★ 銀幕市タウンミーティング ★
イラスト/キャラクター:モロクっち 背景:ミズタニ


<オープニング>

「あの、困ります、勝手に――、あのっ!」
 職員の制止をふりきり、男は勝手に市長の執務室へとずかずか入ってきた。
 市長はちょうどマルパスとの会談――かれらは定期的にそうして情報交換を行い、ムービースターたちが暮らす場所としての市のありかたを協議している――を行っていたところであった。
「……貴方は?」
 市長は、その男へ視線を向けた。
 マルパスは、黙ってはいたが、ソファから立ち上がり、なかば無意識に、市長をかばえる位置に立った。
「お初にお目にかかるかな。我輩は東栄三郎というものだ」
 白衣を着た、老人である。
 だがそれ以前に、装着された奇妙なゴーグルやら何やらが、えもいわれぬ異常な雰囲気を醸し出していた。
「我輩が所長を務めるアズマ超物理研究所は、昨今の銀幕市の状況に非常に関心を持っている」
「……」
「ついては、わが研究所の総力を決して、この地域に起こった異常現象について研究を行いたい」
「あの……」
 勝手に入って来て、勝手な演説をはじめた不審人物に、市長はどう言葉をかけてよいか迷ったようだ。その迷いをどう受け取ってか、
「返事はすぐにとは言わん。ここに要点をまとめたので、しばし時間をやろう。もっとも、市のことを思うなら、われわれの頭脳に頼るのが得策だとは思うがな。なにせ、我輩の予測ではこのままでは……」
 と言って市長になにやら書類をつきつけ、それから得意げにまた何か口舌を続けようとしたようだが、ちらりとマルパスのほうを見て、彼は口をつぐんだ。
「ではそういうことだ。よい返事を期待しておる!」
 言いたいことだけ言うと、彼はくるりと背を向けた。

★ ★ ★

「どうするべきなんでしょうか」
 植村が言った。市長は、先ほどから腕を組んで考え込んだきりだ。
 今までも、一体どうすればいいか、途方に暮れたり、判断に迷ったりしたことは多々あった。しかし今回は、今までとは状況が大きく違う。
 映画からあらわれた、強大な敵や災害が襲ってきたのではないのだ。
 東栄三郎――そしてアズマ超物理研究所、と相手は名乗った。
 人間だ。
 そしてかれらは……銀幕市民ではない。
 銀幕市の状況について、市外の人々は、あまりに荒唐無稽すぎるせいか、今まで誰ひとり顧みてくれるものはいなかった。だから市は独自に対策課を設け、続発する問題に対処してきたし、一方で、市内では、ムービースターを加えた新たな秩序のようなものができつつあった。
 そこへ、今、銀幕市の外から、来訪者がやってきたのである。
「最終的には市が判断するとしても」
 市長は、やがて、重い口を開いた。
「市民の意見を聞いてみないわけにはゆかないでしょう」
「マルパスさんは何か?」
「何も。彼は軍人だ。軍事に対しては常に政治が優先するのが現代市民社会の原則だからね」
「シビリアンコントロールというやつですか。それはわかりますが、しかし……」
 植村は、書類に目を落とした。
 それは東栄三郎が、市につきつけてきたものだ。
「かれらは取引をしたがっているように見えます。市へのメリットがある提案もされているわけですしね。それに……あの『黒いフィルム』の件についても、合わせてよく考えてみる必要があるでしょう」
「……」
「準備をして下さい。そして、市民のみなさんに、案内を」

 ほどなく、市広報などを通じて、『銀幕市タウンミーティング』なる催しが開かれることが告知された。
 その場で広く市民の意見を募り、また、意見交換や議論を行ったうえで、市としての、アズマ研究所への対応を決めるとのことである。


<ご案内>

「アズマ超物理研究所」なる組織から市に対して申し入れがありました。それにどう対処すべきか、市では「銀幕市タウンミーティング」を行い、市民から意見を募って決定する方針です。

東博士からの3つの要求+α

<1>プレミアフィルムの提供
今後、『対策課』が回収したプレミアフィルムを、研究所に対してサンプルとして提供すること。

<2>市内での実験・調査の許可
銀幕市内においてムービースター、ムービーハザード、バッキーにまつわる実験や調査を行うのを認めること。

<3>実験・調査への、市民の積極的な協力
ムービーファンの市民、およびムービースターが、研究所の実験などに積極的に協力すること。

※研究所は上記の3つの要求は「不可分の1セット」と考えているようです。

また、博士は上記とは別に、現在、悪役会が確保しているムービースター・ミランダの身柄についても引き渡しを要求しています。


東博士からの2つの提案(上記要求受諾時の見返り)

<A>『ムービーキラー』に関して、研究所が把握している情報の提供
昨今、市を騒がす事件の一部は、死亡後に「黒いフィルム」に変わったムービースターによるものでした。アズマ研究所はかれらが『ムービーキラー』という存在だと言っています。研究所がかれらについてどの程度の情報を持っているのかはわかりませんが、それを開示すると先方は言っています。

<B>ムービーファンを強化するための装備品の提供
アズマ研究所では、バッキーの力を利用することでムービーファンが使用できる便利な発明品を開発しているそうです。その提供が受けられれば、今後、ヴィランズやムービーハザードに対応する際に役立てられるでしょう。


タウンミーティングはイベント掲示板として期間限定で運営されました。 意見交換が行われ、投票の結果、研究所の要請を受け入れる方向で対応することとなりました。

■銀幕市タウンミーティングの記録(過去ログ)


<参考資料>

■アズマ超物理研究所とは?
市外で活動している謎の研究機関です。あやしげな発明品を開発しては企業などに売り込んでいると言われています。所長は東栄三郎。銀幕市に興味を持ち、すこし前から秘密裏に活動していた形跡があります。

●関連シナリオ(研究所の関与がみとめられた事件)
『【美女が暴走!?】 狙われたプレミアフィルム? 倉庫街の激闘!』
『入隊者募集! ジェフリーズ・ブートキャンプ』
『ブラックスターが堕ちて』

■ムービーキラーとは?
銀幕ジャーナルが、過去に「黒いフィルムに変わったムービースター」について情報をまとめた号外記事を作成しました。
銀幕ジャーナル号外「ムービーキラーとは!?」






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