えたら、ごっくんと呑み込んでもらってお腹の中を探検しようと思ってたのに、とがっかりもしているが、仲間の誰かが呑み込まれたかもしれない。 「後でお話聞いてみようっと」 いろんながっかりが人生にはあるけれど、それを小さな楽しみに変えたり、その中から喜びを見つけたりするのがコレットだ。 今も宝石にはなかなか辿りつけないけれど、もったりまったりした雲の中を泳ぎながら、時に疲れた手足を休めてふんわり浮かびながら、アニモフ達とおしゃべりしている。 宝石探しに余念がないアニモフばかりでもないらしく、コレットの膝に乗り、肩に寄りかかったりして、コレットと居ることを楽しむアニモフも多い。 「宝石がなくなったことがあったんでしょう? 新しいのはどうするの?」 あっちの島からもらうんです、と一人のアニモフがぽふぽふの手を差し上げた。 「あっちの島にはそういうものがいっぱい埋まっているから」 「あっちの島の人はいらないの?」 「いっぱいありすぎて、あってもなくても同じだから」 「じゃあ、放り込むのは何でもいいの?」 それならちょっとつまらないな、そう思ったコレットに、アニモフ達はくすぐったそうにお互いを眺めた。 「最後にわかるから」 「最後に?」 「きらきらうーんと光るから」 「きらきらうーんと光る?」 それ以上はアニモフ達にもうまく言えないようだ。 「どっちにしても、もう少しこの霧が晴れてくれないと探せないわよね」 困ったなあ、と顔を上げたコレットはびっくりした。黒い霧を突き破るようにして、何か白い大きなものがうねうねとこちらへやってくる。 「あれは」 「きゃああああ」 回りのアニモフがびっくりしたようにコレットにくっついたり抱きついたり背後に隠れたりする。 「雲どらごんさん!」 コレットが嬉しくて思わず叫ぶと、聞こえたのだろうか、相手は少し離れたところで大きく口を開いた。コレットとアニモフめがけて、がぶう、と雲の奔流を吐き出す。 「わ、あっ」 ぐいん、ふわんっ! 押し寄せた雲の流れにコレットはアニモフもろとも押し上げられた。そのままぐいぐいと雲の中を押し流されて、もう一度高く高く吹き上げられる。 「きゃあっ」 ざっぱーん、と水音がしたほど、コレットは雲プールから高くに放り出された。しがみついているアニモフをしっかり抱き締めると、再び雲プールに落ちていくが、 「あら?」 さっき見たより随分雲が散らばり途切れて薄くなっている。マシュマロぐらいの濃密さが、今はホイップから淡雪のようだ。 その中を、今度ははっきりと、赤い宝石が輝きながらどんどん落ち込んでいくのが見えた。まばらになった雲が、赤い宝石が透かした光を吸い込んで、夕焼けのようにサーモンピンクに、オレンジに、ピンクに、薄紫にと、雲プールを色とりどりに染め上げていく。 「綺麗……」 ああ、これがきらきらうーんと光る、なのね。 虹色の雲の中を柔らかなアニモフ達に包まれながら、コレットは気持ちよく流されてる。 「さて、これで雲、雲どらごん、雲ピラニア、雲くじら、アニモフまでは網羅しました」 ゼロは雲の中を相手を求めて泳ぎながら、頷く。 魔王大佐は見つからなかったけれど、と首を傾げつつも、別の場所に遠征中ということもあるかもしれない、と結論する。 「後はアルドさんですね」 ほ、と小さく溜め息をついて、目を閉じそれぞれの感触を思い返す。 雲自体はまったり系で、なかなか存在感がある。手で押しのけ、足で弾いてもなかなか遠ざからず、泳ぎ続けるのも体力が必要だ。肌にまとわる感触は滑らかだった。 さっきまで一緒に居たアニモフに聞くところによると、こんなふうにまったりした雲なので、時々こうして島の間に溜まってしまうことがあるそうだ。あまり溜まり過ぎてしまうと、粘度も強度も増すので、時々散らしてやる必要があるらしい。そこで雲くじらや雲どらごんや雲ピラニアを放すらしいが、それでもなお溜まってしまう場合は、周囲の島から寄り集まって「雲まき散らし」をすることになっていて、それがいつしか「水泳大会」と変わったようだ。 「これで鳴海さんの精神もより安定するのではないでしょうか」 雲どらごんは気難しそうで、ゼロが近づくと何度も奔流を吹き出して、ゼロを遠くへ押し流した。とにかく触感は確かめなくてはと、隙を狙って近づいて、触れた鱗は指先で霧散してしまうほど柔らかく、ちょっと驚いた。 「奔流に還元されてしまうのかもしれませんね」 雲くじらは側に寄るとすぐに呑み込んでくれて、ぐるんぐるんとお腹の奥へ吸い込まれていったが、どうやら一緒に来たデュネイオリスも後から呑み込まれたようで、巨大な竜の姿を一ひねりして破裂させてしまった。花が開くように平らになってしまった雲くじらは、それでもしばらくすると端から寄り集まりだしたので、何となくほっとはしたけれど。 「雲ピラニアは残念でした」 ゼロにはどうやら食欲がわかなかったらしい。近づきはするけれど、囲むだけで触れようとすると一気に逃げる。捕まえた数匹は握った瞬間に消えて、すぐに離れたところに集団で現れる。 「もう少し触れてみたかったんですが」 指先を握りしめては開き、まあ、アニモフをぎゅっともできたし、ぎゅっともしてくれたので、と自分に言い聞かせてみた。 「ところで、アルドさんはどこに?」 ゼロが首を傾げた矢先。 「あ」 彼方に、赤い宝石と、それを追う一匹の猫の姿を見た。 「き、きれいだ、な…」 雲ピラニアに奮闘し、何とかそれでも赤い宝石を再発見したアルドは、今虹色に輝く雲の中をひたすら泳ぎ続けている。 手足はかなりへとへとで、水中でもないのに息苦しいし、それでも一かきごとにぐんぐんと進む感触は、ビーチで覚えた水泳の楽しさを思い出させる。水がずっと苦手だったけれど、泳げるようになってよかった、と今は思う。 「泳げなきゃ、ここへも来なかったし、こんな綺麗な光景も見なかった」 元の世界から離れて、寂しくないと言えば嘘になるけど、それでもこうして、いろいろな世界に行け、いろいろな力や経験を獲得する、その自分の体に満ちていく力の感覚は「吸血」の感覚と似ているかもしれない。 視界の彼方にシーアールシーの姿がちらりと見えた。不思議な感じの人、セクタンもいないし、壱番世界の人じゃない。毛皮を触らせてくれと言ったけど、どう答えよう? その向こうに竜の姿のデュネイオリス。友達がお世話になったみたいだ。喫茶店をしていると言うから、今度お店にお菓子とか食べに行っていいか聞いてみよう。 その横の方にはコレットが浮かんでいる。何度か会ってるし、友達の妹分でもある。綺麗な金髪を見ると気持ちが和む。友達がいつも心配かけてるから、これが終わったら謝ろう。 どんどん潜る、ぐんぐん潜る。 出会った人や出来事や、それら全ての思い出の中を一緒に潜り続ける。 伸ばした指先に赤い宝石がもう少しで触れる。 さっきまで一緒に追いかけていたアニモフも、今はもうアルドについてこれないみたいだ。 ああ、気持ちいい。 こういうのをどういうんだろう、一仕事終えた爽快感? たくさんの出会いが、確かに自分の力になったと実感する、そうこれは『達成感』。 「捕まえた!」 宝石を握った瞬間、鮮やかに煌めいた光に自分の成長を確信する。 「やったーーあああ!」 躍り上がって喜ぶと、次々とアニモフ達が寄ってきて、今度はアルドを上へ押し上げていってくれる。 やりとげた。成果はしっかり、ほらこの手に。 薄くなった雲の水面はもうすぐだ。 いつか自分が属する世界、そこがどこであろうと、そここそ本来自分が居る場所だったのだと信じて、こんなふうに意気揚々、凱旋するように歩いていきたい。 「ただいま!」 水上に出て、歓声の中、アルドは宝石を突き上げ、誇らしく叫んだ。
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